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増え続ける国債残高(5):FRB金利上げ #915 Feb.21, 2010 [95.増え続ける国債残高]

 FRBが金利を0.5%から0.75%に上げた。金融引き締めではなく、非常時のゼロ金利を平時に戻す措置だ。冷静にデータをみると、2,007年8月21日にサブプライムローンによる金融バブル崩壊時にはFRB政策金利は5.25%だった。その後1年かけて2%にまで落とし、金融機関救済のためにゼロ金利≒0.5%まで下げていたのをたった0.25%上げただけで、元の水準に戻したわけではない。巨額の借金を抱えている証券・銀行に対する救済措置を維持するために、元の半分の2.7%にすら戻せないのである。
 日本は1995年に0.5%にし、2007年10月に0.75%、その後2008年12月に0.3%に下げたきり、「平時」に戻していない。いまだに銀行救済措置を解除していないのはなぜだろう。この間に銀行は利幅を2倍にし、不良債権の償却もすんでいるが、今年度末924兆円になる国債の金利を上げるわけにはいかないから、ゼロ金利を維持せざるを得ないのだ。そういう理由でゼロ金利は銀行の既得権化している。
 日銀が政策金利を2.5%に上げたら国債の利払いが10兆円増えるから上げられるはずがなく、日銀の金利政策はとっくに柔軟性を失い「財務省日銀局」化している。財政と金融は一体となってしまっているのだが、その原因は長年にわたる赤字財政維持のために、禁じ手の日銀直接買取を解禁し国債の無限発行に道を開いたことにある。国債発行への金利の歯止め作用を日銀直接買取で壊してしまった。やってはならないことだが、背に腹は替えられぬということだ。政治家と官僚の不正直ででたらめな仕事の結果である。しかし、ツケを支払うのは国民である。
 谷垣自民党総裁をみても、派閥の領袖である町村議員を見ても、責任を感じている風はまったくない。彼らを選んできたのはほかならぬ私たち国民である。ツケを支払う覚悟があってのことではなかっただろう。しかし、民主党に変わっても財政赤字は減らないどころか増え続けている。
 国民には選択肢がなかったというべきか?それとも国民の意識レベルに見合った政治家・官僚たちが跋扈していたというべきか、語るべき言葉がない。

 ギリシャは国債金利が7%になって財政破綻した。財政状態が悪くなれば国債の評価が下がり、調達金利が上がる。

 日本で3年後にこのような事態になったらどうなるか。国債発行残高は1000兆円を超えているから、年間70兆円の金利支払だ。税収は36兆円しかない。

 どんどんお金を印刷し日銀が国債を政府から直接買い入れることになるのだろうか?禁じ手であったはずの国債の日銀買い入れはすでに解禁されている。

 いくつか疑問がわくのではないだろうか?
①なぜ日銀は政策誘導金利を0.3%に据え置いたままなのか?
②5年間で金利が5%に上がる確率はどのくらいか?
③このまま年間50兆円の赤字財政が続いたら5年後にはどうなるのか?
④1000兆円の国債は返済しなくてもよいのか?

 ゼロ金利は国債の利払いを10兆円にとどめるために必要な措置である。国債の利払いが現状の1.3%から2.7%になれば利払いだけで毎年20兆円の国債費がかかる。税収の半分以上を国債の利息でまかなわなければならなくなる。つまり財政破綻は誰の目にも明らかになり、日本全体が夕張市になる日だ。
 そしてもうひとつは銀行救済のためである。金利を上げれば貸し付けている債権が焦げ付く。企業倒産も増え、景気はさらに悪化する。
 銀行の調達金利は下がったが利ザヤは2倍になったままだ。それに振り込み手数料はじめ各種手数料が数倍に上がった。無料の小切手帳や手形帳も優良化された。このゼロ金利で銀行預金している国民が受け取るべき金利が数十兆円銀行へ移転された。

 慶応大学経済学部の土居教授は5年間で金利が5%程度にまで上がる確率は限りなく100%に近いという。
 私はそうは思わない。日銀が政策誘導金利(公定歩合)を据え置くからだ。ギリシャと違って円は主要通貨のひとつであるから、国債を海外の投資期間に買ってもらう必要がない。日銀の直接買い入れが続く限り、国債の利率は上がらないだろう。ギリシャとは事情が違うのである。
 しかし別の問題がこのことによって起きる。野放図な国債発行に歯止めがなくなり、ハイパーインフレのリスクが高まる。ギリシャはそこまでならないうちに財政破綻したから不幸中の幸いだろう。ハイパーインフレは国民の財産と生活への影響が比較にならないほど大きい。そのことは前回書いた。

 このまま5年間すぎれば国債の発行残高は1200兆円を超える。国民の金融資産を借金が超えることになる可能性が大きい。このあたりをきっかけに円に対する国際的な不信任が強まれば、外資がもっている円資産が処分され他の通貨に切り換えられて持続的な円安が生じるかもしれない。しかし、事態の予測は困難である。このような事態はかつて経験がないからだ。何が起きるかわからないというべきだろう。ハイパーインフレが始まるかもしれない。土居教授はそのことを心配している。

 1000兆円の借金は当然返済しなければならない。土居教授は「民主主義だから国民の自己責任だ」「選挙をして自民党政権や自公政権を国民が支持してきたのだから当然その責任も負わなければならない」と言い切っている。
 ダムだ道路だ橋だ新幹線だ港湾整備だ飛行場新設だと、公共事業にばら撒き続けて借金の山を築いてしまった。民主党政権になっても別のバラマキ(子ども手当て、農業への補助金など)赤字財政はいっそう深刻になっている。
 借金返済はこのままでは子どもたちの世代の負担となる。われわれの世代が山積みにした国債残高はわれわれが減らす努力をすべきだ。どのような辛抱もわれわれがすべきだ。

 ところで、3時半頃グランドホテルの辺りの空を海に向かってオジロワシが悠然と飛んでいった。街中を飛ぶのはめずらしい。
 空から眺めれば人間の営みなど大自然の前にはいかほどのこともなく、小さく小さく見えるだろう。

 *asahi.com
  【アテネ=南島信也】財政危機に陥っているギリシャで10日、同国最大の公務員労組「ギリシャ公務員連合」(組合員数約75万人)が公務員や社会保障費の削減といった政府の財政再建策に反発し、一斉ストライキを行った。昨年10月のパパンドレウ政権発足後、初のゼネストとなる。

 ストには組合員ら約50万人が参加。全空港が閉鎖され、国際線・国内線とも全便が欠航となったほか、鉄道やバスなどの公共交通機関も全面ストップ。官公庁や学校、病院も休止となり、公共機関の機能が完全にマヒした。首都アテネでは、国会議事堂前などに数万人が集結し、政府の緊縮策に抗議する集会やデモを行った。参加者のフランゴスさん(25)は「いつも労働者にしわ寄せがくる。我々にはストライキで抵抗するしか方法がない」と話した。

 同国では政権交代後、前政権が巨額の財政赤字を隠していたことが発覚し、財政危機が表面化。2009年の財政赤字は国内総生産(GDP)比12.7%と、ユーロ圏で最悪の水準に陥っている。

 政府は年金受給年齢の引き上げや公務員給与凍結、社会保障費削減などを柱とする財政再建策をまとめ、EUの承認を得ている。

 ただ24日には同国最大の民間企業労組「ギリシャ労働総同盟」(同200万人)もゼネストを計画していることから、ギリシャの自力再建は暗礁に乗り上げる可能性も出てきた。

*西日本新聞
【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)の欧州委員会は3日、深刻な財政危機に陥ったギリシャ政府がまとめた経済安定化計画をおおむね了承、同時に歳出削減や税収増など一層の改善措置を勧告した。

 EUは今後、ギリシャに計画の実施状況を報告させ、財政再建を厳しく監視する。勧告を実施しなければ、ギリシャは制裁金を科せられる。

 ギリシャの09年の財政赤字は国内総生産(GDP)比12・7%(推定)で、ユーロ参加国に義務付けられた3%以内を大幅に超過。公的債務も3千億ユーロ(約38兆円)に迫り、財政破綻の懸念が浮上。ユーロは99年の導入以来、最大の危機に直面している。

 ギリシャ政府は1月中旬に経済安定化計画を欧州委に提出し、公務員の採用制限、社会保障制度の抜本的改革などにより、財政赤字のGDP比を10年に8・7%、11年は5・6%、12年中に3%以下に削減すると公約した。
 


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