SSブログ

#3175 市民社会派の諸説 Nov.13, 2015 [A4. 経済学ノート]

 マルクス経済学では市民社会派と呼ばれる一群の経済学者がいる。内田義彦先生や望月清司氏、平田清明氏、哲学畑からは廣松渉氏をあげれば十分だろう。
 彼らは、『経哲草稿』『ドイツ・イデオロギー』『経済学批判』『経済学批判要綱』を取り上げ、マルクスの歴史認識を俎上に載せる。
 当然、ヘーゲル『歴史哲学』との関連も問題にせざるをえない。

 こういう方向でのマルクス研究が経済学としてどういう意味をもつのか、あるいは意味をもたないのかはっきりさせておきたい。「資本論と21世紀の経済学」の立場からの市民社会派の諸論批判ということになる。
 マルクスは『資本論第1巻』を書き進むうちに、経済学諸概念の体系化にヘーゲル弁証法が暗礁に乗り上げたことに気づき、資本の生産過程以降を書けなくなる。それがどういう問題を孕んでいたのかについて、宇野派も市民社会派も気づくことがなかった。

 市民社会派は『資本論』の体系構成法(廣松渉氏は「体系構制法」と書いている)については、スルーしてしまう。望月氏は『資本論』には自分の力が及ばないことを『マルクスの歴史認識』で正直に吐露している。
 『資本論』の体系構成法が明らかになると、市民社会派の論は成り立つのだろうか。一度整理する必要がある。

 内田義彦先生の諸著作と廣松渉氏、平田清明氏、望月清司氏の本をいま一度読み直さなければならない、手間がかかるが面白いことになりそう。

 いま手をつけている「認知症と介護」に関する仕事が終わってからやってみたい。


 #3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次>  Aug. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15

 #3121 既成経済理論での経済政策論議の限界 Sep. 1, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-09-01-1

 #3148 日本の安全保障と経済学  Oct. 1, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-01

 #3162 絵空事の介護離職ゼロ:健全な保守主義はどこへ? Oct, 24, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-23

 #3170 地に落ちた日本の伝統的商道徳:三井不動産と旭化成建材 Nov. 4. 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-04

 #2501 フクシマ原発周辺住民Mikoさんのビデオ証言 Nov. 17, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17-2

 

      70%       20%      
 
日本経済 人気ブログランキング IN順 - 経済ブログ村教育ブログランキング - 教育ブログ村


新版 経済学の生誕

新版 経済学の生誕

  • 作者: 内田 義彦
  • 出版社/メーカー: 未来社
  • 発売日: 1994/02
  • メディア: 単行本
経済学と歴史認識

経済学と歴史認識

  • 作者: 平田 清明
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1971/08/30
  • メディア: 単行本
マルクス歴史理論の研究

マルクス歴史理論の研究

  • 作者: 望月清司
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • メディア: 単行本

nice!(2)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 3

tsuguo-kodera

 市民社会派の諸論に対する批判の立場からまた挑戦を始めるのですか。凄いですね。本当に尊敬しています。
 私など身近な人でも同じ学校の人でも、もう他人の誤りを指摘する気力も体力も時間もありません。いい加減にそうですか、と言うしかできなくなってきました。
 今はもう、私の信念を高校生に、本を書かせ、何とか援助し出版するだけでいっぱいいっぱいになりました。これだけでも気力体力時の運も必要です。
 自分の本だけでも、少なくとも4冊はリライトさせたいのに1年で1冊がやっと具体的に見えてきただけなのです。今のままでは私の文章だけで4年生きている必要があるでしょう。
 本にまとめられる、本を書かせられそうだと分かって来たらどんどん野望も膨らんできてしまいました。本当に困った欲張りなのです。
 もし管理人様がまとめている認知症介護の文を本にさせて頂けるならそれだけでプラス1年かかります。ここまではぜひとも生きていたい、したいことです。
 また本にも挿絵も加えるなどして、認知症予備軍に読ませられる本にもすると、さらにまた1年近くかかるかも。
 私が勉強させて頂いている、管理人様をはじめとする、数名の管理人様がたのブログ論を1つに集約した論文か本も書いてみたい。これこそ商品企画や事業企画で培った経験が役立ちそうだからです。
 その他にも、生徒さんや先生に書かせてみたい気持ちもどんどん大きくなってきています。困ったものです。
 結局私もけりをつけられないまま、お陀仏になる運命なのでしょう。逃げるのが好きなのに変です。体力と気力と知力の続くことを祈るしかできません。南無阿弥陀仏。
by tsuguo-kodera (2015-11-13 04:51) 

ebisu

koderaさん

おはようございます。
市民社会派の諸論は、内田義彦先生の『経済学の生誕』のある問題意識に端を発しているのですが、ほとんどの先生方が、その内田先生の問題意識に寄りかかってマルクスの文献を読んでしまうのです。一つの思い込みに強く依拠してマルクスの書いたものを読めば、柳に幽霊のたとえのごとくになります。

宇野学派も同じことで、宇野理論に依拠して資本論を読んでしまうから、マルクスが資本論でやりつつあったこと、マルクス自身がなぜ暗礁に乗り上げ、資本論第一巻のみしか書き残さなかったのかが見えません。
ハナから宇野経済学原理論という色眼鏡で資本論を見てしまったら、幽霊が見えてしまうだけ、そのごのどんな研究も幽霊を論じるのみ。どうしようもない研究が山のように積まれてしまっています。

学問をするときには、虚心に原典を読まなければなりません。この場合には、マルクス『資本論』から読むべきなのです。
『資本論』⇒『経済学批判要綱』と遡行しないと体系構成法はつかめるはずがないのです。理由は本論で明らかにしますが、すでに「資本論と21世紀の経済学」で言及しています。宇野理論批判をした箇所です。

要するに、オリジナルに取り組む前にそれを解釈した先達の諸論を勉強しすぎてはいけないのです。問題意識がそこに絡めとられて身動きが取れなくなります。自分の目で虚心にオリジナルを読めなくなるのです。内田先生の目や宇野先生の目で読み込んでしまう、アウトですよそういう研究の仕方は。

わたしにとっては宇野学派の経済学者たちも市民社会派の経済学者たちも同じに見えます。宇野理論については言及したので、市民社会派の主要な論もまな板に載せてみたくなりました。

内田先生の講義を1年間受講したのと、大学院入試学内試験の際に大学院長であった内田先生から市倉宏祐先生(哲学および倫理学)を通じてもらったサジェッションはしばらくの間、わたしの支えになりました。感謝の気持ちを込めて、内田市民社会論批判をしなければ申し訳がありません。
市民社会派の重鎮である平田清明の『経済学批判要綱』読解は致命的な欠陥がありました。修論ではマルクスの体系構成全体を論じると、既存のどの理論とも異なる奇抜なものになるので、『経済学批判要綱』流通過程分析を取り上げた平田氏の『経済学と歴史認識』をまな板に載せました。資本論全体の体系構成への言及を避けたので、悔いの残る半端なものになってしまいました。

そろそろけりをつけておかないと、あの世で数人の大先生たちに見(まみ)えたときに合わせる顔がありません。(笑)
by ebisu (2015-11-13 08:17) 

ebisu

koderaさんが仰るように、歳をとるとやりたいことが増えていくようです。

新しい経済学の展望というライフワークがすんだら、暇をもてあますことになりそうなので、ブルバキ『数学原論』37冊を読んでみたいと30歳前後から思い続けてきました。
はたしてそのときに現代数学の専門書群を読みこなせるだけの学力と気力と記憶力があるのかおぼつかないですが、寿命があれば極東の根室でのんびりと読書にいそしみ、ブログでなんらかの情報を発信しているのでしょう。
どうやら退屈する暇はなさそうです、死ぬまで勉強、ありがたい。(笑)

by ebisu (2015-11-14 09:44) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0