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#3248 本を読まない大学生は何%いるのか Feb. 28, 2016 [55. さまざまな視点から教育を考える]

<更新情報>
3/2朝8時10分 末尾に追記⇒「日本は明治期に素読文化を棄て、・・・」


 中学生で本をまったく読まない生徒が増えています。
 斉藤孝『読書力』や藤原正彦『国家の品格』、林望『すらすら読める風姿花伝』を音読テキストに使って、中学生にトレーニングを始めてから、もう10年たちました。
 本を読まない中学生たちは、小学3-6年生用の語彙力問題集『言葉力ドリル実戦編』で50点取れない者が少なくありません。

 では、大学生はどうなのか、今朝NHKラジオを聴いていたら、数字が流れました。一日30分以下の大学生が半数を超えています。驚き、桃の木、山椒の木です。ビックリポン。

 数字のネタ元は、「第51回学生生活実態調査」(全国大学生活協同組合連合会)でした。クリックしてご覧ください。

*http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html

 サンプリング調査だから、サンプル特性に注目しておかなければなりません。国公立大学生が6277名、私立大生が3463名である。国公立大生の割合が母集団よりも大きくなっているというのが、このサンプリングの特性のようです。

 【図表-14】が「1日の読書時間」の推移を折れ線グラフにあらわしたものです。2004年から2015年までの各年ごとの割合がプロットされています。
 2004年と2015年のデータを階層ごとに並べますので、ご覧下さい。

 0分           38.7 ⇒ 45.2%
 30分未満       10.8 ⇒ 10.6%
 30分以上60分未満 23.8 ⇒ 23.3%
 60分以上       25.3 ⇒ 20.0%
(注:全部足しても100にはなりません、元データがそうなっているので、そのまま写しました) 

 読書時間が30分未満の大学生は55.8%です。まったく読書しない大学生が45.2%もいるのは驚きです。
 国公立大学製の割合が多いので、全数調査したらもっと数字が大きくなるでしょう。

 ニュースはスマホ、本は読まずにゲームやLINEやツイッターに時間を費やすいまどきの大学生の姿が浮かび上がります。
 

<中学生の語彙力低下に警鐘を鳴らす>
 『言葉力ドリル』からランクAとランクBの語彙をリストアップしておきますから、中学生の皆さんはこっそり語彙力をチェックしてみてください。中1年生で7割以上意味がわかった人は合格です、カウントしてみてください。
 小学生用の問題だからレベルが低いと侮る無かれ、中3年生は各語彙ごとに用例を三つ作文してください。ランクAとランクBの合計で9割できたら、学力テストの五科目合計200点(300点満点)は確実に超えているでしょう。「読み・書き・そろばん(計算)」、基礎学力を支える3本の柱の内、2本がしっかりしていたら、学力が高いのはあたりまえです。
 さあ、チャレンジしてください。

 【ランクA 最重要語100】
 
 あざむく       あわただしい
 いそいそと      意図
 いなめない      イベント
 いやす        後ろめたい
 有頂天        うながす
 厳(おごそ)か    おびただしい
 おもむろに      回想
 過程          感化
 気が置けない    義務
 客観的         供給
 教訓          形相(ぎょうそう)
 許容          具体的
 形式          権威
 権利          故意に
 肯定          心置きなく
 コスト         コミュニケーション
 細心          さまたげ
 強(し)いる      自我
 システム        したたか
 自負          周知
 じゅうなん       需要
 消極的        象徴
 ずさん         生計
 世間          積極的
 切実          切ない
 せんさい       先入観
 洗練          率直
 第三者         たしなめる
 建て前         丹念に
 重複(ちょうふく)   重宝
 直視          費やす
 つたない       体裁(ていさい)
 テクノロジー     典型的
 当事者        途方に暮れる
 なげく         なけなし
 になう         認識
 はかない       図る
 はぐくむ       漠然
 はばむ        反発
 風潮         ふきゅう
 福祉         風情
 プライド       分別
 閉口         偏見
 保守         まことしやか
 報いる        むじゅん
 面目(めんぼく)   モラル
 やおもて       優越感
 指折り        由来
 余地         理にかなった
 臨時         臨場感
 
 『言葉力ドリル』のランクBには50語リストされていますが、中3年生で500点満点で400点近い生徒でも、本をあまり読んでいない生徒は、半数くらいの意味がわかりません。もちろん適切な用例も挙げられないのです。

 <ランクB 50語>
 あさましい   あどけない
 いきどおり   いそしむ
 いたたまれない  いぶかしい
 いましめる   うき足立つ
 うそぶく     上(うわ)ずる
 おおらか    おくゆかしい
 おざなり     おぼつかない
 かたくな     気後れ
 気さく       軽べつ
 けなげ      けんお
 ごうまん     心もとない 
 さげすむ     ジレンマ
 そそくさと     打算的
 つつましい    なじる
 入念       ねたむ
 はにかむ     晴れがましい
 ひくつ       ふがいない
 ふてぶてしい  へりくだる
 放心       ぼくとつ
 向こう見ず   メンタル
 もどかしい    物おじ
 ものごし      やおら
 やりきれない  ゆううつ
 ゆだねる     利発
 わずらわしい  わだかまり

 日常会話で出てくる語彙(ごい)も10個ほど含まれていますが、残り40個は文章語ですから、本を読んでいないと目にも耳にもとまりません。
 ランクCには日常会話に頻出する語彙は出てきません。
 つまり、文章語は文章を読まないと知らないままになるのです。人間は言葉を使って考えますから、語彙数が少ないと思考も単純になります。複雑な思考はたくさんの語彙に支えられています。

 中学生で友人から、「あなたの話はとこどきわけがわからない」と言われたら要注意です。会話に何度も同じ言葉が出るようならアウトです。
 「うぜー」
 「それそれ」
 「すごい」
 「やばい」
 「なるほど」
 「たしかに」

 思い当たる人は、それぞれを、シーンに応じて3通りの言葉で表現してみてください。そしてそれを日常会話で使ってみてください。

 中学生になれば、授業で先生たちは文章語を使って説明しますから、先生がしゃべることを頭の中で直ちに漢字に変換できなければ発話された文章の意味がわかりません。成績の悪い生徒は、語彙力が極端に貧弱な場合が多いのです。そういう生徒は30人に6~9人はいますよ。

< 余談 >
 根室ではほとんどの生徒(95%)が、漢和辞典や国語辞書を引く習慣がありません。おそらく釧路も似たようなものでしょう。読書好きな生徒、なかでも児童書やアニメのノベライズのようなものを卒業して、読む本のレベルを上げていく生徒は国語辞典も漢和辞典もよく引きます。
 国語辞典と漢和辞典は毎日引いて習慣にしましょう。まずは「一日一語」でよいのです。そのためには文章語のインプットが必要です。名著といわれている本は語彙がすぐれているばかりでなく、文章表現や思考もぬきんでているので、ドンドン読んで、辞書を引きましょう。最初は自分が読みたいと思った本を読みましょう。数十冊読み進むうちに読む本のレベルを意識して上げて行けばよいのです。
 先週のことですが、中1の生徒に自分が読みたいと思う本を本屋さんで手にとって選び、読んできなさいと伝えました。その内の一人が本屋さんで買って読んだ本を持ってきました。
「読めない漢字に丸印をつけてきたら、振り仮名を振ってあげるから、あとで国語辞書を引いてみなさい」
 そう伝えてあったからです。たくさん丸印がついていましたが、約束ですからぜんぶ振り仮名をふりました、1冊半です。ちょっとしんどかった、でも遠慮しないでいいよ。(笑)
 中1の生徒が選んだ本は次の2冊です。

■ 吉村達也『生きているうちに、さよならを』集英社文庫
■ 山田悠介『パズル』角川文庫

 吉村達也の本は、ルビが少なく、語彙の少ない生徒にはちょっとしんどいでしょう。山田悠介の本はルビがたくさん振ってあるので、読みやすい。語彙力アップには最初のうちはルビがたくさん振ってある本を選ぶのがいいでしょう。
 斉藤孝の音読派シリーズは総ルビで名著が6冊並んでいます。


<余談-2:分布変化に相似形がみえる> 29日朝、追記
 気になる現象を追記しておきます。
 スマホやパソコンへの依存が大きくなり、ラインやツイッター、ゲーム時間が圧倒的に増えてしまい、その結果の読書離れは中高生も同じです。
 生活時間の3時間以上もこうしたスマホやパソコンに奪われてしまって、「読み・書き・そろばん」の三つとも、能力が充分に育たないようになってきているように見えます。
 読書をぜんぜんしない人が45%もいます、極端なんです、授業で先生が話す日本語を適切な漢字に変換できない生徒が2~3割も占めているというのが根室の実態で、おそらく釧路も同様です。
 根室では親が100冊以上の蔵書をもっている例はめずらしい。
(5月の連休に行われているボランティアによる「古本市」の活動は実に貴重です。古本屋が卒倒するぐらい格安ですから、ずいぶんな量の本が市民の間で流通しています。)
 親がスマホやゲームにのめりこんでいる例が増えているのが現在の30-40歳代です。

 読書階層ごとの数字の変化は、この12年間に根室の中学生の学力テストの得点分布の変化によく似ているのです
 成績上位層(読書1時間以上)が1/4以下に激減し、成績下位層(読書0分)が肥大化しています
 学力分布の変化は階層ごとの読書時間の変化よりももっと極端で、劇的です。おそらく学力分布の変化が大学生の読書時間変化の先行指標と言えるのでしょう。
 表にしてみて分布の変化が相似形であることに気がつきました。

 これら二つの分布変化には有意な相関関係が読みとれます。理屈の上でもそうなるでしょう、「読み・書き・そろばん」の読みの時間が小さくなり、そろばん(計算)トレーニングの時間もスマホやパソコンに奪われていますから、学力の土台である「読み・書き・そろばん」技能が衰えるのは当然です。
 音読も、文章を書くことも、計算も反復トレーニングで技能が高まりますから、時間を十分にとってやらせなければひどいことになります。

  日本は明治期に素読文化を棄て、戦後30年をかけてそろばんという計算技能を失い、コンピューターとソフトの飛躍的な発達で世界一の読書量を誇っていた読書文化をなくしてしまったのです。基礎学力の土台の「読み・そろばん(計算)」が崩れてしまったのですから、子どもたちの学力が以前の水準を保てずに著しい低下をしつつあります。この国の教育が土台のところから崩れていくのが見えませんか?
 あくなき便利さの追求、欲望の拡大再生産、利潤の追求を最優先する生き方、私たちが染まっているのに気がつかない無意識・無自覚な価値観が他にもいくつもあるでしょう、そういうものを一つ一つ点検し、失った価値観についていま点検すべきときがきている気がします。



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生きてるうちに、さよならを (集英社文庫)

生きてるうちに、さよならを (集英社文庫)

  • 作者: 吉村 達也
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 文庫

パズル

パズル

  • 作者: 山田 悠介
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本

言葉力ドリル 実戦編―中学入試

言葉力ドリル 実戦編―中学入試

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 学習研究社
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本





語彙力こそが教養である (角川新書)

語彙力こそが教養である (角川新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/12/10
  • メディア: 新書

 

斎藤孝の音読破〈2〉走れメロス (齋藤孝の音読破 2)

斎藤孝の音読破〈2〉走れメロス (齋藤孝の音読破 2)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/10
  • メディア: 単行本

斎藤孝の音読破〈4〉五重塔 (齋藤孝の音読破 4)

斎藤孝の音読破〈4〉五重塔 (齋藤孝の音読破 4)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 単行本

斎藤孝の音読破〈1〉坊っちゃん (齋藤孝の音読破 1)

斎藤孝の音読破〈1〉坊っちゃん (齋藤孝の音読破 1)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本


<音読トレーニングで使用しているテクスト>
①中1年生

読書力 (岩波新書)

読書力 (岩波新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/09/20
  • メディア: 新書

②中2年生
国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/20
  • メディア: 新書

③中3年生
すらすら読める風姿花伝

すらすら読める風姿花伝

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/12/13
  • メディア: 単行本

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tsuguo-kodera

 面白いデータをありがとうございます。でも私は調査データなど重視しません。感性と直感と創造性だけで今は生きているし、講義もしてきました。教科書など学生は読まない前提で、だからこそ教科書を用いて講義してきたし、今は総合の副読本を創っているのです。
 実は私も息子も読書はほとんどしない学生でした。それのプロと言えるかも。(笑)内職が得意、私も高校生の時は内職ばかりで教科書暗記の自習。古典的な機械工学の講義の時間に情報分野の本を見ていました。役立たない授業より内職自習が大事。でも調査があったら読書には入れず、授業時間でカウントするはず。二倍の人生の時間になります。
 息子はもっと極端だったよう。使えない先生も多いよう、その授業は副読本のデータを見て覚えたようです。だから社会と国語は得意だったようです。でも読書はほとんどなし。大学での趣味はバドと家庭教師。英数国の勉強は大学生や高校生に教えた時。難解な塾の資料を基に生徒と一緒に勉強したようです。
 開成で唯一赤点をとったのが物理、ちんぷんかんぷんの授業だったようです。だから受験は物理で受けず、地学。暗記で済むと言っていました。大学では分からないから勉強しようと理系で一番高い点数だった理物に進学。そのまま物理学で博士号。今は大学の先生です。評価も良いようです。笑えます。
 彼は量子力学は専門ですが、機械工学や他の基礎工学は全くの音痴。でも、国語が得意で論文や提案書や報告書は得意。添削も。読書は学生のつたない論文添削と、引用文献の確認で済ませていて、調査なら読書時間はゼロかも。時間効率は三倍。
 大学の会議など、卒論や修論の添削などもできるのかも。会社でも会議時間は勉強時間にできます。内職で仕事時間は倍になるし、パソコンやスマホは飛行機や新幹線の中です。移動時間はコミュニケーション時間のようです。
 私も、時間は創るものと考えて仕事をしていました。上手くすると三倍まで時間を増やせます。人の読書時間をパクって頂いてしまいます。管理人様の読書の感想や奨めは私の知識、でも耳学問ならぬ目学問。(笑)
 仕事時間で一番役立ったのは、寝ているときやふろの中、またトイレは最高の創造性の発揮場所。夢から覚めた瞬間が創造性の働く時間。プログラムのバグ発見場所は満員電車の中、つり革で押しくら饅頭に耐えている時。
 読書は高2の時、夏休み確か岩波の昭和文学全集全巻に挑戦、8割方は制覇したはず。でもそれ以来新しい本は読む気にならないのです。今の流行作家など読む気にもなりません。せいぜい三島由紀夫と石原慎太郎どまり。もっとも彼らの小説も高2の時に読みました。
 まとめです。読書はある時期、1年間集中して挑戦すべき。それまでは漫画でも、探偵小説でも、空想科学小説でも良いのかも。たくさん急いで焦って読むような暇つぶしでも良いのかも。
 社会に出たら、ながら知識獲得が大事でしょう。すぐ必要なときに使える知識を得たいなら、ゆっくりと読んでいる暇などなく、仕事をさせられ、できるから評価されるし、時間を与えても読まない奴はマニュアル通りに仕事をしないのが普通でしょう。
 若い人も先生も不得意な領域でしょうね。暇があるはずなのになぜか忙しく動いているからです。必要なのは創造性だけなのかも。

by tsuguo-kodera (2016-02-29 04:56) 

ebisu

おはようございます。
見事な反例でした。

小寺さんも息子さんも例外中の例外であると感じたのは私だけではないでしょう。
「本を読まない」小寺さんが高2のときに岩波書店の昭和文学全集8割を制覇とは驚きです。たぶん、2割は楽しくなかったのでしょう。
一生のうちの一時期を濫読期として過ごせた者は幸せです。一時期集中的に読めば充分だという意見にも賛成。
濫読期を一生続けたら狂気です。人生のそれぞれの時期に季節にふさわしい花が咲くようなものかもしれませんね。咲く時期が来れば咲いて、季節が動けば枯れます、なるほどそんなものかもしれません。

小寺さんの場合は、お父さんの蔵書があったからこそ書棚から取り出して読みふけったのでしょう。
そうした環境に恵まれた者は百人に一人もいませんから、どんなに仰られても一般化は無理のようです。(笑)

(わたしは、孫に残す本を300冊ほど選び、東京の家へ移そうかと思っています。ほとんどが将来ゴミとして棄てられます。)

岩波の昭和文学全集にどんな作家と作品がリストされていたのか私は知りませんが、岩波書店のことです、きっとレベルの高い名作が並んでいたことでしょう。日本語語彙はそれで十分すぎるほど獲得なさったはずです。
それらに比べたら、最近のナンチャラ賞受賞作家の日本語語彙ははるかに貧弱、文章も美しくなく、読む気が起きないのは当然です。それは高2のときに濫読期を経て質の違いがわかってしまうからと思いました。

社会に出てからは、仕事に関係のある本、ない本、とにかくさまざまな専門書を片端から読まなければならない時期がありました。
そういう時期が誰にも訪れますが、小寺さんはそうした時期に、数学のセンスと高2のときに培った読書力で楽々と乗り切ったのでしょう。

時間は創造できるというご意見もなるほどと思いました。
わたしは小学校からずっと家業のビリヤードを手伝っていました。一人で店番、お客様の相手をすることが少なくありませんでした。ビリヤードが大好きだったのです。家業を手伝って時間が足りないと思ったことはありません。自然に作り出していました。
小4のときから、店番の暇なときに辞書を片手に新聞社説を読み始めたり、学校の授業の復習を授業の板書のイメージ復元トレーニングで、数分でこなしたりと、店番しながら勉強してました。何もいらない、黒板に書かれた文字と話をイメージとして高速で復元するだけですから、眼をつぶり数分で完了です。
必要は発明の母とはよく言ったものです。工夫次第で時間はいくらでもできました。夏休みや冬休み、そして春休みには店番しているとき以外は好きな勉強に充てられるのですから、うれしかった。ふだん1日10時間を越えるような集中的な学習時間は日曜日以外はとれませんから、学校の宿題なんかそっちのけで、堰を切ったように問題集や専門書の読破にのめり込めました。

わたしも中・高の時代に濫読期を過ごしました。漫画とSFと公認会計士2次試験科目の専門書、そして哲学や経済学の専門書群です。読む本のレベルを上げることで、負荷が大きくなるのが心地よかったのです。しばらくすると、すっと軽くなっていくのがわかります。その感覚が楽しかった。
いまは年に20~40冊程度しか読みません。
生徒に薦められて、彼ら・彼女たちが読んでいる本をモニタするのはなかなか楽しいものです。
面白いのですが、こんな程度の日本語語彙やストーリー運び、主人公の思考、レベルを上げずにいつまでも本当に楽しいのかと、思うことはしばしばです。
アニメのノベライズものやゲーム関係の小説に人気があるようですが、10冊も読めばあくびが出ます。良質の漫画の本の方がよくできている作品群がたくさんあります。小寺さんも一度好きな作品を書いていましたね。

人生のある時期、濫読することで、作品のレベルの違いが識別できるようになります。質の高い作品も読まなければ識別できる眼は育ちません。質が高いとは、使われている語彙が豊かであることと表現が美しいこと、そして文章に論理と(日本的)情緒が適度にちりばめられていることです。

それなりの作品をあるじき読んだ人は、必要なときがくれば、湧き出すようにアウトプットが始まります。日本語語彙と莫大なその用例が頭の中にあるからです。その本の一部を使うだけで人に伝わる文章を書くことができます。
小寺さんのように・・・
by ebisu (2016-02-29 08:38) 

ebisu

気になる現象を追記しておきます。

スマホやパソコンへの依存が大きくなり、ラインやツイッター、ゲーム時間が圧倒的に増えてしまい、その結果の読書離れは中高生も同じです。

その結果、「読み・書き・そろばん」の三つとも、能力が充分に育たないようになってきているように見えることが気になります。

読書をぜんぜんしない人が45%もいる。極端なんです、授業で先生が話す日本語を適切な漢字に変換できない生徒が2~3割も占めているというのが根室の実態で、おそらく釧路も同様です。
親が100冊以上の蔵書をもっているのは非常にめずらしい。親がスマホやゲームにのめりこんでいる例が増えているのが現在の30-40歳代です。

読書階層ごとの数字の変化は、この12年間に根室の中学生の学力テストの得点分布の変化によく似ているのです。
成績上位層(読書1時間以上)が1/4以下に激減し、成績下位層(読書0分)が肥大化しているのです。
学力分布の変化は階層ごとの読書時間の変化よりももっと極端で、劇的です。おそらく学力分布の変化が大学生の読書時間変化の先行指標と言えるのでしょう。

表にしてみて気がつきました。

「余談-2」としてアップしておきます。
by ebisu (2016-02-29 08:57) 

tsuguo-kodera

 ちょっと待ってください。変ですね。(笑)
 koderaさんは例外中の例外ではなく、管理人さん、すなわちエビス先生が例外中の例外です。私は凡人です。でも実践命の男。だから管理人さんの経験談を分かりやすく総合の副読本にしたい。それなら根室は勉強好きの先生が増え、勉強好きの中高生が増えるでしょう。本は売れそうですし。(笑)
 とにかく管理人様の論は凄すぎです。でも管理人さんの素晴らしい論より、悪戦苦闘勉強した実践論がダメな先生や生徒さんに影響を与えられる可能性が高いのでは。素晴らしい論は埋もれるか、死後に認められるかではないでしょうか。遅すぎです。日本沈没。
 管理人さんの文は生浮かびの先生には、歳によらず、年寄りほど無理ですね。ごく一部の人だけでしょう。例外中の例外の人でしょう。普通人は読まないか誤解するだけでしょう。だから、空海は南無阿弥陀仏だけと言っているのでは。でも、これは私の悪い冗談。管理人様に嫌味ではなく、本当に尊敬しているのです。
 だから今こそ立つべき、実践論だけで。それは自分の小中高時代を面白く書いた本。ついでに介護実践論もです。(笑)
 お願いします。南無阿弥陀仏と祈っています。
by tsuguo-kodera (2016-02-29 09:15) 

ebisu

参りましたね。
斬りつけてみたら、返す刀でばっさり斬られました。
ギャーと一声、倒れました。(笑)

一人ひとりが、それぞれ例外中の例外なのでしょう。生まれ育った環境が異なりますからね。
人はそれぞれの環境に合わせて、環境を利用したり、環境にめげない工夫するもののようです。

他人様からみたら大変なことのようでも、その中にいる自分にとってはそういう環境があたりまえのものですから、空気みたいなものでなんてことはないのでしょう。
わたしは家業がビリヤードという特殊な環境の中ですくすく育ちましたので、それを一般化するのは無理、koderaさんの仰るとおり。
同じようにkoderaさんの環境も例外に属します。

いくつかエッセンスがありますが、それも家業のビリヤードに結びついて色がついているので、同じ環境の中でなければ、イメージ復元トレーニングもなかなかむずかしいのだと思います。目をつぶってイメージでビリヤードができれば板書を隅々まで思い出すことは簡単です。将棋のプロが、指し手を丸ごと覚えているとか、眼をつぶって将棋をさせるのとたぶん同じでしょう。
それを学習にひょいと利用することにあるとき気がついただけのことです。
あとはかってに面白くてのめりこむだけ、漫画の本に夢中になるのも、専門書を読むのも、文学作品を読むのも、哲学書を読むのも、ほとんど差がないのです。どの分野にも高いレベルのものとそうでないレベルのものがあります。
それだけのことで、何にも秘密はないのです。

環境に合わせて工夫するということが、koderaさんの仰る創造性の発揮かもしれませんね。

そういうことでは、タイプの異なる環境に育った人がそれぞれ「例外中の例外」を語る必要があるのかもしれませんね。
そこから、自分の環境に適合した工夫=創造してくれたらいいのではないでしょうか。。

ところで、介護の実践編は半分書いたところで、痛くて痛くて、書き進めなくなってしまいました。どうしたものかとしばし休憩して、思案投げ首。

肉親だからこそ、認知症の症状が出てからの介護の現実は肉体的にも精神的にも過酷といえる一時期がありました。近くの町の中標津では、介護に疲れて息子が親を殺すという事件が2年ほど前にありました。
老人が急増しているのに、膨らむ医療費を削減するために施設介護のキャパシティは小さくなっています。このままでは老老介護に疲れ果てて心中や、在宅介護に疲れた子が親を殺すようなことが急激に増えます。
政治は終末医療の充実を急ぐべきです。管を取り付けて生きながらえさせるのではなく、食べられなくなったら、自然に死なせて看取る終末医療が必要です。
痛かったり、苦しければモルヒネを使ってあげたらいい。これなら、終末医療で医療費がかさむことはありません。

数年前になりますが、おふくろの息が荒くなり、そして少しずつゆっくり静かになっていくなかで、「ありがとう、もうがんばらなくていいよ、ごくろうさま」とこころの中で手を合わせていました。息が途絶えるのをただ見守っていました。子どもと孫たちに看取られながら静かな最後でした。

認知症が出始めてから2年間ほど在宅介護しましたが、体力的にも精神的にも限界を超えていました。幸い、認知症の老人を預けられるグループホームに空きがあったので、施設介護をお願いしました。1年半ほどお世話になりました。最後は脳梗塞で地元の精神科の病院に入院、数ヶ月間寝たきりで静かに逝きました。

介護の現実を断片的に思い出しながら半分書いたお陰で、娘に辛い思いをさせたくないとあらためて思いました。
元の元気な身体に戻るわけではないので、延命治療はいりません。そうなったら、私には早くお迎えが来ることを祈っています。
苦しくありませんから、食べられなくなったら、枯れるように死なせてもらいたい。周りに誰かがいて、ありがとうと言えたらいいですね。自殺でない限り、死ぬのはままならぬものです。
まだしばらく生きていられそうですから、小さなことを一つ、また一つと毎日やれることをやるだけ。
今夜から雪が降ると天気予報がいってます。細かい雪がカゼに飛ばされて降ってきました。明日はまた雪かきに汗を流します。
バス停の前の雪かきも大事な仕事のひとつです。

南無阿弥陀仏

by ebisu (2016-02-29 11:01) 

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