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珠算と東大合格 第45回根室珠算大会 #760 Oct.16, 2009 [57. 塾長の教育論]

 団塊世代の根室人は五十数年前にある根室高校生が東大に現役合格した話しを聞いたことがあるだろう。いままでに現役東大合格は二人しかいない、そのうちの一人だ。

 10月12日、小中学生がそろばんの腕を競う「第45回根室珠算選手権」(根室商工会議所、根室珠算振興会主催)珠算大会があった。標津、別海、根室の小中学生32名がその技を競った。

 46年も前、高校1年の冬のことだった。分塾を担当していた2学年上のS先輩が中央大学文学部へ進学するので、T先生に頼まれて汐見町の分塾をしばらく担当することになった。翌年の夏に全国珠算連盟の道東地区の集まりにも連れて行ってもらった。車で砂利道(当時)の国道を走った。十勝川温泉に入った記憶があるので、開催地は帯広だったのだろう。
 生徒会の仕事と珠算塾の仕事と家の商売の手伝いと、楽しくも忙しい高校生活だった。

 45年前根室ではじめての珠算大会は「珠算は男子一生の仕事」と仰っていたT珠算塾のT先生の企画だった。最初の大会は小中高生が参加した。
 その当時は商工会議所珠算能力検定1級(全珠連の段位だとせいぜい3~4段だからたいしたことはない)合格者は根室高校で私一人だったので、全道大会のときだけ珠算部にも関わっていた。根室高校の珠算(科目は計算実務)担当の先生が担任でもあった。根室の珠算塾3つと根室高校、そして商工会議所の共同開催だった筈だ。「根室珠算振興会」はそのときにできた。根高珠算部として関わったのか、個人で関わったのかさっぱり記憶にない。
 初回の大会は参加者が100名以上いた。会場になったのは根高校舎入り口の横にあった別建物、柔道・剣道場である。柔道部と剣道部が一緒に使っていた建物である。会場は参加者でびっしりだった。そういえば「選手宣誓」もやった記憶がある。珠算の大会で選手宣誓?とちょっと疑問に感じたが、流れでそうなってしまい引き受けた。初回大会の暗算の優勝は運よく私がもらった。なんだか自作自演のお芝居をやっているようでこそばゆかった。
 読み上げ算は何人かの先生とともに私も読み上げる側だったから競技には参加していない。高校生だったが、大会の主催者側だったから参加できたのは暗算のみだった。

 わたしたちの学年が高校を卒業してから、5年後に根室の珠算の水準は格段に上がり、10年後くらいには全道トップレベルにまでなった。デキの悪かったわたしたちが卒業したから水準が上がったのだろう。私が高校生のときに小学生だったTとKが4段5段と続けざまに腕を上げていった。一人が突破すれば、それに続く者が堰を切ったかのように何人も現れる。10段位も出た。
 競争は大切だそして最初に記録を塗り替えるものが偉い一人が道を拓けば何人もが団子状になってその後に続く。

 当時は小学生のときにほとんどの子供が珠算塾に通っていた。おおよそ三分の二くらいの生徒が珠算塾へ通った経験があるだろう。あれから45年、珠算塾に通わせる親が少ないのが残念だ。塾を開いて8年間、珠算を習ったことのある生徒はたった二人しかいなかった。そして基礎計算力の弱い子供たちが何倍にも増えた。中1年生の40%が分数の加減算、小数の乗除算が満足にできない。
 そして高校数学こそたしかな基礎計算能力がものをいう。

【ある実例⇒そろばん1級合格と現役東大合格】
 数年前の正月のことである。T先生のところへ行った。昔話が弾むうちに、「あいつはすごかったな、あいつが一番だった」そうおっしゃった。根室へ転向して来たある男子高校生がそろばんを習いに来た。私よりも10年ほど先輩ではなかっただろうか。「たった1年間で商工会議所珠算能力検定1級に合格した、それが最短だった」とおっしゃった。先生は異常な集中力を思い出したのだろう、感慨深げに「すごい奴だった」、そうおっしゃった。
 当時は学習塾はない、札幌から根室高校へ転向してきてよほど暇だったのだろうか、高校生で珠算を始める人は珍しい。その後、道内14支庁のあるところの支庁長になったとその消息を教えてくれた。

 その転校生の名前は知っていた。根室高校から初めて東大に合格した人だったからだ。その人がそろばんをはじめてわずか一年間で商工会議所1級をパスしたなんて話はほとんどの人が知らないだろう。器が違っていた。例外中の例外だろう。すごい奴は何をやらせてもすごい結果を残すものだ。
 縁とは不思議なものだ。大学時代の一年先輩が大学院へ進学後、数ヶ月にわたって個人的に経済学の原書講読トレーニングをしてくれたことがある。今はある大学の先生をしている。その先輩の歳の離れたお姉さんが、珠算全国一になったことがあると聞いた。

 わたしは3桁の暗算が可能だが、この能力は長期経営企画や予算管理に役に立った。数百億円規模の売上の会社でも、上から3桁の数字だけでコントロール可能だからだ。1000分の一の精度で計算値がだせるから、計算精度は十分だ。いつでも頭の中で数字を入れ替えて予算全体をシミュレーションできた。暇なときにしょっちゅう思いついたことを数字に変換して、頭の中でシミュレーションできる。こうした遊びは面白いものだ。どこかが予定と異なってくれば、全体にどのような影響が出るか(利益にいくら影響するのか)がすぐに見当がつき、いくつか用意してある手が打てる。だから手遅れになることはないし、いつも10年、20年先を読みながら、現実の数値を使って1年先や3年先のシミュレーションで遊ぶことができる。頭の中でシミュレーションを繰り返して、遊びながら10年先や20年先を見据えた最善手が見つかってしまう。仕事はこうして遊びになった。だから仕事は楽しい。赤字も楽しい。黒字にできない赤字はない。売上高経常利益率は智慧の絞り方次第で10~20%にできる。
 根室高校生徒会の予算も、会社や市、国の財政ですらも3桁の精度で十分だ。3桁の精度という場所から見ればどれも同じだ。

  *国家戦略室だけはシミュレーションに4桁の精度が要求される。さて、30年50年先を大雑把に考えながら来年度予算を4桁で自在にシミュレーションできる人材が見つけられるだろうか。そういう人材がいれば、驚天動地の5ヵ年計画を発表するだろう。国家財政破綻の前倒し政策である。民主党はそれを実行するのに総選挙をして国民に信を問わざるをえなくなるだろう。そのときは大臣になった者たちがいろいろと屁理屈をつけて官僚とともに「抵抗勢力」となる。大きな戦いだからこそ、国民に信を問わねばやりとおせない。

 3桁の精度で企画・管理することで、30年先のことを考えながら、システムを含む会社の現実の仕組みを変えて赤字会社や赤字部門を売上高経常利益率10~20%の黒字に変えてきた。もちろん一人でやってきたわけではない。社内の数名の有能な者たちとともにビジョンを共有しつつ成し遂げた仕事である。
 暗算能力だけで経営企画や管理ができるわけではないが、必要条件の一つだったとは言えるだろう。
 私は、経営企画や経営管理をいう仕事に携わる可能性のある人たちに、3桁暗算能力の威力を伝えたい。経営管理上たいへんな武器になる。経営に対する大局観が養える。だから、学力レベルの高い人たちに1年間だけ趣味でそろばんをやることを勧めたい
 
 小学生低学年の生徒にも基礎計算能力を強固なものにするために1年間そろばんを習うことを勧めたい。根室にはすぐれた先生が何人かいるが、現役で教えられる残り時間は少ない。子供が少なくなったことと、そろばんを習わせる親が減ったために珠算塾を担う次の世代が育っていない。しかし、高校時代に全道トップレベルで華々しい活躍をした人たちの何人かが根室に残っているかもしれない。次の世代を担えるのは彼女たちにをおいていないだろう。根室に珠算塾がなくなったときには根室市が彼女たちを何らかの形で応援して欲しい。小学校で希望者を集めて珠算補習をする時代が来て欲しい。

 珠算は時間を測ってトレーニングする。乗除算はそれぞれ20題で各10分間、見取り算と伝票算はそれぞれ10題で10分間、暗算は10題2分間である(全道大会はこれを半分の制限時間で競う)。そろばんで集中力を上げた生徒は、英語の単語100なら30分で暗記できるだろう。他の勉強へ応用が利くのである。
 珠算のトレーニングは集中力を圧倒的に上げる効果がある陰山先生の「百枡計算」が盛んになっているが、珠算のトレーニングの方が何倍も集中力を上げる効果がある。珠算は日本の伝統芸のひとつである

【世界一の日本人の暗算能力を育んだのはそろばん】
 もし、暗算オリンピックがあったとしたら、金銀銅はもとより、百位まで日本人が独占するだろう。日本人は暗算能力に関してそれほど圧倒的な強さを持っている
 日本人の数学の学力を上げるために、基礎計算能力を圧倒的に強化するそろばん教育が見直されて欲しいと願う
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