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#3418 年金積立金運用報告書を読む⑦:気になる変化 Sep. 22, 2016 [94.年金]

 データを整理してみて、基礎年金拠出金がどういう性格で、どういう計算方式で算出され、会計の仕組み上どのように扱われているのか疑問がわきました。
(そうした疑問にZAPPERさんが投稿欄で的確に答えてくれています。次の回ではそうした投稿欄での情報提供と議論をご紹介します。)

  データを見ていておやっと思ったことがありました。基礎年金拠出金の総支出に占める割合の変化が年を王ごとに上昇していますが、理由がわかりません、データを見て一緒に考えてほしいので再掲します。
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 H36年の推計値を実績値と並べました。現状のまま放置すると推計値のようなことになりますが、政府は回避すべくさまざまな手を打つちます。後で述べますが、選択肢は四種類くらいに限られています。

                     ---------実績値--------  推計値
<収入>      H13年   H20年  H26年    H36
 保険料      21.8   24.4   27.9     25.6
 国庫負担      5.2    7.2   10.7      10.7
 運用収入      4.0    1.8    3.2         1.6
 基礎年金交付金 3.9    3.3    1.3         1.3
 積立金取崩し   0.0    3.5    0.0         8.8
 その他       0.9    1.6    2.7         2.0
  収入合計    35.8    41.8   45.8        50.0

<支出>      H13年   H20年  H26年    H36
 給付費      22.1      24.1    23.9    26.4
 基礎年金拠出金12.5    17.4    19.6       21.6
 その他       0.4       3.1       0.4         2.0
   支出合計   35.2     41.9     44.0        50.0
 年金積立金   147.3      131.7    112.1       48.1
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  基礎年金拠出金の総支出に対する割合がなぜ年々上昇しているのか理由に推測がついたら教示願いたいというわたしの要請にもZAPPERさんが答えてくれました。
 第1号被保険者の免除申請が増えていることがその主たる原因ではないかというのです。基礎年金拠出金の計算方式や会計上の仕組みが書かれたサイトも教えてくれました。年金に関する周辺情報に疎いわたしにはこれらの情報がとっても役に立ちました。専門家ノバックアップがあることはとってもありがたい。かれが教えてくれたサイトをリストアップしておきます。
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*【国民年金法】基礎年金拠出金の計算
http://sharoshiw.blogspot.jp/2015/05/blog-post_68.html

 第3号保険料問題と基礎年金拠出金
http://www.office-onoduka.com/nenkinblog/2007/04/post_34.html

 自分の年金受給開始年齢を確認しよう
http://allabout.co.jp/gm/gc/24983/

 「いよいよ始まる「年金減額」。いくら減るのか、何が問題なのか」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20130913/365190/?ST=p_bizboard&bzb_pt=0

 基礎年金拠出金の計算方式や基礎年金勘定と厚生年金勘定間の会計の仕組みがよくわかる資料が次のURLの資料です。一元化したはずなのに、なぜ厚生年金積立金から基礎年金拠出金が支出されているのか、理由は基礎年金が別勘定によって統制されているからです。それが確認できる資料がこの中にありました。こういう細かいところがわからないと全体のお金の動きが腑に落ちないのです。とっても気になっていました。
 基礎年金の財源と年金一元化問題
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/0486.pdf
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 厚生年金と国民年金は一元化されており、厚生年金会計に表示されている基礎年金拠出金は、厚生年金会計から、基礎年金会計への振り替え分であるから、GPISの勘定間の内部振り替えです。

 基礎年金拠出金割合が平成36年度に50%に達すると仮定したら、基礎年金拠出金はシミュレーションよりもH36単年度だけで6.8兆円増え、年金財政に深刻な影響を及ぼすことがわかります
 増分の計算は中1年生の数学の応用問題に使えます。「距離・時間・速度」「食塩・食塩水・濃度」と同型の問題です。
 10年間の積立金取崩額を計算したときに1次関数の式とx軸で囲まれた台形の面積を利用しました。そこで言及しましたが高校2年で習う積分を利用するともっと簡単に計算できます。数学はあっちのダンジョンでもこっちのダンジョンでも利用可能な便利なアイテムなのです。(笑)
(dungeon:地下牢、迷宮。『ソードアート・オンライン』によく出てくる用語です)
*#3105 『ソードアートオンライン16』:アリシゼーション・エクスプローディング Aug.16, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15-1
 
 計算: x / (26.4 + x + 2) = 0.5
         x = 28.4
    28.4 - 21.6 = 6.8 兆円アップ


                     ---------実績値--------    推計値
                       H13年   H20年  H26年   H36年
  基礎年金拠出金 12.5    17.4    19.6       28.4
   割合      35.5%⇒ 41.5%⇒ 44.5%⇒  50%

 シミュレーションの示すところは、非正規雇用下にあり低所得のために免除申請せざるを得ない第1号被保険者の増大をどのように防ぐかが年金制度維持の要であるということ。問題の焦点は老人の受給額減額ばかりでなく、若年層の非正規雇用比率を如何に低減するかということにあります。つまり若年層に正規雇用を保障する必要すべしということ
 労働法制の規制解除がどれほどばかげたものであったか明白です
(規制解除の旗振り役を任じた竹中平蔵氏はいま派遣業界最大手のリクルート社会長職におさまっています。あきれて開いた口がふさがりません。頭脳を己の利得にのみ使う者が増えてしまった。ズルイ、アクドイ、卑怯、昔の日本では最も嫌われた人格です。頭脳はふるさとのために、日本という国のために、人類と地球に共存する生きとし生けるものたちのために使ってこそ値打ちがあります。)

 強い管理貿易で海外に移転した生産拠点を国内に取り戻し、職人仕事を中心にした経済社会を創れば、若年層に安定した正規雇用を保障できます。そのためには、西欧の経済学の前提条件である工場労働(=苦役)とはまったく別の公理の導入が必要です。
 日本的な職人仕事観を公理に措定した経済学をベースとした経済社会を築はばよろしい。そのあたりに興味のある方は、弊ブログのカテゴリー「資本論と21世紀の経済学」をお読みください。

 ここからはわたしの仮説です。
 年金の受給開始年齢が後ろ倒しになる前から、一部の企業ではさまざまな形で定年延長がなされてきました。特に技術職の60歳代は熟練のスキルをもっているので、勤務時間短縮や給与切り下げによって再雇用するメリットが企業側に大きいのです。
 団塊世代の退職が4年前から始まりましたが、定年後に給与が半額以下でも勤務時間短縮による仕事の継続は健康維持にも収入面でもメリットが大きいのです。年金受給開始までの収入としても定年退職後の再雇用は歓迎すべき政策でした。こうした再雇用や定年延長が社会に広範囲に受け入れられつつあるのが現状だとすると、それは若年層の雇用や雇用条件にどのようなう副作用をもたらすのかについても考えておかなければなりません。
 60歳で定年退職して、低い賃金で再雇用される老人層が増えた分だけ、若年層の正規雇用職が失われれば、若年層の非正規雇用割合が増えるのは当然です。若年層の非正規雇用割合が増えれば30代になってもキャリアをつめない人の割合が増大します。これは大変なことです、生涯にわたって非正規雇用を続けなければならない人の割合が若年層で確実に増大していくことを意味しているからです。このような世代間格差は倫理的にも大きな問題です。日本人は退け際の美という日本的価値観をいま一度思い起こす必要があるのではないでしょうか。
 人工知能の発達は、スキルの高い職種を侵食していくので、単純労働が増えます。その単純労働も人工知能とシステムと機械がつながることで機械に置き換わっていきます。

 生産年齢人口が最近6年間で575万人減少していますが、それを補うために老人雇用を拡大するような政策はその意図するところとは逆の効果をもたらすのではないでしょうか。
 そうしてみますと、雇用調整金や低年齢在職老齢年金などの労働政策は副作用が強すぎる劇薬です。日銀のマイナス金利と同様に、目先の利益を追うと碌なことにならない見本のひとつと言えるでしょう。
 生産年齢人口の実績値と推計値をご覧ください。
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*http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/3-1.xls

年 次人数(千人)   %
15~64歳15~64歳
平成 22(2010)81,735 63.8
23(2011)81,303 63.7
24(2012)80,173 62.9
25(2013)78,996 62.2
26(2014)77,803 61.4
27(2015)76,818 60.9
28(2016)75,979 60.5
29(2017)75,245 60.2
30(2018)74,584 59.9
31(2019)74,011 59.8
32(2020)73,408 59.7
33(2021)72,866 59.6
34(2022)72,408 59.6
35(2023)71,920 59.6
36(2024)71,369 59.6
37(2025)70,845 59.6
38(2026)70,308 59.6



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 以下はZAPPERさんから#3417コメント欄を通じて教えていただいた雇用および年金政策です。

*大企業向け、社会保険の適用拡大策 H28年10月から
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya

 雇用延長と在職老齢年金について:高年齢雇用継続基本給付金
http://www.kitamon.com/hrs/colum/tech090518


< 貧に甘んじる覚悟 >
 若年層に非正規雇用を増やしてまで、老人の雇用を保証する必要はない。わたしたち老人は若者が正規雇用に就けるように貧に甘んじよう。社会にはまともな人件費を支払ったら成り立たぬが、必要な仕事はある。
 たとえば、過疎化し担い手がいなくなった耕作地での農業、ZAPPERさんが釧路でやっているが、当面は採算が期待できない新規事業の実験的試みへの協力など、探せば若い人には担えない仕事がある。60歳を過ぎたら、そういうところで社会のお役に立つ生活をする老人が増えたら、若年層は生きやすい。受給金額の1割減や世帯ごとの受給上限へ制限を受け入れましょう。
 政府は目先を糊塗するために余計なことをしすぎています。
 1994年3月23日に読んだ中野孝次著『清貧の思想』(草思社)を紹介します、よろしければご一読ください。

 同書211ページ、徒然草第百十二段より
「人間の儀式、いづれのことか去り難からぬ。世俗の黙(もだ)し難きに随ひて、これを必ずとせば、願ひも多く、身も苦しく、心の暇(いとま)もなく、一生は、雑事(ぞふじ)の小節(せうせつ)にさへられて、空しく暮れなん。日暮れ、塗(みち)遠し。吾が生(しょう)既に蹉跎(さだ)たり。諸縁を放下すべき時なり。信をも守らじ。礼儀をも思はじ。この心をも得ざらん人は、物狂ひとも言へ、うつつなし、情けなしとも思へ。毀(そし)るとも苦しまじ。誉むとも聞き入れじ。」

 要するに、60歳を過ぎたら世間の雑事やあれが欲しいとかこれも欲しいという「物狂い」から離れて、心の生活の充実をこそ図れということ。


*#3417 年金積立金運用報告書を読む⑥:定量的に考えよう Sep.19, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-19#comments


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文庫本が出ているのでそちらを紹介します。

清貧の思想 (文春文庫)

清貧の思想 (文春文庫)

  • 作者: 中野 孝次
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1996/11
  • メディア: 文庫


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