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#2010 Keeping an eye on TV news coverage of the nuke crisis July 12, 2012 [74.高校・大学生のためのJT記事]

  標題は7月8日付のジャパンタイムズの記事の見出しである。早稲田大学大学教育・総合科学学術院教授伊藤守の著書『テレビは原発事故をどう伝えたのか』(平凡社新書 2012年3月17日刊)を見出しに使ってとりあげた。
 この本は3月11日から7日間のテレビ報道を丹念に追跡したものである。わたしはこの伊藤氏の本を読んでいないので、新聞記事から彼の論を紹介する。(この記事もニムオロ塾の高校生時事英語授業のテクストとしてとりあげる。)

 著者は政府や東京電力や原子力村の学者たちのいうことに国民が不信の念を抱くのにそう時間がかからなかったと言っている。彼らが「福島第一原発から放出された放射能はただちに健康に害をもたらすものではない」と言い続けたからである。

It didn't take long for people to start feeling unsure about whether they could trust what the government, Tokyo Electric Power Co. (the operator of the plant), and the scientists appearing on TV were saying — because they kept on stressing that the radiation released from the reactors did not pose an immediate threat to the public's health.

 結局、2、3週間すると放射能汚染は福島を越えて関東へも広がった。人々は放射能という見えざる脅威による健康へのリスクに直面することになり、テレビ報道への信頼をなくしていったのである。

 伊藤氏はNHKが唯一「科学文化部」というセクションをもっているにも関わらず、政府や東電の言い分を無批判に垂れ流し続け、放射性物質の大量放出へつながったメルトダウンに気づかなかったと指摘している。いつ、だれがどのように発言したか実名を挙げて書いている。

 伊藤氏はフジテレビの報道番組をとりあげている。慶応大学前准教授の藤田結子が8時7分に番組の中で、原子炉を冷やし続けないとメルトダウンそして水蒸気爆発が起きると指摘したと書いている(記事の中では物理学者となっているが、慶応大学のホームページで検索してみたがそうではなかった。慶応大学文学部人間関係学科を卒業し、上智大学大学院で文学研究科新聞学専攻だから、物理学者physicistではなく伊藤氏とご同業のメディア論の専門家である)。

On the other hand, Fuji TV broadcasted its news program on the accident at 8:07 p.m. and aired a comment on the possibility of a meltdown of the reactor cores by physicist Yuko Fujita, former associate professor at Keio University.

"Because nuclear reactors operate at a very high temperature, they must be kept cooled. Even though they have been stopped by the emergency, they will go into meltdown unless they are cooled. If the reactor core melts down and touches water, it will cause a vapor explosion, which means disaster ... I am very concerned that the reactors are in a state of meltdown."

 伊藤氏は3月11日の時点でテレビでメルトダウンと水蒸気爆発の可能性に言及した専門家(?)は彼女一人だけだった言っている。しかしメルトダウンとその後の水蒸気爆発の危険性をはっきり言った藤田を翌日からテレビ局は出演させなかった。そして3月12日1号炉の爆発が起きる。プラントの制御室では通常の千倍もの放射能が検出され、官房長官の枝野は3号炉がオーバーヒートするかもしれないがメルトダウンはないと否定している。
 これは私の推測だが、原子力村の学者は安全だと言っているのに、素人(物理学者ではない)の藤田結子准教授がメルトダウン⇒水蒸気爆発を主張するので、局側が引っ込めざるをえなかったのかもしれぬ。あの時点で原子力村の東大の先生たちや原子力保安院がいっていることへ真っ向から反論(メルトダウン⇒水蒸気爆発)をぶつけるには、権威がちがいすぎたのだろう。局側が藤田氏の主張を後押しする自信がもてなかったと考えていいのではないか?
 読者の判断に委ねたい。

Ito said that Fujita was the only expert who forecast the meltdown on TV on March 11. But after that, Fujita was no longer invited to discuss the issue on Fuji TV.

"I speculate that it was because the station management thought Fujita spoke too much on the danger of the nuclear accident," Ito said.

On March 12, an explosion did occur at 3:36 p.m. at the No.1 reactor, which destroyed the walls and roof of the reactor housing. By the morning of March 13, the amount of radiation had reached around 1,000 times normal inside the control room at the plant. On the day, Chief Cabinet Secretary Edano said another reactor, No. 3, might also have overheated but denied it was in a state of meltdown. Tepco began injecting fresh water into the No.3 reactor, and then cooperated with Self Defense Forces, pouring seawater into the reactor.

・・・・・30㌔圏から対比指示が出た後、テレビは取材を放棄し、その地域にいた社員を引き揚げ、その結果政府と東京電力と、原子力村の学者の意見を垂れ流すことになった。
 ネット上にも情報が氾濫した。わたしも朝日新聞記事とは知らずにプロメテウスの罠を転載して、著作権侵害の事実の通知と転載記事削除要求があり、それに応じた。Hirosukeさんにも迷惑をかけた。
 新聞社の中では東京新聞が社をあげていい取材記事をたくさん載せた。
 新聞記事の著作権については思うところがあり、何人かの方からコメントが寄せられ、"コメントバトル"(Hirosukeさんの命名)があった。

 本文のURLを記しておくので、興味のある高校生や大学生はダウンロードして印刷し、丁寧に読んでみたらいい。福島第一原発事故は百年後には日本史上の大事件として記録されているのだろう。

 今日のテレビ報道で、京都大学の小出さんが、原子炉を停止して1年経過すれば燃料が発する熱量が百分の一になる事実を指摘していた。そうなれば電源が停まっても数時間で原子炉が加熱し、水素爆発を起こすことはない。水が沸騰しててなくなるまで数百時間を擁するから、その間に手を考えればいい、だから原子炉を止める必要がある、そう発言していた。

The Japan Times Online News
http://www.japantimes.co.jp/text/fd20120708a1.html
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Sunday, July 8, 2012

Keeping an eye on TV news coverage of the nuke crisis


Staff writer

In the week immediately after March 11, 2011 — when a magnitude 9.0 earthquake and tsunami hit Tohoku and crippled the Fukushima No. 1 nuclear power plant — most Japanese were closely watching TV news programs — amazed that a nuclear crisis was now threatening their lives.

 

・・・・・

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*#1744 【パラダイムシフトの時代】TPP、グローバリズムと著作権:四方山話 Nov. 20, 2011
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-21-1

 #1743 コメント・バトル:言論統制と著作権に関する四人の意見 Nov. 21, 2011 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-21

 #1737(緊急!) ブログ転載記事と資源エネルギー庁によるネット監視について Nov. 18, 2011 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-18-1

 #1691 福島県浪江町津島地区で何が起きていたのか:3月11日から数日の記録 Oct. 19, 2011 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-10-19-1


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 1414 巨大地震発生(1) Mar. 11, 2011 [東日本大震災&福島原発事故]
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-11-1

 1417 東日本大震災 (2)  Mar.13, 2011 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-13

 #1419 指揮官不在の現場:福島第1原発2号機でも爆発 Mar.15, 2011
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-15
 
 #1420 福島第1原発4号炉が火災、400㍉シーベルトを検出:総理大臣発表 Mar. 15, 2011 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-15-1

 #1423 福島第一原発4号機火災 :権限の大きな指揮官が現場にいない? Mar. 16, 2011 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-16-1
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