SSブログ

#3402 高3 Thinking Outside the box (2):本文 Aug. 29, 2016  [49.3 高校英語教科書を読む]

 'Lesson 11' の全文を転載し、後半部分を解説します。前半の2段落は前回#3401をご覧ください。

  Thinking Outside the box

1□ One morning in 2009, the newspapers above were delivered to households in several cities in Chiba prefecture. What would you do if you found one in your letter box?

2□ The newspaper was in fact an advertisement warning against telephon fraud. At that time, one hundred million yen was stolen every day.  The art directors who coceived this idea, Ajichi Mutsumi and Aoyagi Yumiko, considered that telephone fraud was continuing because people thought that they themselves could not be so easily deceived.

3□ The two designed an advertisement which resembled a newspaper with a ten-thousand-yen bill sticking out of the top.  When readers opened the newspaper, they found a headline proclaiming, "You never know when you may be deceived."  Many people thought the bill was real, but in fact, they had been taken in.

4□ The art directors knew that simply warning people about fraud was not sufficient.  Instead, they wanted readers to experience for themselves that anybody can be deceived.  By altering their approach, Ajichi and Aoyagi created a very effective advertisement.

 2□段落目までは検討がすんでいますから、3□段落目で生徒が引っかかったところを説明しておきます。
 'the two' は二人のアートディレクターですが、生徒は 'The two designed' を一塊の句であると思い込みました。ここでは定冠詞が重要です、前出の 'The two art directors' を指していますから、それさえわかれば文の構造は単純です。
  The two designed an advertisement
  (二人のアートディレクターが詐欺に誰もがかかる可能性のあることを体験させる実験をデザインしました)
 1万円札を挟んだ偽物の新聞を使った詐欺手口をこの二人がデザインしたのです。'with a ten-thousand-yen bill' で、「挟み込んだ」という意味が出ます。 'sticking out of the top' はどこにどのように挟んだのかを補足説明する句です。the top とあるので、定冠詞は新聞の上の部分であることを示しています。四つに折りたたんだ新聞の上部に1万円札が斜めに半分くらい見えて「目立つように」挟んだのです。写真がこのページの上のほうにあるので確認できます。
 stick out 「目立つ、人目を引く」、 「固定する、外側へ」と考えてもいいでしょう。写真にある1万円札はそういう状態になっています。
  stick は「貼り付ける、固定する」

 proclaimはpro(前に)+claim(叫ぶ)です。「世間に公言する」という意味です。claimerの原義は「叫ぶ人」だったのです。

 読者(they)は新聞の見出しに書かれた「だまされる瞬間は、ある日突然やってくる」という文言を見ます。たくさんの人が、紙幣は本物だと思った、しかし実際にはだまされて(had been taken in)しまったのです。

 ◎ "You never know when you may be deceived." 
  (人は自分がいつだまされるかわからないものだ⇒「だまされる瞬間は ある日突然やってくる」)
 この文は従属節ではなくて、主節に否定詞があります。

 ひとつ忘れるところでした。ここではbillは「紙幣」で「お札」を表していますが、billは請求書という意味でよく使われる単語です。
 少し脱線させてください。レストランで請求書にミスがあるときには次のように言います。
 There is a problem with this bill.
 problem は「困った問題」という意味です。文頭にI thinkを付加すると、もっと丁寧な感じが出ます。日本語でも長ったらしくやると丁寧な感じが出るでしょう。
 「申し訳ない」⇒「たいへん申し訳ありませんでした」⇒「ご迷惑をおかけして、たいへん申し訳ございませんでした」
 英語も日本語もこの辺りは共通しています。
 ⇒ I think there is a problem with this bill. Are you sure?(間違いありませんか?)
 言い方も大事です、こういう場面では怒ったようにいうのではなく、請求書を見ながらにこやかに優しく言いましょう。
 

 □4段落目にいきます。
 二人のアートディレクターは単なる警告文だけでは充分ではないとわかっていました。警告文よりも強い作用のある、誰でもがだまされうるという経験を読者にさせようと目論んだのです。

 ◎ The art directors knew that simply warning people about fraud was not sufficient. 

 この文は従属節に否定詞があることに注意。面白いですね。

 やり方を替えることで、味地さんと青柳さんはとても効果的な「アドバタイズメント=詐欺の典型的な手口を用いた周知方法」を創り上げたのです。
 advertisement は「周知方法」くらいがいいのかもしれない。

 第2段落で出てきた advertisement に後志のおじさんがコメントをしてくれた。
------------------------------------
①簡単な方からですが、
an advertisement は、衆知くらいのイメージですか。
電話詐欺に対する警告をしている衆知
訳「オレオレ詐欺に警戒をうながすためのもの」

個人が、営利目的ではなく、多くの人に何かを知らせる行為を表す言葉が日本語には見当たらないので衆知くらいしか思い付かないのですが、行政が行うなら広報ですね。advertisementはこうした行動まで含んでいます。広めること。(営利、非営利は問わない。)
------------------------------------

 慥かに、advertisement に対応する適切な日本語が見当たらないので、自然な和訳するのがむずかしい。周知という語彙は後志のおじさんの案をいただいた。明治時代の文人がやって見せたように、切れる日本語=簡潔な表現を見つけるのは至難の業、どうしても冗長な「説明的和訳」になってしまうのは、漢文の素養がないからだ。日本のインテリ層が漢文の素養を取り戻せる日が来るのだろうか。特に情報関係専門用語の訳語にカタカナ語が氾濫しており危機感を感じている。
(衆知は「多くの人がもっている智慧」ですから、漢字変換ミスでしょう、わたしもよくやっています。アップした後で気がつくたびに直しています。周知は「広く知れ渡っていること。また、広く知らせること」)

< 後志のおじさんへのお願い >
 ◎印をつけた二つの文は、否定詞notがそれぞれ主節と従属節にあります。原則、主節の方に否定詞をつけるように生徒たちは学校で習ったと思いますが、このように実際の文では「なんでもあり」です。
 後志のおじさんが快刀乱麻を断ってくれたらありがたい。わたしも生徒の一人になって解説を聞いてみます。


< タイトルの訳に挑戦してみよう >
 タイトルの訳が残っていた。関係のある文が第一段落にある。
 What would you do if you found one in your letter box?
 (郵便受けに一万円札の挟んである新聞があったらどうする?)

 Thinking Outside the Box

 the box は「郵便受け」のことだが、比喩だろう。小さな箱の中で考えるのではなく、箱の外で考慮中ということ。
 アートディレクターの二人が、だまされないように警告文を何度発信しても、自分はだまされないと思っている人がいるかぎり、だまされ続けるということを詐欺実験をすることで体験させることで一般の人々に知らせようとした。そのことが「箱の外で考慮中」ということ。
 角度を変えてみると、もうひとつの意味が見えてくる。自分はだまされないという小さな箱に閉じこもっていたら、詐欺被害に遭うから、「自分はだまされない」という箱の外、つまり「だれでもだまされかねない」という風に、箱の外で考えるということだろうか。

 「自分もだまされかねないという前提で考えよう」


< 余談: 通貨偽造は殺人罪よりも重罪! >
 右側のページを見ると、二人のアートディレクターがデザインした朝日新聞の偽物の写真が載っている。表側の見出しは、「だまされる瞬間は、ある日突然やってくる」、裏表紙には「こんな電話は、まず疑ってください」とある。どちらも下段に大きな太字で「千葉警察署」と印刷してある。こういうことだったのか。警告用の印刷物をただ配布したって効果がない、体験することで理解してもらいたいというのが二人の企画の要点。
 表の面にはオレオレ詐欺事件の新聞報道がたくさん転載されている、裏面にはオレオレ詐欺の注意事項が7項目箇条書きになっている。なんと素晴らしい企画だろう。
 ついでに言えば、紙幣が表半分だけカラーコピーした偽物であることを書き足してもらいたかった。そうすればもっと内容がよくわかった。紙幣のカラーコピーは表裏をやったら、紙幣の偽造になるので言及を避けたかったのかもしれない。ならば、そう付け足せばよいと思うのだが、罪が極端に重いからリスクを避けたのか?
 通貨偽造の罪刑法148条に規定があり、「無期または懲役3年以上の懲役に処する」となっています、重罪です。
 軽いいたずらでカラーコピーをしても、とんでもない重罪になります。殺人事件並みの重い罪だと考えてください。こういうことをちゃんと知らなければとんでもないことになります。高校時代はしっかり勉強してください。
 職場で不満があり、何度か放火した事件が根室でありました。放火が重罪だとは知らなかったのでしょう、知っていたらやるわけがありません。ちょっとした仕返しのつもりでやったことで、だれも怪我もせず、死ぬ人もいなくても、放火は殺人罪並の重罪です。
 たとえば、刑法108条に定める現住建物等放火罪は「死刑、無期懲役、5年以上の有期懲役」です。2004年の改定以前は、殺人罪よりも重罪でした。
 これは昔、建物が木造で屋根も薄い板を敷いた柾屋根が多かったからです。風が強ければ町中の建物の半分が焼失するような大火が各地であったためです。
 高校時代に、こういう教材に接したときに、先生たちが通貨偽造や放火の罪について生徒にしっかり説明してほしいと思います。無知は大きな罪を引き起こすことがあります

 そういう観点からみると、英語の教員の採用を英米文学部出身に限定してはいけませんね。それこそ「小さな箱の中で考える」ことになります。英語の教員である先生たちは、こうした刑法に関する知識も必要であることを理解してください。いま知識のない人は、他の専門分野の本をたくさん読んで、一般常識と他の分野の専門知識を獲得してください。生徒たちが知っておかなければならないことはたくさんあります。己の無知でその機会を奪ってはなりません。プロの仕事とはそういうものだと思います。



*#3401 高3 :'Thinking outside the box' を読む(1) Aug. 28, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-08-28


      70%       20%      
 日本経済 人気ブログランキング IN順 - 経済ブログ村教育ブログランキング - 教育ブログ村


nice!(0)  コメント(5)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 5

後志のおじさん

リクエスト、承りました。

結論から言えば、「どちらも成立する。」ですが、実例をペーパーバックからサーチしてみます。実は今日も少し探したのですが、いつの間にか読み耽ってしまって(笑)

まあ、これも「受験神話」のひとつでしょう。ペーパーバックひとつ自力で読めないのに英語を教えている連中がけれんみたっぷりにでっち上げた。

私の頭の中の理解を、先に書いておきます。
Adv の文中ポジションと同じにとらえています。

Adv の文中ポジションは4ヵ所あります。
Adv + SV + Adv で2ヵ所。
動詞の前と後の2ヵ所、計4つです。

文修飾と動詞修飾の軸と前修飾と後修飾の軸があるわけです。

で、文修飾は、{文全体}、動詞修飾は(動詞)を数学の中かっこと小かっこのようにくくる。

前修飾は規定し、後修飾は付加的に働く。

中学生レベルでも理解できる「単語」で4タイプを作ると、

At school I studied German.
I at school studied German.
I studied at school German.
I studied German at school. ですか。
(全て成立する英文ですよ。)


リクエストに戻って、
主文に否定従属節肯定は、文修飾型。
主文に肯定従属節否定は、動詞修飾型。

私はこんな感覚です。



by 後志のおじさん (2016-08-29 22:45) 

ebisu

早速の解説ありがとうございます。

◎ "You never know {when you may be deceived.}"
これは主文否定型ですから、文修飾型で、否定詞は文全体を修飾しているということですね。
neverはknowを修飾するのではなくて、中括弧の文全体を否定する。

◎ The art directors knew that simply warning people about fraud {(was) not} sufficient.

こちらは動詞修飾型で否定詞はwasを修飾している。
括ってみましたが、これでよいのかどうか心もとないので、中括弧と小括弧はこのケースの場合どのように使うのでしょう?

これは、ちょっと驚きです。
>At school I studied German.
I at school studied German.
I studied at school German.
I studied German at school. ですか。
>(全て成立する英文ですよ。)

2番目と3番目は、非文のように感じますが、全部OKですか。
でも、頻度はほとんどゼロに近くありませんか?

主文否定従属節肯定型の文を主文肯定従属節否定に書き換えたときに意味に違いが出る場合は意味に応じた表現形式、すなわちnotのポジションが決まる。

たとえば、
He knows that his son will not come tomorrow.
(息子が明日来ないことを知っている)
He doesn't know that his son will come tomorrow.
(息子が明日来ることを知らない)
notのポジションは、伝達したい意味によって決まります。

主文否定従属節肯定型と主文肯定従属節否定型に意味上の際が出ない場合は、notは主文へ移動するのが普通のようです。
I think I don't order this.
I don't think I order this.
これら二つの文に意味に違いはありませんから、ふつうはnotのポジションは主文ということになるのでしょう。

わたしが例に挙げた文はどちらのタイプか判定してみます。
◎ The art directors knew that simply warning people about fraud was not sufficient.

この文の否定詞を主文のほうへ移動してみます。

The art directors didn't know that simply warning people about fraud was sufficient.

意味がまったく違ってしまいます。だから、この場合は伝えたい意味に応じたポジションに否定詞が来ます。

これらの結果から、否定詞の位置は、伝えたい意味に応じて決まるということではないでしょうか。主文に来ても、従属節に来ても意味に違いが生じない場合は、ふつうは主文に否定詞をおく。従属節で直接否定するよりも、従属節は肯定文にして、主文に否定詞をおくことで表現として穏やかな印象が期待できるから、そんな印象をもちました。

---------------------------------
①文修飾と動詞修飾の軸と前修飾と後修飾の軸があるわけです。

②で、文修飾は、{文全体}、動詞修飾は(動詞)を数学の中かっこと小かっこのようにくくる。

③前修飾は規定し、後修飾は付加的に働く。
---------------------------------

③はよくわかるのですが、①の前半部の「文修飾と動詞修飾の軸」を具体例で示していただけませんか?
②を具体例で括弧をつかって示していただけたら、ちゃんと理解できるような気がします。
by ebisu (2016-08-30 00:09) 

ebisu

主節と従属節(名詞節)のいずれに否定詞を置くべきかについて、判断基準がわからなかったので、問題提起をしました。
頭の中には、どちらにおいても意味が変わらない文を想定していました。
材料として教科書から2文例ピックアップしましたが、否定詞の位置は両方ありました。

後志のおじさんが以前、「辞書だけで間に合っている」と書いてましたので、今回は後志のおじさんの意見を見てから、GENIUS4版のnotの項を読みました。not に関しては受験参考書よりも参考になりました。

議論のお陰で整理がついたようなので、後ほど本欄でまとめます。

①否定詞をどちらにおいても意味が同じなら、否定詞は主節でも従属節でもどちらでもかまわない。ふつうは本動詞の前に置く。この場合、否定詞の位置によってニュアンスに違いがでます。目的節を直接否定すると断定的なニュアンスがあります。本欄で具体例で説明したいと思います。
②否定詞を主節に置く場合と従属節に置く場合で、意味に違いの出る文があります。この場合は、意味に応じて否定詞のポジションが決まります。
これも文例で具体的に説明したら、中学生でもわかることです。

こうした視点から、材料に挙げた文章を全部検証してみたいと思います。

「知らない海」に浮かぶ小船のebisuの場合は議論しないと理解が進まないようです。(笑)
議論にお付き合いいただいている後志のおじさんに感謝申し上げます。
by ebisu (2016-08-30 01:19) 

後志のおじさん

少しずつ風が強くなっています。台風はこれからです。(直撃を受けても我が手作りログハウスは平気です。プロに建築中にみてもらったら通常の倍の強度があるようで、「素人はやたらに頑丈に作るから、」と笑われました。)

中かっこと小かっこですが、

ebisu さんがあげた例文で説明しますと

I think {I (don't →order ) this}.



I (don't→think ) {I order this }.

です。ebisu さんの理解の通りです。


で、問題は、訳文を作ると同じにみえるけれども実は結構違いがあるという点です。

従属節否定の方は、「order しない」ことを
I think でぼかすor 婉曲にする表現であるのに、
主節否定の方は、「自分がorderするという動作を行う」ことをI don't think できっぱり打ち消す表現です。

従属節否定は、対人関係に配慮するとでてくる場面があって当然の表現であり、主節否定は自分の否定的見解を前面に出す表現であると考えます。

従属節否定は、I'm afraid +文、のような前ふりととらえて、主節否定は討論や何かを主張する文章中で「自分の見解としては否定」と、ある程度対人関係に配慮した表現であるととらえてもよいかもしれません。


辞書を読まれたとのことですが、受験参考書という「神話」の世界がバカバカしくなりませんか?いくら理屈をこねようが、実際の英文が読めなければ便所紙にすらなりません。(その便所紙下の引き写しをもって「自分の意見」と称する「先生」もいらっしゃいますけど。)

誰しもがもっている辞書には、きちんと読めば、面白おかしくはないけれど、「受験英語という下らない世界を越えて」、「淡々と実例に基づく」解説が網羅されている。受験参考書はセールスポイントがなければ売れないから、自分は勉強ができる、頭がいいと思っている輩を引きつけるようにつくる。

学習の基本姿勢がない者が使うものです。

辞書は、聖書に言う、狭き門なのでしょうね。(広き門が受験参考書です。)

by 後志のおじさん (2016-08-30 20:24) 

ebisu

今頃は風も雨も強くなっているのでしょうね。根室は風が強くなりつつあるようです。
頑丈な手造りログハウスなら安心ですね。

小括弧と中括弧の具体例ありがとうございます。文修飾型と動詞修飾型のパターンの違いがよくわかりました。

GENIUSには「従節の内容を否定しないためより控えめな否定表現」と書いてあります。

辞書を読んでいるつもりでしたが、「つもり」だっただけ、よく読まないといけないということが今回の議論でよくわかりました。(笑)

さて、これだけで充分な気がしますが、勉強の好きな中高生のためにまとめを書くかもしれません。

>辞書は、聖書に言う、狭き門なのでしょうね。(広き門が受験参考書です。)

なるほど。

最近の辞書は、独自コーパスに基づいているので、用例の品質がいい。問題意識をもってよく読むべきですね。問題意識なしに読んでも収穫は小さい。
中高生の皆さんは、「なぜ?」「どうして?」とたくさん疑問をもって、辞書を読んでください。
by ebisu (2016-08-30 22:24) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0