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#3430 検証:東京電力が原発事故の廃炉費用計上で債務超過になる  Oct. 7, 2016 [14. 原子力発電]

 ついに最低気温が10度を切った。昨日(10/7)の最低気温は8.9度、今朝4時に7.0度を記録した。
 このごろわたしは若い人たちに向けてブログを書くことが多くなった、今回もそうである。あなたたちの未来に大きく関わることだから、読んで考えて欲しい。

 10月5日に廃炉費用の一括計上で債務超過になるので、電気事業会計規則を変更して欲しいと、東京電力広瀬社長から政府に要請があった。
 債務超過になるならなればいい、そして経営者が責任を取ればいいだけのことだろう。一民間企業が債務超過の恐れがあるからと、会計規則を変えた例はリーマンショックの銀行救済策としてあった。損失の繰り延べを5年から7年に延長したのである。その7年間に銀行は膨大な利益を上げながら、法人税を一円も払わず繰り延べされた損失を税金で償却している。
 こういうでたらめをやるからまた付け込まれるのである。食品に含まれる放射生物質の放射能を放射性廃棄物としての管理基準の100ベクレル/kg以下としたのもそういうでたらめの好例であった。
 こういうでたらめを次々にやっていたら日本という国は芯から腐ってしまう。

 事実がどうなっているのか、公表資料である東京電力の決算書で確認してみたい。「平成27年度貸借対照表」では、自己資本額は1.8兆円ある。一括計上しなければならない廃炉費用は8兆円とされているから、一括計上すれば6.2兆円の債務超過となる。

 債務超過になったらどうなるのだろう。株価はゼロ、現行の株を100%減資してから8兆円の増資を行わなければならない。原発再稼動を目指す経営方針を掲げたら、リスクが大きすぎて応募する投資家はいない。増資新株の引き受け手がいなければ清算手続きに入る。その前に会社更生法の適用になるのだろう。管財人が指名されて再建案を作ることになる。役員も部長職も解雇されるだろう。当たり前の話である。
 東電の大株主は銀行である、東電が債務超過になり経営破綻すれば減資するから銀行保有の東電株はゼロになり損失が発生する。普通の民間会社の破綻処理は株主も責任を取ることになる、そんなことは当たり前のことだ。

 3基の原発がメルトダウンを起こすという史上最大の原発事故を起こしながら、誰も責任を取っておらずぬくぬくと席を暖め続けている。東電は事故処理費用を電力料金に載せて、料金値上によって事故処理費用をカバーして、27年度も巨額の黒字を計上している。

 直近の平成27年度決算書で何がどうなっているのか確認してみたい。( )内は平成26年度のデータを示す。

  売上高 6.0兆円
  営業利益 3722億円 (3165億円)
  経常利益 3293億円 (2080億円)
 <特別利益>
  原子力損害賠償・廃炉等支援機構資金交付金 
         6997億円 (8685億円)

  純資産 1兆8005億円 (1兆6579億円)

 <固定負債>
  社債      3.4兆円 (2.9兆円)
  長期借入金 2.5兆円 (1.8兆円)
  原子力損害賠償引当金 1.06兆円 (8378兆円)

*東京電力平成27年度決算書
http://www.google.co.jp/url?url=http://www.tepco.co.jp/press/release/2016/1280244_8626.html&rct=j&frm=1&q=&esrc=s&sa=U&ved=0ahUKEwj35L2X0cfPAhUGGJQKHYv7D5sQFggUMAA&usg=AFQjCNHxU6L8H2fSpLc1aQ1QTdXbIxCBgg

 決算書から、東京電力が経営破綻して困るのは長期貸付をして、社債や株を保有している大手銀行である。
 国から平成26年度は8378億円、27年度は1兆600億円の交付金を受け取って、さらに料金値上げで原発事故関連費用をカバーしながら、それぞれ2080億円、3293億円もの利益を上げている。

 原発事故の後処理費用は料金値上げで消費者にかぶせ、そのうえ国からは二年間だけで1.9兆円もの交付金を得ているのである。そして役員は一人も原発事故の責任を取らない。もちろん、銀行も貸手責任を負わないし、株主も出資責任を負わない。役員・銀行・株主が三者とも責任をとらない、重大なモラルハザードが起きている。

 東京電力は破綻すべきだ。役員も銀行も株主もそれぞれの責任を取ればよい。一民間企業の債務超過を救うために会計規則を絶対に曲げてはいけない。


< 余談:原発コストに関わる会計処理は適切か? >
 原子力損害賠償引当金の残高が1.06兆円しかない。固定負債を調べても「廃炉引当金」が存在しない、だから原発重大事故があると一括計上しなければならなくなるのである。それが8兆円といわれている。膨らむことはあっても、この金額ですむことはないだろう。使用済み核燃料も再処理して使用すると、元のウランを輸入して燃料にするときの数十倍のコストに膨れ上がる。再処理費用が莫大なのである。中間貯蔵施設での使用済み核燃料保管費用も引当金がないし、最終処分場での保管コストについても引当金がない。かならずかかる費用だから、核燃料の使用期間に按分して引き当て計上すべきだ。
 こうした必要不可欠な引当金や積立金を考慮に入れたら、原発のKW/h当たりの発電コストは十倍以上に膨れ上がるだろう。会計規則どおりにやっているのだとしたら、実情にまったく合わない電気事業会計規則を原発事故を前提に見直す必要がある。政府は絶対にやらない、理由は簡単、原発の発電コストが他の方式に比べて圧倒的に高いことが明らかになるからだ。
 なぜこんなに原発を稼動させたがるのか?


*#3428 東電広瀬社長発言:廃炉費用計上で債務超過になる Oct. 5, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05


*
諸悪の根源:食品放射能基準値100ベクレル/kg
http://www.sting-wl.com/yagasakikatsuma10.html

「矢ケ崎克馬教授が話されたドイツ放射線防護協会は科学者の団体ですが、その勧告…セシウム137なら大人は8ベクレル、子供は4ベクレル…は世界的に見ても非常に厳しい基準です。この基準…私の知る限り世界一厳しいんじゃないでしょうか。」


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