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#3657 成績上位グループに難易度の高いプリント: B中学校数学 Dec. 9, 2017 [71.データに基づく教育論議]

  B中の三年生が小さなプリントを2枚もってきた。難易度の高そうな数学の問題が載っていた。分野は「円と円周角/中心角」なのだが、8題中6問がわからなかったというので、質問を受けた。授業の終わりのほうで先生がざっと解説したようだが、呑み込めなかったという。
  弧の長さと円周角は比例関係がある、そこは教科書にあるから、慣れればいいだけ。円に内接する四角形の性質を利用すれば、問題を解く手がかりが見つかるが、高校の範囲である。勘のよい生徒は、教えなくても内接四角形の対角の輪が180度であることにすぐ気がつく。発展的内容として教えていいはずで、生徒が聞き漏らしたのだろうか。
  難易度から判断して、おそらく、どこかの私立高校入試問題からの採録だろう。道立高校入試には出題されない種類の問題だった。

  この生徒は2週間前に平成22年度(?)の入試問題の「大問6」が解答を見てもわからないので解説してほしいともってきた。平面座標と三平方の定理と確率の複合問題である。3分野の複合問題はわたしの分類ではCクラスの難易度。三平方の定理は学校ではまだやっていないから、そこをやってから説明するから、そのときにもう一度もってきて質問するようにと伝えた。三平方の定理の基本問題を一通りやってからでないと、解説しても理解できないだろう。
  根室高校入試には裁量問題が使われているから、そろそろこうした複合問題にトライしないと間に合わない。定期テストで、3分野の複合問題は見たことがないから、生徒は独力でやらざるを得ない。教科書全分野を終わるのは、早くても1月末だから、生徒たちは1か月しか複合問題にトライする期間がない。これでは3分野複合問題はアウトだ。
  1月末までに教科書を終わればいいというのは、最低限のことで、できれば12月中に教科書を終えて、複合問題の演習を授業でやってもらいたい。根室高校普通科は裁量問題なのだから。

  ところで、学力テスト総合C(11/9実施)のB中3年生の数学平均点は14.5点(60点満点)、20点以下が56人中40人だから、71.4%を占めている。この生徒たちは3分野の複合問題は学力的に無理だろう。2分野の複合問題を2か月くらいみっちりやってあげたら平均点が伸びる。
  根室高校普通科ひどくレベルが低下してしまったが、なぜか裁量問題を採用している。10年前は150点でも不合格だったが、根室西高校の廃校が決まってからは合格最低点の底が抜けてしまった。五科目合計点が50点でも合格できるだろう。
  五科目合計点で100点以下は不合格とすべきではないのか、まったくやる気のない生徒を公立高校で受け入れる必要はないとわたしは思う。甘やかしてはいけない、高校が荒れることになる。

  B中学校の三年生担当の数学の先生が、上位1割の成績の生徒に難易度の高い問題プリントを配布するようになったのは大きな改善である、拍手喝采したい。ちょっと難しすぎたかもしれない。8題中6問質問した生徒は、2年生の時は4回の定期テストで3回が90点越え、11月下旬の定期テストでも80点台だったから、上位10-20%の得点層である。B中の学年トップでも1時間で4問正解するのは無理そうだ。いい刺激になっただろう。

<定期テスト数学問題の難易度チェック>
 学力テスト総合Cの平均点(百点満点換算)と定期テストの平均点を比べる。
         C      定期テ    差
 B中: 24.2   60.7   +36.5
 C中: 18.2   40.2   +22.0

  数学に関しては、どちらの学校も定期テストの難易度が学力テスト総合Cに比べて著しく低い。とくにB中は定期テストの難易度がゆるすぎる。
  C中は難易度をだいぶあげたように見える。両校に共通する問題は低学力層へのテコ入れである。

<高校1校体制の弊害>
  今年度の入試から、根室西高校が募集を停止したので、根室高校1校体制になっている。だれでも入れるから、成績下位層に勉強をしない生徒が増えた。それは学力テストの平均点の低下にはっきり表れている。学力テスト総合Cの五科目平均点はB中学校が102.9、C中学校が100.8点である。いままで、100点を切った学校は見たことがないから、過去15年間で最低水準にある。
 気になって、B中学校2年生の11/9実施の学力テスト平均点を見たら、500点満点で184.5点、200点を大きく割ってしまった。この学年も勉強にやる気を失った生徒が増えた。

  学力上位層の枯渇化現象がどんどん進んでおり、それに加えて、高校1校体制でだれでも根室高校に入学できるから学力下位層のなかでまったく勉強をしない生徒が増殖している、その結果学年平均点がガンガン落ちていく。
  この子たちが、20年後30年後に根室の町を支える主力である。教育を軽視すれば町の未来がどうなるかは火を見るよりも明らかだろう。
 一番困るのはますます人材難にあえぐことになる地元企業経営者ではないか?地元企業が人材難で倒れていけば、根室の人口減少が加速する。10年後、20年後、30年後の根室の町は、いまわたしたちがなにをするかで決まってしまう。10年たってからあわてても手遅れ。自分たちの町の未来はそこに住む者が決めている。


<B中学校2年11/9の学力テストデータ>
 ハンドルネーム麒麟さんから投稿欄を通じて要請があったので、B中学校2年生の11/9学力テストデータを貼り付けます。
 EXCELへ入力して分かったのですが、五科目合計平均点人数合計と科目別の人数が一致していません。五科目合計点の分布表のほうは受験者数ではなくて、在籍人数かもしれません。

 
国語 56.2
社会 26.9
数学 31.6
理科 36.6
英語 33.2
合計 184.5

 「得点分布図」に記入してある人数を合計すると55人ですが、科目別分布表の人数を加算すると次のように一致していません。


<科目別得点分布>      
  国語 社会 数学 理科 英語
91-100 1 0 0 0 0
81-90 6 0 0 1 2
71-80 8 0 1 3 2
61-70 9 0 0 7 5
51-60 15 5 7 3 2
41-50 6 6 8 4 3
31-40 3 12 12 16 13
21-30 2 11 15 9 10
11-20 1 11 5 5 11
0-10 2 5 5 3 4
合計人数 53 50 53 51 52

 人数が科目ごとに異なっていますが、仮にこちらが実際の人数だとすると、科目別合計点は次のようになります。

    合計点 真の平均
国語 3091 58.3
社会 1479.5 29.6
数学 1738 32.8
理科 2013 39.5
英語 1826 35.1
合計 10147.5 195.3


 最初の表の平均点に55人をかけた数値が「合計点」です。それを科目別得点分布表の科目別合計人数で割ってだした平均値が「真の平均」です。五科目合計の平均値は、「真の平均値」を合計しています。

 在籍人数が55人だとすると、当日試験を受けなかった生徒が、科目ごとにバラバラなのもちょっと気になります。あとで受けさせたのも加算して科目別平均点を算出したと仮定すると、最初の表の数値は正しい。どういうデータ処理をしたのか、担当している方に確認しないことには、たしかなところはわかりません、悪しからず。


 3年前がどうだったのか、ご覧ください。C中は130点台だったのに、どうしてこんなに下がったんでしょう。市街化地域で断トツに学力が高かったB中学校は3年前もいまと変わらないほど学力が低下してしまっています。(12/10追記)
*#2900 学テ総合ABCで全国平均レベルはどれくらいの得点か  Dec. 10, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-10

*#2865 マルクスの労働観と日本人の仕事観:学校の先生必読 Nov. 13, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-13


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麒麟

過去のブログを拝見する限りで、C中の2016年11月の中2平均は230点のようです。その生徒たちが今回学力テストCが300点満点で100点ということだと平均184点の今年の二年生が来年3年生になった時、学力テストで100点を切る状態が常態化、総合で90点、10点を切る科目が出てもおかしくないと考えられます。
これが何を意味するか。筆記試験に合格することが必要なまともな学校に入ること、職業につくことが困難な生徒が大量に発生するということです。そういった生徒は厳しい労働環境の中自活すらままならない安い賃金で働くことを余儀なくされる、悪魔に魂を売るような道におちてしまう、親に寄生し続けるリスクがぐっと高まります。
そういったことは多くの中学生はおそらくきちんと理解していません。現実として見えているのは、自分はどのランクの高校なら進学出来そうか、ということでしょう。それも、進学する高校によって自分の未来が大きく変わってくるという危機感が多少なりともつかめていることが前提です。定員割れの高校しか存在しない地域では、高校受験が学力低下のストッパーとして機能しません。勉強しなくても、(地域では)まともな高校に入れるのなら平均的な中学生は勉強しません。
そして、高校を卒業する、その時になって初めて現実に直面します。既に手遅れです。
地方では子供に勉強・学力・学歴の大切さをきちんと伝えられる大人は多くありません。
今後もその割合はぐっと減っていくでしょう。地方の衰退は、産業や人口に関する統計数値以上に、地方に残る人材の質の低下の問題が深刻であると思われます。そういったものが数十年後の地方崩壊を現在の予測よりいっそう加速させていきます。このように考えると試験の平均点の急激かつ大幅な低下は、数十年後の未来からの重要な警告といっても過言ではないでしょう。
by 麒麟 (2017-12-09 20:02) 

ebisu

麒麟さん

2016年のC中学校2年生の11月9日の学力テスト平均点は223.6点でした。それが3年生になって2017年11月9日の学力テスト総合Cでは100.8点(300点満点)です。
同じ順序で、B中学校は2016年246点、2017年102点です。

B中の現在の2年生の五科目平均点が184.5点ですから、ご指摘のように来年の学力テストの平均点は90点すら危ういといえます。

>これが何を意味するか。筆記試験に合格することが必要なまともな学校に入ること、職業につくことが困難な生徒が大量に発生するということです。そういった生徒は厳しい労働環境の中自活すらままならない安い賃金で働くことを余儀なくされる、悪魔に魂を売るような道におちてしまう、親に寄生し続けるリスクがぐっと高まります。

じつはすでに20代後半から30代で親に寄生している「大人」が増えています。これが5年後には激増することになります。

>高校を卒業する、その時になって初めて現実に直面します。既に手遅れです。

その通りですが、学校も根室市教委も市長も市議会も学力問題に関心が薄いのです。

>地方では子供に勉強・学力・学歴の大切さをきちんと伝えられる大人は多くありません。
今後もその割合はぐっと減っていくでしょう。地方の衰退は、産業や人口に関する統計数値以上に、地方に残る人材の質の低下の問題が深刻であると思われます。

これもその通りで、地元に残った人材の質の低下がすでにいろいろな分野で問題を生じています。問題を指摘する人材も、それを解決しうる能力をもった人材も激減してしまっています。
学力テストデータの示すところは、それがもっともっと深刻化するということです。

>このように考えると試験の平均点の急激かつ大幅な低下は、数十年後の未来からの重要な警告といっても過言ではないでしょう。

企業経営者や教育関係者がもっと子供たちの学力低下に関心をもってもらいたい。
by ebisu (2017-12-09 20:30) 

麒麟

差し支えなければB中2年11月実施の科目別平均点及び得点分布を分かる範囲でよろしいですので教えていただけますか?
by 麒麟 (2017-12-09 21:52) 

ebisu

麒麟さん
2017年11月のB中2年生のデータご要望にお応えしたいと思いますが、用途を投稿してください。

by ebisu (2017-12-09 22:33) 

麒麟

何かに使用する目的ではなく、どれか特定の科目が著しく低いのか、もしくは全体的に低いのか気になったためです。具体的な数字を見た方がイメージをつかみやすいと考えたため依頼致しました。
by 麒麟 (2017-12-09 22:44) 

ebisu

麒麟さん

了解。
いまデータをEXCELね入力したところです。
本欄へ追記します。

入力して、データ処理にミスのあるらしいことが判明しました。五教科合計データの人数は55人ですが、科目別にみるとそれよりも少ない人数になっています。個人別のデータを合計して、55人で割って五科目合計平均点を算出したようです。

本欄へ張り付けて説明します。


by ebisu (2017-12-09 23:12) 

ebisu

麒麟さん

本欄へ張り付けましたので、ご覧ください。

by ebisu (2017-12-09 23:26) 

クロアチア

根室の中学3年生の結果を見ると、これは・・って思います。

こういう問題(出展は道外の公立高校対策模試)なども根室の中学3年生では厳しいのかも・・・
https://i.imgur.com/RoaspDd.jpg
by クロアチア (2017-12-27 20:19) 

ebisu

クロアチアさん

おはようございます。投稿ありがとうございます。
根室の市街化地域の3中学校はそれぞれ50-60名の規模ですが、学力テストで出題されたとして、お示しの問題に正解できるのは学年に3人まででしょう。60点満点の学力テストで40点を超えられなければ、この標準レベルの(ほとんど基本問題)に正解できません。
しかし、学年トップは3分でこの3題の問題に正解できます。

面白い材料の提供ありがとうございます。

by ebisu (2017-12-28 09:14) 

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