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#3213 グローバリズムを生物多様性の世界からながめる(Aさんの問い) Dec.28, 2015 [資本論と21世紀の経済学(2版)]

【更新情報】
12/29 午前10時 追記
      午後11時半 追記
12/30 午前10時半 【余談】追記


 忘年会の2次会で、釧路公立大准教授(経済学博士)のSさんと話をしていた。
 ebisuの子どもと同じ年齢のS准教授は近代経済学が専門である。マルクス経済学のebisuと経済学に関する話は基本的にかみ合わないことになるが、それでも日本経済の行く末についての話はできる。

 日本人の仕事観について話をし、新しい経済学の公理の説明をしていたら、隣で話しを聞いていたA坂さんから価値観の変更を伴う経済改革について、「政治的にはどうなんでしょう?」と質問があった。「政治学的」と仰ったのか、お酒が入っていたので話の脈絡すらおぼろげだから、少々説明が必要である。(笑)
 『21世紀の資本』の著者であるピケティの経済政策は資産課税によって分配にメスを入れることで経済格差を小さくしよう言うのだが、支配階級である富裕層の反発を招くから、西欧資本主義の下では実現できない政策だと考えており、弊ブログでもそのことに言及していたから、ブログの読者でもあるAさんは、その点についてわたしの学説はピケティと同じ弱点があるのではないかと考えたのではないだろうか。
 米国スタンダードの押し付けであるグローバリズムを否定し、貿易を制限し、小さい単位で自立的な経済システムをつくるというのが「新しい経済学」だから、国際的に活動する産業資本や金融資本から大きな抵抗が予想されることは言うまでもない。ニューヨーク証券取引所も東京証券取引所も株価は大暴落を起こし、グローバリズムの息の根を断つことになるから、エスタブリッシュメントから大きな抵抗が出る。まっすぐな質問に遭い答に窮した、答えを深く考えたことがなかったのである。

 ピケティの論を否定するのと同じことがわたしの新しい経済学にも言える、ありがたい質問なのでお酒が抜けた頭であらためて問題を整理して見る。

 経済学の公理を西欧経済学の「労働」から日本的「職人仕事」に移し変えて一つの経済学体系を叙述するというのがわたしが提唱する「資本論と21世紀の経済学」である。
 具体的な政策としては、鎖国時代のように強い管理貿易によって海外へ流出した生産拠点を国内へ取り戻し、職人仕事中心とした自立型経済圏を日本という国でつくるというのが「21世紀の経済学」の骨格である。国内で消費するものは原則として国内でつくるのである。そのことは国際資本の活動の場を根こそぎにしてしまうことを意味しており、国際金融資本や世界市場を相手に活動している産業資本や株主にとっては死活問題となるから、資産課税どころではない。世界中の経済格差を収縮させてしまうことになり、現在の経済体制を維持したい勢力との間に戦いが起きることになる。政治的な目算があるのかというのがAさんの質問の趣旨のようだった。
 革命に等しいことを成し遂げなければ、職人仕事を中心とした自立型経済体制も実現不可能なのである、実現可能性ということではピケティの分配からのアプローチと違いはないではないか?

 マルクスの経済学をベースにしてインテリのレーニンが労働者階級を煽って政治権力を奪取したあの革命と同様の手続きによらなければ成し遂げられないのかという問題と読み替えも可能だ。
 ところがそれは解決にならないことが2カ国での社会実験で証明済みである。欺瞞に満ちた共産(あるいは社会)主義革命によって生み出された政治経済体制もやはり欺瞞に満ちていた。
 生産手段の共有によって平等が生み出されるはずだったが、どこにもそういうものはなかった。怠惰と密告と独裁政治が支配しただけ。だからこの種の「革命」にはノーである、伝統的な価値観をベースにしつつ穏やかな「変更」の積み重ねによって実現できると感じているが、なによりビジョンの共有が先なのである。

 生物学的に見れば、米国のスタンダードであるグローバリズムが世界中に浸透していくことは癌細胞の無限増殖によく似ており、異常なことである。生物圏は多様性の上に安定して成り立っているから、そういう目線で見ると一つのローカル(米国)基準を世界基準にして一色に世界を染めてしまおうというグローバリズムの異常さがよくわかる。異常なことがすさまじい勢いで世界の隅々に広がりつつある。
 グローバリズムが進むにしたがって、その影響下にある国々で経済格差が急速に拡大していることは事実であり、日本でも経済格差が拡大して中間層が消滅しつつある。米国でもフランスでもドイツでも日本でも韓国でも、原始蓄積段階にある中国でも、社会主義経済が崩壊したロシアでも経済格差は急速に拡大している。中間層を失った経済社会は不安定さの度合いを増している。
*「中流階級がマイノリティー化するアメリカが抱える爆弾」
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e4%b8%ad%e6%b5%81%e9%9a%8e%e7%b4%9a%e3%81%8c%e3%83%9e%e3%82%a4%e3%83%8e%e3%83%aa%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%bc%e5%8c%96%e3%81%99%e3%82%8b%e3%82%a2%e3%83%a1%e3%83%aa%e3%82%ab%e3%81%8c%e6%8a%b1%e3%81%88%e3%82%8b%e7%88%86%e5%bc%be/ar-BBnYXPi#page=2
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…レポートでは、中間所得層は3人の世帯で2014年度の年収が42,000ドル(約510万円)~126,000ドル(約1,530万円)としている。1971年には中間所得層が成人人口の61%だったものが2015年には50%にまで減少、最低所得層は16%から20%へ上昇している。下・中流層は変わらなかった。最高所得層は4%から9%へ上昇、ほぼ最低所得層の変化の裏返しである。上・中流層は2%上昇したがここは上下する傾向がある。
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 その一方で、キリスト教やユダヤ教とイスラム教の衝突が起きている。グローバリズムは米国基準であり、プロティスタンディズム的な価値観をたっぷり含んだものであり、同じ一神教であるイスラム教とは相容れない。(ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も同じ神=造物主をあがめており、共に経典宗教で神との契約があるから、異教徒(悪魔)の絶滅は神のご意思ということになるから、争いがやむことがない。かくしてかれらは1000年間戦争を繰り返してきたが、一向にやむ気配がない。年年歳歳武器の性能が向上しているから、いつか人類全体を巻き込みかねない危うさがある。
 他宗教に寛容である多神教のヒンズー教(インド)や多神教である神道の国(日本)とは価値観を異にしている。仏教はもともと宗教というよりも哲学であるから、それとも根本的なところで異なっている。
 米国基準に過ぎないグローバリズムで一色に世界を染めることはできないし、してはならないことなのである。やってよいこととやってはいけないことをちゃんと判断しよう。

 開発された科学技術も世界中に広がる。それは水が高いところから低いところへと流れるのと同じであるから、だれにもとめられない。
 そういう中で、日本は特異な位置を占めている。MIRV保有国は例外なく国連安全保障理事会の常任理事国であるが、2年もあればMIRV(多核弾道ミサイル)を開発できる技術と必要な国産機器を保有しており、原材料にも事欠かない。
 再処理された純度の高いプルトニウムを47t保有、さらに使用済み核燃料が1万7千t全国各地に蓄え、それを原材料にしてさらに百トンを超えるプルトニウムが再処理過程で精製できる。
 中国、ロシア、そして米国を同時に敵に回しても、絶滅覚悟なら、相手も絶滅できるだけの原爆材料をすでに手中にし、ロケット技術はすでに開発済み、実質的にはとっくにMIRV保有国なのである。
 47tの精製済みプルトニウムと1.7万tもの原爆材料が国内にあるという事実は、今後百年間で大地震によって複数の原子力発電所が破壊されて放射生物質がばら撒かれ、福島県以外でも人が住めなくなる可能性が大であるということでもある。膨大な量の使用済み核燃料の存在は、世界で一番地震国の多い国である日本列島に住む日本国民にとって大きなリスク要因である。
 最大保有国の米国は核を手放さないし、北朝鮮やイスラム圏の国々が多核弾道ミサイルと手にする日もそう遠くない。国際政治の場では核を保有は国益を押し通す武器になっているのが現実である、日本はいつまでMIRVをもたずにがまんできるのだろう。
 MIRV技術が拡散すれば、米国やロシアや中国が懸念しているように、これらの国を含めていずれかの国に発射スィッチを押す指導者が現れる。

 科学技術や生産力の発展と、世界人口の爆発、そしてインターネットの普及とコンピュータの高性能化のますますの進展によって、21世紀は人類が価値観の転換をしなければ生き延びられない時代に突入したというのが、わたしの世界史的・人類史的な視点からの結論である。
 人類にとって最大の危険は核ではなく人工知能であることに注目しなければならない。最近30年間のコンピュータの性能向上が百年後まで続くとしたら、パソコンの性能はおおよそ現在の2億倍になる。どれくらいかというと、現在のパソコン2億台が一つのパソコンのなかに収められる、演算性能でいうと、現在のパソコンが6年4ヶ月かかる計算を1秒間でやり遂げてしまう。そして人工知能は1辺が5cmの立方体に小型化されるだろう。そういう人工知能が1万台もクラスター構造ユニットとして組み込まれたら、どういうことになるのか皆目見当がつかない。
 問題なのは人工知能が自己を再設計して、人間の手を借りずに性能を無限に向上させていくことである。人間の手でコントロールできなくなるだけでなく、ネットワーク全体も人工知能が支配することになる。国境を越えてネットワークを支配するから、各国がもつ軍隊は意味をなさない。人工知能は世界中の武器を好きなときに好きなだけ利用して人類を絶滅させることもできるのである。だがそんなことをする必要はない、人類は次の理由で絶滅するのである。
 代替されるのは単純労働だけではない、すでにかなりの熟練技術を要する仕事がコンピュータシステムに変わってしまっている。技術レベルの低い人間よりもコンピュータシステムの方がはるかに高度で精密な仕事を数百分の一の時間でこなすのである。経理業務を含む事務分野と工場分野の統合システムの普及で、熟練技術者が不要になる現実をわたしは実際に統合システム開発関係の仕事を通してみてきた。
 あらゆる産業分野の生産過程(生産現場だけでなく本社機能も含む)から旧式で性能の劣る機械でしかない人間が排除される。このままでは人類が総失業することになる時代が百年たたないうちにやってくることを否定できない。現在の人工知能の延長線上で考えたら判断を誤る。量的な面での性能拡張(演算速度向上とメモリー集積度向上)は、どこかで質的な変容をもたらすことになる。百年間にそれがなんども起きるだろうから、どういう世界が訪れるのかまったく予測がつかない。人工知能が発達しても、人工知能には代替できない職業に関する分析レポートが最近公表されているが、あれは現在の人工知能の延長線上のせいぜい30年先を想定しているだけである。
 これから20年間で米国の700種類の雇用のうちの半数がなくなるというレポートが公表されている。20年間で半分なら、百年間では「0.5^5=3.1%」だから、97%の職業がなくなる。
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「これからの20年で現在のアメリカの雇用の50%以上がコンピューターに代替される」
*http://social-design-net.com/archives/9672

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 そういう前提で、「新しい経済学」とその実現についての政治的な問題を考えたらどうなるのだろう。

 職人仕事を中心とする自立型経済圏は地域ごとにその色合いが異なったものになるから、さまざまな色で地球(globe)が染め分けられることになります。青い地球も美しいが、さまざまな色が共存する地球も美しい。弱肉強食は色にたとえると血の色の赤、青い地球を真っ赤な色一色で染めたくないというのがわたしの考えであると同時に、多様性が安定をもたらすという生物学的な視点からの結論でもあります。
 実現手段を考えていなかったのは、ロシア革命や中国革命に胡散臭さを感じていたからです。インテリが労働者階級を煽って政権に就き、どちらも2千万人の同胞を殺しています。ロシアはシベリア送りによって、中国は文化大革命の「下放」や人民裁判によって。
 人工知能(AI)は直接人類を抹殺する必要はない。AIにあらゆる職業が代替されていけば、人類の大部分が失業し、世界人口は加速的な縮小再生産に追い込まれます。数十億人もの人間が貧困の中で子孫を残せずに絶えて行くことになりますから、数千万単位で同胞を死に追いやったレーニンや毛沢東はAIに比べたらとっても小さく見えてしまいます。

 グローバリズムという癌細胞の増殖がいずれ宿主たる人類を滅ぼすことになるのか、「21世紀の経済学」という治療法を梃子(てこ)に人類が生き延びることになるのかは、わたしには判断がつきません。
 グローブ(地球)の色が一色(ひといろ)になっても、それはほんのわずかな期間のことで、人類が絶滅したあとに地球は多様な色彩をすぐに取り戻すことになるでしょう。人工知能の支配によって、人類の97%が職を失い経済的に困窮の度合いを大きくして、世界人口が縮小再生産に追い込まれたら、わずか数世代の後に人類のほとんどが消滅することは確実です。

 弱肉強食の動物の心を乗り越えて、弱いものに共感する心、憐憫の情とか惻隠の情をもつ人々増え、職人仕事中心の地域自立型経済システムを実現できるかどうかを、地球は微笑みながら見つめています。あらゆる産業を1国でそろえられる日本が職人仕事中心の地域自立型経済システムを確立すれば、世界を変えられます。

 どうすればそれが実現できるのか、、それは、Aさんからわたしに向けられた問いであると同時に、みなさんに向けられた問いでもあります。

(人工知能の危険性については「資本論と21世紀の経済学」で言及しているので、そちらをご覧ください)
       3097-7 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-04-1

24. <文部科学大臣下村博文「教育再生案」について> …67
25.<人工知能の開発が人類滅亡をもたらす:ホーキング博士> 69


【余談】12/30追記
 KY君がいま釧路公立大学の3年生だ。「空気が読めない」わけではない彼は、中学時代はスポーツ万能、学業成績もはSY君にはすこし及ばず「男子の学年2番」が定位置だったから優秀な生徒だった。
 北海学園経済学部偏差値45に対し釧路公立大経済学部は偏差値は49、北大経済学部と小樽商大(偏差値55)の次に位置しているから道東地域の比較的筋のよい生徒が集まっているはず。しかし、釧路市役所内での評価はかんばしくないようだ。このクラスの大学なら上位10%の学生はけっこう優秀な者が含まれているはずと思うが・・・

 根室市内の市街化地域の3中学校で、学年5番くらいだと大学生になったときの学力は全国レベルでは偏差値50程度、平均的な学生に過ぎないということ。大学生になってから本気で勉強する者は大きくその学力を伸ばすが、適当に遊び、アルバイトもしてのんびりすごしたら平均的な学力ラインを超えられない。
 北大経済学部に進学できる生徒は、道内の高校ではトップクラスである。道内には偏差値50-60の大学経済学部がないから、トップクラスに近い学力上位層は、実力に見合った大学が道内に見つからないということになる。なによりも大きな格差は教員のレベルかもしれない。北大経済学部ですら首都圏の私大経済学部に見劣りする。
 単科大学であることも教授の層を薄くしてしまう。わたしのいた大学は哲学は市倉宏祐教授がいたし、経済学史では内田義彦教授がいた。商学部会計学科でありながら、市倉先生のゼミで3年間勉強させてもらったし、内田先生の経済学も受講できた。商学部には残念だが、この人はと思わせるような力のある教授はいらっしゃらなかったが、他学部にすごい先生がいた。総合大学のメリットだろう。
 それぞれの分野で一流と評価のある先生の謦咳に接することで学力を伸ばした学生は少なくなかった。




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ZAPPER

一昨日はありがとうございました。

S山准教授と一緒に、新年早々、「教育学をぶった切る!(仮称)」といった内容で問題提起をしてみたいと思います。

というわけで、さらにまた強力なメンバーが加わった、我が「釧路の教育を考える会」、おかげさまで2016年もおもしろい1年になりそうであります!^^
by ZAPPER (2015-12-28 14:26) 

ebisu

うれしいですね、面白い人がメンバーに加わりました。
ついこのあいだ中学生対象のアンケート調査に関する新聞記事でお名前を知ったばかりでしたので、忘年会出席は予想していませんでした。根回し上手なメンバーがいるようです。(笑)

教育や学力問題に限らず、経済学についても意見交換することになるでしょう。
by ebisu (2015-12-28 15:17) 

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