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#2088 B中学校フリー授業参観 Sep. 21, 2012 [72.フリー参観]

 9月20日木曜日、市内B中学校の5時間目と6時間目の授業(英語・数学・社会)を見た。

 廊下ですれ違う生徒は元気な声で挨拶する。まあ、声が大きすぎるとぎょっとすることもある、挨拶だからほどほどがいい。2年生の英語をみたらプログラム6、to不定詞の副詞的用法をやっていた。来週中間テストの予定だから、出題されるのだろう、生徒たちも熱心に聞いている。
 文を黒板に並べて書いた。to不定詞はつけたし言葉だから、その前にスラッシュを入れて区切って教えるところはとてもいい。黒板の文例の( )の中に動詞を入れさせて一緒に読んだ。そのあとはプリント問題で同じ形式のトレーニング。わたしは生徒たちが黒板に書かれた「副詞的用法」という言葉の意味がわかっているのか疑問だった、説明がないのである。
 塾に来た生徒たちに「副詞的用法」の意味を聞いてみたが、一人も分かっていなかった。成績下位層の生徒たちは「副詞的用法」という日本語が分からないのである。「副詞」の意味から説明すべきだった。
 この授業にはもう一つ問題がある。名詞的用法、形容詞的用法、副詞的用法は日本の学校文法や受験参考書だけに顕われる特有な分類なのである。標準的な語学留学生用の文法問題集"Grammar in use Intermediate"には"-ing and the infenitive"があるが、こういう3分類はない。名著、Michael Swan "Practical English Usage"にも"COBUILD English Grammar"にも・・・・・そうした分類の記述はない。こういうこともさらりと教えておいていいのである。
 それほど遅れていないが、1月中に教科書を完了し2月を総復習に充てるには授業速度が遅いだろう。

 教科別に学校ホームページ上で、年間授業予定(教科書の章とページ数を明記)と結果について毎月進捗管理情報を公開すべきとebisuは思う。進捗が遅ければ、その先生はブカツの担当を外れて放課後補習や土曜日補習をやるべきだ

 数学の授業を見た。やっていたのは1次関数である。変化の割合の計算方法と座標を代入して1次関数の式を導き出すところをやっていた。座標を使った幾何的な視覚から解くのか、代数的な問題にして解くのか、教える側の嗜好も教え方に出てくる。高校数学までを考えると、前者をしっかり教えておきたい。意味理解ができるからだ。代数方程式に還元してしまうと、もう図形的な意味など関係なくなる。
 成績で1クラスを2グループ(別教室)に分けていた。両方見たが教えている内容が相当違う。成績のいいグループ担当のの先生は、簡単な散布図を描いて「どう直線を引く?」と引き方についての解説をした。直線との距離の差が一番小さくなるような線の引き方が正しいとまで解説した。成績のよいほうのグループだから、その差を「残差」といい、そういう線の引き方を線形回帰というぐらいの説明をしてもよかったのでは?
 高校では数Bで出てくるが、「コンピュータと統計」授業ではやらない。「EXCELで線形回帰計算ができるから、興味のある生徒は放課後パソコンルームにおいで」くらいのお誘いはあったほうがいいし、授業が面白くなる。文科省は学習指導要領を最低基準と評価替えをしたのだから、中学校の先生は相手(生徒)をみて、成績のよいほうのグループには中学校の範囲を越えてどんどん教えてほしい。そういう学校からはとんでもない能力の生徒が出てくる。もっと授業で「遊んで」ほしい。
 基礎グループのほうは先生が2名で教えていた。人数は十数人と少ない。このグループはほとんど全員分数計算が怪しい。逆九九をすらすらいえない生徒も半分以上いるだろう。通り一辺の教え方ですまして理解できるわけがない。基礎グループこそ教師の力量が要求される。どちらかというと、成績のよいほうのグループを教えている先生のほうが力量がありそうだったから、担当は逆のほうがいいかも知れぬ。数学を教えている先生と校長先生や教頭先生が相談して来年はどうするか話し合ってみたらいい。生徒たちは、配られたプリントをファイルにしてもっていた。たくさんのプリントが配られている。基礎グループには必要だ。
 1次関数までが中間テストの範囲である。その次から図形に入る。120ページ辺りまでやっていなければ1月中に教科書を終われない。すでに30ページほど遅れているといっていいだろう。後半部は、図形の証明問題だから前半の連立方程式や1次関数よりもずっと時間がかかるし、生徒たちが苦手とするところだ。
 学力テストの範囲表が問題なのである。こんな遅れた授業の進めかたでも間に合う、いや授業速度を遅くしないと学力テストの範囲表とずれてしまう。学力テストの範囲表をスケジュールの基本としてしまうと、後半部分はすっ飛ばしになるから、学力テストのスケジュール表が癌である。何とか協会でやっているらしいが、ここを何とかしないと道内の中学校はいつまでたっても全国最低レベルから抜け出せない。
 生徒が図形に弱いのは、図形がむずかしいだけではない。毎年、こういうふうに「すっ飛ばし」が行われるから半分以上の生徒が図形分野を理解できないのである。
 時間が足りなければ、ブカツをやめても放課後補習をやるべきだ。足りなければ土曜日も先生たちがシフト勤務で教えればいい。それくらいの覚悟と仕事に対する責任感をもって教えてほしい。

 教科書外のところ、例えば小学校の分数や小数の計算にはプリントが必要だが、やっている単元をプリントでやるのは感心しない。説明が手抜きになる

 3年の社会の授業を見学させてもらった。これもプリント中心の授業だ。特殊な例の問題が多かった。教科書の基本のところを黒板を使ってしっかり説明すると時間がとられる。プリントを使うと教えるほうは簡単になるが、今日のプリント問題で生徒が理解できているとは思えない。わたしは団塊世代で光洋中学校のときに全国学力テストがあり、それで社会の問題で550人中トップを取ったことがあるが、そのわたしが授業を聴いていても、「むずかしいな」と感じたから、社会が得意な生徒でも消化不良を起こしているだろう。使うプリントの難易度や出題傾向をもうすこし検討すべきではないだろうか?そして、もっと教科書に忠実な授業をすべきではないか。
 プリント中心の授業の問題は他にもある。黒板に書いたことを生徒がノートにとらないことだ。授業を聴いて黒板に書かれたことをノートに写すことで確認でき、記憶に言葉や絵柄が定着する。プリントを見て説明を聞いているだけで理解ができるほど生徒の成績はよくないはずだ。学力テストの平均点を見ればわかる。

 どの学校にも言えることだが、先生たちの服装について一言書いておきたい。大部分の先生がきちんとしている。体育の先生以外は、仕事なのだからワイシャッツにネクタイはあたりまえだ。女の先生たちも、普通の会社で女子社員がしている服装ぐらいの節度があっていい。
 ジャージズボンにTシャッツ姿はいただけない、次回はきちんとネクタイを着用してスマートに授業をしている姿を見たい。やれるでしょう?

 全国の校長先生へ
 新任の先生が来たら、最初に服装のことははっきり言おう。仕事に応じた服装というものがあり、それは社会人としての常識だと。シツケは最初が肝心。身を美しくすると書いて「躾(しつけ)」、いい字だ。

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*** 余 談 ***
【数学は役に立つ:線形回帰分析】
 1970年代の終わり頃、産業用エレクトロニクスの輸入商社へ中途入社した。自社の経営分析をして長期計画と年次予算を立てるのに入社2ヵ月後には科学技術計算用のプログラムのできる計算機を使っていた。小さいほうは11万円、感熱式のプリンタのついたほうは22万円もした。データもプログラムも細長い磁気カードに記録・保存できた。標準パッケージについていた線形回帰分析を多用したが、とても役に立った。
 毎月、25項目の経営指標を計算して予算を追っていた。偏差値評価も導入していたから、プログラマブル・キャリュキュレータHP97とHP67がなければ1日中電卓を叩いていなければ仕事が終わらない。バカバカしい、電卓で計算すると1日近くかかるのが、30分で終わった。余った時間でオフコンや汎用小型機ののプログラミングをして見たり、システム開発の専門書を読み漁ったり、米国の管理会計の本や管理会計とコンピュータシステムについての専門書を読み漁る時間が作り出せた。仕事で全部役に立った。
 自社の長期計画と年度経営計画を自社分析で設定した25項目の指標をベースに目標値を設定して、四半期ごとに管理した。コンピュータシステムを二つ開発して、為替損失を回避し利益を管理する仕組みを創り出した。これで、売上高総利益率が27%から40%超へと上がった。会社は財務体質を強化し高収益の企業となり、そのご店頭公開を果たすことになった。営業課長にEさんというすごい人がいた。その人と、ebisuのコラボレーションである。若い二人にまかせた2代目社長のSSさんが偉かった。社員200人規模の会社だったが、異質の才能をもった人間が二人出遭えば会社は大きく変わる。学力と情熱となにがなんでも変えてやるという不屈の闘志があればなんとかなるものだ
 
 84年に国内最大手の臨床検査会社へ転職し、8ヶ月で統合システム開発を完了し、全社予算の統括をした後、ラボへ異動になり、購買課の後、学術・開発部門に異動した。
 80年代終わりに沖縄米軍から要請のあった出生前診断の資料がたまたま学術開発本部でわたしの前に座っている女性スタッフのところに回ってきて、「社内ではあなたしかできないだろうから、あとは何とかしてほしい」とおだてられて、やれるかどうか資料を読んでみるからと受け取った。学術営業の担当が困っているというので、ニューヨークから取り寄せた資料を読んで、グラフからカーブフィッティング(曲線回帰分析)をして計算式を逆算した。アルゴリズムがわかったので、C言語の使えるプログラマーにプログラミングを依頼して、システムは1ヶ月かからずに完成し、沖縄米軍へ説明に行った。仕事は大成功。線形回帰分析やカーブフィッティング技術がなければできない仕事だった。いまはEXCELでそうした計算が簡単にできるから、生徒に体験させてみるのはいいことだ。すこし頭のよい中学生なら理解できる。
 この仕事の後で、K大学医学部と共同研究をやった。国内の妊婦の血液を採取して、日本人の基準値(MoM値)をつくろうという試みである。黒人のデータが白人よりも10%ほど高かったから、オリエントはどうなのだろうというのが関心事だった。事前の予測は白人と黒人の間くらいだろうと思ったが、結果はオリエントのほうが白人よりも30%も高かった。やってみなければ分からないものである。K大医学部のドクターが3000人の妊婦のデータをもとに統計解析した結果を研究資料にまとめ公表している。
 データ解析は応用生物統計の専門家がラボにいたから、沖縄米軍のアルゴリズム資料を渡して、多変量解析をするように依頼した。二つ年下のF君だ。彼はその道の専門家だから、簡単な説明をして資料を渡すだけでよかった。統計用のソフト、SASで多変量解析をしてくれた。
 かれは生粋の技術屋で書生の術など道でもいい人間、だから学会でも平気で得意先のでもある大学医学部のドクターとデータ解析をめぐって遠慮のない議論をして怒らせてしまう。創業社長が謝りに言ったことがあるくらいの頑固一輝の技術屋さん。腕は一流だから始末に終えない。(笑)
 こういう技術屋さんと仕事の打ち合わせは、相手の技術の内容、専門分野の知識がこちらにあると、スムーズにいく。安心感があり、信頼関係が生まれるからだ。「ebisuさんからの仕事だから」と快く引き受けてくれた。ラボにはこういう技術屋さんがけっこういる。10人以上の人たちと、なんどもそういう楽しい思いをさせてもらった。

 だから、高校生も中学生も、機会があったら、EXCELを使って線形回帰分析をやってみたらいい。数学の先生に聞けばきっと教えてくれる。数学は実社会で強力な武器に化ける。数学なんて役に立たないという「レベルの低い数学の先生」にだまされてはいけない。(笑)

(住宅ローンを借りるのだって、相手の言いなりではいけない。自分で返済計画を立てるぐらいの学力がなければ、ローン破産してしまう。リーマン・ショックはそういう学力弱者を狙い撃ちにしたサブプライムローンによって引き起こされた。基礎的計算能力はだれもが身につけておかなければならない重要なもの。つまり、数学は身を守る基本アイテムということになる。)


*#2090 プロの仕事をしよう:授業速度管理の提案 Sep. 23, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-23

 #2089 B中学校フリー授業参観(2) Sep. 21, 2012
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-21

 #2088 B中学校フリー授業参観 Sep. 21, 2012 
 
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 #2080 根高普通科「一橋大学入試問題」を数学定期テストに出題 Sep. 11, 2012 
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 #2076 フリー授業参観(C中学校):教科書は期限内に終わらせてもらいたい Sep. 5, 2012 
 
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 #2013 母校(中学校)の校長・教頭先生との対話(1):小中高のコミュニケーション July 14, 2012 
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  #1997 体育祭準備の授業つぶし:杜撰な仕事管理の実態&"すっ飛ばし"の原因 July 4, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-04

 #1988 学校の責任 June 28, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-06-27

 #1987 フリー授業参観感想記(2)  June 26, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-06-26

*#1940 職人技という視点から授業力を考える:C中学校フリー授業参観感想記  May 19, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19

 #1935 フリー授業参観に行こう:C中学校  May 14, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-14 




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Hirosuke

不定詞ですが、僕は例の如く、
「文法用語ゼロ」⇒「カタチ・イミ・キモチ」
で説明します。

スラッシュも不定詞の以前に導入して
1年生のうちから慣れさせます。

スラッシュは文法解析の道具なのではなく、
英語人が「イミ」を理解するプロセスであることを、
前もって実感させておくのです。

すると、生徒達は自動的に例文の「イミ」を理解して、
ちょっと手助けすれば「識別」もマスターします。

実に簡単なんですけどねぇ。

by Hirosuke (2012-09-21 06:48) 

ebisu

Hirosukeさんへ
おはようございます。

そう、授業をやっていた先生も、不定詞は情報を追加するものだとはっきり意識していました。それでいいのだと思います。三用法に分けるのは、そういう不定詞の本質的な役割をあいまいにしてしまいます。だから三用法は教えるべきではないというのがわたしの意見です。

ところが、中学生が使う問題集には名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法という順番で用法が出ています。だから、自然に使ってしまうのでしょうね。

使うなら用語の語彙解説は必ずすべきです。あるいは無視する。

ところが、厄介なのは学習指導要領には不定詞の三用法を教えるように指定しているのです。
「名詞としての用法」
「形容詞としての用法」
「副詞としての用法」
http://www.fuku-c.ed.jp/center/contents/kaisetsu/tyuugaikokugo.pdf

学習指導要領の52ページに載っています。

文科省のお役人は受験勉強をやり過ぎて視野狭窄で頭の固い人が多いのでしょう。国際化を言うなら、英語の教授法から見直すべきです。こんな不定詞の教え方をしている国は日本だけ。

先生たちは、広い視野に立って研鑽を積んで、自分の頭で考えて教壇に立ってください。学部で学んだままで、進化が止まってしまってはいけません。先生こそ勉強すべきです。そういう職業だと思います。

先生たちの不勉強が日本の教育レベルを国際的に低下させていることが最近のジャパンタイムズ社説にとりあげられていました。
"Educating educators"というタイトルです。日曜日にでもとりあげたいと思います。
by ebisu (2012-09-21 08:43) 

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