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#1872 ほんとうはとっても面白い英字新聞読解:Much to learn from crisis report Mar. 9, 2012 [62. 授業風景]

 2年生(4月から3年生)の生徒が一人、英字新聞記事を勉強したいというので、どの程度の力があるのか測定するために最近の社説から一つ選んで段落二つをノートに書いて訳してもらった。
 記事を検索してみたがヒットしないので、ジャパンタイムズ紙の3月5日の社説から冒頭の段落二つを抜き出して紹介する。この程度でも平均的な高校生(根室高校普通科ではできるほうの生徒)には結構難しいのである。

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―わたしたちが原発事故報告書から学ぶことはたくさんある―

      Much to learn from crisis report 

   A report made public Feb. 27 by private-sector independent panel set up by the Rebuild Japan Initiative Foundation reveals in detail how the government handled the crisis at Tokyo Electric Power Co.'s Fukushima No.1 nuclear power plant.

   Citing factors that exacerbated the crisis, the report points a finger at the government's utter lack of preparedness for a severe nuclear accident, its haphazard handleing of the catastrophe, and bureaucratic turf wars among government organizations that prevented timely and effective response to the crisis.
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private-sector independent panel :福島原発事故検証委員会のことで、民間人で組織された事故調査委員会である。政府機関の調査では信用できないからこういうことになっている。

the Rebuild Japan Initiative Foundation :財団法人日本再建イニシアティブ、非営利のシンクタンクで昨年9月設立

point a finger at:指摘する、公然と非難する
(見ただけで見当がつくからなのか、生徒が引いた電子辞書のジーニアスには出ていなかったが、ジーニアスの4版には出ている。「人を名指しで批判する」)
 pointだけで「指摘する」だが、指摘は日本語でも指の字が入っている、英語でもfingerがあるのでなるほど日英は同じような表現をするのだなと感心してから辞書を引くくらいの余裕がほしい。こういう単語は慣れてくれば意味の見当をつけてから確かめるために引くのだが、生徒はそうした見当をつけずに辞書に飛びつく。慣れの問題だから、その都度説明してやれば、生徒はしだいにそういうものだと思う込むようになる。そうなればしめたものだ。ツーステップぐらい読解技倆があがっている筈だ。次の熟語も前後関係から検討がつくようになったらうれしいね。

turf wars:(省庁間の)縄張り争い
"among government organizations"はほとんどに人がわかるだろう、「政府組織=省庁間」でそれとセットなのだからもう一歩のところに意味が転がっている。どうだい、新聞英語の授業は知的で面白いだろう?
 
 make は名詞や形容詞を一緒に用いられることが多いから、そうした用例が頭の中にあればmake publicで「公にする」とか「公表する」という訳が浮かぶだろう。make happyを訳せない高校生はあまりいないだろう。主語はa reportで本動詞はrevealsと見抜ければ後は簡単である。この文章は次のように単純化できる。

A report reveals something.

 somethingのナカミがちと長い。
 made以下は主語である「レポート」の説明である。関係代名詞とbe動詞を2箇所に補ってみれば主語を修飾する複文が二つ組み込まれた文であることがわかる。目的語がhow節になっていることも初めて英字新聞社説を訳してみる生徒を悩ませた。

 気になって高校の教科書をざっと見たことがあるが、一つの文に関係節が二つ組み込まれているケースは滅多に出てこない(私が見つけたのは一箇所のみ)から、こういう構文にまごつく。複雑なように見えるが案外簡単なのだ。
 第一段落は四つのsimple sentencesに分解できるから、やってみればいい。
 (デカルト『方法序説』の科学の方法の一節「四つの規則の第二」より、 「必要なだけの小部分に分割すること」。数学のできる人は同じ方法で長文読解もできるようになれる)


 文の構造は次のようになっている。

   A report [=made public Feb. 27 by private-sector independent panel] [=set up by the Rebuild Japan Initiative Foundation] reveals (in detail) how the government handled the crisis at Tokyo Electric Power Co.'s Fukushima No.1 nuclear power plant.

 【試訳】
「2月27日に民間事故調査委員会から公表された報告書は政府が福島第一原発事故をどのように取り扱ったかを詳細に明らかにしている。なお、この民間事故調は財団日本再建イニシアティブによって設置された。」

 こんなに長ったらしく訳す必要はない。意味が取れればいいだけだから、ぶつ切りにして訳出し、文の構造が見抜けていれば試験の際には充分で、それで90%以上正解できる。

  ニムオロ塾の時事英語は長文読解トレーニングだが、スラッシュ・リーディングもやるが、こういう構文解析もしっかりやる。なれてくればスラッシュ・リーディングしながら構文解析が同時進行で可能になる。結構な量のトレーニングをやらなければ腕が上がらないのはスポーツと同じだ。
 日本語の本をたくさん読んだ人は英文も理解が速いし、訳文もこなれたものが書ける。恥ずかしいから英語の単語を日本語に置き換えるような和訳レベルからさっさと抜け出そう。

 慣れるのに早い人でも半年程度はかかるだろう。長文が90%読めれば、偏差値が45~50の人が60を超えることになる。大学の時事英語授業でもこんなレベルで解説しているところは少ないよ。本当は大学院を受験する人に受けてもらいたいくらいの授業なんだ。こんな授業をやっている塾は北海道ではニムオロ塾だけだろう。テクストを英字新聞から専門書に変えるだけで大学院受験用の授業となる。

 二番目の段落は自分でやってみてほしい。わたしには日本人スタッフの書いた社説にみえる。
 なお、冒頭の段落と2番目くらいまで修辞上こった文であるケースが多いが、残りの部分はわかりやすく読みやすい文章になっているので安心してほしい。出だしの部分は論説委員も力が入る。

【ebisuのコメント】
 この民間事故調査委員会の報告書によれば、原子力安全保安院はメルトダウンの事実をつかんでいたが国民に知らせなかった。こういうことをするから政府機関のいうことに信用がなくなる。当時の枝野官房長官もその事実を知っていたことをこのレポートが明らかにしている。情報を隠したせいで周辺住民が現地にとどまり大量に被曝することになった。とくに内部被曝がこれから大問題になるだろう。甲状腺癌や遺伝子障害によるさまざまな疾病が数年から数十年かけて数十万人の人間に現れる。情報を知っていたなら躊躇せずに80キロ県内からの避難命令を出すべきだったのだ。自分たちの政権を守るために、こういうズルく卑怯な行いを平気でしてしまう人間が多いことを憂う。わたしは菅元総理も枝野元官房長官も重大犯罪人であると思う。知っていながら数十万人の人を避難させなかったのだから。チェルノブイリ事故直後のロシア政府と比べてもはるかに劣る対応だった。
 民間の事故調査委員会が明らかにしたことは、福島第一原発事故による周辺住民の放射能被曝は単なる原発事故ではなく、国家権力による情報隠蔽によって引き起こされた犯罪だった。
 中学校の先生たち、大人の人格は中学生のときにその基本がつくられてしまうから、ズルイこと卑怯なことはダメだとはっきり生徒に言ってくれ、「宿題の答えの丸写しなんてとんでもない、わからなかったら放課後のこれ、トコトン教えてやるから」くらいのことを言ってほしい。こういうズルイ大人たちの増殖を防ぐことはできる。
 枝野氏はいま、経済産業大臣だが、その言を何人の国民が信用するだろう、厚顔無恥を絵に描いたような人。

  11段落目に書いてある。

  The report reveals that Yukio Edano, then chief Cabinet secretary, feared a "demonic chain reaction" of reactor meltdowns not only at the Fukushima No.1 plant but also at the nearby Fukushima No.2 nuclear power plant as the spread of radioactive subsutances forced workers to flee, as well as at the Tokai nuclear power plant in Ibaraki Prefecture.

 "demonic chain reaction" of reactor meltdowns : メルトダウンから生じる"悪魔的な連鎖反応"

*菅元首相も初日からメルトダウンの可能性を知っていた
「初日に炉心溶融指摘 対策本部の議事録公開」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120309/dst12030911340008-n1.htm

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*またも後出し
 写真でみると3号炉は格納容器の黄色いふたが爆発で吹き飛んでしまっているから、燃料のブルトニウムの微粒子が飛び散ったことは想像に難くない。それにしても北西や南に20~32キロも離れたところで検出されている。昨年4、5月に採取した落ち葉や土からなんでいまごろ・・・こんなに遅い発表は意図的な情報隠しの疑いあり。事故調査委員会に調べてほしい。
「プルトニウム241を初検出「豆類蓄積の恐れ」と警告 放医研」
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120309/scn12030900590000-n1.htm

 
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Hirosuke

誤変換の修正依頼です。

【検討】⇒【見当】

by Hirosuke (2012-03-09 14:40) 

ebisu

ありがとうございます。

直しました。
by ebisu (2012-03-09 14:50) 

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