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#1409 医師着任と退任: 市立根室病院収益はどうなるのか?  Mar. 8, 2011 [26. 地域医療・経済・財政]

 市立根室病院のホームページの運営方針に変化が感じられる。
 着任情報と退任情報が載っている。とくに、退任情報が事前に載ったことはなかったように記憶する。病院運営も変わりつつあるようでエールを送りたい。骨のある管理職がいれば病院は変わる。

【着任】
平成23年3月1日付 産婦人科 橋 爪 毅 昭 医師
平成23年4月1日付 外科 竹 山 茂 医師
             外科 山 口 浩 司 医師
             麻酔科 熊 谷 展 国 医師

【退任】
平成23年3月31日付 内科 矢 野 昭 起 内科部長
              内科 小野寺 馨 内科医長
           整形外科 佐 藤 千 尋 整形外科部長
              外科 小 川 宰 司 外科医長
*病院のホームページ
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/fde217d7ec2c7fe94925749f0016c254/$FILE/zenka.pdf



< 収益への影響 >
 この情報に接した知り合いのドクターから、病院経営を心配するメールを戴いた。「これではよくはならんだろう、(経営は)悪化する」との見方だった。私もそう思うから、いつも通りに理由を書いておく。
 常勤産婦人科医が一人着任するが、産科病棟を再開するわけではないから売り上げ増はない。非常勤医の手配の仕方によって経費に違いが出るだけだろう。
 常勤麻酔科医と外科医2名が来て外1名去り外科医2名体制になる。おおよそ外科の売上は昨年並みだろう。外科手術後の入院患者もあるから、外科関連の入院患者数も徐々に元に復していく。収益的には昨年並みを維持することになるだろうか。
 内科医が2名減である。内科の患者は多いから派遣医で賄うかどうかだが、派遣医のコストは高いから収益的には大きなマイナスとなるだろう。派遣医が見つからなければ、市内の開業医へ患者が流れて売上が減る。派遣医の要請は開業医との共存共栄を考慮に入れて判断すればいい。
 整形外科医は患者が多いから常勤医の退任にともない派遣医を補充せざるをえないから、収益的には悪化の方向だ。
 外科の先生は昨年来流れていた街の噂どおりの退任であるから、想定内。

 着任・退任医師の担当分野をみると総じて経営改善にはならないことがわかる。2011年度は経営がさらに悪化するだろう。13.5~15億円程度の赤字補填をせざるをえなくなるだろう。一般会計からの赤字補填予算(一般会計繰出金)は11.2億円だったから、来年の今頃は2.3~3.8億円の補正予算を組まざるを得なくなるだろう。
 建て替え後はさらに償却負担増等で2.5億円増える。一時的に特別損失(既存建物の除却)が3.5億円出るがこれは一般会計からの繰出金がいらない。

 このままでは建て替え後は毎年17億円の一般会計繰出金が必要になる。職員給与の大幅カットは避けられない。職員給与は総額で31億円*だから20%ですむのか30%になるのか、退職金までカットになるのか、予測がつかない。すべては一般会計の歳入がいくらになるかにかかっている。
 放漫財政で2011年度の根室市の予算は160億円にまで膨らんでしまっているが、破綻に瀕している国家財政は早晩地方交付税交付金に大鉈を振るわざるをえないし、道財政は2011年度財政早期健全化団体指定が予定されている。近い将来根室市の予算は140億円以下で組まざるを得なくなると先を読むべきだろう。
 そういう状況下にあるのに、市が招聘したコンサルタントの意見(25億円での建て替え)を無視して62億円もの総事業費をかけた建て替えを進めつつある。
*2011年度「予算の概要(一般会計)3ページより
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/90f544667780cf46492570c700066ba3/$FILE/H23yosangaiyou.pdf

 もう手を打つべき時機を失したから、結果を待つしかない。H市長やH市長の提案に賛成した市議たち、そしてわずか三百数十名の「オール根室」=地元経済諸団体は責任をとれない。ツケは市職員と市民に回ってくるのみである。病院の建て替えが終わると同時に、その存続が危うくなるような状況に陥ることになるだろう。
 ブログ上でリスクの具体的な説明もしてきたし、地域医療の崩壊を防ぐために少しは具体的な経営改善提案をしてきたつもりだったが、無駄だった。
 あとは結果がでるだけだから、あまりこの問題をとりあげたくない。ふるさとの衰亡を呆然と眺めるのは健康にも害があってパトリオットには辛いのである。

 閑話休題、着任・退任情報が早く掲示されるようになったことは歓迎したい。前にも書いたが掲示板には発信年月日を入れてもらいたい、パトリオットの管理課長殿よろしくお願いする。

*patriot:辞書には"愛国者"とあるが日本語のこの語とはニュアンスが違う。"自分の生まれ育ったところに敬愛の念を有し、(多少の不利益を省みることなく)ふるさとのためになすべきことをなす者"
とでも定義しておきたい。ナショナリズムのように思想的なものではなく、パトリオティズムは「ふるさとへの素朴な心情と義務」とでもいうべきものだ。

 手元にある英英辞典2冊をみるとナショナリズムとパトリオティズムは次のように定義されている

Nationalism: 2 a great or too great love of your own country
Patriotism: When you love your own country and are proud of it
     (Cambridge Advanced Learner
s Dictionary)
Nationalism: 2 the belief that your nation is better than other nations
Patriotism: strong feelings of love, respect, and duty towards your country
     (Macmillan English Dictionary)



#1030 nationalism とpatriotism :遠藤利國訳・幸徳秋水『帝国主義』May 17, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-17




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病院建って医者はなし

院内パワーハラスメントの届出、気に入らないからと退職勧告(これもパワハラ)、非常識な出張回数。
こんな事がまかりとおっている。そして札幌でも知られている。

市民オンブズマンでもなければ病院は良くならないでしょう。
ebisuさんの努力には頭下がりますが、一人では困難が多いですね。
by 病院建って医者はなし (2011-03-08 15:54) 

医療四方山裏話 番外編

「もはや狂った日本の裁判」(m3.comより)
自動ドア事故で認知症進行 コープ側に賠償命令
11/02/04 記事:共同通信社 提供:共同通信社
 東京都小平市で2006年、日常生活に支障のない認知症の80代女性=09年に死亡=がスーパーの自動ドアに接触して転倒し、症状が進んだとして、遺族が「生活協同組合コ ープとうきょう」に3300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は3日、1175万円の支払いを命じた。
 湯川克彦(ゆかわ・かつひこ)裁判官は、現場の自動ドアについて「高齢者らが利用することを前提とした安全性を備えていたとはいえない」と指摘。その上で「女性の筋力低下 や認知症の進行には、事故による骨折が影響している」として因果関係を認めた。
 判決によると、女性は06年8月28日午後3時すぎ、前方の客に続いて店に入ろうとした際、閉まりかけた自動ドアに接触して転倒、右大腿(だいたい)骨を骨折した。その後 、歩けなくなり、認知症の症状も進んだ。女性は09年4月、急性心不全で死亡した。
 コープとうきょうは「判決をよく検討しておらず、現段階ではコメントは差し控える」としている。

もう日本の裁判には愛想が尽きているので何も論評致しません。これをご覧になられた皆さんがご自身でお考えください。
ただ一言申し上げておきます。もしこの判決が妥当だとお考えに成るのであれば、貴方のお宅に知り合いの老人が遊びに来て玄関先のタイルで滑って転倒骨折→入院→認知症が進行。「お宅が玄関のタイルを磨いていたから、うちの親が滑って骨折した。来客には老人もいるだろう。何故滑りやすく磨いたのだ。慰謝料を出せ!」とヤクザ紛いの滅茶苦茶な脅しを掛けられても文句は言えませんよ。

このケースはたまたまスーパーで起こりました。しかし病院や老人施設の医療機関では頻繁に起きています。そしてその中の一部は医療施設側の管理の手落ちとして裁判沙汰に成っています。そして判決は押しなべて医療機関の負けで、老人には不相応な逸失利益が計算され賠償金となります。そしてその事がマスコミにより広く世間に周知され、乗り遅れまいと我も我も戸と押し寄せます。残念ながら今の日本人にはもう公徳心が無い(自分さえ良ければ良い)ようです。

かってこんな事件がありました。札幌の元町にある西友で、肉売り場で産地を偽った表示が問題化し、店の方針で領収書無しに返金(申し出額をそのまま!)し始めたところ、携帯など口コミであっと言う間に広がり店の前に多くの人間(特に若者)が集結。最初は言うがままに返金に応じていた店側も途中で返還予定額を超えてしまったために返金作業を中止。すると集まった群衆は口々に「俺にも金返せ!」の怒号。勿論各マスコミも現場に居ながらどの社もきちんと取材しません。あの時札幌の西友で問題に成ったのは、確か皆があまり食べないレバーの類だったと記憶しています。ですから元々そんなに売れていた筈は無いと思います。しかし最初に駆け付けた者の中には10数万も貰ったと言う話に涎を垂らして集まった連中は収まりません。あの時ずっとcameraに写っていたメタボ体型の若者が「俺見ての通りだから肉食うし・・・」と取材に非常に歯切れ悪く答えていたのが印象に残っています。マスコミもマスコミで、一言「どちらの肉売り場で何の肉をどれ位買われたんですか」とでも聞けば、殆どの人間が噂を聞いて金欲しさに集まった事が分かった筈です。あの事件は、その晩そのメタボな若者とその横に居た柄の悪い若い女性の絵とともに日本中を駆け巡りました。そして大方の人が西友の店長を馬鹿呼ばわりして嘲笑いました。しかしあれには西友の事情が有ったようです。
実は小生は当時札幌の手稲に住んでおりました。手稲駅前にも大きな西友があり、そこの広大な駐車場には一応検問所が有ったのですが、当時検問所のゲートは空きっ放しでした。ですから西友に用事が無い人間にとっては正に「ラッキー!」です。自宅から手稲駅までやって来て車を西友の駐車場に置いて手稲駅からJRに乗って職場へ。何せ手稲駅と西友の駐車場は歩いて1~2分なのですから。勿論西友の駐車場は無関係な車で一日中満車状態。本当に西友に買い物に来たお客が留めるスペースが有りません。しかし最初からきちんと管理していたのならばともかく、やはり途中から厳しくするのは難しいのでしょうね。中々西友側が駐車場のゲートを閉めません。そんな時に本町店でのあの事件が起きた訳です。では何故西友はそんな経営方針だったのか。
実はアメリカなどでは、お客を信じて領収書無しに言い値を返金する考えがあり、西友もそれを社是にしていたんですね。「お客様を信じる」。それで手稲店では駐車場を開け放し、元町店では領収書無しに返金を行ったわけです。しかしその結果、西友側のみならず日本中の人間が「如何に日本人は公徳心が無い情け無い国民性か」を目の当たりにすることに成りました。
もっとも宗教心に裏打ちされ公徳心に篤いとされているアメリカでも、「あまりに美味いから食べ過ぎて太ってしまったのは、お宅のせいだ!」とジャンクフード会社を訴えて高額の賠償金をせしめるメタボ男が居るくらいですから(もっともこれは絶妙な弁護士の作戦のような気がします)。

随分長い一言に成ってしまいました(笑)。お許しを!

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%8F%8B%E5%81%BD%E8%A3%85%E8%82%89%E8%BF%94%E9%87%91%E4%BA%8B%E4%BB%B6
by 医療四方山裏話 番外編 (2011-03-08 17:04) 

もやしさんま

公徳心といえば気になる話があります。
根室も生活保護世帯が増えていると新聞で読みました
私の友達の話だと生活保護費を受け取ってタクシーでパチンコに直行する不届きな輩がいて、市職員も気づいていても警察みたいに調査できないと見て見ぬふりとか。
もし本当にそういうことがあるのなら悪質な事例を告発して取り締まってほしいですね。生活保護は公費ですから、無駄にはできません

by もやしさんま (2011-03-08 18:35) 

ebisu

"病院建って医者はなし"さんへ

市議会が市政チェック機能を果たしていませんから、市民オンブズマン、たしかに必要ですね。誰かやりませんかね。私はお手伝いくらいならやれます。
市民オンブズマン、小さな町ではなかなかやれないことです。
でもいつか旗を振る元気な方が出ることをパトリオットのebisuは期待しています。
私のブログはそのような役割を担う人が出てくるためのプレリュードかもしれません。
そうなって欲しいと願っています。
by ebisu (2011-03-08 23:26) 

ebisu

日本は弁護士の数を人口比で米国並みにする方向で動いていますが、たくさん増えた弁護士が食うために米国並みの訴訟社会にしようというわけですか。
それにしても裁判官の市民感覚からのズレは看過できませんね。
司法試験制度そのものに問題があるのでしょうね。
六法全書と首っ引きで何年も勉強すると、市民常識なんてものを失ってしまうのでしょう。
ひどい事例の紹介ありがとうございます。
これも本欄へ上げます。
by ebisu (2011-03-08 23:31) 

ebisu

もやしさんまさんへ

日本人の公徳心はどこへ行ってしまったのでしょう。情けないですね。
カネカネカネの世の中。
「武士は喰わねど高楊枝」が日本人精神のひとつの発現でしたが、辛抱強さがなくなったということですね。
平然と我慢できる、自己抑制できる人間が少なくなりました。

ふるさとのためなら、少々損をしても一肌脱ごうじゃないかという人が少なくなったということでしょう。
病院建設の入札結果をみて、関係者の心のすさみ様にただ驚くばかりです。
ふるさとがどうなっても、自分たちさえよければいいという性根があらわに見えています。
三百数十人のオール根室は、この地をソドムとゴモラにしたいのでしょうか、そんなはずはないと信じたい。
by ebisu (2011-03-08 23:40) 

医療四方山裏話

「氷山の一角」(m3.comより)
認知症女性死亡で賠償命令 1770万、特養ホームに 11/02/07 記事:共同通信社提供:共同通信社

 埼玉県久喜市の特別養護老人ホームで2005年、入所者の認知症の女性=当時(78)=が紙おむつを破って喉に詰まらせ窒息死したのは注意義務違反が原因として、遺族が施設を運営する社会福祉法人「恒寿会(こうじゅかい)」(同市)側に約2460万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、さいたま地裁は4日、施設側に1770万円の支払いを命じた。
 加藤正男(かとう・まさお)裁判長は判決理由で、口に異物を入れる癖のあった女性に対して紙おむつを使ったことについて「床擦れやかぶれの症状があり、(吸水性の低い)布おむつだけを使用すべきだったとは言えない」と容認。
 その上で、癖を予防するため紙おむつの上に着用していた、ほぼ全身を覆う「介護服」の状態について、「股のファスナーが壊れていたり、閉め方が不十分だったりしたか、生地が劣化していて破れた可能性がある。使用方法が不適切だったと推認できる」として、注意義務違反を認定した。
 判決によると、女性は05年6月20日、着用していた紙おむつを自ら破って飲み込み窒息死した。
 恒寿会は「女性が亡くなられたことに対し、深くおわび申しあげる」としている。

このネタに対して大方の医師は家族を弁護士に唆された「当たり屋」に擬えて憤慨しています。その中で比較的冷静な方の書き込みを紹介致します。参考にされてください。

特養で個室も少ないタイプのようですから、支払金額は月10万円を切っていると推定されます。余程規模の大きな施設でない限り、年間数百万でも黒字が出れば、御の字でしょう。
そんな低賃金で自分が看ない親を入れておいて、介護服を着せれば拘束したと怒って訴え、異食で窒息したら訴えて1700万円なんて、世の中狂っている。そんなんで儲けては いけません。
そうなれば、自宅介護困難例を引受ける所はなくなってしまい、後に続く他の家族にどれだけ迷惑をかけることになるか。なんてことを考えられる人なら訴えないはずです。
こんなんがまかり通ったら、まともな者は介護施設経営に関わらなくなってしまう。既に、介護施設の一部はやーさん達の経営になっているところも結構あるが、今後はその比率が増えてくるだろう。そんな所の提携医だけは引受けたくないねえ。

この方の書き込みの最後の部分に、実は非常に危険な爆弾が仕掛けられています。今まで美容整形などを突破口に医療の世界に進出して来たその筋の組織が、全国の経営破綻した病院を買い取り新たな医師を掻き集め介護関係の医療施設を再開。もはや医療法人〇〇会=(実は)××組系〇〇会がどんどん水面下で広がっている。信じられないかも知れませんが、これは法務省関係に詳しい医師から聞いた紛れも無い事実です。
by 医療四方山裏話 (2011-03-09 00:22) 

医療四方山裏話

「絶句・・・」(m3.comより)
ホームで誤嚥し死亡、和解金1400万円

昨年9月に傍聴し、先日和解が出ていた事件です。事件番号は東京地裁平成21年(ワ)第18816号です。

特別養護老人ホームにショートステイしていた、推定90代(尋問中に「100まで生きると頑張っていた」
との発言があった)の女性が、誤嚥で死亡した事例。原告は息子(推 定70代)、被告は老人ホーム。
まずは亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
傍聴から推察された事件概要:
亡くなられた推定90代の方は、認知症あり、声上げ(意味不明の奇声を上げる)あり。平成19年12月と平成20年1月に、別の老人ホームで誤嚥事故を2回繰り返したため、その老人ホームから預かりを断られたところ、被告老人ホームで受け入れOKとされ、 利用することとなった。
平成20年8月に、介護士(推定)が通常通りに朝食を食べさせていた。普通なら飲み込んだあとに声上げをすることから、ちゃんと飲み込めていることを確認していたのだが、あるとき、口に入れたあとに声上げがなく、顔色が白くなっていくので、何かがおかしいと思って他の人を呼んだ。看護師などが集まって、看護師が吸引で誤嚥物吸引を試みたが奏効せず、救急車を呼んだが、結局亡くなられた。
原告側は、誤嚥物は吸引器では吸引できないのであって、ただちに救急車を呼ぶべきだった、とか主張している模様。原告本人尋問の最後に、裁判長から最後の一言を求められて 、「今日は9月9日で救急の日。なぜすぐ救急車を呼んでくれなかったのか。救急体制の不備を感じた。そういうことを知り合いには話している。」と言うようなことを述べてい ましたが、なんだかなぁと思いました。しかも奥さんは元看護師だそうです。
原告代理人は看護師に対して、他にも、ハイムリック法をやったのかとか、マウストゥーマウスはやった
のか、とかも聞いていました。で、最終的に和解金が1400万円となったものです。
誤嚥事故を起こしたことがある人を受け入れることは、大変なリスクがあると感じましたのでご紹介する次第です。

このケースも医師から見れば滅茶苦茶な話です。因みに”ハイムリッヒ”と言うのは喉を詰まらせた際の対処法で、患者を背部から抱き組んだ両手の拳で鳩尾部を突き上げる行為です。一般的には固形物の誤嚥の際に有効な方法とされています。しかし老人に下手に行えば肋骨ボキボキですよ。またマウス ツー マウスは御存知のように無呼吸の患者の肺に空気を送り込む処置ですが、気道閉塞がある時にはそれを解除しないで行うと、閉塞物を更に奥に送り込む事に成り禁忌です。「真っ先に救急車を呼べ!」との仰せですが、救急車が到着するまでに恐らく早くても5~6分は掛かるでしょう。その間何もしなければ、救急車が着く頃にはもう万事休すなんですがね。そして救急車が辿りついてもやる事は同じです。この事から原告側代理人が如何に医療に疎いかが容易に想像できます。

ここで何時ものように、この件に対して書き込んだ医師のコメントを1人だけ載せておきます。

90過ぎの方にハイムリッヒやら、逆さ吊るしやら、背部叩くのって、できますかね。私なら恐くてできません 、骨が折れそうで。 やはり吸引をする程度かな。
後は輪状軟骨穿刺でしたっけ、それをするのでしょうけどね。
何度も誤嚥があって断られていたのを引き受けたのが間違いでしたね。このホームの失敗はそこでしょう
それにしても、やっと受けてくれたホームを訴えるとは、誤嚥による事故を狙っていたのでしょうかね?

(付け足し)因みに”輪状軟骨穿刺”と言うのは、気管切開が必要な際にメス等の切開道具が無い場合(或いは経験が無い場合)に、とにかく少しでも早く肺に空気を送り込むために気管切開部に注射針を刺す事です。実際には慣れていないと刺すには度胸が要ります。
これは余談ですが、先日終了したアメリカの人気TVドラマ「LOST」の第1話にこの話が出てきます。主人公達の乗った飛行機が浜辺に墜落。そこには地獄さながらの修羅場が展開されています。心肺停止状態の黒人女性に対して若い救急救命士が蘇生を試みている所へ外科医である主人公のJackが近寄り、見かねて自分が蘇生を始めます。むっと成った救命士が自分の身分を告げるとJackは「それなら免許を返せ」と怒ります。そこで救命士が「じゃあペンを探してくる」とその場から立ち去ります。これはペン(ボールペン)が有れば芯を抜いたケースで喉を刺して注射針の代わりに出来るんだ、と言う意味です。またこれも有名なアメリカのTVドラマに「グレーズアナトミー」が有ります。途中から主人公達に陸軍の軍医が合流しますが、この軍医が登場する場面で、救急車で運ばれてきた患者の喉にペンが刺さっていてそれを見た主人公達は「何て医者だ!」と呆れます。勿論その軍医は何も無い現場でペンを注射針の代わりに輪状軟骨を刺して命を救った訳です。

老人が誤嚥などで気管を閉塞した場合一刻を争いますが、固形物などは背中を叩く事で結構効果があります。しかし餅の様な物は掃除機のような吸引機が(何処にでも有り)役に立ちます。
by 医療四方山裏話 (2011-03-09 11:35) 

医療四方山裏話

「救われないM新聞」(m3.comより)

昨日、帯広の厚生病院でトラブル?が起きました。それに関する新聞記事を複数の報道機関の記事で比較してみましょう。

呼吸器のバルブ閉まり患者死亡 北海道・帯広の病院
2011年3月8日 提供:毎日新聞社
患者死亡:呼吸器のバルブ閉まり--北海道・帯広の病院

7日午後2時10分ごろ、北海道帯広市の帯広厚生病院の精神科病棟7階の病室で、入院していた女性患者(59)=音更町=の呼吸器のバルブが閉じているのを看護師が見つけ た。女性は心肺停止状態で集中治療室に運ばれたが、翌8日午前6時50分ごろ、死亡が確認された。低酸素脳症とみられる。道警帯広署は何者かが故意にバルブを閉めた可能性 もあるとみて、事件・事故の両面で捜査している。【金子淳】

次いで共同通信社

酸素吸入器閉まり患者死亡 北海道の帯広厚生病院
2011年3月8日 提供:共同通信社

北海道警は8日、帯広市の帯広厚生病院の精神科病棟で、女性入院患者(59)の酸素吸入器のバルブが閉まり、低酸素脳症で死亡したと発表した。帯広署が事件と事故の両面で 調べている。
 道警や病院関係者によると、女性は肺炎のため、酸素吸入マスクを装着。看護師が7日午後2時すぎ、バルブが閉まっているのを発見したが、心肺停止状態で、病院が110番し た。女性は8日朝、死亡した。
 女性の病室は相部屋。発見時、部屋には別の患者と面会者ら計3人がいた。女性に目立った外傷はなかった。道警は、関係者から事情を聴き、バルブが閉まった原因を調べている 。

皆さんお気付きでしょうか。問題のバルブが閉まっていたのは、毎日では”呼吸器”、共同通信では”酸素吸入器”です。

先ず”呼吸器”の意味ですが、これは肺や気管、気管支などの生体のシステムを言います。ここに閉めるバルブなど有りません(笑)。そのシステムを外部からコントロールするのが御馴染みの人工呼吸器で、これは通常は気管挿管した患者の気管チューブに繋いで使います。
いずれにしても”呼吸器”と言う単語の意味すら知らない(調べない)小学生以下?の新聞記者ですね。

では共同通信の”酸素吸入器”ですが、これは皆さんもよく目にしている筈です。患者さんのベッドの頭部分に設置された昔の牛乳瓶のような物です。あれは部屋に引き込まれた酸素の出口で、真ん中のネジを回す事で吹き出る空気の酸素濃度を調節できます。瓶の上に細いチューブが立っていて、その中に丸い玉が浮いています。玉が上に上るほど酸素濃度が高いことに成ります。
そうです。今回問題に成っているのは、この”酸素吸入器”なんです。バルブを一杯に閉めると酸素が出てきません。しかし酸素マスクは或る意味適当な代物で(口にフィットしない)結構脇から空気が漏れます。ですからマスク内に酸素が来ていなくても或る程度は自然な呼吸は可能です。しかし肺炎状態で肺の酸素交換能が低下している場合は部屋の空気を吸っているだけでは当然酸素飽和度が低く、補助的な酸素の補充が
必要です。その補充の酸素が来ないわけですから低酸素状態と成ったのでしょう。

”酸素吸入器”の事すら間違えて、せっせと医療機関を攻撃し続ける毎日新聞・・・皆さんはどう思われますか。
by 医療四方山裏話 (2011-03-09 17:06) 

mami

今日郵便で病院のアンケートが届きました。主人と私の分、2通も・・・いまさらですか?
by mami (2011-03-10 17:02) 

NO NAME

『院長に全権限委譲。』
現院長の暴走では既に多くの医師が退職。
権限委譲で暴走に拍車がかかり、退職連鎖に拍車。
しかも、市長は現院長の暴走時の責任回避目的に、権限と同時に責任も委譲。

自分たちの利益ばかりで市民の事なんて考えちゃいない。

終わりです。

もう議論も終了です。
by NO NAME (2011-03-10 20:33) 

ebisu

「救われないM新聞」(m3.comより)

数日内に本欄へアップさせていただきます。次々と問題提起、どうもありがとうございます。
by ebisu (2011-03-10 23:30) 

ebisu

mamiさんへ

工事に着工してから、"いまさら"アンケート、驚きましたね。
内容もいろいろ問題がありそうです。
問12に「市立病院の役割・機能の中でさらに充実させるものは何だと思いますか」という設問の中に「療養病棟」の項目がありません。以前、院内の職員対象のアンケートでは「療養病棟」を持つべきだとの意見が一番多かったと記憶します。根室の老人医療に一番危機感を感じているのは病院職員です。
なのに、選択肢がない。
一体何のために以前アンケートをとったのでしょう?
by ebisu (2011-03-10 23:36) 

ebisu

NO NAME さんへ

>自分たちの利益ばかりで市民の事なんて考えちゃいない。

>終わりです。

>もう議論も終了です。

残念ですが、あとは結果が出るだけですね。
癌が肝臓に飛んでついに肺にも骨にも転移、不謹慎な喩えですがそんな状況です。
死は再生のはじまり、そう信じたい。
by ebisu (2011-03-10 23:44) 

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