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#4744 ウクライナの現状と北方領土返還運動 April 22, 2022 [21. 北方領土]

<最新更新情報>4/23朝8時半<余談:北方領土返還運動はその方向を変えるべき>

 ビザなし交流が30年目を迎えたそうだ。北海道新聞4/22朝刊31面「第一社会面」より、「命奪う国…はなしあえるか」抜粋

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 命奪う国...はなしあえるか
  途絶えた交渉
   悲劇を重ね

どこに行くかもわからず、子どもやお年寄りが故郷を追われている。77年前の北方領土と同じことが起きている」。ロシアがウクライナへの侵攻を開始した2月24日以降、北方領土択捉島出身の鈴木咲子さん(83)=根室市=は、ウクライナを脱出する人々の姿に自身の経験を重ねていた。 
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「生き地獄だった」。鈴木さんは、約1カ月に及んだ収容所生活をこう振り返る。栄養失調で歩けなくなる子どもや高齢者が続出し、鈴木さんの幼なじみも6、7人が亡くなった。引き揚げ船には遺体を乗せることができなかったため、冷たくなった乳児を背負って乗船した女性もいた。

 ウクライナでは、子どもを含む多くの民間人の犠牲が明らかになり、プーチン大統領の戦争責任を追及する動きも強まる。ロシアは3月21日、日本の対ロ制裁への対抗措置として、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の「中断」を通告してきたが、鈴木さんは「子どもたちの命まで奪う政権との話し合いなど再開できるだろうか」と嘆く。
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 日ロの北方領土交渉は2018年11月、当時の安倍晋三首相が1956年の日ソ共同宣言に基づく歯舞群島と色丹島の2島返還を軸とした交渉に大きくかじを切ったが、ロシアは強硬姿勢を崩さなかった。「領土交渉は白紙に戻ってしまった」「自分たちが生きている間の返還はなくなった」―。ウクライナ侵攻を受け、根室市内の元島民にはいらだちと諦めが広がる。
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 ロシアのプーチン大統領は国境の西側でいまも領土拡大に夢中になっている。皆殺しが目的のようだ。全員移住させるか皆殺しが一番手っ取り早い方法だ。こんなことを目論むロシアと領土交渉なんてありうるはずがない。北方領土返還運動団体は今まで夢を見ていたのである。
 敗戦となり、それでも戦い続けたら北方領土の住民は皆殺しになっていたかもしれない。択捉島出身の鈴木咲子さんは自らの体験をウクライナ国民に重ねて、同情の思いを強くしたのだろう。やり切れぬ思いが伝わってくる。

 その一方で、テレビニュースでは「お金がいくらかかってもビザなし交流を続けるべきだ」と意味不明のことを声高に訴える人もいた。「ジョバンニの島」のT氏(81歳)である。ご自分の都合だけでウクライナへの同情なんてこれっぽっちもその発言には感じられなかった。交流を絶やしたくない気持ちは理解できるが、独りよがりで閉鎖的な考えに聞こえます。ビザなし交流はいずれまた再開されます、それまでお休みでいい。北方領土に住むロシア住民と創り上げた絆が消えてしまうわけではないでしょう。彼らの中にも、今回のウクライナへの侵攻を是としない人たちが少なくないかもしれません。
(数年前に亡くなった択捉島蘂取村出身の岩田先生も、水晶島出身で予科練入隊直前に終戦になって命を長らえた元根室高校教員だった柏原栄先生(現西浜町会長)もこういうこと(お金がいくらかかってもビザなし交流を続行すべきだと)はおっしゃらないだろう。)
 どちらの主張が日本国民の胸を打つかは論ずるまでもない。

 日本人の心の奥には情緒があり、その中で大切なものは「憐憫の情」「惻隠の情」だと言ったのは『国家の品格』の著者である数学者の藤原正彦氏である。それを失ったら、もう日本人とは認められないというのが藤原さんの主張だろう。
 生まれ育った家や土地を棄ててウクライナを離れざるを得なかった500万人の住民や、侵攻してきたロシア兵と製鉄所の地下にこもって絶望的な戦いを続けている兵士たちに憐憫の情がわいた北方領土返還運動関係者のいることは救いだ。

 ところで、最近、元外務次官が本を上梓(じょうし)したそうだ。2018年に当時の安倍晋三首相が2島返還に舵を切ったことについて、国家主権を放棄した最悪の首相として歴史に記録されるかもしれないと書いてある。2島返還論を声高に主張して安倍氏の露払いをしてきたのは「日本維新の会」所属の参議院議員鈴木宗男氏である。ムネオハウス事件はもう20年以上も前だった。ロシアがらみで噂の多い御仁である。

 ウクライナがロシアに勝利し、早く平和が訪れますようにと祈ります。

<余談:北方領土返還運動はその方向を変えるべき>
 北方領土返還運動を思い起こすにつれ、たとえばパプアニューギニアなど南方諸島からの引き揚げ者のことを想う。苦労して開墾した農園をそのままにして命からがら引き揚げた人々にも何の補償もなかった。どうしてそういう人たちへ共感を表明できないのでしょう?また、元島民は引き揚げ者だけではありません。択捉島で育った私の母の兄弟姉妹7人の内引き揚げ者は2人だけです。5人は元島民ではありますが、引き揚げ者ではありませんでした。引き揚げ者だけの運動に矮小化していては、ただのエゴに聞こえ、元島民の引き揚げ者ではない人々の共感すら生まれないでしょう。こうして戦後七十数年間の北方領土返還運動は他者の共感を呼ばぬものでした。それは北方領土返還運動を担ってきた人たちの過ちでもあります。いまウクライナから逃げざるを得なかった500万人を越えるウクライナの人々とウクライナに残ってロシアと戦っている兵士に共感を寄せることができなければ、北方領土返還運動はエゴイストのそれとみなされるでしょう。運動の方向を大きく変換するいい機会ですよ。

*色丹島のロシア人から見た北方領土問題


#195 すこし過激な北方領土返還論:MIRV開発・組み立て・配備・解体ショー

 フォークランド紛争時のマーガレット・サッチャー英国首相の果断な決断が見事だった。毅然とした態度が参考になりませんか?ロシア大統領プーチンに2島返還論をもちかけて国家主権を放棄した元総理の安倍晋三氏とは資質が違いますね。

*#2054 マーガレット・サッチャーと領土問題(3) : Aug.16, 2012

#2053 マーガレット・サッチャーと領土問題(2) : 北方領土・竹島・尖閣列島 Aug. 14, 2012

#1892 映画「マーガレット・サッチャー」と北方領土 Apr. 6, 2012


#4025 日露首脳会談6/29:「元島民落胆深く」 Jul. 1, 2019v



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コメント 3

tsuguo-kodera

 その通り。私の高校の日本史の先生はシベリアで強制労働させられました。凄い話を色々してくれました。570000人が武装解除後、戦後に連れていかれ、国際法違反なのに。それを認めてきたのが国連の常任理事国。1割以上が栄養失調、しらみの餌で命を落とした。それでも戦闘状態の捕虜であり、合法だと抗弁していた国。今はロシアはソ連と同じです。
 自分さえ儲かればどうなっても良い人が日本にいます。日本人はまだ少ない率なのかも。でも人でなしがいることが現実。情けない。
 このまま世界の終わりが来ることを国民が覚悟しなければ、ウクライナの民は救われません。その他の国にも同じ境遇の人がいます。
 そうせダメな国なのだから、鎖国するか、世界中から難民を受け入れるかしかないのかも。でも私は軟弱。
今のうちにお金を使いこの世を楽しむつもりになりました。ネットで贅沢をしています。南無大師金剛遍照。
 
by tsuguo-kodera (2022-04-23 12:39) 

ebisu

koderaさん

おっしゃるように、世界の終わりが来ることを覚悟できなければ、プーチンの傍若無人なウクライナ侵攻をとめることはできないのでしょうね。
中国の習近平も南沙諸島でやりたい放題、台湾有事もいつ起きるか知れません。大量の難民受け入れや戦争のシミュレーションをしっかりやって準備する段階にすでに入っているのでしょう。

もう60年以上も前、中学生の時に「三ツ矢作戦」という記事が北海道新聞の1面に掲載されました。韓国で武力紛争が生じたという想定で、陸海空の自衛隊と米軍が共同してことに当たるという具体的な作戦でした。
台湾有事を仮定した作戦の具体的なシミュレーションもなされているのでしょうね。それが陸海空の自衛隊の仕事でもありますから。

わたしは北海道新聞1面の記事の見出しには「三ツ矢作戦」と書いてあったと記憶していたのですが、wikiでは「三ツ矢研究」となっていました。
小4から北海道新聞コラム「卓上四季」と社説、そして政治経済欄を読むのが習慣となってましたが、「三ツ矢作戦」は「やっぱりやっているんだ」という思いをもちました。

備えあれば患いなし。
企業経営と一緒ですね。武力紛争、地震や火山の噴火や台風などの自然災害、それぞれに応じた具体的で適切なコンテンジェンシープラン(緊急事態対応計画)を用意しておかないといけません。
厳しい未来が待っているようですが、若い人たちが困難な課題を一つ一つクリアして、成長するのでしょう。困難な仕事をやり遂げることで人は成長します。

by ebisu (2022-04-24 11:06) 

ebisu

「三ツ矢研究」のURLを載せ忘れました。
こちらをクリックしてご覧ください。歳を取るとこういうことが多くなります。(笑)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E7%9F%A2%E7%A0%94%E7%A9%B6

by ebisu (2022-04-24 11:09) 

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