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杞憂(7) 耐震化交付金11.9億円決定 #862 Jan.13, 2009 [32. 市立根室病院建て替え]

 昔、教員免許取得のために地理の授業をとったことがある。九州の話しだったと記憶するが、官公庁はその土地の一番いい場所に置かれたという説明があった。水害のない場所や地震の被害が小さくなるような地盤のしっかりしたところが選定されたという。昔の役人は目が利いたということだ。
 大きな河川のあるところは、堤防の外側(つまり川よりの方)にも新しい住宅が建てられた。水害のない良い条件の場所は古くからの住人の家が建っているから、新しい住民はそういう不利な場所に家を建てざるを得なかった。
 山を削り谷を埋めて新興住宅地が開発された。元谷地であったところは雨が降れば、もともと川だった所だから、水が集まる。そのような土地は地盤も緩く地震の被害も大きくなる。
 どこか丘を背景にした老健施設だったか、雨で施設の中に土砂が流れ込んできてお年寄りが何人も死んだニュースが数ヶ月前にあった。土砂で埋まった一階のフロアに「川」が流れていたところを見ると、おそらく、もともと川だったところを埋めて建物を建てたのだろう。

 根室の町を見ると、もともと町立病院のあった場所は現在の保健所のところで、市立病院はその隣にあるから、保健所も含めてひとつの強固な岩盤の上に立っていることになる。警察や合同庁舎も同じだ。なぜこんなことをいうかというと「傍証」があるからだ。
 根室の震度は震源が近い場合でも釧路よりも小さく出る。94年10月4日22時27分に発生した北海道東方沖地震でもそうだった。震源に近い根室の震度が5で遠い釧路が6だった。根室は激甚災害指定から外れ、釧路は指定された。なぜだろう?それはしっかりした岩盤の上にある合同庁舎に地震計を設置したからだ。震度が小さく出るのは当然のことだ。揺れが小さくなる岩盤上に立っている合同庁舎は「耐震構造」建物と同じ強度があることになる。
 釧路市は一番地盤の脆弱な湿原寄りのほうにも地震計を設置して激甚災害指定を受けている。お利口だ。地震計は町の中の地盤の脆弱なところに設置するのが基本だろう。一番被害が大きいところの揺れがわかる。岩盤上に地震計を設置してどのような意味があるのだろう???

 耐震の基本は地盤である。岩盤の上に載っている建物の震度は1~1.5は小さくなる。
 現在の北海道銀行は元のNTT建物であるが、50年ほども前のことになるが、基礎工事のために5~6メートルほども地下を掘り下げた。あの辺りは粒子の細かい見事な粘土層と帯水層がある。だから、数メートル掘れば井戸に水が湧く。本町や鳴海町もそうだろう。それらの地盤の脆弱なところは揺れる。こういうところの建物は耐震構造であるべきだが、強固な岩盤の上にある建物に特別な耐震構造が必要だろうか?免震構造が必要だろうか?岩盤自体が「耐震構造」の基礎だ。

 わたしは現在地に建て替えるなら、免震構造はオーバースペックでまったく必要のないものだと考える。そのようなことにお金を掛けるよりも、外断熱やソーラパネルの設置などお金をかけるべきところは他にある。
 根室は病院コンサルタントの長隆氏の提言のように、工事費自体を25億円に削減する努力をすべきだ。59億円に比べれば34億円も少なくて済む。病院建て替えは、市民のコンセンサスを得てから10年、20年先まで考えてやるべき事業ではないだろうか?

 国の財政は根室以上に疲弊している。国の借金に比べると年間の予算比で見ても根室のほうがずっと健全だ。
 北海道は国からの補助をあてにしてきた、そういう歴史的経緯からとくに独立の気概が小さい。日本のいたるところ、国会議員を通じて地方自治体がこぞって国からの補助金獲得競争に数十年明け暮れてきたが、借金の山はまもなく1000兆円を超える。
 この国の国民は、補助金さえもらえば金をいくらかけてもいいというさもしい根性をそろそろ棄てるべきだ
 必要のない「耐震化交付金」は、全道34億円のうち根室に11.9億円だという。
 強固な岩盤に立っていることを承知で耐震化工事交付金申請するそのさもしい心根が恥ずかしいし、根室の中高生への教育上もまことによろしくない。根室言葉でこういうのを「コスイ」という。
 町をダメにするのも、好い町にするのも根室に住むわたしたち次第だ。大人も子供たちも、誇りをもてるような毅然とした古里であってほしいと願う。

 「根室、ああ、あの町ね、しっかりしているね、いいところだね、住みよいでしょう?」
 「さすがは最東端、日の出(いずる)町根室だ」
 いつかそう言われるような町にしたい。


耐震化交付金
 道内10病院に34億円
  根室と浦河に内定
「・・・一施設当たりの配分額は最大で11.9億円、・・・配分先のうち、市立根室病院と浦河赤十字病院には、それぞれ限度額の11.8億円を配分する。・・・」  北海道新聞1月13日朝刊一面より転載

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