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#3194 学を努め、学を好み、学を楽しむ:岡潔(数学者) Dec. 3, 2015 [55. さまざまな視点から教育を考える]

12/3 10時追記

承転結】
 不世出の大数学者である岡潔先生の『情緒と日本人』に次の条がある。

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 孔子の『論語』に、最初は学をつとめ、次に学を好み、最後に学を楽しむという境地の進み方を述べたことばがあるが、この「たのしむ」というのが学問の中心からの春風の吹く所に住むことに他ならない。 『春宵十話』   同書p.34
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 ニムオロ塾は5月まで緑町の日専連ビルにあったが、現在は自宅の18畳の書斎を整理して机を並べて教室にしている。
*#3037 教室移転作業完了 May 4, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-04

 #3038 今日からスタート:新教室を写真で紹介 May 7, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-07
 
 #3040 新教室授業初日に庭の桜が咲いた:生徒たちの反応や如何に May 8, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-08

 日専連ビルにあったときには多いときに50人ほどだったが40人前後がしばらく続いていた。現在の塾生数は中高生全部で20人ほどだから、生徒一人一人を丁寧にみられる。もうたくさんの生徒を教える体力はない。体力の衰えに合わせるように、根室の中高生の数が減少した。12年前には根室市内の中高生は1学年400人を超えていたが、230~250人に減った。総人口の減少は12年間で2割弱だが、学齢期のこどもたちの方は4割強も減った。市営保育所の数はすでに減少しているが、つぎは幼稚園が一つなくなるだろう。子どもが少ないのだから避けようがない。子どもの数が減少するのに合わせて、塾の規模も縮小する。タイプの違う塾がいくつかあることが根室の子どもたちのためになる。どこまで歩き続けられるかは神のみぞ知る、わたしは歩けるところまでただ歩く。

【起転結】
 話を本題に戻したい。夏休みが終わってから、中1の生徒と中3の生徒が入塾してきた。成績をあげたくて入塾して、3ヶ月がたった。9月初旬に中間テスト、11月初旬に学力テストがあり、11月下旬に2学期期末テストがあった。3年生は学力テストがAとBとCの3回あった。
 この二人は、じつによくやった。入塾当初は学校の先生の授業がわからないと言っていたが、最近はよくわかるようになったという。学校の授業がわかるようになればしめたもので、塾の授業と相乗効果が出るから、成績アップ・エンジンを2つつけたようなものだ。
 中1の生徒が五科目で9月中旬の中間テストに比べて103点アップ、中3の生徒が104点アップした。生徒がうれしそうな表情でテスト結果の報告をするのを聞くのは心地のよいものだ。この二人は「勉強をつとめる」段階をクリアして、「勉強を好む」段階へ心境が進んだ。マインドセット(mindset 心的態度、心のありよう)が変わってしまった
 中1の生徒は数学が33点アップし、英語が34点アップしたから、アップした103点のうち67点はこの2科目で稼いだ。
 中3の生徒は数学が27点アップし、英語が26点アップしたから、アップした104点のうち53点をこの2科目で稼いだ。
 タイプの異なる科目である数学と英語の成績がアップすれば、他の科目の勉強の仕方も多少は影響を受けるから、残り3科目がつられてアップするケースが多いのは事実だ。問題はこの後なのである。喜んで羽が生えたように舞い上がってしまう生徒あり、慢心がでて思い上がってしまう生徒もある。ここでさらに一生懸命にやれば、学力の底力がさらに大きくアップする大チャンス、この二人に限っては大丈夫とみている。

 中2の生徒でおもしろい経緯を辿っている生徒がいる。1年前の期末テストでは数学が30点台だったが、今回のテストは90点台に載った。1学期の期末テストでやはり90点台だったが、計算問題がほとんどだったから、2回とらないと「まぐれ」だと言い渡してあった。2学期期末テスト範囲には連立方程式の文章題、1次関数、多角形、角度、平行線、三角形の合同の証明問題が出題範囲になっているから、1学期比べると難易度は格段に上がっている、そこで90点取れたら本物。
 1学期末テストで初めて90点越えで慢心が現れ、勉強を手抜きして中間テストが50点台に転落、そこからまた勉強のしなおしをした。ずいぶん手間がかかったが、時々ふてくされながらもそれなりの努力が認められた。慢心が出ると厄介なのである、叱るべきときにはしっかり叱っておくが、心が素直になるには時間がかかり、両方に辛抱がいる。叱られながら、この3ヶ月間なんとか勉強に「つとめた」。
 この生徒は日本語能力が平均レベルより下である。「読み・書き・計算」速度が標準的な生徒よりもかなり劣っているので、スピードと集中力を強化するために、授業スタイルを変えることを申し渡した。個別指導だからこんなことが可能だ。英語が中間テストよりも42点アップしているが、まだ70点台だから学年末テストで20点弱アップを目標に授業を組み立てることにした。30回音読、10回書きトレーニングをやらせ始めた、「後志のおじさん」メソッドである。意味の解説をして、4文の音読トレーニング。そしてディクテーションさせて、書き取った文を直してから和訳。次にその和訳を英訳させてみたら、4箇所間違えただけ。いままで見たことのない集中力が現れた。授業の終わりに、もう一度同じ英作文をやらせたら今度は一箇所のミスだけ。しっかり記憶できていたことに、本人がびっくりした顔をした。暗記がすごく苦手な生徒なのである。数学の文章題で前文を読み終わって問1を読み終わると、前文に書いてあったことを覚えていないことがしょっちゅう起きていた。一時記憶が苦手だったが、とつぜん変化が起きてしまった。
 mindsetが変わると、顔つき(表情)も変化する、勉強しているときに幾分鋭い顔つきになり目がキラキラするからすぐにわかる。この生徒はもう嫌々やっているのではない、成果が出たので自分を信じて、自ら学ぶ心ができた。
 3ヵ月後の結果がどうなるかわたしよりも生徒本人が楽しみだろう。一つ段階をクリアしたら次の目標を示す。表情が変わったのは今まであまり使うことができなかった脳の機能が働きだしたからだろう。ここまでもってくるのに3年、教育はたまには生徒との根気比べのこともある。(笑)
 
 3年生は75点アップして初めて400点を超えた生徒と49点アップで450点に届きそうだった生徒がいた。どちらも中学3年間で最高点をたたき出した。このふたりは「学をたのしむ」心境へ進めるだろうか?

【起承結】
 背負っている課題は一人一人違う、よく観察して対処の仕方を見極めなければならない。
 飽きもせずに日々そういうことを繰り返しているのだが、伸びるときにはじつに大きく伸びる。3年前には学力テスト総合ABCの五科目平均を入試本番で100点上回った生徒と70点上回った生徒がいた。12月から入試までの3ヶ月間で飛躍的な伸びを見せてくれた。前者の生徒の学力テスト総合ABCの英語の平均点は27.3点で横ばいだったが、入試は英語が満点だった。後者の生徒は英語が10点台前半(60点満点)だったが、入試本番では49点だった。わずかの期間で中高生はときに信じがたい成績の伸びを見せる生徒がいる。
 ぎりぎりのところまで情報公開するのは、自分はここまでだとあきらめている生徒が多いからだ、勝手に自分の力を決めるなと言いたい。学校の先生も3年生が入試直前の努力で、300点満点で50点から100点も点数を上げる生徒がいることをご存じないことが多い。あきらめたらそれまで、あきらめてはいけないのが教育。だれがとんでもない伸びを見せるかはわからないのだから、教えられるほうと教えるほうの両方があきらめてはいけないのである。

 あ、忘れるところだった。6連続で学年トップの生徒がいる。教えている私の方は、長期目標からみてまるで意味がないから学年トップにはこだわっていないのだが、本人はこだわりたいらしい。つまらないところにあまりこだわると、大きな目標が見えなくなってしまう。団塊世代のころに比べると、1学年が1クラスの規模だ。わたしが光洋中学生だったときは1学年10クラス550人だった。現在、市街化地域の3中学校の規模は1学年50~90人、学年一番の値打ちは下がったから、同じ学校の生徒をライバルと考えて勉強していたら、難関大学合格はおぼつかぬ。
 2番目との点差がテストの回を重ねるごとに開いていくことがうれしいようで、子どもっぽさが抜けない。(笑)
 そういうわけで「学をたのしむ」境地にはまだ遠い。でも、勉強して新しいことを覚え、問題を解くのが好きだから、「学を好み」の8合目には達している。難問を数時間あるいは数日考え続けることができれば「学を楽しむ」という心境に近づける
 わたしは高校生になってから、公認会計士2次試験講座の参考書や経済学の専門書そして哲学書を読むようになってからそういう心境が訪れた。「学をたのしむ」という状態が訪れたら自然に学年トップへのこだわりが消えてしまう。記憶力と集中力が異常にアップし、周りの成績などまるで気にならなくなり、だれとも競争しなくなる。すべては自分の問題で他人は関わりがなくなってしまう。そういう心境に進むとこだわりがなくなるから、自分を見つめていたらすぐにわかる。高校1年までかかってよい、心の成長をまっている。
 数学はもうすぐ1学年上の生徒に追いつき、追い越す。中学卒業のころは数ⅡBを半分くらいやっているだろう。高1の夏休みに数ⅡBを終了し、9月から数Ⅲと難易度の高い数ⅠA・ⅡBの問題演習にチャレンジすることになる。マイルストーンの誤差はおおよそ3ヶ月を見込んでいるから、苦手な分野に遭遇したら、惜しみなく時間を投入し、ローギアで速度を落として乗り越えよう。
 英語は中3半ばからGrammar In Use(中級)をやり、高1の半ばころからジャパンタイムズの記事を読ませてみたい。生徒の成長の程度を観察しながら、手綱を調整することになる。こちらの思い通りに動くことなんてあろうはずがないが、それでいいのである、的を外さなければいい。
 読書にあまり興味のない生徒なので、日本語の良質のテクストを選び、三色ボールペンを使った音読トレーニング(斉藤(孝)メソッド)もやっている。日本の古典文学、経済学、哲学から各1冊は消化してみたい。全国模試の国語問題は難易度が高いとときに40ページを超える分量のことがあるから、読解速度が問題になる。
 人数が少ないからこそ、こんな贅沢な授業が可能だ。教わるほうも楽しいだろうが、教えるほうもドキドキワクワク、楽しい。

(同じ学校にもう一人同じレベルの生徒がいた。5年生の6月半ばから教えたので、上記で紹介した生徒よりもスタートが半年早かったことになる。数学も英語も消化速度が大きかった。偶然だが、同じ進路選択だったから、こちらで用意したのは難関大学進学を意識したプログラムであった。
 余裕で学年トップを取り続けたまま1年生が終わると同時に室蘭へ転校し、いま3年生。どこにいってもトップが争える生徒だ。心の強い者は強い相手がいたらさらに伸びる。学年が異なり性格が異なるこの二人の生徒を同じ学年で競わせてみたかった。
 1学年の人数が少ないと同じ学年では強いライバルにめぐり合えない、トップクラスの生徒を鍛えるという観点からそれはそれで大きな問題なのである。)

【起承転
 さて、岡潔先生の「学をつとめ、学を好み、学を楽しむ」は『論語』が出典である。

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「子曰、知之者不如好之者、好之者不如樂之者」 
「子の曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好むものはこれを楽しむものに如かず」
   『論語』「雍也第六の20」 p.117(岩波文庫)
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 この続きの条は書かない、いわずもがなだから空白を読み取ってもらいたい。こうして余韻を残すというのも日本の文化。




【8周年、皆様に感謝】
  弊ブログは11/27に8周年(2923日目)を迎え、累計アクセス(PV)数が380万を超えました。ご愛読ありがとうございます  ...m(_ _)m


《余談-1:個別指導》 12/4 0時追記
 中3は6人、「11月27日期末テスト-9月の中間テスト」五科目合計点アップ幅は40~104点の間に分布、6人合計が392点だから、一人平均65.3点のアップ。こんなことは初めてだ、このクラスの雰囲気はとてもよい。1クラス定員は7人、このクラスには中1の生徒が一人混じっているが、この生徒は65点アップだった。104点アップの生徒は学校の先生にほめられたと喜んでいた。ほめてくれたB中学校の先生ありがとう。
 6人のうち4人が高校進学で根室から出て行く、こんな年も初めての経験。
 いまから、1月の学年末テストまでがんばり抜いた生徒は学力をさらに上げるだろう。ここからが本当の勝負だ、6名揃って中学最後の心臓破りの坂を駆け上がれ!


《余談-2:成績が急上昇した原因》12/4 0時半追記
 2ヵ月半でこんなに学力が伸びたのは、このクラスの生徒の士気が高かったことが第一の要因である。
 次に考えられるのは1クラスの規模を7人に縮小したこと。
 今日は二人が同じ問題集を使っていたが、やっていたところは別、他の生徒はぞれぞれ自分のやりたい問題集に取り組んでいた。この時期になると、1~3年までの総復習の問題集を選んで1冊丸ごとやる生徒が増える。塾用問題集(3年用)で十分なのだが、不安なようだ。
 半年やって見て、7名というのがわたしの体力とうまくバランスしている。7名から次々に質問が飛んでくるから、それを捌きながら机間巡視し、やっていることをたしかめる。生徒もなれてきて、問題文を読みながらポイントを2~3箇所説明するだけであとは独力でやりぬける。その辺のころあいは7人それぞれ異なるが、阿吽の呼吸でお互いにわかるようになったということ。全部説明していたら、とても7人同時の個別指導はできない。
 全部説明が必要な生徒は、別の時間に来てもらい補習することになる。成績がかなり悪くても1ヶ月やれば、普通の能力の生徒ならだいたいなんとかなる。「学びたい」という素直な心があるかないかが結果を大きく左右する。親に言われて嫌々やっている生徒はなかなか成績は上がらない。心(mindset)の問題の解決が先なのだが、それが性格にまで食い込んでしまっているケースが多くて難しいのだ。無理にこじ開けようとすると強い拒否反応が出る、時間をたっぷりかけてすこしずつやるしかない。自我が育つ前に家庭での躾をちゃんとしておかないと、高い確率でやっかいなことになるので要注意である。学習に関する躾は小学校1・2年生のときのお母さんの役割が大きいので、次回取り上げる。


*#1213 数学者岡潔(1):『日本という水槽の水の入れ替え方―憂国の随筆集』 Sep.20, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-20


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tsuguo-kodera

 奇遇です。私の売れなかった本を高校生がリライトしています。その本のあら原稿を昨日読みました。今日の論語の言葉が平文の現代文で追加され書いてあり、その説明をバドミントンを例にしてくれています。本当です。
 私は難しすぎて分かりにくいかも、とアドバイスしていたのですが、そのまま残します。ありがとうございます。でもこの記事のパクリではありません。編者の高校生のオリジナル、彼女が発想したと付言させてください。
 年度末までに一冊差し上げようと私も編者も努力しています。こうご期待。できることを祈って、差し上げられることを祈って、南無阿弥陀仏
by tsuguo-kodera (2015-12-03 04:28) 

ebisu

おはようございます。

まさしく奇遇ですね、以心伝心どこかでなにかがつながりだしているようです。
半分書いてうっかりしてしばらくお休みしてしまいましたが、れで思い出しました、認知症の件の原稿書き進めます。
ほんとうにすっかり忘れていたのです、わたしは相当進んでいますね(ハハハ)
by ebisu (2015-12-03 08:00) 

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