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#4212 幸田文『みそっかす』April 1, 2020 [44. 本を読む]

 先日(3/29)注文した幸田文全集の第2巻と第3巻が届いた。

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 ㈱バリューブックスから届いた本は新刊書のようにきれいだ。第二巻は935円、第三巻が678円、それぞれ送料が350円となっている。1995年の発売時には3800円の本である。すでに絶版となっている名作がこんなに安く手に入るのだからありがたい。孫に残す本を文学作品を中心に300冊ほど選んでおかないといけない。
 経済学や会計学、システム関係、言語学関係の専門書が多いので9割は棄てることになる。
 女房殿がずいぶんおカネをつぎ込んだのにもったいないとぼやくが、役目を終えたらゴミである。

 幸田文全集第二巻の冒頭作品は「みそっかす」である。幸田文が幸田家に生まれたときの露伴の落胆ぶりが文自身によって描かれている。二人女の子が続いて生まれたので、露伴は第三子は自分の後を継ぐ男子が欲しかったのである。文は誕生時の父親の落胆ぶりをお手伝いさん(文中では「下婢」と書いているが、団塊世代のわたしですらこういう用語を生活環境の中で耳にしたことがない)から聞いていた。露伴の臨終の折に父の口から愛されていたことを聴き、長年の喉のつかえが下りたという。結局、露伴を色濃く受け継いだのは文だった。その娘青木玉も随筆家である。孫の青木奈緒もエッセイスト。親の教育のなせる業かそれとも遺伝子なのか、露伴から数えて4代続くというのはめずらしい。

 品の好い日本語が旧仮名遣いで書かれているので、格調が高く感じられる。人の心の揺らめきや日本人の情緒が随所に漂う、父親に劣らぬ文章の名手だとつくづく思う。

 高校生や大学生にこういう良質の日本語で書かれたものを読んでもらいたい、文庫本は現代仮名遣いに改めている(使用されている漢字も初版本とは違っている)から、この全集版でぜひ読んでもらいたい。現代小説の優れた書き手である東野圭吾とはずいぶん趣の違う文章に遭遇することになる。

 追記(4/1午後3時半)
 土曜日のスケジュールだったが、第十六巻『闘』も届いた。



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