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#4942 食糧価格元へは戻らない三つの理由:元東北大教授盛田清秀 Mar. 14, 2023 [8. 時事評論]

 3/13のNHK朝のラジオ番組によれば、農業資源専門家の盛田清秀氏が三つの主要な理由を挙げて、食糧価格が元へは戻らないと主張している。

(1)人口大国である中国とインドの所得が上昇し、食糧需給がひっ迫している。今後、この2国の食糧需要は増大し続ける。
(2)地球温暖化により気候の振れ幅が大きくなり、穀物生産が減少している。
(3)日本の農業自給率が低下している。現在38%。

 対ドル為替レートは110円/ドル付近だったのに、昨年6月から130円/ドルを超えているので、円安だけでも食糧輸入価格は25%もアップしている。その上、ロシアが世界の穀倉地帯であるウクライナを侵略したので、ウクライナの穀物輸出ができなくなり、需給のひっ迫に拍車をかけ、ますます食糧価格が高騰することになった。
 長期的に見れば、上記3つの要因は改善しそうにないので、今後も食糧価格の高騰は続くというのが、盛田清秀氏の見方である。

 盛田氏は他にもいくつか理由を挙げていた。一つはトウモロコシである。米国が世界の生産量の1/3を占めるが、その内の40%が燃料用油を製造するための原料として消費されており、畜産飼料としてのトウモロコシの値上がりがとまらない。
 (4)輸送船が足りないので、輸送コストが増大している。
 (5)自国の食糧安全保障上、輸出国が自国の消費分を確保するために、輸出規制をかけている。
 (6)食糧備蓄には大きなコストがかかるので、十分な備蓄は困難。

 盛田氏は、このような理由で食糧価格が高止まりしたままになることに懸念を示し、いくつか処方箋も明らかにした。
 
(7)日本には米作の休耕田が47%もあるが、それをほかの作物栽培用の畑に転換して食糧自給率を上げることができる。
(8)米の消費を増やす。健康に良い和食へ食事のスタイルを切り替える。

 水田は優秀な生産装置であり、そこで小麦や大豆やを生産して、自給率を上げる余地があるという。
 盛田氏は言及しなかったが、日本の農業の大半は高齢者が担っており、今後30年間で農業生産人口が激減するだろうし、そうなると自給率はさらに下がり続けることになる。おまけに政府が付加価値の高い農産物の輸出を奨励しており、普通の国民が食べる農業生産物が減少していく傾向は、今後ますます強くなりそうである。
 食糧自給率は食糧生産量が同じなら、人口が現在の4割になる2120年には2倍となる。人口減少が食糧自給率をアップする有効な対策の一つということになる。北海道の食糧自給率は400%だから、ここを日本の食糧生産基地として食糧生産量を維持する方途を考えればいいということ。

 話を聞いていて、ロシアのウクライナ侵略のことが頭をかすめた。ロシアは穀倉地帯のウクライナを手に入れたいのではないか。天然ガスと原油だけでは食べてゆけぬ。北方四島は境の4大漁場の一つである。たとえば、択捉島は「宝島」だった。北海道沿岸に比べて、数倍の漁があったという。いまでも、択捉島の川には昔と同じように、川に竹竿を立てても、遡上してくるシャケに押し合いへし合いされて倒れないなんてことがあるようだ。
 ロシアは穀物と水産資源の確保のために、ウクライナと北方四島を自国領土にしたいのだろう。そういう国と国境を接していることを忘れてはならない。


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