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#4757 根室高校英語教科書変更と授業速度について May 27, 2022 [64. 教育問題]

<最終更新情報>6/8重要な追記あり

 根室高校は来週から前期中間試験です。高1の試験範囲は1章のみ、高3は1-4章です、ずいぶん授業速度に差がありますね。
 根室高校は昨年まで『VIVID』(第一学習社)シリーズを使用していましたが、今年は1年生が『FLEX-1』(増進堂)、2年生が『LANDMARK Fit -2』(啓林館)、3年生が『PROMINAVCE-3』(東京書籍)に変更になっています。
 この教科書を使っている科目は「コミュニケーション英語」です。1年生と3年生の教科書を新旧で対比してみましょう。左側が「旧」、右側が「新」です。
<1年生>
 160⇒191頁
 9章⇒9章
 3500⇒5462 words 1.56倍
<3年生>
 152⇒175頁
 9章⇒16章
 5500⇒12857 words 2.3倍

 『Vivid』のwords数は2章ほどカウントして、Part当たりの平均値を算出して全体を推計したものです。新しい教科書の方はwords数が章単位で表になって掲載されているので、それを合計しています。
 すごい増え方です。1年生が1.56倍、3年生が2.3倍です。たくさん読まないと英語の学力がつかないのでいい方向の変化です。
(1月から現在の1年生3人に高校英語教科書の音読と語順通りの読解トレーニングをしています。授業参加には予習の条件を付けています、旧教科書であるVividを使用。高1の教科書を終了して、いま2年生の教科書、5/14に4章part-2までやりました。用事があって5/21は土曜日2時間の音読特訓授業は休校にしています。4回ほどわたしの都合で休講しました。9月末まで高校3年分の教科書を消化するつもりです。)

 1年生はテスト範囲は1章のみです。このペースでは2月末まで6章までしか消化できそうにありませんから、どこかで倍速にスピードアップせざるを得ないでしょうね。
 3年生は4章までがテスト範囲です。スピードが速いので生徒たちは必死に予習していますね。ほとんどの生徒が追い付かない。1.5か月で4章消化できたということは、このペースだと半年で16章が終われるので、夏休みなどで1か月引いても11月末には教科書を終了できます。「みんなの大学情報」偏差値で言うと、偏差値55程度の大学受験にシフトした教科書選びと授業速度です。根室高校普通科の偏差値は45ですから、下位1/3の学力層の高校です。しかし、3%(1学年に5人程度)は環境さえあれば都会の有名進学校に入れたくらいの潜在的な学力をもった生徒がいます。
 
 コミュニケーション英語は3年生は選択ですから、生徒の話では35名程度が履修しているだけです。だから、こんな速度の授業が可能なのでしょう。昨年までとはまるで様子が違っています。
 根室高校普通科は3クラス編成で、Aクラスが「特設コース」で20年前の普通科の平均的な学力の生徒たち。BCクラスは、統合前の根室西高校普通科の生徒たちの学力層です。だから、必修科目である1年生の「コミュニケーション英語」の授業速度は2/3を占める低学力層に合わせて遅くならざるを得ません。

 そうしたことを考慮すると、1年生英語担当の先生たちは生徒の学力に合わせた授業をしているのでしょう。成績上位の生徒にはかったるい授業で、成績下位層の生徒にはついていけないくらいきついということになります。やむを得ないとはいえ、教える先生たちは泣いているかもしれませんね(根室西高校統廃合時のいい加減な検討の結果ですよ。根室西高校の生徒たちと根室高校の生徒たちが、同じ根室高校普通科の教科書で学ぶということになってしまいました。(授業の内容、やり方、速度を含めて)対応が著しく困難になったのです。2016年3月から入試は根室高校のみ、それ以来授業のやり方は試行錯誤が続いています)。英語の定期テストは全クラス同じ問題でやらせるのかな?
 昨年までは数学はクラス別編成しており、「特設コース」のAクラスと他のクラスの試験問題は別でしたが、今年は同じ問題に変更になると聞いています。数学の試験問題の難易度がガクンと落ちます。学力差が大きいので、本来は同じ問題でのテストは無理なのです。無理が通れば道理が引っ込みます。Aクラスの平均点は80点台、そして百点が何人も出ることになりそうです。6月下旬に予定されているベネッセ模試では、百点満点で平均点は22点前後です。全国平均よりも10点以上差があります。どれほど定期テストの問題の難易度が低いのかわかるでしょう。
 平均点は数学よりも数点高くなりますが、英語も全国模試の結果も似たようなものです。

 1年生用の教科書『FLEX』には音声が聞けるようにQRコードが印刷されています。スマホで読み込めばそのページの音声が聞けます。中学校の教科書には昨年からQRコードが載っていました。これで音読トレーニングしてください。
 3年生用の教科書にはQRコードが載っていません。教科書会社の改善を望みます。そういう時代ですから。

<余談-1:1年生英語の授業速度について>
 1年生のAクラス以外の生徒たちに一昨日、テスト範囲の音読と語順通りの読解トレーニングをしましたが、2時間で1章丸ごと終わりました。スラッシュ入れてから3回読んで、生徒たちにスラッシュごと、語順通りに和訳してもらいました。文型も言ってもらいます。違っていれば解説しました。意味をつかんだところで、それをイメージしながらさらに2回音読。もちろん文法上重要なところも解説してます。
 わたしにはとても学校と同じペースでは授業できません。きっと8割は雑談で穴埋めしないといけません。学力差の大きい生徒たちに同じテスト問題での試験前提の授業、英語も数学も先生たちはさぞかしたいへんだろうと思います。

<余談-2:「英文法概論」授業について>
 使用している問題集の解答集を生徒に渡していません。生徒たちに独力で予習をさせたいための配慮でしょうが、そんなことをしても無駄です。長文問題の授業も解答集を渡していませんが、ネットでいくらでも買えます。買ってシェアしてますよ。いまの時代それくらい、あたりまえでしょ。独力でやれる生徒は5人もいるのかな?先生たちは生徒の学力分布を先刻ご存じのはず。ここでも無理を通せば道理が引っ込みます。
 抜け道探してズルをする経験を積むことになります。こういうのを「隠れたカリキュラム」というのでしょうね。何度もこういうことをすると、それが癖になり、しまいに性格になるのです。今回だけにしておきましょう。社会人になったときにはもう取り返しがつきません。気をつけないと問題に正面から向き合わない人間ができあがってしまいます。学力が高い低いにかかわらず、クズですよ、生徒も先生もご用心!意図しない結果を生むのです。

<余談-3:偏差値について>
 ベネッセ模試の偏差値と「みんなの大学情報」の偏差値を比べると、たとえば旭川医大だとベネッセが75、「みんなの大学情報」が65です。これは偏差値計算の基礎データとなっている生徒の学力層が違うからです。
 ベネッセの偏差値60(上位16%)は「みんなの大学情報」偏差値換算で50-52です。根室高校1年生は6月下旬に初めて全国模試を受験して自分の学力レベルを偏差値で知ります。ベネッセで60を超える生徒は学年に5~7人程度です。普通科の生徒の上位5%がそういうレベルです。
 でも、潜在的な学力の高い生徒が3%いるので、そのままでは終わりませんよ。独力で頑張る生徒もいます。どこまで学校や私塾がサポートできるかが問われます。

<2年生の数学はAクラスとBCクラスは別問題> ...6/8追記
 2年生の数学は、Aクラス(特設コース)とBC組は別問題でした。数Ⅱは44名が選択、数Bは27名です。平均点は数Ⅱが49.9点、数Bが50.3点、BCクラスの数Ⅱの方だけ問題を見ましたが、基本問題のみの生徒達の学力に見合った問題です。模試レベルの問題は出題されていません。それでも50-59点の階層が1人だけという中央がへこんだ極端な形をしており、赤点の30点未満が13人29.5%を占めています。数Bは30点未満は4人で14.8%でした。数Ⅱを選択したが数Bを選択しない生徒が17人いいると考えられますが、その生徒層が数Ⅱで30点未満の層と重なっているのでしょう。
 数Ⅱの方は学力差が極端で、中央値が1人だけ、こんな極端に偏った分布では先生たちは困惑しているでしょうね。グループ分けして、できる生徒たちにできない生徒を教えるような授業形態をとっています。正解ですね。学力の低い層は10倍手間がかかるので、先生1人では対応できません。90点以上の生徒が5人いるので、その生徒たちを上手に使って点数の低い生徒たちをフォロー。

 数学の先生が配布した得点階層別グラフを紹介します。仕事が早かったね。こんなに早い仕事は中学校も含めても今までありませんでした。ナンバーワンです!事務仕事が得意な先生もいるんだ(笑)

①数Ⅱの得点階層別分布:44人
 真ん中へ込んだすごい分布でしょ。どこに焦点あわせて授業してもアウトです。基本問題に絞って、丁寧に解説しても下位24人(57.5%)は理解できませんよ。だから、90点以上の生徒5人を一人ずつ配置して9人のグループを5つ作って、生徒同士で教え合いをするしかありません。
 人を助ける大切さを感じてくれたらうれしい。そして学力が低くても、学力が上の者が助けてくれるんだということを実感してもらいたい。社会人になって、困難にぶつかったときに、そういう体験がギリギリのところで役にたちます。
DSCN6486数Ⅱ.jpg

②数B 得点階層別分布:27人
 Aクラス40人の中には数学が不得意な生徒がいます。2年生は110人くらいですから、数Bをこなせる学力の生徒は、30人くらいかな。
 今年から、数Cが復活して、数Bのベクトルが数Cへ移行しています。行列式と併せて数Cで扱うようです。線形代数は文系学部でも必須の科目ですから、数Cまで履修していた方がいいのですが、そうなっていません。履修できません。再考を要望します。
 数Bからベクトルが抜けて推測統計学が組み込まれたようです。推測統計学も文系学部でも必須の学問ですから、意欲のある生徒はしっかり勉強してください。高校で履修していなければ、大学進学したら独力で勉強することになります。そんなことができるのは学力上位3%の人でしょう。
 なお、現行2年生と3年生は変更ありません。”sqr(3)”というハンドルネームの方から投稿欄へ指摘がありました。
DSCN6486s.jpg



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コメント 3

sqr(3)

数Cについて認識が間違っているようなのでコメントさせていただきます。
数C復帰は現高1生からで高2生、高3生は従来どおりです。
現高1生の数Cはベクトル、複素数平面、2次曲線を習います。
行列は高校数学では取り扱いません。

by sqr(3) (2022-06-11 05:27) 

ebisu

sqr(3) さん

おはようございます。
2次資料を見て書いていたので、学習指導要領で確認しました。ご指摘の通り数Cでは行列式は扱われていませんでした。
ありがとうございます。

高校学習指導要領「数C」115頁に次のような記載がありました。
「「(1)ベクトル」,「(2)平面上の曲線と複素数平面」及び「(3)数学的な表現の工夫」の三つ
の内容で構成している。」
https://www.mext.go.jp/content/1407073_05_1_2.pdf

本文を訂正します。m(__)m
by ebisu (2022-06-11 09:07) 

ebisu

=管理人のつぶやき=
<文系・理系問わず数Bは必要です>
推測統計学の基礎が数Bで扱われます。統計資料はどの学問分野でも出てきますから、処理された数字の背景が見えなければ議論にすらなりません。
大学進学する人には数Bを履修をおススメします。

<線形代数も文系学部でも経済学部生には必須ですから数Cを選択しましょう>
たとえば、上智大学経済学部の授業には「情報・統計・数学」分野の科目群があります。科目としてリストされているのは次の項目です。
「証券データ分析 □計量ファイナンス □線形経済数学 □経済分析の数理」
行列式も高校で扱ってもらいたい。

どうやら高校数学全分野やっておいた方がよさそうですね。

マルクス経済学をやる人も数学は必須です。もっと広く深くやらないと全体が見えてきません。微分積分はもちろんのことユークリッド『原論』やデカルト『方法序説』まで渉猟する必要があります。
数学音痴で躓いたマルクスと同じ陥穽にはまらぬように、つまりワクチンのようなものです。別の視点からチェックするという視座の確保が必要です。

上智大学のカリキュラムの載っていたページのURLを貼り付けておきますので参考にしてください。
https://dept.sophia.ac.jp/econ/about/dept_econ/curriculum/

どうやら、「文系・理系」という区別が数学に関してはもう成り立たない時代にとっくになっているように感じます。数学は文系・理系に共通な必須の科目です。
文系志望の高校生に、数学全分野が履修できるように、工夫はできないでしょうか?

ひとつ具体例を挙げます。原価計算という学問は一ツ橋大に学会の事務局がありますが、情報システムを理解できる先生がおられないという悲惨な状態が1980年代からそのままではありませんかね。民間企業、製造業の大企業で原価計算システムのないところなんてありません。時代遅れに原価計算学者たちが気がついていないように見えます。原価計算システムは文系と理系のクロスオーバーする分野です。もちろん会計学や簿記論も。
時代はとっくに、文系理系なんて垣根を乗り越えています。もちろん民間企業ではそんな区別はとっくにありませんよ。40年前からそうでした。クロスオーバーする分野の担い手が不足しています。理系と文系分野の両方にしっかりした専門領域と経験をもつ人材が必要なのです。
大学や高校のカリキュラムから変える必要があります。

by ebisu (2022-06-11 10:34) 

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