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#3401 高3 :'Thinking outside the box' を読む(1) Aug. 28, 2016 [49.3 高校英語教科書を読む]

 高3の英語教科書「Big Dipper」から、Lesson 11の標題の文とLesson 12の二つを8/26日に生徒と一緒に読んだが、冒頭の文からあまり見慣れぬ用例があり、そこで最初の頓挫。心配しなくていい、だんだん慣れるから。
 タイトルの和訳は宿題にした。3年生の教科書は和訳するのがむずかしい凝ったタイトルが多いね。

 One morning in 2009, the newspapers above were delivered to households in several cities in Chiba prefecture.

  青字のaboveが曲者である。
 householdsは「家計」と訳していたので、それでは日本語として意味が通らないので、普通の高校生が耳から聞いてわかるような日本語にするように指示。こういうところで普段読んでいる本の量や本の難易度の程度がばれてしまう。同じ文章の中にある単語と関連付けて訳語を考えていないことが明らかだろう。
 主語と動詞句を見つけて、修飾語は省いてまず骨格を訳せば、後はそれから考えたらよい。情報は「Time いつ」「Place どこで」が大切だ、この文は文末に来るはずの「いつ」が冒頭に来ている。場所を示す句が長いことへの配慮かもしれない。

 the newspapers were delivered to households

 「受身&過去」の簡単な文だ。
  「新聞が各家庭に配達された」
 householdsは「世帯」という意味がある。世の中では定期購読の新聞は世帯毎に配達されている。問題はaboveだが、名詞 'the newspapers' の後に置かれているから、機能から判断すると形容詞である。しかし、aboveを辞書で引いても「形容詞」とは書いていない、前置詞か副詞である。このページの上の部分に写真が載っている。17個のレターボックス(郵便受け)からはみ出すように朝日新聞と1万円札が見えるように新聞に斜めに差し込んである。
 だからaboveは副詞で「ページの上部」を指している。、

 ①the nwespapers [is] above were delivered to households
 ②the nwespapers [is] above [this page] were delivered to households

  深層構造を①と考えると副詞だし、②と捉えると前置詞である
  たくさん読めば、こういうイレギュラーな用例でもなんて事がなくなるが、英語が苦手の高3には手ごわかったようだ。多読が良薬である。量があるところを超えないと、頭から読めるようにはならない。どれくらいか?300ページの軽い小説なら、小・中学校時代に日本語の本の濫読を経験している者という条件付で、数冊だろう。

 『英語基本 形容詞・副詞辞典』から、同じ用例を探すとあった。
-------------------------------
above
3. 形容詞用法 通常限定的に用いられ、後置修飾も可能。このaboveを副詞とするものがあるが、ここでは形容詞として扱う。
ⅱA above 上〔階上、上述〕 the court above 上級裁判所
  The cloud above were moving fast. [上空の雲は速く動いていた]
-------------------------------

 GENIUS4版には形容詞用法は載っていない、『英語基本 形容詞・副詞辞典』は優れものだが、価格が15,120円と高いので高校生が買える辞書ではないだろう。先月亡くなった根室出身の翻訳家・著述家、柳瀬尚紀氏が6年前に弊ブログ投稿欄で薦めてくれた。

 表層構造をみると、名詞に後置されているので、名詞を修飾する形容詞と理解するしかないが、一段階文法工程を下げれば、副詞か前置詞であることがわかる。そういう議論は一般の高校生には不要だろう。しかし、将来、柳瀬尚紀さんクラスの大物になる生徒がいるかもしれぬ。
*#3385 柳瀬尚紀さんの訃報  Aug. 3, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-08-03-1

 スラッシュを入れて和訳文を書いておく。
 「2009年のある朝/上の写真にあるように新聞が各世帯に配達された/千葉県の数都市にある(各世帯に)」


 第2段落には3つの文があるが、三つとも解説が必要だった。

 The newspaper was in fact an advertisement warning against telephon fraud. At that time, one hundred million yen was stolen every day. The art directors who coceived this idea, Ajichi Mutsumi and Aoyagi Yumiko, considered that telephone fraud was continuing because people thought that they themselves could not be so easily deceived.

  最初の文からいこう、advertisementを生徒は「広告」と訳したので、どういうことか日本語で敷衍してみてごらん、そう指示した。「広告」と訳した生徒の訳文では日本語として意味が通じないことがすぐに了解できる。そういう「非文」のままで何も感じないのは日本語ののセンスに問題があるということ。
 新聞に電話詐欺(おれおれ詐欺)の「広告」があるわけがないことは一般常識に属しているが、その常識が電子辞書を引いたとたんに消えうせ、辞書の先頭に載っている訳語を充てて訳したつもりになる高校生や大学生は少なくない。

 「夢単」で暗記しても、実際の英文ではその訳語が使えない場合がままある。GENIUS4版には「②好例」という訳語が載っている。文脈をチェックして、「夢単」の訳語で間に合わないときは、簡単な単語でもすなおに辞書を引くべきだ。それでも足りない場合は、意味がイメージできたら、自分の日本語語彙の中から適切な日本語を選択すべきだ。このときに、語彙が貧弱だと適切な訳文にはならない。

 冠詞の重要性はこの文でも際立っているから、最初のtheを見落としたら意味はまったくつかめない。それほど定冠詞のtheはこの文の意味をつかむ際にキーとなっている。'the neswpaper' は写真にある上から斜めに飛び出すように一万円札の挟んである新聞のこと。

 「実際に、(写真にある一万円札の挟んである)その新聞は電話詐欺への警告の典型例であった」

 これがちゃんと日本語にできた生徒は、進研模試の偏差値が60を超えているだろう。わかりやすい単語が並んだ簡単な文にみえるが、そうではなかった。
 文脈が読めない生徒は意味を理解できない。だから、ある程度の難易度の日本語のテクスト(本)をたくさん読まなければいけない(濫読のススメ)。
 先読みしながら音読する、文脈を理解しながら音読トレーニングをして、先読みスキルや文脈把握スキルを上げれば、この程度の英文はやさしい部類に変わるだろう。中学校を卒業するまでに濫読期を経験した者は英文の読解に抜群の強さをはっきする。それは濫読の結果、語彙力が豊富なのと、言語に対するセンスが磨かれたからだろう。

 2番目の文の At that time は、冒頭の文に示された「2009年当時」である。thatは指示代名詞だが、何を指しているかは常に意識すべきだ。「そのときに」なんて訳をしていたら、いつまで経っても英文読解力が上がらないから要注意。
 金額単位は10^3=thousand、 10^6=million、10^9=billion、10^12=billion(兆)であることぐらいは知っておこう。日本は10^4=万、10^8=億、10^12=兆だから4桁ごとである。

 'The art directors' という職種はは解説が必要だ。

美術表現、芸術表現をもちいた総合演出を手がける職務を意味する。 商業活動のなかでは、広告、宣伝、グラフィックデザイン、装幀などにおいて、主に視覚的表現手段を計画し、総括、監督する職務である。」 ウィキペディアより

  The art directors who coceived this idea, Ajichi Mutsumi and Aoyagi Yumiko,  
 
 青字の部分が前の文の訳が適切であることを保障してくれている。ふたりのアート・ディレクターが思いついた「このアイデア」とは、写真の一万円札の挟んである新聞のことだ。味地さんと青柳さんのふたりがこのアイデアを思いついた。

 The art directors [who coceived this idea, Ajichi Mutsumi and Aoyagi Yumiko,] considered that telephone fraud was continuing [because people thought that they themselves could not be so easily deceived].

  動詞だけをピックアップすると、
 conceived, considered, was continuing, thought, could not be
  ずいぶんたくさんあるね、「5つの節+挿入句」から成り立っているということ、こういう文が苦手な生徒が多いのは当たり前だ。新聞英語はインテリの大人向けの書き言葉だからこれくらいの文はごく普通に出現する。
 関係節と言い換えを[ ]で括ると、文の構造がはっきりする。because以下は、「電話詐欺が引きも切らない」のはなぜかという理由を付け足している。後ろの文は常に前の文あるいは単語の補足説明である。これが英語の文の一般原則。

 「電話詐欺がなくならないのは、人は自分がそんなに簡単にはだまされないと思っているからだと、このアイデアを思いついた二人のディレクターは考えた。」
 
 文の中に文がいくつも埋め込まれているので、構造が複雑になっているので、考える材料としてはいい。
 必要な範囲で、深層構造の文にブレイク・ダウンしておく。
1) The art directors coceived this idea.
2) The art directors are Ajichi Mutsumi and Aoyagi Yumiko.
3) The art directors considered something.
4) Telephone fraud was continuing.
5) Because people thought something.
6) they themselves could not be so easily deceived.

 主節は(3)の文である。ネイティブはこの文を頭から読んで理解するが、無意識下で深層構造に分解しながら読み進むのだろう。慣れたらわたしたちにも可能だ。そのためには英文テクストの濫読を経験するのが一番よい。自分が読みたいと思う本がある人は断然有利だ。好奇心の強い者は上達も早い。

 ちょっと気になる箇所があるので、採り上げたい。

 people thought that they themselves could not be so easily deceived.

 この文は次のように書くのが普通だと思う。

 people didn't think that they themselves could be so easily deceived.

 たとえば、レストランのレジで、思いもかけず金額が高かったので、レシートを確認したらオーダーしていないものが含まれていた、そのときに「これは注文していないと思うんですが」という文は次のようになるだろう。
 I don't think I order this.

 従属節に否定詞をおくのではなく、主節に否定詞をおくのが会話文の慣用である。
 このように従属節ではなく主節に否定詞をおくのが自然なのかもしれないが、従属節に否定詞をおいた文もある。一文には否定詞がひとつだけというのが原則だから、どちらもこの点からは原則違反ではなく、ありだとすると、どのように使い分けるのかという問題がある。ここはぜひ後志のおじさんの意見を聴いてみたい。


< 語源知識 >
 conceive と deceive が似た単語であることは気がついただろうか?
  con(しっかり)+ceive(取り込む)⇒ 考えつく、思いつく、妊娠する
  de(外す)+ceive(取る)⇒ 取り間違いさせる、欺く
 語幹が同じで接頭辞の違う単語は、おなじみの re(再び)ceive(取る)⇒「受け取る」がある。conceiveの派生語である conceivable(想像できる)、inconceivable(想像できない)の二つも覚えられたら関連付けて覚えてしまおう。
 GENIUSの大判には各単語に語源が載っているが、値段が17,820円と高い。簡便なものだと『イメージ活用英和辞典』(小学館、2008年初版、2,592円)がある。これくらいなら、高校生にも手が届く、上記の説明はこの辞典から転載した。

 こんな調子で解説していたら、あと3回書かなければならない。第3段落と第4段落はさらに文章が込み入っており、さらなる読解力が試される。これぐらいで切り上げておこう。



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後志のおじさん

天気が悪くて気圧が低いと私も布団からなかなかでられません。スッキリとした秋空が待ち遠しいですね。

で、二点ほどです。

①簡単な方からですが、
an advertisement は、衆知くらいのイメージですか。

電話詐欺に対する警告をしている衆知

訳「オレオレ詐欺に警戒をうながすためのもの」

個人が、営利目的ではなく、多くの人に何かを知らせる行為を表す言葉が日本語には見当たらないので衆知くらいしか思い付かないのですが、行政が行うなら広報ですね。advertisementはこうした行動まで含んでいます。広めること。(営利、非営利は問わない。)


②さて、面白い方です。

the newspapers above です。

生徒さんには、安直に「センターによくあるthe table below (下の表)のbelow がabove に置き換わっているだけだよ。」くらいでもいいでしょう。


私のお伝えしたいキモは、
一語の形容詞でも、名詞の後にくることがある。ただし、漢文のような響が生じます。

漢文云々は柴原先生の言葉を借用。

このあたりの話になると、文法書にはスッキリとした説明はまずないでしょう。

私も「あの本の、あの辺りに確か文例になるのがあったはずだけど……。」くらいの頻度です。

2011年10月だったと思いますが
ラジオ英会話でラフカディオハーンの物語を取り上げた時に、遠山先生自らの訳で、全編「硬く重たい形容詞」を「単独の」後置で書かれたものがありました。内容の重さにふさわしい素晴らしい英文でした。(わかりやすい説明をする影には深い、本物の知識の裏付けがある一例でした。ただ、リスナーのレベルには合わなかったようで、その時だけで終わってしまいましたけどね。)


不明な点はご質問ください。議論、ゆったりやりましょう。(笑)

by 後志のおじさん (2016-08-28 19:54) 

ebisu

>訳「オレオレ詐欺に警戒をうながすためのもの」

advertisementの基本イメージに忠実なやわらかい日本語訳ですね。
新聞に1万円札をはさんで入れておくこと事態が詐欺ですから、詐欺には引っかからないと思っている人への警告です。
本文に書いてありませんが、1万円札は斜め半分だけをカラーコピーした贋物だったのでしょう。全面コピーすると偽造紙幣になり、処罰の対象になります。
プロのアートディレクターの企画ですから、その辺りはしっかりデザインされていたのでしょう。

>生徒さんには、安直に「センターによくあるthe table below (下の表)のbelow がabove に置き換わっているだけだよ。」くらいでもいいでしょう。

よくでてくる、'as the table blow shows'(したの表に示すように)ってやつですね。
これはわかりやすい。理屈を言わなくてすみます。用例ごと覚えてしまうのが後志のおじさん流らしくていいですね。

ところで、次の英文は日本語の感覚としては自然なのですが、従属節ではなくて主節を否定文にするというのが英文のルールと学校では習いますが、従属節の否定もあたりまえに出てきます。間違いとは言えない気がします。
後志のおじさんの知識の範囲ではどうなのでしょう、整理していただけませんか?

 people thought that they themselves could not be so easily deceived.


by ebisu (2016-08-28 21:06) 

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