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#311 今後10年間の日本経済のシナリオ [91.経済]

今後10年間の日本経済のシナリオ

 経済予測は決して当たらない。来年1ドルが何円になるのかすら分からないのが経済学者の本音である。
 ましてやこれから10年間、日本経済がどうなっていくのかは誰にも分かろう筈がないのに、書かずにはおられないのはどうしてだろう。

 ドルが弱くなった、ドル本位制が崩れつつあることは事実だが、依然として主要通貨の一つにとどまることもまた事実である。
 ブッシュは金融機関救済のために72兆円の米国債を発行して不良債権を買い取るようだが、市中で消化するためには現在3.786%にまで落ちている10年物米国債利回りも上げざるを得ないだろう。
 弱体化している米国経済に利上げの圧力は経済をさらに縮小させる。不良債権を時価で買い取れば金融機関に実損が出てしまうから、本当にできるのだろうか。実損の発生は自己資本を毀損させるので、金融機関の自己資本補強のための公的資金注入をやることになる。一体いくらだろう。その範囲が銀行だけにとどまるのか、証券会社や保険会社を含むのかで金額に差が出るが、大手証券や保険会社を含むとしたら100兆円ではすまない可能性がある。できなければそれぞれの業界大手企業がいくつも潰れることになりはしないだろうか。。
 儲けているときには経営者は十億円を超える年俸を手にし、ワラントの割り当てによって多いケースでは百億円を超える報酬を手にしていながら、経営悪化したときには責任をまぬがれて公的資金で救済なんてことは論理としてはまことにおかしい筈だが、この議論は別にしておこう。

 まずドルが弱くなり数年間円高が進行する。その過程で大半が米国債で運用されている100兆円の外貨準備資金に巨額の評価損が出る。邦銀がもっている米国債でも巨額の評価損が出るが政府は自身も外為特別会計で巨額の評価損を出し、公的資金による救済策を採れない。
 つまり大手銀行の経営危機があるということだ。90年代初頭ののバブル崩壊のときと違っているのは国による救済が当てにできないということである。
 わかっていても保有している米国債を市場で売却することはできない。米国債が値崩れを起こすのと大量の円買いによって円高が進行してしまうからである。それは銀行を一気に経営破たんに追い込むことになる。大手銀行は日米金利差による利ザヤが一時は4.5%もあった。ちなみに、9月3日の米国債の利回りは3.7027%である。日本の金利に比べ、依然としてはるかに高い。
 日銀によるゼロ金利政策で、円で預った預金で米国債を買うだけで4%以上の金利差を稼ぐことがこの何年間も続いた。現在も3%の利ざやを稼ぐことができる。実にイージーに稼ぐことができたし現在もできる。麻薬のようなものだ。このような日銀による低金利操作で邦銀は荒稼ぎし自己資本を充実させて、注入された公的資金を数年で返済した。
 邦銀全部あわせて米国債や米国の金融機関の発行する債券保有額は数十兆円あるだろうか。日本の金融機関は米国債や米国の金融機関が発行する債券をいくらもっているのだろう?
 一例を挙げると、9月8日米国政府が管理下に置くと発表したフレディマックやファニーメイ(連邦住宅抵当公庫)が発行する債券を農林中金が5.5兆円、三菱UFJ が3.3兆円、日本生命が2.6兆円もっている。これらは無傷ではすまないだろう。
 銀行が保有する米国債権に関するデータは財務省が握っているはずだが公表されていない。

 年金財政に目を向けると、今後7年間にわたり毎年1兆円ずつ年金給付が増え、次第に年金財政を圧迫し年金基金が枯渇していく。150兆円ある年金基金のうち91兆円が市場で運用されているというが、その運用資金の引き上げが始まる。つまり市場で株式を売却して年金給付原資とするわけだが、継続的な株売り圧力は株価を下げる要因として働く。株価が下がると評価損が出て年金基金が毀損する。このままでは10年程度でデフォルトが生じるので、国の負担割合を上げざるを得ない。その結果、消費税を上げざるをえなくなるが、税収全体に占める消費税割合はヨーロッパの2倍を超えてしまう。

 他方、人口に占める若年層の割合は減少を続け経済は縮小傾向を強めており、14歳以上64歳以下の人口は8千万人から5千万人へと減少することが国の人口推計データでも明らかである。勤労層が減少することは消費の長期的縮小を意味している。
 非正規労働者の増加も消費縮小に拍車をかける。
 消費税の増税も消費を大幅に減らすことになるだろう。経済の実態を反映して、次第に円安傾向を強めていく。

 もし年金給付が何らかの理由で減額されれば、預金の取り崩しや株式の売却圧力が強まる。日米金利差で利益を上げていた都市銀行はその原資である預金が減れば、利益も減るし、貸付も縮小せざるをえない。破綻をまぬがれた銀行も、長期にわたり経営は縮小を続けることになるだろう。

 まとめると、日本経済は今後10年間に四つの出来事を経験する
 一つは100兆円ある外貨準備がドル安・円高により巨額の評価損を出す。二つ目は大手都市銀行がもっている巨額の米国債に(円高進行により)巨額の評価損が出て経営危機を迎える。三つ目は消費税増税で税収に占める消費税割合が欧州の2倍となり経済は長期にわたって縮小する。四つ目は勤労者層の縮小と非正規労働者の増加による消費の長期的縮小がはじまり、以後40年間続く消費縮小のプレリュードとなるだろう。
 ドル安によって進行した円高も、日本経済が財政破綻を迎えることで円安が進行する。結局、ドルと円はどちらも安くなる。10年後ガソリンはリッター当り300円で買えるだろうか?住宅の暖房に使う灯油はリッター当り300円を超えるようなことにならなければ幸いである。冬の灯油代が月6万円から10万円になる可能性がある。国民年金生活者にはそのような高価な灯油が買えるだろうか。有効な対策がなければ、冬の北海道で凍死者が続出しかねない。

 もし、消費税増税に失敗すればそのまま財政破綻となり、国民が長年のツケを支払わされる。一時期の韓国のようにIMF管理下に置かれるのだろうか。
 わたしは消費税増税に失敗することを期待する。そうなることで根本から社会の仕組みを変えざるを得なくなるからだ。『男たちの大和』の台詞のように、「敗れることで日本が生まれ変わる」ことになればいい。

・・・とここまで書いたが、経済予測は外れるのが常、わたしの見方も90%の確率で外れるだろう。しかし、10%程度の確率でこういうこともありうる現実の中で私たちは暮らしている
 自民党総裁選挙は麻生太郎の圧勝に終わったが、候補者の誰も私のような心配をしている者がいない。万が一の備えなし、まことに能天気な者たちといわざるをえない。
 早晩日本経済は深刻な不況に突入し国家財政は破綻を迎えざるをえなくなる。
 結局、「敗れる」その日まで方向転換ができないのだろう。なにやら終戦直前の『男たちの大和』と類似の状況が広がっているように私の目には見える

*#346 これから10年間の日本経済のシナリオ 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10

 #311今後10年間の日本経済のシナリオ
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-09-22-1 

 2008年9月23日 ebisu-blog#311
  総閲覧数:34,470/302 days(9月23日0時35分)

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