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#2163 全国学力テスト 根室市教委の見解は大丈夫かいな?(北海道新聞より) Dec. 27, 2012 [64. 教育問題]

 全国学力テスト根室管内の状況について、今年も根室市教委は自画自賛している。
 曰く、「全道平均に比べてよくなっている」 
 教育改革に本気で取り組んでいる北海道教育委員会は、この根室市教委のコメントを見たらつける薬がないと苦笑するに違いない。
*「基礎学力保障は喫緊の課題です」北海道教育委員会
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gks/hogosya_siryo.pdf

 全道平均値が同じならいいのだが、昨年と今年は札幌市内の公立小中学校の大半が参加していないことで平均値が「真の平均」よりも下がってしまい比較できないのを根室市教委は承知で言っているのである。
 全国データと比較したら結論は真逆になる。根室市教委は全国データと比較すべきで、全道データとの比較は札幌の三分の二が参加していない状況では意味がないし、担当記者は根室の子供たちの学力がこの3年間で著しく低下しつつあることを覆い隠すことになるとはっきり書いてほしかった。誰にも遠慮することはないのであるが、その後の取材がやりにくくなることだけは確実だ。しかしあえてそうしてもらいたい。
 根室高校の校訓は「敢為和協」、周りの反対を押し切ってもよいと思うことはあえてなし、しかるのちに和して協力すべしということ。根室の大人たちの多くが高校時代にこの校訓を叩き込まれているから遠慮は無用。

 取材担当記者は記事の終わりのほうで「全国平均との比較では7ポイント以上下回る「」著しく低い」と判定され」と書いているから、ずいぶん遠慮したのだろう。

 昨年は取材対象となった市教委の公職名と人名を載せていたのだが、今年は載っていない、こういう無責任な発言を誰がしたのか敢えて載せていい。

 何がどのようにおかしいのか、例によって具体的なデータを引用しながら説明する。
 全国学力調査には札幌市の公立小中学校は一部しか参加していない。どの程度かというとおおよそ3割である。
 たとえば、中学3年生は2012年度4月17日実施の全国学力テストに32校4834人が参加した。
*「平成24年度 全国学力・学習状況調査 札幌市の調査結果の概要」
http://www.city.sapporo.jp/kyoiku/top/gakute/documents/24gakutegaiyou.pdf

 札幌市の公立中学校の3年生は平成23年度の資料で見ると99校15,613人いる。
*道内公立中学校の学校別生徒数資料
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ksk/grp/09/23tyuugakkkou.xls

 ①32校÷99校=32.3% :参加した学校数の割合
 ②4834人÷15,613人=31.0% :参加した生徒数の割合

 概ね3割しか参加していない、7割が不参加ということだ。
 不参加人数は
 ③15,613人-5,067人=10,546人

 同じ表の一番下の欄には全道の中3の生徒数が載っている。47,229人である。
 ④10,546人÷47,229人=22.3% :不参加生徒数の割合

 全道の中3年の2割強、それも学力の高い都市部の生徒が全国学力テストを受けていない。全道の平均点は札幌の中学校の7割が参加しなかったことにより、全校参加のときに比べて下がっていることは、中学生でも分かる理屈だが、取材記事の文面を読む限り、根室市教委は分かっていないか意図的にごまかしているとしか言いようがない。

 札幌市は昨年度も3割しか参加していない。根室市教委は昨年も似たような初歩的なデータの(意図的な?)読み違いをして「よくなっている」と自画自賛していた。今年も同じロジックであるから、意図的であれば、その仕事は正直でもなければ誠実でもなく、作為と欺瞞に満ちた「評価」の公表である。全国データとの比較を見てもらえばはっきり分かるが、根室の子供たちの学力はこの三年間現在進行形で下がり続けている。
 新聞は市教委の言い分をそのまま流すだけではその責務を果たしたことにはならないとわたしは思うのだが、どうだろう?

 データを自分達だけ握って分析するからこうしたインチキがまかり通るが、今度はそうは行かぬ。北海道教育委員会が詳細なデータを公表しているからである。
「全国学力・学習状況調査 北海道版 結果報告調査
 根室管内版」
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gks/h2411/14h2411nemuro.pdf

 このデータによれば根室管内は成績上位層(上位25%付近)の割合は全国の半分であり、下位25%層は1.3~1.4倍もいて、たいへんな事態が起きている。弊ブログ記事#2160で具体的な数値をあげて分析したので見ていなければご覧いただきたい。

 北海道新聞は市教委へ取材してそのまま新聞記事とするだけでは、購読者に対して誠実だとはいえない。西浜町のショッピングセンターを採りあげた取材記事ではじつに視野が広く、分析の徹底した記事だったから、担当記者の能力は充分に高いはず、今回の取材はまことに残念である。

 24日の全道版の「記者の目」と題する署名記事にブログ「情熱空間」のZAPPERさんが怒っている。好い加減な取材で書かれているからだ。ありもしない放課後補習で常時残業が発生していると書かれてある。根室支局にはいい記者がいて「教育シリーズ」で何度も取材記事を書いていた。これは根室の教育を議論する上で貴重な資料となっている。そういうしい仕事をする記者もいるのだが、こと市教委や北教組がらみの取材になるとどういうわけか取材対象との馴れ合いと見られてもしょうがないような「凡ミス」を連発する傾向があるのはどうしてだろう?
*「しっかりしろ、北海道新聞」(ブログ情熱空間より)
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6163918.html

 2年続けて同じ内容の評価を公表したところを見ると、根室市教委に自浄作用は期待できないようだから、次回は取材対象と馴れ合いにならないような批判的な記事を期待したい。

 12月15日の北海道新聞を転載するので、ご覧戴きたい。
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全国学テで市
 小学生 前年より低下
  中学生は向上
   市教委、対策を検討
【根室】市教委は14日、本年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の市内の小中学校の結果を公表した。中学生は全道の平均をやや下回る程度まで向上した。一方、小学生は昨年度より低下。昨年度から3カ年計画で学力向上に取り組む市教委は「来年度は小学生へのウェートを高め、学習環境を整えたい」としている。(笠原悠里)

 テストは4月に行われ、市内の小学校、7中学校から小学6年の児童265人、中学3年の生徒271人が参加。昨年度までの国語と算数・数学に加え、今年度から新たに行われた李下の3科目で、基礎のA問題と応用のB問題を解いた。
 点数は非公表のため、市教委は全道平均との差を発表。中学生は昨年度「相当低い」と判断された数字が「やや低い」まで持ち直すなど、管内の平均と比べても高めの水準まで向上した
 一方、小学生の学力は全道平均、根室管内の平均ともに全科目で下回った。特に国語Bは全国平均との比較では7ポイント以上下回る「著しく低い」と判定され、昨年よりも低下。今年から導入された理科も「相当低い」となった。
 市教委は「文章の理解など基本的な国語力が低いことが他の科目にも影響を与えている」と指摘。ただ、学習状況調査の結果では国語が好きな割合が小中学生とも高いため、来年度以降、担任と一緒に授業に入る補助教員を小学校にも導入することを検討している。市教委は「手厚くきめ細かな指導ができるようにしたい」と話している。

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 27日北海道新聞朝刊の根室地域版には中標津町教委のコメントが載っているが、こちらは正直に危機感を表明している。同じ根室管内でも町教委と市教委では受け止め方がかくも違う。

 今朝の10分間のNHKラジオ番組「ビジネス展望」(早稲田大学ビジネススクール遠藤イサオ氏)の取材の受け売りをしたい。
 新幹線の清掃会社に「日本テクノハートTESSEI」という会社がある。新幹線の清掃作業をしている会社である。新幹線の車両清掃には「折り返し清掃」と「基地清掃」がある。新幹線が到着するとすぐに清掃を開始し、わずか7分間で清掃を終了して客を乗せてまた折り返し運転をする。その様子をテレビが特集したことがあるが、手際のよさと徹底振りに驚いた、プロの仕事とはこういうものだというお手本。世界中でこんなすばらしい清掃仕事をやっているのは日本人だけだろう。車両清掃の職人、いや名人と言ってよい。
 テレビ取材を受けていない東京田端にある「基地清掃」のほうはもっと徹底した清掃をおこなっており、一日当たり34~36本、400車両をこなしている。8両編成で一回当たり20分かかってぴかぴかに磨き上げている。汚物・汚水の処理から給水作業も加わる。清掃業務改善提案は多い月には180あるという。仕事の士気の高いスタッフがそろっている。
 新幹線が基地に入線してくるときに、担当の清掃スタッフ40名が一列に並んでお辞儀をして出迎えるのだという。一日の活動が終わって基地にもどってくる車両を出迎え、誰も見ていないところでも車両に向かって一礼するのを欠かさない。仕事の対象に向かって一礼してから仕事を始める、その姿に仕事に対する誠実さがビンビンと伝わってくる
 清掃スタッフは200名、リーダーは4名でそのうちの3人は女性である。スタッフ200名のうち3割が女性毎年50~60人を採用するが仕事がきつくて1年以内に半数が辞めるから、残った人たちの志気は高い
 根室市教委もそういうプロ精神で仕事をしたら、コメントがまるで違ったものになるだろうなと楽しい想像をしてみる。

 来年度は全国学力テストに札幌の全公立小中学校が参加することが決まっていることを付け加えておく。(三年に一度は文科省は全数調査をするようで、当然のことだが札幌市教委はそれにしたがっている。つまり、文科省が全数調査だといえば札幌市教委は学校の三分の二が不参加というようなことは認めないということ。)
*「全国学力テスト全校参加へ(札幌市教委)」
http://kaneko-yasu.seesaa.net/article/309884629.html

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*#2160 全国学力テスト根室管内版データの分析(1) :本論  Dec. 21, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-21

*#2161 全国学力テスト根室管内版データの分析(2) :余談 Dec. 24, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-24


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ZAPPER

根室の低学力モードの発生源は、実は根室市教委なのかも知れませんね。もはや、まっとうな現状分析すらできないレベルなのでしょう。失礼ながらそうとしか言いようがありません。(根室教育局も同類ですけれど)

ウチの市教委はまだ少しだけまともですが、それにしても依然として低レベルです。市役所ではエース級の人材が市教委に投入されることは稀だそうですが、腐ってばかりいないでまっとうな仕事をしていただきたいものです。

街の未来は子どもの教育にかかっている!
崇高な使命を自覚せよ!
大人として今なすべきことをなせ!
by ZAPPER (2012-12-27 12:08) 

ebisu

ZAPPERさんこんばんわ。

どんな仕事も余計なことを考えずに一心にはればやりがいがあるものです。雑念が湧くといい仕事はできません。

>街の未来は子どもの教育にかかっている!
>崇高な使命を自覚せよ!
>大人として今なすべきことをなせ!


すっきりした心でいい仕事をしてもらいたい。
by ebisu (2012-12-27 18:51) 

ZAPPER

柴山さん、結果がすべてだよ。
男なら、結果で勝負だよ。
今度、遊びに行きますね〜!
http://www.hokkaido-nl.jp/detail.cgi?id=13962
by ZAPPER (2012-12-28 00:05) 

Hirosuke

>清掃業務改善提案は多い月には180あるという。
>仕事の士気の高いスタッフがそろっている。

改善提案を募集するだけの会社があれば、
改善提案を募集もせずに退ける会社もあり。

両社とも名だたる1部上場企業。

「ムダ取り講師の指導」には素直に従うものの、
両社とも斜陽の危機。

もはや経営陣や管理職とは、
保身ばかり画策している能タリンです。

by Hirosuke (2012-12-28 01:42) 

ebisu

この十年ほどで上場企業の役員報酬が倍になっているようです。
非正規雇用を増やして人件費総額は削っています。
配当は3倍以上になっています。

企業ってだれのためにあるの?
企業とは何?

根本的な存在理由を問わなければならない時代のようですね。
by ebisu (2012-12-28 10:33) 

ebisu

ZAPPERさんへ
根室の教育長の柴山さんの写真みました。「放課後子供プラン運営賞」受賞。

http://www.hokkaido-nl.jp/detail.cgi?id=13962

根室の子供たちの学力がこの3年ほどで一段と下がってしまったのに、表彰を受けるなんてなんと不思議な国なんでしょう。

学力上位層が7年前の割合で三分の一以下に激減しました。学力下位層が増え続けています。

職人は「佳い仕事」をするものですが、半端職人には一人前の仕事すら無理です。やってるフリだけはする。結果が仕事振りを如実に現しています。

by ebisu (2012-12-28 10:41) 

ゆのき

先日、学力についての話題に投稿させていただいた「ゆのき」です。学期末でバタバタしていて、そのままご無沙汰しておりました。

さて、今回の記事で気になったことがあります。それは、放課後補習について、です。どうやらそうしたことをやっている学校はほとんどない、というご認識のようですが、それは違うのではないでしょうか。もちろん、私の学校でも日常的に放課後補習(追試も含め)をやっておりますし、私が知りうる限りでもそうした実践は根室管内の中学校にいくつもあります。それが勤務時間外であることも確かです。そうした実態がまったくといっていいほど伝わっていないことに正直、驚きました。私たちはアピール下手なのが悪いのかも知れませんが・・・。

とはいえ、部活動が時間外勤務の最たるものであることは間違いありません。大会が続くと、土日だけで20時間近い時間外勤務となっている先生も珍しくありませんし(泊まりではなくても、です)。
by ゆのき (2012-12-28 17:12) 

ebisu

ゆのきさんへ
コメントありがとうございます。

市街化地域の3校が試験の1週間前に補習をやっているのはわたしも承知しています。
最近のことですが、試験の後でC校が百点になるまで追試をやっているのも承知しています。
放課後補習はせいぜい5時までですから残業時間の増加の原因になっているとは思えません。時間帯からの判断です。
もう一つは、ブカツと違って試験の前後の一週間のみスポットでやるだけですから、ブカツに比べると微々たるものです。ですあらこれらが残業時間の主たるものであるという認識は私にはありません。

ブカツは6時か6時半まで、そしてゆのきさんがご指摘のように土日もやってる例が多いから、相当の負担になっていることは承知しています。
小学校のブカツに特にあるようですが、ブカツ狂いの保護者が土日に2部練を強く要求するようです。ついつい引っ張られてやってしまうようです。そこで習慣付けられてしまうから中学校になっても土日の練習をするのがあたりまえとなり、文武両道が実現できない。そして、先生たちは土日に休めない、「休日残業」になるのでしょう。
試合のないときは土日の練習はやめるべきでしょうね。

わたしは根室市の市街化地域の3校しか見てませんので、根室管内全体がそうであるか否かは、この3校の状態から類推するのみです。

補習をきちんとやれば学力テストの点数は底上げできます。
学力テストで400点以上の成績上位者が5%未満であることや得点30%未満の成績下位層が35%もいる点から、恒常的な補習体制はないものと判断しました。

高校は違います。根室高校は進学講習と称して恒常的に補習体制を組んでいます。頻度も時間数もまるで違います。これには頭が下がります。

こういうわけで、ゆのきさんとはほぼ意見が一致しているのだろうと思いますが、いかがでしょう?
by ebisu (2012-12-28 18:36) 

ゆのき

ebisuさん、レスありがとうございます。

補習や追試についてですが、私の学校ではかなり日常的にやっています。そういう学校は増えてきているように感じます。これは、世論の後押しもあるのでしょう。
ちなみに、補習が5時までだとしても時間外勤務には違いないのです。教員はその勤務の特殊性から、昼休みがない代わりに4時以降に「休憩」だか「休息」という時間があり、職員室で休んでいていいことになっていますから・・・(以前も申し上げましたとおり、私は組合員ではないため、恥ずかしながらこの辺の詳しいことはよく知りません。実際にはこの時間帯も当たり前に働いていますしね)。
ただ、残業の主因は、といえば部活動ということになるのは確かに仰るとおりですね。すさまじいですから、時間が。中学生の日々の生活をどうデザインするか、という視点なしに野放図に部活動をやってしまうことはとても危険だと私も感じています。

ebisuさんのように学校外の方が学力向上のための動きを後押ししてくださるのは、心強いことです。正確な現状認識にたって、それぞれの立場で力を尽くしていきたいと考えておりますので、今回のようなコメントをさせていただきました。

長文で失礼いたしました。
by ゆのき (2012-12-29 01:11) 

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