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#4769 生徒の質問:修飾の多い文 June 15, 2022 [52-2 生徒の質問]

 昨日高3の生徒が教科書の和訳に一生懸命だった。最近購入した電子辞書(EXWORD)がお気に入りのようで、せっせと辞書を引いている。いい傾向だ。新しい道具を手に入れたら、トコトン使い倒そう。
 授業時間の終わりの方でこの生徒KWさんから投げられた質問を紹介する。
 教科書PROMINENCEⅢ「Lesson 4」p.41の最後の段落から。


 The bar of soap you used once or twice during your last hotel stay might have now be helping children fight disease in developing countries. And it all started with one man who has shown that every single day you have the opportunity to make life a little bit better than it was before.
「あなたが最近ホテルに泊まっている間に1回か2回使った(固形)石鹸は、発展途上国で病気と闘う子どもたちにひょっとしたら役立っているかもしれない」

 質問部分は以下の文である。
 And it all started with one man /who has shown that /every single day you have the opportunity/ to make life a little bit better /than it was before.
「すべては一人の男で始まった/やって見せてくれた/どんな一日にだってチャンスはある/人生をちょっとでもよいものにするための(チャンス)/以前よりも」⇒「そして、それは、どの一日をとってみても、人には以前よりもほんのちょっと人生を豊かにするチャンスがあるものだということをやって見せてくれた男によって始まったのである。」 
 このように、スラッシュでぶつ切りにして、英語の語順通りに理解するのもよし。

 この文は間に関係節修飾があるのでわかりにくい、外してみます。
 And it all started with one man who has shown that.  
 わかりやすいでしょ。
 every single day you have the oppotunity to 
make life a little bit better it was before.
 "every single day"
は「どのたった一日にも⇒人の人生の中のどの一日にも」。"single day"は"a day"を強調した言い方かな。"every single day"の"every"は一つ一つに視線がいってます。「人の一日はどの日をとっても、昨日よりは今日、ちょっとはだけ人生をよくするチャンスはあるんだよ」ということ。
 この文でyouは「人一般」を表しています。「「人には」あるいは「みなさんには」」と訳してもいい。

 別なアプローチもありますよ、長い文ですから、三つに分解してみると、その一つ一つは単純です。
 ①it (all) started with one man.:SVM
 (それは一人の男によって始まった)
   ②The man has shown (that).:SVO
 (その男は(それを)やってのけてみせた=ホテルに備え付けの石鹸のリサイクルをやって見せました)
   ③you have the opptunity to make life a little bit better (than it was).:SVOM
 (人ににはチャンスがある/昨日よりはほんのちょっと人生をより良いものにする)

 こういう手続きを生成変形英文法と言います。高校では出てきません。チョムスキーという科学者があらゆる言語には共通な文法規則があるという仮説に基づいて、「普遍文法」という学問分野を切り拓きました。興味があったら、学校の先生に聞いてください。もちろん、ニムオロ塾生からの質問にはわたしがかいつまんで説明します。チョムスキーの言語学理論関係の原著が数冊本棚にあります。

 ③の文は「人にはチャンスがある」と言ってから、その後ろにどのようなチャンスなのかを説明する不定詞句が続いています。「説明ルール:説明は後ろに置く」です。than以下の節はその直前の句を説明しています。この文全体が②のOである目的語の説明になっています。
 lifeには限定詞も不定冠詞もついていません。だから、個別的な誰の人生でもないそしてすべての人の人生でもある「人生一般」を表しています。リサイクル事業を興すことで自分の人生を変えたこの男、そして開発途上国でこの石鹸を利用して衛生状態を改善し今までよりも良い人生を手に入れた子どもたち。人の人生はすばらしい!切なるニーズがあるなら、損得抜きでそれに渾身の力で取り組む、いいですね。そういう大人になる人がわたしが教えた生徒たちの中からも現れるかもしれないと思うと、一回一回の授業がとても大切なものに感じます。

 ところで、時制の一致が破れていることには気がつきましたか?
 ①の文は過去形です。②の文は現在完了形、③は単純現在形です。①と②③は地齋が不一致なのですが、その理由も理解しましょう。
 ②の理由は書かなくても文脈でわかるでしょう。問題は③の文です、なぜ単純現在形なのでしょう。そうです、この文は時間も空間も超越した普遍的な真理を語っているからです。人には、例外なしに誰にでも自分や他の人の人生をより良いものにするというチャンスが、どの一日をとってもあるということ、それは普遍的な真理なのだという筆者の思いがこもった文なのです 
 これで解説は終わりです。

 手順と作業は簡単でしょ?
 複雑な文が出てきたら、修飾語や修飾句や修飾節を外して、骨格だけにして眺めてください。
 KWさん、受験まであと半年、苦手だった英語長文と仲良く過ごす時間がますます増えることを期待しています。

*「チョムスキーの言語学 生成文法とは?」



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