#4466（２）復員② 『遺稿集 田塚源太郎』より Jan. 24, 2021

　軍医として四年間中国大陸を転戦、敗残の身となり祖国へ帰るときに詠まれた歌である。
　田塚先生は国後島の出身で、根室商業を昭和11年3月卒業、昭和16年3月に日本歯科医学専門学校を卒業され、翌年から北支河南省と河北省へ軍医として従軍している。昭和54年4月に逝去。
　花咲町1丁目で歯科医院を開いていたので、団塊世代の人たちは覚えているでしょう。

河中の荒き風音不気味にてのろくのろく黄河の鉄橋渡る　

黄河越え沙岸に月のしみるとも鄭州の灯の見ゆることなし 

この河を渡りし夜の戦（たたかひ）を想ひいづるともただに寒かりき

　鄭州は上海の北西850㎞ほど、北京の南西600㎞ほどのところに位置している。ここで無蓋車に乗って黄河を渡った。中流域だからそれほど川幅は広くはないだろうがどれほどだったろうか？河口域は数十㎞の川幅がある。根室には大きな川がないが、川筋は風が強いものだ。
　沙岸は地名かと思ったら、砂地の川岸のことをいうらしい。川岸を月の光が照らしている、だが、鄭州の灯が見えないということは、戦争で荒れていまだ夜の明かりがついていない状態のようだ。この景色を見て祖国はどういう状態なのだろうという思いが胸に去来したのだろうか？
　敗残の身となり、黄河を渡る、ただただ寒い。飢えを抱え着のみ着のままの姿の兵士たちが寒さにおののいている。

＜用語解説：河北と河南そして北支＞
　河北省と河南省はどもに華北地方であり、黄河中流域と言っていいだろう。上海は華南地方の大都市である。その二つの地方の間は華中と称せられている。中国3番目の大河（総延長1078km、流域面積174,000km^2、北海道の総面積83,424km^2の2倍である）である淮河（わいが）以北を華北、以南を華南と称した。淮河が華北と華南の境界線である。
　華北は米作ができないので小麦文化圏である。そこには北京や内モンゴル自治区が含まれている。
　「北支」とは日本がその支配地域に冠した名称で「北支那」、つまり華北地方を指す。

＜支那と中国とどちらがまともな呼称か？＞
　支那である。中国という呼称は戦後GHQの支配下にあった外務省が出した通達によって普及した呼称です。歴史的にもそんな呼称はありません。支那が正しい。
　Chinaはドイツ語では「ヒーナ」、オランダ語では「シーナ」、英語では「チャイナ」である。「中国＝the Central Land」の表記をしている国はない。日本が例外だということがわかる。「中国」という呼称は中華思想そのものだ。世界の中つ国、つまり世界の中心という意味なのだ。
＊Chinaを中国と呼ぶ重大な過ち


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コメント 5

わたしが小学校1年生の時　隣のクラスの担任の先生が
田塚先生という女の先生でした。
もう半世紀以上昔のことで、かなりお年をめしていて当時は
貧しい開拓民の同級生の中には弁当が無い生徒もおりました。
田塚先生がお昼時に食パンと砂糖を渡していたのが記憶にあります。
貧しいが教師と生徒の結びつきは現代とは比べ物にならない時代でした。
by 別海町民 (2021-01-25 11:48) 

別海町民さん

いいお話をありがとうございます。
クレヨンを買ってもらえない生徒がいて、プレゼントしたと数十年たってから、担任の先生から聞いたことがありました。いまと比べると昔はほんとうに貧乏だった。でも情のある人が多かった。
いま貧乏だと、本当に孤独ではないかと心配になります。
by ebisu (2021-01-25 15:55) 

別海町民さん

田塚先生にはお姉さんが二人います。根室市内にはお住まいでなかったので、国後島の引揚者ですので根室管内のどこかに住んでいたはずです。
ひょっとして、二人のお姉さんの内のどちらかの可能性があります。田塚先生のお母さんはとても教育熱心な方でした。お母さんの母方の祖父が蘭方医で松本藩医だったので教育に熱心だったと、奥様が遺稿集の終わりの方に書いています。田塚先生は大正8年のお生まれ。別海町の先生がそれよりも年上なら可能性が大きい。
by ebisu (2021-01-26 08:39) 

お姉さんが2人いたとのことですが、年齢的に合致しますね。
確か昭和35年くらいのことで当時40代かそれ以上の記憶があります。
厳しい先生でしたが、優しさも併せもっていたようですね。
お名前は田塚せんだと記憶しています。
by 別海町民 (2021-01-26 10:38) 

北構さんがご存命だったら、すぐに確認できるのですが、それはかないません。
根室市内にはお住まいでなかったが根室管内にはいらした、お姉さんの可能性は大きいとしか申し上げられません。

by ebisu (2021-01-29 10:29)