SSブログ

#4468 成績上位層への対応課題:共通テストの結果から Jan. 28, 2021 [65.a-1 旭川医大現役合格者の軌跡]

 大学入学共通テストは選択科目間で平均点が20点以上乖離している科目があったので、点数調整がなされた。根室高校のトップは707点である。彼を含めて660点以上に3人の生徒がいる。
 二人は通塾組、それぞれ別の塾だ。2番目の生徒は塾通いをしていない。模試では2位になったことは一度もなかったが、急激に点数を延ばして2位に食い込んできた。すごいね。
 わたしが教えている生徒は7年目だ。小5の正月から教えたから、標準的な受験勉強からスタートが2年近く遅れている。中学生の時は学年トップを続けてはいたがしょせん田舎の中学校のトップ、土日は親と一緒に出掛けることが多く、週当たりの学習時間は都会の生徒の半分、およそ都会の中学生とは比較にならなかった。勉強に本格的に力が入りだしたのは高校生になってからだ。急激に力が伸びたのは時間の使い方が抜群に上手になったことと、土日を学習時間に組み込めるようになったからだ。精神的にも「無事に」親離れしたように見える。自我が芽生えたあたりから、ご多分にもれず反抗期はあったがぎくしゃくしながら通り抜けたようだ。
 学力よりも、精神的な成長を目撃するのは楽しい。こちらはうんうんとうなづき聞き流すだけでいい。それで生徒はストレス発散している。そのあたりの呼吸は以前勤務していた病院の精神科医の副院長から習った。カウンセリングの現場を隣の部屋で傍聴させてもらったことがある。常務理事として病院の建て替えと経営を任されていたから、いろいろ知っておかなくてはいけないことが多かった。極意伝授、なんでも役に立つものだ、ありがたい。(笑)

 トップの生徒は英語と数学が強い。国語は150点を超えたからまあまあだ。課題は選択三科目である。ふだんの授業のレベルが低いので、例えば進学校である釧路湖陵の生徒に比べて、3科目で40-50点ほど損している。2位の生徒は数学のセンスがいいそうだ。3位の生徒は数学が苦手、国語が得意で、模試でも国語は学年トップのことが多かった。

 通塾していなければ、難易度の低い共通テストでも80点を超えるのはなかなかたいへんなようだ。進学校の生徒に比べて選択3科目がそれぞれ10-15点ほど低くなる点をなんとかしないといけない。通常の授業のレベルを釧路湖陵並にしたらほとんどの生徒がついていけないから、半年ぐらい成績上位層の生徒5人くらいを対象に放課後補習授業を組むくらいしか手がないだろう。これは根室高校側の課題である。
 私塾が、中学生の時から数学と英語の二科目を個別指導できれば、高学力の生徒に対応できる。大学入学共通テストで、それぞれ2科目ずつ80-100点が獲得圏内なる。

 教育に関係する大人たちが、理想的な体制を整備できていれば、3人の生徒は北大総合理系のハードル720点を超えられただろうこの程度の学力の生徒は毎年3-5人いる。北大への合格者は毎年出せるし、私大の医学部くらいなら現役合格できる
 30年後の根室の地域医療を支えるために毎年1-2人くらいは医学部進学者がいてもらいたい。体制を整備できれば、そういうことが可能になる。

 根室には高校生対象の塾は、数学だけを教えているWF塾と、数英の両方を教えているニムオロ塾しかない。いずれ根室には高校生対象の塾はなくなる。
 この2科目は学校の授業だけで80点を超えられるとは思えない。高校だけでもダメで、中学校の数学と英語の授業のレベルアップにかかっている。7時間目を希望者に開放する放課後補習体制しかないだろう。
 根室市教委と道教委が具体的な教育政策で連携する必要が出てくる。

<余談:道の教育長との幻の意見交換>
 昨年5月に釧路の教育を考える会と北海道教育長の佐藤さんと意見交換会が予定されていました。わたしに振られたテーマは根室の学力の現状と問題点、そしてそれらを克服する具体的な提案でした。釧路根室管内の中学校18校の普段の学力テストデータに基づいて話をするつもりでいました。ところが3月から全道一斉休校措置、佐藤教育長は仕事で忙殺され、突然の訃報に接しました。とっても残念です。根室や釧路の子どもたちのために意見交換したかった。
 北海道はペリフェリ(辺縁部)の学力低下が進むと、次の段階では中核都市(旭川・釧路・帯広・北見・網走)や中央部(札幌)の学力低下が連鎖的に起きる可能性が高い。学力の高い生徒を辺縁部からこれらの中核都市の進学校へ送れなくなれば、中核都市の進学校や札幌の進学校が学力低下を起こすのはモノの道理だ。札幌や中核都市の進学校の高学力を支えているのは辺縁部の高学力の生徒たちである。 


nice!(0)  コメント(6) 

nice! 0

コメント 6

麒麟

やはり数学と英語を中学段階から先取りをしながらしっかり鍛えて、高2の後半から理科社会にじっくり取り組めるようにするという、中高一貫校並みのペースで学習を進めていかないと、なかなか難関大学の現役合格は難しいということなのでしょう。
特に進学校以外でなおかつ地方において、その環境を整備するというのは本当に大変なことだと思うのですが、せめて方法論くらいは確立・浸透しないと今後過疎化がさらに進むと、そのような高校からは10年に1人北大に受かるかどうかというものになると思われます。
公立小中の教科書レベルと難関大学の入試突破レベルにはびっくりするほど隔たりがあるのを知らずに、テレビ番組に出てくる中学受験のために必死に勉強する小学生を都会の子供は大変だねえという状態では都会と地方の格差は開く一方です。彼ら彼女らは12歳で国語理科社会に関しては田舎の公立高校入試よりもレベルの高い問題に取り組んでいますし、算数に至っては並みの大人は解けないような問題を平然と解いています。そもそも難関大学入試はスタートラインと積むエンジンがまるで違う相手との競争です。
by 麒麟 (2021-01-30 10:50) 

ebisu

麒麟さん
北海道の辺縁部に住んでいると、首都圏で難関大学目指して勉強している子どもたちがどういうスケジュールで、どの程度の難易度の問題を消化しているのか想像もつかないのです。身近にそういう子どもがいないからでしょうね。1学年50人前後の中学校でトップレベルならなんとなく北大に入れるかもしれないと考える親が多い。
全国レベルで見ると北大はそんなに難易度の高い大学ではありません。そこですら一浪しないと合格できないのが現実です。

どうやったら辺縁部の何の変哲もない偏差値40-45の高校から難関大学に合格できるのか、具体的な長期教育戦略とそれを採用して実際に合格できたという実績が必要だと考えて、国語・数学・英語の実際の指導の仕方についてブログで公開してきました。

数日前に、札幌の進学校を受験する中3の生徒から、大きな正方形の中に小さな正方形があって、ある規則で転がる場合に、その軌跡の距離を求めよという問題があり、生徒から質問がありました。四十数年前に東京渋谷駅前の個人指導進学塾で教えていたころ、中学受験で頻度の高い問題でした。もちろんその手の問題を正解できなければ、青山学院中等部や立教女学院へは合格できません。
首都圏で難関大学目指して勉強している子どもたちとは、中学校入学時点で1年半から2年の差がついています。

そういう現実を直視したら、スタートをまず合わせるのは当然のこと。私塾ではやれない選択三科目は高校が高学力の生徒だけを集めて、難易度の高い問題を高速で演習するような補習体制を整えなければなりません。偏差値42の高校でふだんの授業のレベルを難関大学受験用にアップするわけにはいきませんから。
選択三科目の通年の補習体制を組むことでようやく互角の勝負に持っていけます。

勉強しかやってこなかった子どもは、社会に出てからひ弱です。同級生と遊ぶ時間は実に大事で、そこから得るものは大きい。本も読む、それも年齢ごとにレベルを上げながら読む。
塾の先生に言われるままに勉強するのではなく、自分で勉強して、疑問のある所を先生にぶつける。そういう自主的・自律的な学習姿勢を育てることが大事です。

長期戦略という具体的な方法論は、科目ごと、学年ごとにブログに書いてきました。
ですが、生徒の能力の問題もあるので、一人一人の性格や頭の使い方を観察して、チューニングする必要があるのはあたりまえだと思います。

中学校と高校で難関大学目指して学習する生徒を指導できる先生を確保し配置するのは、根室市教委や道教委の役割でしょうね。そういうレベルの先生は十人に一人いればいい方でしょうね。
でも、根室にだって少数ですがそういう先生がいます。教育行政は具体的な政策の中でそういうことを実現してもらいたい。

麒麟さんとの受験に関する対話はとても有意義でだと感じています。ありがとうございます。
by ebisu (2021-01-30 21:19) 

麒麟

ちなみに共通テストの校内平均は、札幌南が714点、鹿児島ラ・サールが728点、日比谷が744点のようです。札幌南の平均層で北大理系ボーダー、鹿児島ラ・サールの平均で旭川医大のボーダー、日比谷は地方国立医学部のボーダーあたり、といったところでしょう。国公立医学部に受かりたいなら中3の時点で鹿児島ラ・サールや日比谷に合格者平均で受かるくらいの学力が目安になるということだと思います。
by 麒麟 (2021-02-06 22:42) 

ebisu

ひゃーったたかい!

麒麟さん、平均値がそんなに高いのですか。南が道内トップだとしても高い。744点の都立日比谷は完全復活ですね。
これでは普段の授業のレベルが天と地ほども違う。同じ能力なら高校3年間だけでも50点以上の差になるでしょう。
地方、中でも僻地校の能力の高い者たちが圧倒的に不利です。

でもね、会社に入ると、受験エリートは案外ダメなんです。決まった解法があり、正解のある問題に取り組んだ時には抜群の能力を発揮しますが、正解のない問題にはほとんど取り組んだ経験がない。経験のないことはなかなかできないものらしい。
いままでの思考パターン(正解への標準解法手順を記憶する)が通用しないのが報酬の高いクリエイティブな仕事の世界です。給料の低い仕事はそういう方法(受験勉強方式)が通用します。
受験勉強をやりすぎるとそれが思考の鋳型になって、その中に閉じ込められてしまいます。
わたしの周りにいた東大、京大、一ツ橋大、慶応、早大のみなさんにはそういう傾向がみえました。一人だけ芽が出た人がいました。その人はあまり勉強しないでも早大に入れたのかもしれませんね。SRLでは芽が出なかった。
その人は50歳を過ぎてから会社を辞めて、1度大失敗、5億円出資したSRL創業社長のFさんに損させました。Fさん5億円くらいでのお金はどうってことありません。
Kbさん2度目に大当たり、ベンチャー企業で1部上場を果たしています。その業界では有名企業です。
人生は長い、五十代になるころに能力の優劣がはっきりします。
社会に出て、スタート地点と15年間くらいは難関大学出身者はとっても得できます。でもそれが仇になるケースも多いのです。課長までは有能でも部長にしたばっかりに、降格処分せざるを得ない状況を創り出してしまう。数人見ました。役員は何人も。
企業の中では自然淘汰の圧力は常にかかりつづけているようです。

それにしても、受験に関しては進学校で学ぶ者たちは圧倒的に有利なことを、データが物語っていることは事実です。
データに基づく議論の大切さを痛感します。

札幌南で勉強する生徒たちは旭川医大の地域推薦枠は利用できませんね。こうした地域枠のようなハンディ(得点に換算して50-70点程度)を僻地校で勉学する者たちにあげたらいいのです。そうすると大学側はバラエティに富んだ生徒たちを集められます。

今回も興味深いデータの提供ありがとうございます。

by ebisu (2021-02-07 10:28) 

麒麟

また、別の観点になりますが、2016年の日本学生支援機構の大学別奨学金貸与率のデータがあります。(以下、抜粋)
慶應が11%、東大13.2、一橋14、東工大15.5、京大20、早稲田20.6、名大22.1、阪大23.3、北大27.8、東北大33.6、札幌医大38.5、旭川医大39.9、小樽商科大44.5、室蘭工業50.6、北海道教育大52.5、北見工業53.8、公立はこだて未来54.5、釧路公立64.3、名寄市立64.9となっており、概ね偏差値と逆相関になっております。
このことから、就職実績の高い高偏差値大学ほど数百万円の奨学金返済がない状態で社会人生活をスタートさせ、かつその多くが優良企業に就職し順調に貯蓄を増やすことが可能となる一方で、その反対になると奨学金返済で手一杯の人が多くなり、格差が固定化されていくという現実を示唆しています。
前者は大学入学までに、私立学校の学費や塾・予備校代を年数十万から百万単位でかけてもらえた家庭の子息が多いでしょうが、(札幌南はともかく、日比谷やラ・サールは通常塾なしで受かるところではないです)後者になると、公教育を目一杯活用するしか手段がなかったという家庭も多いと思われます。
今後少子化が進み、地方では高校の統合がさらに進んでいくでしょうが、進学希望の生徒のための学習環境を疎かにすると、国公立大学の合格水準に達することが出来ないために、レベルが低く学費の高い私立大学などに、奨学金返済を背負い進学せざるを得なくなる生徒が増えると考えられます。
by 麒麟 (2021-02-07 15:07) 

ebisu

麒麟さん
こんばんわ。
偏差値で奨学金貸与率がグルーピング化できるのですか。そして偏差値が低いほど奨学金貸与率は高くなる。

「みんなの大学情報」の偏差値では
小樽商大 50
北海道教育大 42.5-50
釧路公立大 45
北見工大 45
室蘭工大 37.5-42.5

偏差値の低い学校は上場企業へ就職できるのは上位3%もいるのかな。ブラックな企業へ就職して借金返済はとってもきつい。女子は借金を返済するためにかなりの割合で風俗へ就職せざるを得なくなるでしょうね。嫌な世の中です。
田舎から進学で出てきた子どもたちがそのまま首都圏で就職すると、住居費が高い、スマホやパソコンで通信費がかかる、食事は全部自前。ボーナスで穴埋めしないと衣服代がでませんね。そのうえ借金返済。
都会出身の子どもたちは、実家から通勤、住居費はただ、水道光熱費もただ、つまりほとんどのお金を衣服や遊びに投入できます。まるで生活が違います。

そういう現実は40年前にもありました。上智大学や慶応大学卒の新卒の女子の生活を青森から出てきた女子社員が羨ましがっていました。

では、進学しないで就職すればといっても、地元で成績優秀でないといい企業には就職できない現実があります。だから、偏差値の低い大学や専門学校へ進学のために、なにがなんでも地元を離れざるを得ない生徒たちが大半です。

ほとんどのケースで経済格差はずっと続くのでしょう。
団塊の世代が進学したころに比べて、状況がずいぶん悪化しているように感じます。
どうすればいいのか答えが見つからない。
by ebisu (2021-02-07 21:39) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。