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#2796 急がば回れ:外国語<母国語 Sep. 1, 2014 [55. さまざまな視点から教育を考える]

 小学校から英語をならっていても高校生で英検2級に合格しない生徒がほとんどである。いや、2級に合格する生徒は珍しい。なぜだろう?3級には英語を習っていない中3でも問題集を1冊やれば普通の成績の子なら合格する。中学校で英検3級に合格していれば、普通に勉強を続けたら高校で英検準2級に合格する。こんな程度でいいなら、英語を塾で習う必要はない。もちろんその先がある。
 英語の能力が伸び悩む原因が日本語の能力に問題があるからだということに案外気がつかない。日本語の語彙力は小学校高学年と中学生の時代に飛躍的に増大する。ただし、この間にさまざまな本を濫読した子どもだけだ。これが高校生になってから英語の成績を飛躍的にあげる肥沃な土壌となる。最後は、勝負どころは日本語なのだよ、その語彙の豊富さは膨大な文章の濫読=仕込みに支えられている。文脈を自然に高速で読みとることができるようになっていたら、国語も英語も群を抜いた成績になる。もちろん高校数学は問題文の理解が3割くらいを占めているから、数行の日本語テクストがしっかり読めるかどうかが勝負どころだ。国語は全ての教科の基礎をなしている。
 読む速度の差は決定的だ。それは読む量だけでなく読みの精度にも関係している。大数学者の岡潔は読みの速度の重要性を強調している。
  その岡潔もフィールズ賞受賞者の小平邦彦も『国家の品格』藤原正彦も小学校高学年で濫読による語彙爆発の時期を通過して、日本語語彙拡張の重要性を説いている。弊ブログで何度か取り上げた。
 小学生や中学生の時期に濫読期を経験した子どもの読書スピードは大きい、文脈は握力も強くなるし、語彙力は本を読まないこと比較にならない。つまり、他の教科の教科書を読む速度も2~3倍になるし、読みの深さも段違いになる。高校生になっても全部の科目の学力を上げ続けることができる。なにせ、同じ時間で読む量が2~3倍でしかもずっと正確に内容を理解できるのだから、成績の上がるのは当然である。それほど読書力は基礎学力の最重要な部分を占めているのである。むかしから、「読み・書き・そろばん(計算)」というではないか、これは重要度の高い順に並んでいる。

 ブログ「情熱空間」の記事を紹介する。高校生になって英語の点数をよくしたかったら小中学生のときにたくさん本を読めという話だ。

http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/7486166.html
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2014年08月29日

急がば回れ(外国語<母国語)

外国語は、母国語を超えることはできない。

幼児期からの英語教育。否定はしません。ただ、そのことだけは忘れないでいていただきたいと思うのです。ちなみに我が家では、英語教育などは二の次・三の次です。日本語を鍛えることこそが最優先。そこの部分を見誤ると、「お金をかけるも、それに見合っただけの効果はなかった」つまり、大切なお金を失ってしまうことになりますよ(笑)。

事実、相当に早い時期から英語に取り組んでも、英検3級あたりまでが関の山で、チャレンジするもそこから先に進めないというケースを、何度も目の当たりにしてきました。繰り返します。母国語優先です。国語の土台がきちんとできたならば、あとはやるかやらないかの勝負と、それだけのことですから。

●「英語の誤訳」と「国語力」
http://www002.upp.so-net.ne.jp/singakukouza/jijimonndai.html#Anchor-10506

《引用開始》
適当に単語をつなげて訳してしまう子の感覚

 英語の長文の勉強をやっていると、途中でわからなくなったときに「適当に単語をつなげて意味の通るようにしよう」としてしまい、結果、文章全体の流れとか、その部分で何が起きているか、という事を全く掴めなくなってしまう子がいます。
 基本的に、中学生レベルであれば、英語の文法の規則に則った訳をしておけば、ほとんど間違いないのですが、それがきちんと出来ないんですね。その原因は次の3点。

1 英語の訳の手順が分かっていない。
2 手順は分かっていても、国語力が低く、結局、何を言おうとしているのかが分からない。
3 単語の意味を取り違えて、全体の意味が分からなくなっている。

 1であれば、単純に「主部」と「述部」でざっくり分けて意味を捉えても、大まかな事くらいは分かるのですが、それが出来ないんですね。ですから、修飾する部分を少し細かくしていくと、途端に意味が分からなくなる、そういう現象が起きていると思ってください。
 2は、日頃の読書力が物を言うわけで、全体の流れを考えて訳を進めると、おそらく想像がつくだろう、と思われる所がダメなんですね。こうなると、高校の勉強で言われる「分からない単語が出てきたら、それまでの文章の流れから、意味をくみ取りなさい」というのが出来ません。この辺が「国語力に勝る英語力無し」のゆえんです。会話での例で分かりやすく言うと、日頃、「うざい」「きもい」レベルの話しか出来ないやつは、海外に留学して英語が話せるようになったところで、英語でも「うざい」「きもい」レベルの話しか出来ないということです。今、英語を導入している企業で問題になっているのが、この「英語は話せるけど、内容が無い」という部分なんですね。
 3については、単語の例で示すとaboutという単語には「およそ」と「~について」という複数の意味があるのですが、これを片方しか覚えていないため、それに合うように無理矢理訳をこじつける、というもの。aboutの元々のイメージは「中心になる範囲があって、その範囲とその範囲より一回り広い周辺部分を含む」ということなんです。だから「正しい数字があって、その近くの数字も含めて考えよう~およそ」という発想と「何か物事があって、その周辺部分まで含めてお話しよう~について」という訳ができあがるわけですが、このイメージを無視して、単に「覚えろ」式の勉強をしてしまうと、多少手間がかかってもひとつずつ覚えるしかないので、それが負担となり、訳語が出てこない事になる、と思われます。

 いずれにせよ、この3点がクリア出来ないと、きちんとした訳が掴めません。比較的、他の科目では点数が取れるのに、英語が不得意という人は、この3点のうち、どれに該当するのかな、と考えてみるといいと思います。
《引用終了》

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*#1213 数学者岡潔(1):『日本という水槽の水の入れ替え方―憂国の随筆集』
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-20

 #749 フィールズ賞受賞数学者小平邦彦と藤原正彦の教育論
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-04

 #569 英語教育論:藤原正彦『国家の品格』より抜粋
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-05-03-1

 #559 フィールズ賞受賞数学者小平邦彦の教育論
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-03-28


*#1570  学力と語彙力の関係(1):総論 July 5, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-05

**#1572 「学力と語彙力の関係(2): 5科目合計点が高い⇔国語の得点が高い?」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-05-3


<日本語テクスト濫読による日本語語彙拡張が鍵>
 大数学者の岡潔は尋常高等小学校時代に家にあった小説を濫読したと『春宵十話』書いている。ロシア語同時通訳の米原万里は小学校高学年のときに世界少年少女文学全集全巻を繰り返し何度も読んだとその著書で語っている。数学者の藤原正彦も小学校で文学全集を読み漁った経験を書いて、小学校時代に濫読による日本語語彙の拡張の重要性を語っている。これらの人に共通するのは小学校高学年で日本語テクストの濫読期を通過して文章語の日本語語彙を爆発的に拡張していること。最近読んだ本で驚いたのは『東アジア「反日」トライアングル』(文藝新書)の古田博司(筑波大教授)である。慶応中学時代に岩波の「古典文学大系」を「暇だったから全巻読み通した」というのだから、とんでもないやつだ。高校時代は中国の古典を全集物で読み潰していったという、これでは学者になるに決まっている。高校生が魯迅選集を中国語のままで読む姿を想像してもらいたい。古田だけは極端な例と思っていただいていい。
 日本語語彙がしっかりしていないと会話文ならともかく、文章語としての英文を日本語に置き換える際に、すぐに限界にぶつかってしまうことをジャパンタイムズ記事の文を例にとって解説したから、#1573に眼を通していただきたい。populationsとpopulationをどのように訳せばいいか楽しんでもらいたい。"旬の時期"に文章語の日本語語彙を拡張しておく重要性がわかる。

 #1573 学力と語彙力の関係(3): 英英辞書と母語の語彙 July 7, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-07


 
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 #767 First farms may have averted ice age (3) 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-21-1
 
 以下、一部分抜粋
 「・・・
《パラグラフ・リーディング⇒コンテキストからのアプローチ》
 英文の意味解釈のアプローチとして生成文法的なアプローチの他にもう一つ有力な方法がある。それはパラグラフ・リーディングであるが、ちょいとハイレベルで高校生にはなかなかつかみ辛いだろうが、英文解釈の王道だ。
 高校生にちょっとハイレベルで難しいというのは、レベルの高い日本語の本を論理的に読むトレーニングを積んでいないと不可能だからだ。英語の理解力は日本語の理解能力以上にはならない
 だから、小学生のうちから英語の勉強をする必要はない。そのような暇があったら日本語の本をもっとたくさん読めと言いたい。
 中学生や高校生は児童書を卒業して、文庫本や岩波新書や中公新書をたくさん読め。新書版の書籍は良質なものが多いし、専門書への入り口にもなっている
 このレベルの本が読めるようになれば、興味のある分野の専門書が独力で読めるようになる。だから、ニムオロ塾では中学生に『読書力』斉藤孝著、『国家の品格』藤原正彦著、『日本語を磨く』林望著、『風姿花伝』世阿弥著・林望現代語訳などを採り上げて、音読と三色ボールペンで線を引くトレーニングを実施している。
 日本語で書かれた文章の理解のレベルを上げ続けた者だけが、英文のコンテキストを理解できるようになる。パラグラフ・リーディングは熟練の技なのだ日本語のパラグラフ・リーディングやパラグラフ・ライティングができる者は、英文のパラグラフ・リーディングも比較的容易にできるようになるだろう。日本語で準備が整っているからだ。このように理解すれば、小平邦彦の英語教育論も藤原正彦の英語教育論もその理由が具体的にわかるだろう。「塾長の教育論」というカテゴリーの中にあるから、まだ読んでいない人はチラッとでも好いから見て欲しい。

 Hirosukeさんが「問題文の3回読み」を提唱しているが、これはたしかに有効な方法で、理にかなっている。
 全体をザーッと読み、なにがテーマなのか、キーワードが何なのかなどに注意してとにかく全体を把握する。つぎにパラグラフ単位で読み、3度目は問題文に即して読む。こうすれば全体のコンテキスト(前後関係、脈絡)がつかめる。
 パラグラフ単位のコンテキストがつかめると、意味の解釈できないパラグラフや、そのパラグラフの中の1文も「こういう展開になっている筈だ」と推論できる。その推論に沿って読むことで、文法工程指数の高い文でも理解可能である。これも英文攻略の有力な方法である。ただし、彼のように日本語能力の高さに裏打ちされていないと高みに届かない。
 この際に気をつけなければならないのは、自分勝手なコンテキストをつくり上げてはならないということだ。ここを間違えると、とんでもない誤訳をすることになる。質のよいプロの翻訳家でも、ときにこうしたことをしてしまう。当然自分は気がつかない。論理がまるで違うことになるから、パラグラフや著作の論旨にかかわることもある。読者に大変な迷惑をかけることになるのである。
 だから、生成文法的アプローチとの併用を欠かすことができないとわたしは思う。一部の能力の高い者は例外であるかもしれない。独断によるコンテキスト理解を防止するために生成文法的アプローチを併用するのは、かなり著名で、品質のよい翻訳をする経済学者ですら、コンテキストの読み間違いをしていることがあるからだ。

 それに、高校生に理解できるように説明するためには、簡便な生成文法的解説が欠かせない。コンテキストだけで英字新聞レベルの記事を読み切る技は日本語文章修行が足りない普通の高校生には無理がある。難度の高い英文の意味をつかむ技としては、この三十数年間ほかに有力な方法がみつかっていない。三十年ほど前までは好奇心に駆られてチョムスキーの著作を数冊原書で読んだし分厚い生成文法に関する解説書も読んだが、深みに嵌りすぎると本来の目的=英文の意味を理解するという範囲を逸脱していた。・・・  塾教師には生徒が理解できるような説明ができるだけで十分である。いくつかある大事な「引き出し」の一つになっている。

 この記事に関していえば、・・・」

(以下はURLをクリックしてお読みください)
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