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歳入欠陥と赤字国債増発について考える [A4. 経済学ノート]

歳入欠陥と赤字国債増発について考える

 3日連続で晴れである。今日は市内の小学校の運動会だ。朝6時に“運動会があるぞー”と花火が上がって目が覚めた。昨日の最高気温は21度、今日は17度が予想されている。いつもは毛布を膝にかけて震えながらの観戦だが、今日は半袖姿の人も混じっているだろう。小学生のいる家庭は朝からご馳走を作って忙しかったのではないだろうか。もっとも、グラウンドまでお寿司を配達させる人もいる。スーパーのお寿司売り場も午前中は品切れになるだろう。昔とはこの辺りがぜんぜん違う。好い運動会日和だ。

 さて、08年度の決算が「歳入欠陥」となったことが報じられている。予算で見積もった税収を決算額が下回り、不足分を国債増発で補うしかなくなった。
 これとよく似たことがわが町でも毎年繰り返されている。市立根室病院への赤字補填のための一般会計からの繰入である。この5年間は少ない年でも5億円弱、多いときは6億円予算収入を決算収入が下回っている。辻褄併せの予算作成を市の財務課がやっているからだ。もちろん市長の指示である。財務課長単独判断ででそのようなことが毎年行えるはずもない。足りない分は決算で一般会計から繰り入れされるか、その余裕すら財政的になくなれば、赤字として繰り越されることになる。
 外されることを覚悟で、インチキ予算組みを拒否する気概をもった財務課長や病院事務長はいないのだろうか?公務員のあるべき姿を追求する、まっとうな仕事人は現れないのだろうか?
 仕事にごまかしはいけない、その人間の信用がなくなる。根室が変われるかどうかは職務権限をもつ一人一人の覚悟にかかっている。どんなにきつくても自分の仕事はごまかさないという覚悟が。

 「自分の仕事はこれでいいのだろうか」「仕事をまっとうするとはどういうことか」「公益よりも自己の利益を優先してはいないだろうか」「大事な場面では渾身の力で仕事しているだろうか」「仕事をごまかしてはいないだろうか」、こういうことを自問できる人間をニムオロ塾は育てたい。
 プロとして専門技術をつねに磨いていないと言うべき時に言うべきことを言えなくなるので、仕事に関わる専門分野を広げ、たゆまぬ修練が要求される。状況に流されない確固たる人格は不断に自己を鍛錬することでしか確立できない。

 国の税収が歳入欠陥になったのは予定された法人税収入が1兆円強減ったためである。税収は急激な経済の悪化に伴い昨年末に53.5兆円から7.1兆円減額補正されたにもかかわらず、実際はそれより1兆円少なかった。
 そして今年度の赤字国債発行はついに税収を上回る金額になる

 2011年度にプライマリーバランスを回復すると小泉元首相、安倍首相、福田首相と歴代の首相が国民に約束してきた。麻生首相も当初はそう言っていたが、いまはもう不可能である。彼らのやってきたことは主張してきたこととは真逆の結果を招いた。未曾有の赤字国債増発が今年度行われようとしている。「百年安心年金プラン」もそうだったが、言っていることと結果は正反対である。政策の根本に間違いがあるのではないか

 そもそも景気のいいときにも黒字予算を組まず、自民党政権は公共投資をバンバンして借金を増やしてきた。景気が悪くなれば、景気回復のためと称してさらに公共投資を増やす。これでは借金が減らない。

 経済学者は話しをややこしくするが、じつは難しくない、極めて簡単な話だ。アリとキリギリスの寓話を思い出して欲しい。夏の間、ギターを引き、踊り遊び暮らしたキリギリスが冬に困窮する話しである。アリは夏の間、せっせと働きたくわえを増やし、暖かい家で冬をすごす。冬を迎えてよれよれになったキリギリスがアリをたずね物乞いをする。結末は下の*マークのアドレスをクリックしてみてほしい。二通りの筋書きがある。

 日本はキリギリスの生活を続けて、借金を増やし続けてきた。国債残高は800兆円を超しなお増え続けている。この借金の山はいつか国民が支払わなければならないものである。無責任なキリギリスの生活を数十年続けた結果の借金の山が国と地方自治体あわせて1000兆円超、まさにここにそびえてある。

 景気がいい時には景気の悪化に備えてせっせと蓄えを増やし、普段は税収を下回る歳出予算を組むべきなのだ。今回の金融危機のようなときや不景気には蓄えたものを使えばいい。こうすれば次世代に借金を残すことなく対応できる

 日本の人口が高齢化するのに伴って、経済は長期的に低迷し、規模は縮小していくだろう。税収は税制を固定して考えれば逓減していく。昨年度で44兆円規模だから10年後には35兆円くらいを予測しておく方がいいだろう。

 まずは歳出を半分に減らすことが要求される。未曾有の痛みをともなう改革を覚悟してわが国の財政の建て直しをすべきだ。単純な話し、経費も人件費も半分に削れということだ。個別具体的な問題としてとらえれば、如何に困難な道かが理解できる。
 かと言って現状を続ければ、消費税の大幅増税とハイパーインフレによって、実質借金を小さくするような選択肢を財務官僚がとる。一番イージな道で、国際的には日本の国家としての財政破綻宣言だ。ユーロに対してもドルに対しても、急激な円安が待ち受けている。食糧自給率は低い。輸入食品が数倍に跳ね上がり、ガソリン価格も400円/ℓ・・・国民生活への影響は計り知れない。このような間抜けな政策を選択するために私たちは財務官僚を雇っているのではない。

 すでに財務省はそのような路線を走っているのではないか。このままでは、長年にわたって積み上げてきた国民の金融資産が犠牲になる。もちろん、年金基金も例外ではない。ツケは常に国民に回って来るのである

 さて、わたしたちはどちらの道を選択するのだろう。明日のために、次の世代のために、自らの生活を犠牲にする厳しい道を選択できるのだろうか?つまるところ、私たちの一人一人の覚悟が問われている。

*1 歳入欠陥に関する情報
  
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003017&sid=akJEjepDUmgc&refer=jp_japan

*2 アリとキリギリスの寓話の面白い解説が載っていたので紹介する
 
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=100344

*3 誤解のないように付記しておくが、歴代の財務課長や病院事務長が悪いと言っているわけではない。わたしは個人攻撃には興味がない。たしかに問題はあったのだろうが、他の市役所職員と変わらない「普通の公務員」である。その「普通の公務員」というあり方がまずいと主張している。
 きちんとした人も少なからずいるが、多くは前例踏襲で問題を先延ばしし、数年その職務を担当して異動していく。仕事に責任の見られない主体性のない働き方、その在り様こそが問題なのである。
 仕事をごまかさず、私的な立身出世はひとまず脇に置いて誠実な働き方をする人間が要所要所に数人いるだけでも組織は変わる。
 職務権限はその仕事をまっとうするという責任を伴う、それは公務員であると民間企業人であるとを問わない。

*4 最近のニュースによれば、19年度末にあった年金積立金の運用益10兆円が20年度決算でほぼ全額消失した。もちろん金融危機以後の株価の値下がりの影響だ。
 年金積立金はおおよそ20%を内外の株式市場で、80%を債券市場で運用している。もちろん国債が一番多いだろう。国の財政が破綻したら国債はどれほど減価してしまうのだろう、想像するだに恐ろしい。

2009年6月28日 ebisu-blog#627
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