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#4809 wouldとprogramについて Aug. 17, 2000 [49.1 英語音読トレーニング]

<最新更新情報>8/18朝5時半追記

 今日の最高気温は22.1度です、涼しいですね。勉強するには日本で一番しやすい環境です。
 夏休みは今日で終わりで、明日8/18から根室高校は授業が始まります。今月末には前期・期末試験が始まります。しっかり勉強しましたか?

 ところで、水曜日は高1対象の英語音読トレーニング日です。高3の教科書VIVIDⅢを使っています。今日やったところはLesson3、’Spider Silk spin into Violin Strings(蜘蛛の吐く糸がバイオリンの弦になる)’のPart3とLesson4, 'Can Cellphone Recycling Help African Gorillas(携帯電話のリサイクルがアフリカのゴリラを救う)'のPart1、p.46-52。

(1) The structure may also produce a softer, deeper and more comfortable sound than you would expect from the traditional violin. ... p.46
 「主文は現在形ですが、than以下の文は、willではなくて時制の一致を破ってなぜwouldにしたのでしょうか?書き手の意図にそって違いを説明してください」というのがわたしの生徒への質問でした。
 The structureというのは「詰め込み構造:packing structure」のことです。電子顕微鏡で蜘蛛の糸で作った弦の断面を観察したら、糸の束が圧縮されて隙間がなくなっています、それを「詰め込み構造」と書いています。willならば、「そうした構造の弦は、よりやわらかく、深みがあり、心地の良い音を紡ぎ出す伝統的なバイオリンの弦から出てくる音色に比べて」。何に比較してかがthan以下に述べられていますが、willを使うと確定的に響きます。いままでのバイオリンから出ると思われる音に比べて蜘蛛の糸でできた弦の方がいい音を紡ぎ出すと言っているのですが、willをwouldにすることで、確定的な響きを幾分和らげたニュアンスになっているのです。
「詰め込み構造の弦は、たぶん皆さんが思っている以上の音色(ねいろ)、よりやわらかく深みのあるそして心地のいい音色を奏でそうです。」
 こういうところをこなれた日本語にするのは翻訳家の仕事ですから、受験生はwillでなくてwouldを使って断定的な表現を少し引いた感じにやわらげたと受け取ったらいいのでしょう。

(2) You may have heard that recycling cellphones helps save the earth.  But do you know how it works exactly.

 このworksの訳が問題になりました。
 本棚に都合のいいタイトルの本があったので、生徒に見せました。タイトルは 'How computers work' です。「コンピュータはどうやって動くのか」ということ。
  itは「携帯電話のリサイクルが地球を救う」という状況を受けています。「(それが)どのような仕組みで動くのか、ちゃんと知っているか」ということです。
 訳ができたら、前後の文との文脈を考えて、それが適訳なのかどうかを判断しましょう。日本語として意味が通っていなければ、具体的な関連が前後の文でとれていなければ、誤訳の可能性があると考えましょう。文章に対するセンサーの感度を磨けということです。これは現代国語や日本古典文学の文章理解にも通じることです。

(3) There is another point highlited by a recycling program which collects old cellphones at over 100 North American zoos.

 生徒は抜かりなく辞書を引いて、「リサイクリング番組」と訳していました。
「たしかにテレビ番組をプログラムといいますが、それで前後の意味が通じますか?」
 これも言葉や日本語の文章に対する感覚が問題になっています。日本語としてヘンであったら英語の理解が適切でないことがあります。元々の英文が数通りに解釈できる場合もあります。
 プログラムは根室高校のブラスバンドの定期演奏会では演奏曲が並んだ「プログラム」が配られます。コンピュータ・プログラムもあります。
 困ったときは「プログラム」でいいのです。プログラムは「決められた手順に従った一連のものごと」を指します。コンピュータプログラムの場合は命令文が実行順に並んでいます。定期演奏会のプログラムも順番通りに演奏されます。
 実行手順が決まっているものをプログラムと言います。以下は英英辞典CALDから引用しました。

programme UK ( US program ) /ˈprəʊ.græm/ /ˈproʊ-/ noun [ C ] PLAN
3. a plan of activities to be done or things to be achieved
The school offers an exciting and varied programme of social events.
The rail system is to put twenty million pounds into its modernisation programme.
I'm running three mornings a week - it's all part of my fitness program


 「なすべきあるいは達成されるべき行動計画」と書いてあります。携帯電話のリサイクルプログラムは次のような一連の実行計画のことです。
① 携帯電話の回収:北米の100以上の動物園に携帯電話のリサイクルボックスを設置する
② 再生事業:回収された携帯電話を再生する
③ 販売事業:再生した携帯電話を開発途上国へ格安で販売する
④ お金の分配:お金を環境保護のために使う

 この一連の行動計画が「プログラム」なのです。携帯電話にはコルタンという鉱石を使いますが、その主産地はコンゴの森林の奥地です。携帯電話が世界中に普及することで、ニオブやタンタルの増産が必要なのです。彼の地では鉱石採掘の密漁が横行しています。森林の奥地ですから密漁者たちは野生動物を食料にしています。こうして絶滅危惧種の低地ゴリラがまさに絶滅しかかっているのです。
 スマホをリサイクルすることで、希少金属の採掘量を減少させることができれば、環境破壊の速度を小さくできます。低地ゴリラなどの絶滅危惧種が地球上から消滅しないようにリサイクルに協力しましょう。  

<三色ボールペン方式の英文への応用>
 斉藤孝先生の三色ボールペンで線を引いて本を読むことを20年ほど前に提唱していますが、英文でも同じことをしたらいいのです。次回、取り上げてみます。
 

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つるはせんねん

it works
直観的に「それがどのように活かされるのか」と考えましたが、解説を読んでなるほど、と思いました。
息子とも、こういう話題になることがあります。ニュアンスとしてはわかるのですが、どう書き表すかとなると、喉まででかかっている言葉を紡ぐことができない。直訳過ぎても、かと言って大胆に意訳しすぎてもだめな場合もあり・・・。

ちょっと話題は逸れますが、
先日、わたしの勤める学校にハーフの女の子が体験的にやってきたんです。母親は根室出身で、一時帰国しており、その短期間だけです。その子は日本も初めて、日本語は全くできない。すごい度胸だなと感心しました。それ以上にすごいと思ったのは、2年生のクラスに入っていたんですけど、クラスの子どもたちは全然躊躇しないんです。日本語がわからないその子に対して、がんがん日本語で話しかけるんです。そんな中、校内にある放課後教室の前を通りかかったとき、2年生の男の子が、その子に「ここは、放課後教室っていうんだよ」ともちろん日本語で。その子はポカンです。それで、改めて「放課後教室」って、日本語で説明してと言われたらなんていうかなと、考えたんです。「放課後、両親が家庭に不在であるから、両親が帰ってくるまで過ごす場所?」かな?などと考えながら、わたしは、錆びれた脳に鞭打って(笑)、その子に必死で英語で説明しようと試みました。なんとか伝わったようでした。
このエピソードを、息子にしてみました。息子も「放課後教室ってさ、遊んだり勉強したりするところじゃないの?」って。「それだけじゃ足りないでしょ!」となり、「改めて、日本語ですら説明できないのに英語でなんてとてもできることではないね。」となったわけです。

話が逸れてしまいましたが、先生のブログを読み、こんなことを思い出していました。
by つるはせんねん (2022-08-20 10:39) 

ebisu

つるはせんねんさん
こんにちは
アフタースクールって日本語ですからね、厄介でしたね。(笑)
「After school? What's?」

来た子供も、受け入れる子どもたちも、物怖じしないのはいいですね。
わたしは会話はサッパリダメですが、聞いていてとっても楽しそうです。

ところで、it worksは自動詞ですね。
It works like this.(・こんな風に動く)
「こんな風に」が疑問詞のhowになっただけ。
itは話し手あるいは書き手が頭の中に浮かんだこと。大西泰斗先生はそれを「・」で表します。「タメ」なのです。

自動詞という英文法知識も交えて聞き取れば案外簡単なのでしょう。

会話に関してはつるはせんねんさんはわたしにとっては先生のようなものですよ。
by ebisu (2022-08-20 11:58) 

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