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#3403 平成28年夏 日本経済を見る:内橋克人  Aug.30, 2016 [91.経済]

 8/30朝のNHKラジオ番組「社会の見方・わたしの意見」での内橋克人氏の標記意見を解説を交えて紹介したい。

 リオ・オリンピックが終わったばかりだが、史上最高のメダル数というような明るいニュースばかりではない。神奈川県の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人殺害事件、4月14日から余震が2ヶ月余も続いた熊本地震は復興がなかなか進まない。他には参院選挙や都知事選挙もあったが、国民生活にとって深刻なリスクが増大していることから目を背けてはならない。

 アベノミクスの三本の矢の最重要な成長戦略は3年経っても経済成長はゼロで効果なし。ゼロ金利政策も破綻し、今年2月からマイナス金利という異常なゾーンに突入しているが、やはり効果はでていない。
 金融政策によるデフレ脱却戦略が行き詰まりを見せ始め、リスクが増大し、経済政策には秋風が吹き始めた、近い将来への負の遺産が積み上がっていく。
 内橋氏は3点挙げてリスク増大を具体的に解説している。

(1)日銀資産の量的膨張
(2)家計から企業への所得移転
(3)GPIFが赤字の現実、将来への不安

 日銀資産は大量の国債購入とEPF買入で448兆円に膨れ上がった。1年間で91兆円の膨張である。中身を見ると国債買入の増分が90兆円、ETF増分が6兆円である。ETFの保有残高はすでに40兆円にも達している。内橋氏はこれを「池の中の鯨」にたとえた。国内の一部上場株の時価総額は500兆円だからその8%がすでに日銀の所有になっている。米国では公的資金での株の買入はゼロであるから、日銀政策の異常さがわかる。
 日銀純資産はわずか3.5兆円である。株価が1割低下しただけで日銀は債務超過に陥るリスクがある。金利上昇が起きれば国債暴落はもっと影響が大きい。
*#3381 28兆円の経済対策:日銀B/Sから何が見えてくるのか? July 30. 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-07-30
 つまり、3.5兆円しか純資産がないのだから、国債や株式というリスク資産を日銀が長期(1年を超えて)にわたって保有してはいけないのである。リスクを考慮すると、保有限度額はどんなに大きくても純資産のせいぜい10倍まで、限りなくゼロが望ましい。

 2番目の論点は家計から企業への所得移転である。ゼロ金利とそれに続くマイナス金利政策によって、家計から企業への大規模な所得移転が行われ続けている。内橋によれば、その金額は年間20兆円である。アベノミクスが始まってからでも3年半で70兆円の所得移転が行われた計算である。ゼロ金利とマイナス金利によって、国民が利息として受け取るべき所得が毎年20兆円失われては景気がよくなるはずがない。

 たった10分ほどの番組だから内橋は計算根拠について解説していないので、ネットで調べて大まかに計算してみたい。
 国民の金融資産が1700兆円と言われている。実績ベースで2013年度で約1600兆円、その内訳は、預貯金55.2%、株式4.1%、投信4.0%、債権2.3%、出資金2.4%となっている。
*日本の個人金融資産
http://www.best-investor.com/invest/invest_word4.html

 2016年度の個人金融資産を1700兆円として、その55.2%の預貯金金利を3%として計算すると、
 1700兆円×0.03×0.552=28.15兆円

 おおよそ年間28兆円の利息を国民が受け取りそこなっている。その分借り入れを行っている企業が得をしている。そういう状態を内橋は「家計から企業への所得移転」と言っているのである。これだけの利息収入があれば、消費はずいぶん増えるし、景気もよくなる。
 内橋は2005年に日銀総裁だった福井俊彦がゼロ金利政策に言及したときのことを回想している。福井は次のようなことを述べたのである。
 「日銀のゼロ金利政策によって多くの国民がほとんど利息を受け取れない。日銀のゼロ金利政策はそういう国民負担によって支えられている
 福井はゼロ金利政策から脱却すべく金利を0.25%上げた。ゼロ金利政策は国民に負担を強いるものであり、一時的な金融政策であるという自覚があったのだ。
 日銀総裁が白川から黒田に替わって、日銀の金融政策はゼロ金利をはみ出し、マイナス金利というゾーンに踏み込んだ。国民負担はさらに大きくなったが、日銀黒田総裁には日銀の金融政策が毎年20兆円を越す規模で国民負担を強いるものであるという意識や反省がまったくない

 3番目の論点はGPIFの四半期赤字が5兆円にもなっているという現実である。これでは国民が将来の生活に不安をもつのは当然であるという。
 政府(安倍総理と菅官房長官)は「長期的に見れば問題なし」と繰り返し述べているが、GPIF資産は年金支払いで取り崩しが始まっている。これからは長期にわたってGPIF保有の株式が市場で売却されるから、恒常的な売り圧力となり株安の要因となる。日本の株式市場が長期にわたり下落することは高校生でも理解できる理屈だが、安倍総理と菅官房長官のお二人にはわからないようだ。

 内橋は日銀金融政策と財政政策が行き詰まりをみせ、リスクが高くなっていることを3つのポイントを挙げて指摘した。
 オリンピックのメダルの数や、スマップ解散などのどうでもよい話題に目を奪われている陰で、国民生活へのリスクがいつ破裂してもおかしくないぐらいに膨れ上がっていることから目を背けてはいけないのだろう。

< 増大するリスクとは何か >
 増大するリスクの中身について内橋は言及していない、それがいつ・どういう形で現れるのかは誰にもわからない。でも起こりそうなことはすこしは見当がつく。結局は深刻な国民負担となる。

 ■ 日銀が債務超過になる⇒国際通貨としての円の信認消失と円投売りによる急激な円安進行⇒輸入物価の急騰⇒コストプッシュによる物価急騰
 ■ 金利上昇⇒政府財政破綻
 ■ 日銀の国債購入停止⇒財政破綻
 ■ 日本史上三度目の預金封鎖が起きる
 
 問題なのは、これら四項目のどれかが起きてしまえば、不可避的に他の項目も起きてしまうことである。脱出戦略のない隘路にすでに入り込んでいる。
 公務員のリストラ、補助金打ち切りによる自治体病院の一斉経営破綻、年金支給額の4割カット、為替レートが一時的に極端な円安になることで物価が急騰、日本では三度目の預金封鎖、企業の連鎖的な倒産、大量の失業者、消費の急激な落ち込み、・・・これらがいつ、どのような形で起きるのか誰もわからない。
 政府は自分に都合のよいことばかりを言い、都合の悪いことや将来起こりうるリスクについては一切口をつぐんでいる。国会議員はどう考えているのだろう?
 リスクが現実化しても誰も責任を取らないことは、福島第一原発のメルトダウン事故でも証明された。リスクは全部国民に転化されるのである。そのうちの一つは日本史上3度目の預金封鎖、それだけではもちろん終わらない、公務員4割リストラと給与4割カット、補助金給付停止による全国の自治体病院の経営破綻と職員の失業、民間企業の連鎖倒産、年金大幅減額・・・。

 日本はそういうドン底を一度はくぐらなければ再生できないようだ。財政規模を拡大し続けた民主党政権と自公政権によるアベノミクスの罪は重い。先に来ることを慮りもせずに、公的機関の株式購入による株価上昇を歓んでいた国民も愚かだ。
 日本は「騙されるほうが悪い」西欧&中国型社会に替わってしまっているのである。
 騙され続けることからさようなら。


*#3382 日銀B/S : 発行銀行券勘定を負債区分に計上するのは間違い July 31, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31


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