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#3726 日本語音読トレーニングのススメ:低下する学力に抗して Apr. 18,2018 [71.データに基づく教育論議]

<最終更新日時:4/18朝10時>

<序>
 春は新入生の季節である。
 ニムオロ塾は高校生が増えた、塾生の6割を占めている。なんてことはない、環境が変わったせいである。
 理由は二つ、
 ①高校が1校になり、中学生の塾通いが激減した
 ②根室には高校生対象の塾がたった二つしかない
 こうした変化は根室の中学生の著しい学力低下を招いており、都会へ流出せざるをえない子どもたちの将来を危うくし、他方で長期にわたる人材劣化を引き起こして町の未来に甚大な影響を与えることになる。
 未来は変えられる、大人たちがそれぞれの仕事の責任をまっとうすればいいだけ、いま根室の大人たちが自分に課せられた仕事に向き合わずサボタージュすれば未来は変えようがなくなる。

<「中学卒業=根室高校入学」の影響>
 根室西高校が現3年生が卒業する今年度末でなくなるのですでに募集停止入試は昨年度から根室高校1校体制へと変わった実質的に全入だから入試はないも同然。成績が悪い中学生が根室高校に入学したくて勉強から逃げずに取り組むということがなくなったから、中学生の学習塾への通塾率は3年生で2割程度だろう。1・2年生はもっと低い。その結果、低学力層の膨張と底抜け減少が起きている。
 勉強しなくても根室高校に入学できるという状況が中学生の意識を変えてしまった。根室高校への進学率団塊世代のころは4割以下数年前までは7割いま100%。根室高校への進学に努力する必要がなくなった、成績下位層が勉強しなくなってしまった。まことに嘆かわしい。
 以前のシェーマはa、現在のシェーマはbである。

 a:中学卒業 ⇒ 入試 ⇒ 根室高校or根室西高校入学
 b:中学卒業 = 根室高校入学


<普通科の生徒の学力が著しく低下しつつある>
 13年前の根室高校普通科はFランクで五科目合計点150点だと不合格だった。いま、150点を超えて入学している生徒は20-30人に過ぎない。つまり、「普通科特設コース」35人のうち、数人は13年前なら普通科不合格である。160人の定員のところ定員割れで120人ほどしかいないが、90人は標準的な普通科の教科を消化できな学力ということ。普通科の生徒の半数以上が13年前の根室西高校の生徒の学力と判断してよい。そんなに学力格差が大きいのに、根室高校の先生たちは同じ教科書で教えなければならない、できるわけのないことにチャレンジしなければならない状況が生まれている。だから、右往左往している。数学の問題集の選定にそれがあらわれている。
 進学する生徒たちは、低下した授業レベルで3年間すごしたあと、全国レベルで入試競争を勝ち抜かなければならない。だから、偏差値50前後の大学へ進学する生徒たちや競争倍率の高い専門学校へ進学する生徒たちに塾通いが増え始めた。


<学力低下は本人の貧困化と根室の地域経済の衰退を招く>
 高校を卒業して進学するときや就職するときには、学力の低下していないほかの地域の子どもたちと学力競争になるのだから、そこで負ける者が増える。学力格差から貧困化していく者が増えるのである。都会は大企業が多い、学歴と学力がなければ入社すらできない。優良中小企業も多少条件が緩和されるだけで事情は似たようなものだ。学力の低い者は3Kの職場やブラック企業を転々とすることになる。
 困ったことになるのは本人ばかりではない、学力が劣化した「人材プール」から、成績が悪い高卒でも雇用せざるを得ない地元企業が困まる
 団塊世代は、中の上の優秀な高卒がたくさん地元に残った、それでも根室の町の衰退は避けられなかった。いまでも課題は山積みだが、その山を崩せる人材がいない。
 子どもたちの学力の現状を放っておけば、30年後はどうなるのか想像に難くない、地元企業の大半が人材不足と人材劣化から消えている


<学力テストデータに現れている学力低下現象>
 先週、お迎えテストがあり、昨日全国学力テストが実施された。
 中学3年生のお迎えテストは五科目合計点で300点満点、数学の問題の難易度が低かったようで、昨年より平均点が5点も高くなっている。それでもB中学校の五科目合計平均点は95点前後、C中学校は90点前後だろう。わたしの知る限り、2校が同時に100点を割ったことはない。過去20年間で見ても最低を記録したと思わざるをえない。2校で根室の中学生の半数を占める。あとの半分も似たような状況だとしたら、低学力層の底が抜けたようなもの
 比較のために根室管内の他地域のデータを挙げておく。別海の中学校は一番最後の学力テストの五科目平均点が150点を超えたという。釧路では公立中学校14校で昨年実施された学力テストで五科目平均点が100点を割ったところはない。釧路管内と根室管内全域を見渡しても、お話にならないくらい根室の市街化地域の中学生の学力が低いのである。
 昨日実施された全国学力テストでは根室市内の平均正答率は過去最低を記録しただろう


<仕事の責任放棄:根室市教委、教育長、市議会文教厚生委、そして市長>
 四月のお迎えテストの五科目合計点が史上最低を記録するであろうことは、現3年生が2年生の時に受けた学力テストの平均点と得点分布から推計を行い、何度も警告していた。いくら言っても根室市教委はふだんの学力テストの結果データをモニターすらしない。そして具体的なデータを欠いたまったく効果のない教育政策を繰り返すのみだ。そのせいで根室の子どもたちの学力は下がりっぱなしだ。
 根室市教委は有効な教育政策を立案し実行するために、ふだんの学力テストの結果をモニターすべきだ。長谷川市長も子どもたちの学力低下に危機感をもつべきではないのか?


<仕事の責任:小さな努力の積み重ね>
 教育に携わる大人たちが、忠実に仕事の責任を果たせば、子どもたちの学力は飛躍的に上げることができる
 わたしはニムオロ塾に通う子どもたちを指導することで、自分の仕事の責任をまっとうしたい。

 今日は第3水曜日、中3年生と高1の生徒たちに、90分の日本語音読授業をする日である。授業料はとっていないから、読解力を上げて、国語や数学や社会科や理科の予習ができるようになりたい生徒は来たらいい塾生でなくてもやる気があれば3人だけ受け入れ可能だ。音読トレーニングに参加しても入塾を勧めることはありませんからご心配なく。空いている椅子の数がそれだけなので受け入れ人数に制限があるので悪しからず。第1水曜日と第三水曜日の7時20分に来てもらえばいい、9時までノンストップのハードな音読トレーニングだ。

 学校でやる場合は「同期音読トレーニング」がよい。先生が読むのにかぶせる形で音読する。先生は最初はゆっくり読み、次第に速度を上げていく、最後はまたゆっくりに戻す。これなら1クラス30人でもやれるだろう。輪読と組み合わせればうまく回る。
 日本語音読トレーニングは学力向上に大きな効果があるが、とっても手間がかかるから、根室の中学校でやっている学校はない。部活時間を削ってももやるべきだとわたしは思う。現在の中学生はほんとうに本が読めない者が多い。3割は教科書を読めないか、読んでも理解できない、それほど日本語能力が未発達の生徒が増えている。スマホが中学生に普及し始めた6年前がターニングポイントだった。
 読む速度が2倍となり、精度が向上すれば、人の半分の時間で予習が可能になる。国語も数学も社会も理科も教科書は日本語で書かれている。英語の教科書だって解説は日本語でなされている。日本語読解力、日本語語彙力が学力の土台を為していることはだれでも理解できる単純な事実だ。それはトレーニングすることで鍛えられるわたしは基本に忠実に仕事をするだけ

 四月から使っているテクストは、数学者の藤原正彦が2011年に著した『日本人の誇り』(文春新書)である。本は自分で購入してもらうことになっている。地元の本屋であるリライアブルで注文したらいい。
(矢沢永一の同名の本が青春出版社から出されているので、間違えないように。こちらの本も面白い。)

#3640 心情を表す語彙が課題 Nov. 18, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-11-17


 #3607 同期音読トレーニング Sep. 6, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-09-06

 #3509 数学のセンス(2):「同型性」と「拡張」⇒どのように考えるのか Feb. 19, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-02-19


〈 音読リスト〉
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< 国語力アップのための音読トレーニング >
 中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』
○『声に出して読みたい日本語②』
○『声に出して読みたい日本語③』
○『坊ちゃん』夏目漱石

○『羅生門』芥川龍之介
○『走れメロス』太宰治
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
 『五重塔』幸田露伴
 『山月記』中島敦
●『読書力』斉藤孝
●『国家の品格』藤原正彦
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳
●『日本人は何を考えてきたのか』斉藤孝

『語彙力こそが教養である』斉藤孝
●『日本人の誇り』藤原正彦

◎ 『福翁自伝』福沢諭吉
◎『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』山本義隆(物理学者)

 14年間で15冊読んでいる、現在進行形が1冊で次の読むのがリストの最下段の本、合計17冊。
 その後に読むものをどうしようかいま考えている。だんだんレベルが上がってきた。哲学に踏み込むかどうかは生徒の意欲次第。

◎『善の研究』西田幾多郎
◎『古寺巡礼』和辻哲郎
『風土』和辻哲郎
 『司馬遼太郎対話選集2 日本語の本質』文春文庫
 『伊勢物語』

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で使用した実績がある。◎は大学生レベルのテクストである。音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが2年前から希望者のみに限定している。)
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日本人の誇り (文春新書)

日本人の誇り (文春新書)

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/04/19
  • メディア: 新書


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