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#3247 East Antiarctica at risk of thaw Feb.28, 2016 [75.時事英語公開講座]

 2014年5月13日にアップした同じタイトルの#2675の時事英語をテクストにして高校1年生の質問に答えていたら、Wilkes Basin の訳語が適切でないことに気がついた。
 「ウィルクス海盆」と訳していたのだが、読み直したら「海盆」ではなく、内陸側のBasinであることがわかった。
 ネットで「Wilkes Basin」をキーにして検索したら、南極大陸の地図に図示されたものが見つかった。Wilkes Basinは南極大陸の外側ではなく、内陸部にある。
 「海盆」に対して「(氷結)湖盆」という訳語を当てて、高校1年生用に構文解説を加えて書き直した。m(_ _)m
 
(なお、#2675はそのままにしておきます)

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Study adds to worries over rising sea levels
East Antarctica at risk of thaw
Reuters

(1)
 OSLO – Part of East Antarctica is more vulnerable than expected to a thaw that could trigger an unstoppable slide of ice into the ocean and raise world sea levels for thousands of years, a study Sunday showed.

(2)  The Wilkes Basin in East Antarctica, stretching more than 1,000 km (600 miles) inland, has enough ice to raise sea levels by 3 to 4 meters (10-13 feet) if it were to melt as an effect of global warming, the report said.

(3)  The Wilkes is vulnerable because it is held in place by a small rim of ice, resting on bedrock below sea level by the coast of the frozen continent. That “ice plug” might melt away in coming centuries if ocean waters warm up.

(4)  “East Antarctica’s Wilkes Basin is like a bottle on a slant. Once uncorked, it empties out,” Matthias Mengel of the Potsdam Institute for Climate Impact Research, lead author of the study in the journal Nature Climate Change, said in a statement.

(5)  Co-author Anders Levermann, also at Potsdam in Germany, said the main finding was that if set in motion, the ice flow would be irreversible. He said there is still time to limit warming to levels to keep the ice plug in place.

(6)  Almost 200 governments have promised to work out a U.N. deal by the end of 2015 to curb increasing emissions of man-made greenhouse gases that a U.N. panel says will cause more droughts, heat waves, downpours and rising sea levels.

(7)  Worries about rising seas that could swamp low-lying areas from Shanghai to Florida focus most on ice in Greenland and West Antarctica, as well as far smaller amounts of ice in mountain ranges from the Himalayas to the Andes.

(8)  Sunday’s study is among the first to gauge risks in East Antarctica, the biggest wedge of the continent and usually considered stable. “I would not be surprised if this (basin) is more vulnerable than West Antarctica,” Levermann said.

(9)  Antarctica, the size of the United States and Mexico combined, holds enough ice to raise sea levels by some 57 meters (188 feet) if it ever all melted.

(10)  The study indicated that it could take 200 years or more to melt the ice plug if ocean temperatures rise. Once removed, it could take between 5,000 and 10,000 years for ice in the Wilkes Basin to empty as gravity pulls the ice seaward.

(11)  “It sounds plausible,” Tony Payne, a professor of glaciology at Bristol University who was not involved in the study, said of the findings. The region is not an immediate threat, he said, but “could contribute meters to sea level rise over thousands of years.”

(12)  The United Nations panel on climate change says it is at least 95 percent probable that human activities such as burning fossil fuels — rather than natural swings in the climate — are the dominant cause of warming since the 1950s.

(13)  Sea levels are likely to rise by between 26 and 82 cm (0.85 to 2.7 feet) by the late 21st century, after a rise of 19 cm (0.6 feet) since 1900, it says. Antarctica remains the biggest uncertainty.

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  解説 
Study adds to worries over rising sea levels
 海面上昇の懸念があるという研究がもう一つ公表された

East Antarctica at risk of thaw
 プラグ・アイスが溶け出しそうな東・南極大陸

 南極:Antarctica, the Antarctic pole, south pole 
 北極:the Arctic pole, north pole

(1)
 OSLO – Part of East Antarctica is more vulnerable than expected to a thaw that could trigger an unstoppable slide of ice into the ocean and raise world sea levels for thousands of years, a study Sunday showed.

 ((ノルウェー)オスロー:南極大陸東部はいままで考えられていた以上にもろく、滑り落ちて海洋へ流れ出す可能性が高い。そういうことが起きれば数千年間にわたって海面上昇が起きるという研究が日曜日に公表された。)

 冒頭の文は構文がこっている。たとえば、「(it has been) expected to do の「do」が省略されている。省略しても読み手が理解できるあたりまえの語は省略されることがある。’(is) expected to (melt / thaw)’カッコ内の語が省略されているのである。文脈で容易に判断がつく。
 ‘a thaw’ 以下は「予測されていること」の補足説明である。
 分のつながり(構造)がよくわかるから、文を三つに切り分けてみよう。

Part of East Antarctica is more vulnerable than expected to (melt)
a thaw that could trigger an unstoppable slide of ice into the ocean raise world sea levels for thousands of years
a study Sunday showed.

 ①は「SVC」の文で、「なにがどんなだ」という文である。意味は「東・南極は今まで考えられてきた以上に脆弱である」
 ②のthatは関係代名詞であるから、関係節を括弧で括ってわかりやすくしておいた。「SVO+T」、Ⅲ文型。Adverbial Phrase(副詞節)をPlaceに関わるものとTimeに関わるものに分けて表示する。元の文を復元すると次のようになる。
-1: a thaw could trigger an unstoppable slide of ice into the oceanSVO
-2: a thaw raise world sea levels for thousands of years.SVO+T

 thawは名詞で「暖かさ、雪解けの季節、雪解け」である。
「②-1:南極の氷河が溶けるような気候変化があれば、海洋に南極の氷河がとめどなく滑り落ちていくきっかけになりうる」「②-2:氷河が溶けるような気候変化は数千年にわたって海面上昇を引き起こす」 南極東部なら'the east part of Antarctica'だろう、どれほどの違いがあるのかわからぬが、本文には「東・南極」と書いてあり、地図を見るとウィルクスランドという表示がある、根室市落石灯台が東経145度付近だが、南へ下って南極大陸にぶつかると、その辺りはウィルクスランドとビクトリアランドの境界付近である。東経170度(日付変更線)付近は南緯85度付近まで大陸が切れ込んでおり、「ロス棚氷ice shelf」のあるロス海に至る、この辺りの氷の厚みは千メートルを超えており南極大陸の陸上に載っている氷河と一体の塊と化している。

 南極の氷の厚さは平均で2450m、最も厚い部分は4776mもある。面積は1204km^2(日本の国土面積の32倍)、氷の体積は陸上部分のみで2938km^3

*http://www.nichirei-ice.com/ice/q3_2.html

 検索していたらおもしろい物を見つけた。南極大陸の断面図である。南北線でカットし左が西、右が東という断面図である。平均標高はわずか16m、西側は平均標高が海面下だ。だが載っている氷がなくなれば、「地殻均衡」作用が働いて、陸地が隆起し600mほどの標高になるという。

*Antarctic School「雪と氷の大陸・南極」
http://polaris.nipr.ac.jp/~academy/jiten/tairiku/04.html

(2)  The Wilkes Basin in East Antarctica, stretching more than 1,000 km (600 miles) inland, has enough ice to raise sea levels by 3 to 4 meters (10-13 feet) if it were to melt as an effect of global warming, the report said.

The Wilkes Basin in East Antarctica, stretching more than 1,000 km (600 miles) inland, has enough ice to raise sea levels by 3 to 4 meters (10-13 feet)SVO
 to raise以下の不定詞句はiceを修飾する形容詞的用法。
if it were to melt as an effect of global warming⇒仮定法過去の文
--------<
参考>----------
If all the Antarctic ice were to melt, the level of the sea would rise to drown most of the seaports of our planet. (
もし南極の氷が全部解けるようなことがあれば、海の水位が上がって地球上の港の大部分は水没するだろう) 江川泰一郎『英文法解説』P.257
--------------------------
 この文ではもう一つ問題がある。「as」の用法・機能である。asは多義的な語で曖昧であるからやっかいだ。江川先生も「butと並んで両横綱と言ってよい」(同書P.397)と書いている。同じところで次のように説明している。
「学習英文法の枠からはみ出したようなasも限定のasと考えれば(品詞の問題は別にして)意味上の説明は一応付けられる」
 ここでは直前の’to melt’を限定しているものと理解したい。ここでも「後ろの句(phrase)は前の語(word)の補足説明」なのである。meltだけでなく条件節全体を限定していると理解したほうが文脈に合う。

(東・南極にあるウィルクス海盆は内陸に1000km以上広がっており、そこには地球温暖化の影響で融けると海水面が34m上昇するだけの量の氷がある。)

 地図を見るとウィルクスランドはあるが、ウィルクス海盆は描かれていない。手元の地図には大きな棚氷はロス棚氷とフィルヒナー棚氷(collins World Atlas mini editionには'Ronne Ice Shelf'と書いてある)の二つだけ。棚氷とは大陸から張り出した部分の氷だが、ウィルクスランド付近の氷は大陸に載っている。グーグル地図で検索してもWilks Basinはヒットしない。

 'stretching more than 1,000 km (600 miles) inland'はウィルクス・ベイスンの説明である。「後ろは前に位置するものの説明」という原則どおり、挿入句あるいは補足説明と理解していい。元のsimple sentenceを復元すると次のようになる。 
 The Wilkes Basin in east Antactica stretches more than 1,000 km inland.
 ウィルクス・ベイスンとは南極大陸の内陸に1000km以上も広がっていると説明しているが、どういう地形なのか具体的なイメージがわかない。どうやら南極の周辺にある海盆ではなさそうである。

 辞書に湾という訳語が載っていても「ウィルクス湾」という訳は適切ではない。次の文(3)で追加説明がなされているが、地質学用語の「海盆」が正しいが、洗面器のような形状をもつ窪みを言い表す語であるから、内陸側にあればそれは凍った湖である。

 教室の壁に貼り付けてある世界地図2枚で確認した。日本で作成されたほうに英語と日本語の両方で次のような海盆名をみつけた。
 South Australia Basin 南オーストラリア海盆
  Australia Antactic Basin
 オーストラリア南極海盆
  Southeast Pacefic Basin
 南東太平洋海盆
  North Pcific Basin
 北太平洋海盆
 どういうわけか、米国で作られた世界地図のほうにはbasinの標記がひとつもなかった。

 「ウィルクス湖盆」は内陸に1000kmを超えて広がっている。日本全土ほどの湖を想像してもらいたい


 次の
(3)に「海面下の大陸棚に載っている小さな氷のリムに支持されている」と書いてある。「ウィルクス湖盆」だとすると内陸にある氷の湖とその上に2000mの氷河が載っているから、大陸棚のリムは湖盆に載っている巨大な氷河が海へ流出するのを止める栓の役割をしている。事情は逆だった。

(3)  The Wilkes is vulnerable because it is held in place by a small rim of ice, resting on bedrock below sea level by the coast of the frozen continent. That “ice plug” might melt away in coming centuries if ocean waters warm up.

(ウィルクス湖盆の氷はもろく、氷の小さな縁凍てついた大陸の海岸付近の水面下にある岩盤(大陸棚)の上に載っているに支持されている。"アイス・プラグ(氷栓)"は海洋の水温が上昇すれば今後数百年間で融けてしまい、氷栓を失ったウィルクス湖盆の巨大な氷河が海へと流れ出す可能性がある。)

 'is held in a place by a small rim of ice'と書いてあるから、東・南極大陸辺縁部にあるウィルクス・ベイスンの氷平原は小さな環状の氷によって繋ぎ止められている。コンセントにプラグが差し込まれてコードがつながっている様子を想像すれば'ice plug'がどのようなものをさしているのかよくわかる。
 keepではなくholdを使っているから、一時的につなぎとめられているということで、接続の脆弱性が表されている。海盆側に突き出た氷河をつなぎとめている部分は「海岸の辺縁部にある小さな環状の氷」とあるから、環状になっている部分は幅が狭いのだろう。具体的なデータが書かれていないが、大陸棚(海面下0200m)がリムにあたる。氷河の下部はウィルクス湖盆にあるが、栓の役割をしているリム部分に温暖化の影響で海水が入り込めば氷河の流速が大きくなり、傾斜の上の方に当たる内陸中心部側からの巨大氷河の質量と圧力で押し出されてしまうリスクがある。始まってしまえば人間には止められない。

------------------------------------
basin
an open round container shaped like bowl with sloping sides, used for holding food or liquid.
 
a shelterd area of deep water where boat are kept.
         -CALD-
「傾斜面をもったボウルのような開いた円い容器、ボウルとは食べ物や液体を入れる容器のこと」
basin: In geography, a basin is particular region of the world where the earth’s surface is lower then in other places.
                      -Colins English Dictionary-
http://dictionary.reverso.net/english-cobuild/basin

海盆は地質学用語だ、『大辞林』で引いてみる。
海盆:円形ないし楕円状などの形をした海底の窪地。 
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 の意味だと思い込んでいたので、はじめは「ウィルクス湾」も「ウィルクス海盆」も文脈に合わない。「ウィルクス(氷結)湖盆」と訳さなければならない。

 南極大陸の一部が洗面器状にへこんでおり、「氷湖」になっている、汽水湖あるいは湾を想像してもらいたい。大陸棚の幅は1030kmぐらいだから、大陸棚の海底の岩盤に内陸側から押し出されてくる高さ2000m超の氷河が固定されて、流速を小さくしている。写真を見ると、矢印のある部分が周りよりも流れる速度が大きい。その幅は記事中にあるように「小さい」。毎年氷河が200m大陸棚へ押し出されると假定する(一番流速の大きいしらせ氷河が1627m/46days、だが氷河の流速については年間数kmのところもあるというNASAの研究もある)と、50km押し出されるのに250年かかる。大陸棚を越えた氷の平原は、海底の支えを失うが、大陸棚の氷山と分厚く接合されているので沈みこまない。氷の下では海水が冷やされて深層海流となって沈み込んでいくから、温かい水が北(オーストラリア)側から流れ込んでくる。その暖かい海水が氷平原の下部をゆっくり絶え間なく溶かしていく。そして百数十キロも沖合いに届く頃には、重さと浮力のバランスが壊れて先端部から崩れて氷山となって流れ出していくのだろう。
*しらせ氷河の流速研究資料
http://www.watanabe-found.or.jp/pdf/gaiyou/S-H19-171.pdf

 湖盆は大陸内部にあり大陸棚から深海へ押し出されて氷山となって流れ出ていく。大陸棚に載っている氷は氷河となって内陸側から海へと順次押し出される。温暖化の影響で、栓の役割を果たしている大陸棚の下部に海水が入り込み滑るようになりつつある。微妙なバランスで南極大陸の2400mの厚さの氷河は、ウィルクス湖盆のリムで速度を落としている。

 大陸棚に載っている氷と湖盆側の氷の接続部に海水が入り込んだら、巨大な氷河の流速が大きくなり湖盆の外側の海へと押し出されるから、海水面が上昇するという理屈である。

 英文を読み、いろいろ調べ、そして考えて一つの推論を組み立てているのだが、関連資料を漁ってみないとわからないことがいくつもある。英文を読むにはテーマについての周辺知識が要求される。読みながら周辺知識を蓄えるということも英文を読むことと同じくらい大事なことなのである。
(社会人となったときに、複数の専門分野に関係する仕事をこなすために、自分の専門外の専門書を読む、そして読んだ分野の知識を使って仕事をして経験をつみ、その分野でも専門家になってしまうというようなことが起きるからだ。会計と原価計算と経営管理の専門家であったが、統合会計システム開発のために1979年から5年間システム開発関係の専門書を20冊ほど読み漁って、システムエンジニアとしての経験を積んだことがある。異質の分野の仕事に関わるたびごとに、専門書を読み、それをすぐに仕事に使ってその分野の「専門家」になった。)


 さて、Wilkes Basinについて文をベースにしてイマジネーションを膨らませてきたが、地図上ではどこにあり、どのような地形なのかについて、ネットを検索して調べてみよう。
Wilkes Basinをキーにしてググってみたら次のURLがヒットした。

*http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2621274/Global-warming-trigger-melting-unstable-ice-plugs-raise-sea-levels-13-FEET-claims-study.html

 2014
516日にアップされたもので、タイトルは「Global warming could trigger melting of 'unstable ice plugs' that would raise sea levels by up to 13 FEET, claims study」、南極大陸の地図が載っており、この中にWilkes Basinが図示されていた。’Wilkes marine ice sheet’と表示されている。内陸の湖盆であるWilkes Basin の上に載っている「海洋水アイス・シート」と表示があるから、氷が無ければ湾になっている。日本の面積ぐらいの巨大なサロマ湖を想像してみたらいいのかもしれない。氷が無ければどうやら汽水湖ではなく、湾というべき。
 
位置は、東経160度、南緯6472度。Ice plugsも図示72度付近の南極大陸の海岸線部分に紐状に赤くマーキングされている。面積は英国とアイルランドを合わせたぐらいある。王冠型をした内陸湖で、湖盆が円形をしていると仮定すると海への開口部は円周の20%ほどある。開口部が広いから、リム部分のice plugs に海水が入り込んでしまえば、ウィルクス湖盆に載っている氷河は難局中央部から4000m級の氷河に押されて十数倍の速度で海へ流れそうである。


 南極大陸に蓄えられた氷の流出の影響もたんに海水面の上昇だけではあるまい。南極大陸辺縁部の大陸棚から突き出た氷河に海水が冷やされて沈み込むことで、安定した深層海流の流れがあるはずだが、100平方㎞を超えるような氷山が比較的短期間にいくつも流出すれば、その流れも影響を受けるに違いない。辺縁部から海盆側へ突き出た氷河がなければ、そこに深層海流は生まれない。南半球の安定した深層海流の流れが変わってしまうことで、生態系にどのような影響があるのだろう。これが北極だったら影響はもっと深刻だ。北極の氷が半分になったら、深層海流の流れが大きく変わり、既存の好漁場(たとえば北方領土付近)は甚大な被害がでるだろうことは推測にかたくない。

 <調べたデータと計算値>
 地球半径: 6371km
 表面積=4πr^2=51006km^2
 海:36106km^2 (70.8%
 海水総量: 134993km^3
 
 の数値を使うと、100kmの正方形で厚さ2400mの氷河が流出したら、海面は6.6cm上昇する。
(海面上昇のメカニズムがわかったので、冒頭と末尾に追記した)

 
南極大陸から押し出された巨大な氷が東・南極大陸の辺縁部、ウィルクス海盆に広がっているのである。大陸との接合部分は大陸棚にどっかりと腰を下ろした千mクラスの氷山、それがウィルクス・ベイスンの氷平原と連続している。理屈はともかくとして、面積数十万km^2、高さ3001000mの巨大な氷の塊がウィルクス海盆に落ちて南極海に流れ出したら、そりゃあ、海水面は上がるだろう。
 34m上がったら、根室の緑町、常磐町、梅ヶ枝町、本町、松ヶ枝町、花咲町、千島町、弁天町などはみな水底である。温根沼大橋も海水で洗われる。橋に接続する道路も水底となる。落石地区の海岸線や花咲港も水の底だ。イーオンの屋上から釣り糸を垂れてチカ釣りができるだろう。
 東京下町も水の底。世界中の海岸部の人口密集地帯が水没することになる。

 海岸付近の低地は人口密集地帯が多いから海岸近くの低地に存在する世界中の大都市が水没ということになる。食糧生産も大打撃を受けるから、人口縮小が世界的な規模で起きる。否応なしに世界中が人口縮小、経済規模縮小の時代へ突入することになる。メカニズムが働けばもう誰にも止めることができないすでにスィッチは押されてしまっている?

(4)  “East Antarctica’s Wilkes Basin is like a bottle on a slant. Once uncorked, it empties out,” Matthias Mengel of the Potsdam Institute for Climate Impact Research, lead author of the study in the journal Nature Climate Change, said in a statement.

 「東・南極にあるウィルクス海盆は斜面に置かれた瓶のようなものだ。一度でも栓が抜けたらナカミが流出して空っぽになる。(気候変動誌に掲載された)この主著者で、ポツダム気候変動研究所のマシアス・メンゲルがステートメントの中でそのように言明している。」

 内陸側から海側へ向かって傾斜しているが、そこに瓶が置かれているのを想像してもらいたい。瓶の栓は海側へ向いているから、栓が抜ければ中身が海へと流れ出る。

East Antarctica’s Wilkes Basin is like a bottle on a slant. SV
Once uncorked, it empties out  
②の文は仮定法である。
(If it is) once uncorked, it empties out.
 主節のitと従属節(if節)のitはどちらも a bottle を指しているから、従属節の方が省略される。

(5)  Co-author Anders Levermann, also at Potsdam in Germany, said the main finding was that if set in motion, the ice flow would be irreversible. He said there is still time to limit warming to levels to keep the ice plug in place.

(論文共著者のアンドレス・リバーマン(ドイツのポツダム研究所)はその氷の平原が一旦動き出したら、もう止めることができないと述べている。アイス・プラグをつなぎとめておくレベルに温暖化を抑制する時間的余裕がまだあるとも述べている。)

the main finding was that if set in motion, the ice flow would be irreversible 
  SVC 
 
この文のthat節は仮定法過去である。If節のsetsがついていないことに注意しよう。過去形である。ここでも主節の主語と従属節(if節)の主語が同一だから、従属節の方が省略される。
if
the ice flow set in motion, the ice flow would be irreversible

finding
:研究成果、結果、結論
keep 
in place: ~を所定の位置に保持する holdin placeと比較

(6)  Almost 200 governments have promised to work out a U.N. deal by the end of 2015 to curb increasing emissions of man-made greenhouse gases that a U.N. panel says will cause more droughts, heat waves, downpours and rising sea levels.

SVO
O+Adv.T+Adverbials.
(約200の国々が2015年末までに人間活動によって作り出される二酸化炭素の排出を抑制するという国連の取り決めを実行すると約束した。二酸化炭素の増加は旱魃、熱波、豪雨、海面上昇を引き起こす。
 
 almost 200 governmentsは、190-200の間の数字を表している。「200前後」ならaboutを使う。意味は190-210と上限と幅が違ってくる。

(7)  Worries about rising seas that could swamp low-lying areas from Shanghai to Florida focus most on ice in Greenland and West Antarctica, as well as far smaller amounts of ice in mountain ranges from the Himalayas to the Andes.

(グリーンランドや西・南極大陸上に存在する氷が融けると、上海からフロリダまでの間にある世界中の海岸近くの低地を水底に沈めてしまう海面上昇が起きるという懸念は、量がはるかに小さいがヒマラヤからアンデスまで世界中の山脈の頂上付近に存在する氷河の量が減少し続けていることへの懸念と同種のものである(要するに陸地に載っている氷が大量に融け続ければ海面上昇が起きるのである)。)Worries about rising seas (that could swamp low-lying areas from Shanghai to Florida) focus most on ice in Greenland and West Antarctica,
 
修飾語を省き、単純化すると、次のようになる。
Worries about rising seas focus most on ice in Greenland and West Antarctica.
「海面上昇の懸念はグリーンランドと西南極の氷に集中している」
 mostは副詞で、focusを強めている。「一番集中している」「とても集中している」だが、訳出しないほうがいい。日本語として滑らかなものに書き換えると、
「グリーンランドと西南極の氷に(世界中の研究者たちの)関心が集まっている」

 いままで東・南極の氷に脆弱性があると言ってきたのに、なぜここは西・南極なのだろう?話が飛んでしまっているように見える。大丈夫、次を読めばわかる。

(8)  Sunday’s study is among the first to gauge risks in East Antarctica, the biggest wedge of the continent and usually considered stable. “I would not be surprised if this (basin) is more vulnerable than West Antarctica,” Levermann said.

 wedgeは「楔」という意味であるが、「the biggest wedge of the continent」は「南極大陸最大の楔」という意味で、南極大陸東部にあるロス棚氷の地域を指している。その形状が南極大陸に楔を打ち込み、V字型に欠けたように見えるから「the biggest wedge of the continent」と書いたのだろう。
 amongは「含まれている」という意味である。GENIUSに次のよう例が載っている。
  Japanese travelers were among the casualties.
   [
犠牲者には日本人が含まれていた]

Sunday’s study is among the first to gauge risks in East Antarctica, the biggest wedge of the continent and usually considered stable.
 SVPrep.Phrase(前置詞句)
the biggest wedge of continent
East Antarctica の補足説明である。後段の文に主語を補ってみる。文脈上、わかりきった主語とbe動詞にはdeletionが働く。この辺りが、高校の教科書に載っている英文と、新聞英語の違いの一つである。
 (East Antarctica was) usually considered stable.

(日曜日に公表された研究論文は東・南極にあるさまざまのリスクを評価が含まれている。東・南極とはすなわち南極大陸がV字型に切れ込んでいる箇所(ロス海沿岸)のことであり、いままでは安定していると考えられていた。"西・南極に比べてこのウィルクス・ベイスンがもろいものであることにわたしは驚かない"とリバーマンは述べている。)

 どうやら、いままでの南極の氷に関する研究は、西・南極に集中していたようだ。西・南極の氷が海洋に流出するリスクが高いと思われていたが、東・南極の氷の研究が進んだ結果、東側の方が今まで考えられていたよりも脆弱であることがわかったということ。

(9)  Antarctica, the size of the United States and Mexico combined, holds enough ice to raise sea levels by some 57 meters (188 feet) if it ever all melted.

the
 size 以下はAntiacticaの補足説明だから、括弧で括る。
Antarctica(, the size of the United States and Mexico combined,) holds enough ice to raise sea levels
Antarctica holds enough ice to raise sea levels
ずいぶんと簡略化された。
「南極には海水面を上昇させるに充分な量の氷が蓄えられている」
hold
を使っているから、一時的に蓄えられているということ。手で握っている状態を想像したらよい。いつまでも握っていられない、いつか掌を開くことになる。holdが出てきたら、keepだったらどういう意味になるか比較対照しながら読むとよい。
by some 57 meters (188 feet) if it ever all melted
程度を表すbyである。この用法は新聞英語では頻出するので覚えてもらいたい。「全部融けてしまったら、おおよそ57mだけ(海面上昇が起きるに充分な量の氷が蓄積されている)」

(米国とメキシコをあわせた大きさの南極大陸に積み重なった氷が全部融けてしまえば、海水面を57mも上昇させてしまう。)

(10)  The study indicated that it could take 200 years or more to melt the ice plug if ocean temperatures rise. Once removed, it could take between 5,000 and 10,000 years for ice in the Wilkes Basin to empty as gravity pulls the ice seaward.

it could take for A to B :A
からBまでかかる
seaward
adv海側へ pull the ice seaward

(公表された研究論文が示していることは、海水温が上昇したとしても、200年かそれ以上の歳月がかかるということ。一度それが動き出したら、急傾斜面で働く重力が(厚さ2400mの)氷河を大陸棚の外側へ引っ張るので、ウィルクス・ベイスンから500010000年間かけて氷がなくなってしまう。)

(11)  “It sounds plausible,” Tony Payne, a professor of glaciology at Bristol University who was not involved in the study, said of the findings. The region is not an immediate threat, he said, but “could contribute meters to sea level rise over thousands of years.”

 plausible:プルーザブル adj もっともらしい、妥当な 発音要注意だね!
(この研究に参加していないブリストル大学のトニー・ペイン教授(専門は氷河学)は調査結果が"妥当"だとのべている。東・南極は現在ある脅威ではないが"数千年間に渡り、数mの海面上昇を引き起こしうる"と述べている。)

 共同執筆者では仲間内の評価になってしまうので、ロイターは外部の研究者にこの研究への客観的な評価を求めたのだろう。

(12)  The United Nations panel on climate change says it is at least 95 percent probable that human activities such as burning fossil fuels — rather than natural swings in the climate — are the dominant cause of warming since the 1950s.

(国連気候変動パネルは化石燃料を燃やすような人間活動自然な気候の揺らぎよりも95%の確率で、1950年代以降引き起こされている地球温暖化の支配的な原因であると述べている。)

 この結論は妥当だろうか?中部大学の武田教授のように太陽の黒点活動が低迷期に入り地球は寒冷化に向かっていると主張している学者もいる。

(13)  Sea levels are likely to rise by between 26 and 82 cm (0.85 to 2.7 feet) by the late 21st century, after a rise of 19 cm (0.6 feet) since 1900, it says. Antarctica remains the biggest uncertainty.

21世紀後半には海面は2682cm上昇しそうだ。1900年から20世紀末まで19cmの上昇だった。南極は最大の不確実性であり続ける。)

 百年間で比較すると、20世紀は19cmの海面上昇にすぎなかったのに、21世紀後半(2050年)までには最低でも26cm、最大で82cmの海面上昇となる。1.5倍から4.3倍の海面上昇が高い確率で起きるようだ。IPCCが予測しているよりも、ずっと深刻だという研究も公表されているから、海面上昇に関する研究は百花繚乱の様相を呈している。こういうことは元の論文を読んで裏付けデータを自分なりに解釈しないと判断ができない。たくさんある研究の中の一つぐらいにとらえておこう。

 問題なのは、一旦溶け出したらその反応は不可逆で、数千年間続くということ。温暖化が地球規模ではっきり確認できたときには「もう遅い」ということがありうる。

************************
  補足 

【海面上昇のメカニズム】5/13 11時追記
 「南極・ニュース」で検索してみたら、NHKが関連ニュースを1時間前に配信していた。
*南極の一部氷河 「温暖化で流失防げず」 513 952分」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140513/k10014403511000.html

 大陸棚にある氷河と岩盤の間に海水が入り込んでしまっているというのだ。そこがリムとなって大陸棚の外側の急斜面を氷河がずり落ちるのをとめていたのだが、その「接着剤」がはがれたということ。あとは重力の仕事だで、接着面が次第に小さくなり、あるとき突然に急斜面を氷河がウィルス海盆へ向かって滑り落ちることになる。
 仮にリム部分(大陸棚の上)の氷河の厚みが1000mで大陸棚の深さが0200m20kmの幅でゆるい傾斜だとしよう。その先はウィルクス海盆で30度の急傾斜になっている。1000mの厚さの氷河がリム部分を越えると、海水の上に出す頭は80mくらいだから、重力で急斜面を下りながら920mも沈み込むことになる

 
まどろっこしいのでNHK記事を引用する。

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NASA=アメリカ航空宇宙局などの研究チームは南極大陸の一部の氷河について、温暖化の影響で、すでに氷河そのものが失われるのを防ぐことができない状態になっているという分析結果を明らかにしました。
NASAやカリフォルニア大学などの研究チームは12日、人工衛星や航空機による観測などから得られた過去40年間のデータを基に、南極大陸の西側にある6つの氷河の状態や地形を分析した結果を発表しました。
それによりますと、これらの氷河では、海水温の上昇などの影響で地面と接する氷河の下の部分に海水が流れ込んで氷が溶けており、氷河と地面が切り離されている地点は、20年前と比べて最大で37キロ内陸側に入り込んでいたということです。
このため氷河が流出しやすくなっていて、氷河が海に向かって移動する速度は年に最大4キロメートルと、40年前と比べて1.7倍の速さになっていたということです。
さらに氷の下の地形の分析で、流出をせき止められるような地形ではないことが分かり、研究チームは「これらの氷河が失われるのを防げる段階はすでに超えた」として、今後数百年以内に6つの氷河はすべて失われ、1.2メートルの海面上昇につながると指摘しています。
また、16日付けのアメリカの科学雑誌「サイエンス」では、別の研究チームも6つの氷河のうちの1つが早ければ200年後にも崩壊するという予測を発表し、温暖化の深刻な影響が浮き彫りになっています。
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Photos

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 この写真にある部分が氷河の流速の大きい部分を示している。幅は10kmほどだ。2000年の写真では10km×5kmほどの氷山が流れ出している。これが大陸棚に乗っている部分からねこぞぎ南極海へ流出したら、120km×100kmもの面積(四国の7割りのサイズ)の巨大氷山になるだろう。

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グリーンランドの氷河の流れが加速」 ナショナル・ジオグラフィック・ニュース
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140205004

*#2675 East Antarctica at risk of thaw : 東・南極辺縁部の巨大氷河が南極海へ落ちる? May 13, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-11-1

 #2681 南極大陸周辺の謎(1)問題提起:思考トレーニング May 21, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-21

*#2683 南極大陸周辺の謎(2):海面上昇値を計算してみる May 23, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23-1


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