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#3103 やはり三日連続の切り下げ 人民元  Aug. 13, 2015 [91.経済]

 今日も小刻みな切り下げをやるのではないかと思っていたら、お昼のNHKニュースが人民元が1.1%切り下げられて、三日連続4.6%の切り下げとなったと告げていた。

 国内の景気が低迷して、輸出を増やしたい事情があるならこんな程度の切り下げではすまない。たとえば、日本は安倍政権誕生前に比べて80円⇒120円台/$への5割の円安である。30%は元安を演出しないと輸出ドライブがかからないだろうから、様子を見ながら小刻みな元安がしばらく続くと読むべきなのだろう。その一方で輸入物価を押し上げることになり、「不景気+物価高」に陥りかねないので、おっかなびっくり小刻みの切り下げとなったのだろう。中国政府は通貨政策に不慣れなのである。

 上海株が暴落してあわてて取引をストップしたり、株の売却を制限したりと、なりふり構わない露骨な介入が続いていた。言論の自由や人権を求める動きに対しても強権発動という対応をしているが、どちらをみても中国政府の対応は幼い。

 世界の工場は割高になった中国を逃げ出し、インドやミャンマーやベトナや、タイへ移りつつあるから、小刻みな元安では輸出は増えない。元安はこれらの国々に影響があるだろうから、対抗して自国通貨の切り下げ競争が起きかねない。
 中国はサイズが大きいのだから、大人の振る舞いを身につけなければならないのだが、無理な注文である。わが国の政府はこの数年間アベノミクスという「異次元ゼロ金利」で臨み5割もの円安誘導を実現し子どもじみた振る舞いをしている。じっと見ていた中国が真似しはじめたのかもしれない。
 自分たちのグループさえよければいいというのがTPPだ、自分さえよければいいという国が増えていき、弱肉強食が当たり前になればどういう経済社会が現出するのか考えなくてもわかるだろう。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」に基づいた経済運営のお手本を日本が示さなければならないのだが、安倍政権はそれとは真逆の経済政策を狂ったように推し進めている。美しい日本を目指していたはずだったが、まっとうな道を歩くのはむずかしいのだろう、「近道反応」的な経済政策選択が多い。わたしにはかれの経済政策も国会での野党議員との議論も幼児性の表れにみえる。

 国内の景気対策に他に打つ手がないために、中国はこのまま小刻みな元安を続ける可能性が強く、周辺諸国への影響があるから、かの国の通貨政策をしばらく見守ったほうがよさそうだ。もちろんわが国の経済政策も同列である。

(GPIF(年金機構)の株保有はすでに限度いっぱいに近づいており、あと1.5兆円ほどしか買い入れ余力がなく、株高の演出が限界にきている。公共投資も前年比で大きなマイナスである、財政出動という第一の矢も、失速しつつある。財政出動と異次元のゼロ利政策で自動的に成長できると考えていた節がある、トリクルダウンでの内需拡大を信じていたのだろう。成長戦略はいまだに姿が見えない。)


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コメント 2

時白須

久しぶりの投稿です。

>その一方で輸入物価を押し上げることになり、「不景気+物価高」に陥りかねないので、おっかなびっくり小刻みの切り下げとなったのだろう。中国政府は通貨政策に不慣れなのである。

反論ではありませんが、中国政府の狙いは更にその一歩先を行っていると見ています。

今回の利下げは、輸出拡大への元安誘導では決してなく、人民元の国際化に向けた元安「容認」です。事実、IMFは今回の政策を歓迎しています。

http://jp.reuters.com/article/2015/08/12/imf-china-yuan-idJPKCN0QH09O20150812

なぜIMFが歓迎したか、そのカラクリを紐解くと、下記のような背景が浮かびます。

中国は、2005年にドルペッグを見直して、現行の管理変動相場制に移行していますが、当初は毎日当局が定める基準値の上下0.3%内で変動を認めるというものから、徐々に変動幅が拡大され、現在は上下2%まで拡大しています。

もともとは、人民元が不当に安く抑えられ、貿易不均衡を生んでいるという欧米からの批判に応える形で導入された制度ですが、基準値の算出方法が不明確な点から、事実上のドルペッグに近いという批判がありました。

今回の措置で注目すべき点は、これまで不明確だったこの基準値の設定を、前日終値を参考にするというものです。人民銀行のアナウンスでは、基準値と市場の実勢が乖離し、3%程度この差が集積したため、実勢に近づけるために制度の見直しを断行したと述べています。

さて、それでは、なぜ中国はブラックボックス化していた基準値の算出根拠を明確にし、実勢との乖離を埋める政策を断行したのか。

結論から述べますと、人民元の基軸通貨化を達成するためというのが答えでしょう。まず、その第一ステップとして、中国は人民元のSDR採用を狙っています。IMFのSDRは現在、ドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨でその価値が決められます(通貨バスケット:詳細はWikipedia等にて)。

人民元がSDR採用されると、国際的な信認が増し、人民元による決済が加速します。特に、貿易面で中国との結びつきが強い国においては、人民元を外貨準備として保有する必要性が高まる。

中国の狙いは、目先の輸出拡大ではなく、人民元の基軸通貨化にある、これが私の見立てです。AIIBについても、中国の国際通貨戦略の視点から見てみると面白いかもしれません。
by 時白須 (2015-08-31 23:38) 

ebisu

時白須さん

人民元の基準通貨化、中国政府にそういう通貨戦略があるというのは、的を射ているのでしょう。
ドル、ユーロの次は元、資源外交をやっているアフリカ諸国から攻めるのでしょうね。
資源外交や政治戦略とセットになる。AIIBもそうした戦略の一環という見立ても、全体をみわたしたときに無理の無い自然な結論にみえます。

中国はいま、設備過剰だといわれています。どのような経済政策がいいのか実情は国内で百家争鳴ではないでしょうか。

本来自国通貨が強いというのは国力の強さの象徴でもあります。
中国はミャンマーやベトナムやインドと国際競争になりつつあります。海外企業の生産拠点が移動し始めており、この流れはとまらない。
この大きな流れに対して焦りがあるようにもみえます。いまは実力に比べて元安ですが、いつまでもそうではありません。

急激な人口高齢化がまもなく中国を覆います。中国経済の盛りが過ぎたと仮定したら、生産拠点の流出は長期的に見ると中国経済に深刻な影響をもたらします。日本を見てもわかります。生産拠点があらかた海外へ移ってしまっています。

だから、通貨政策がどの程度有効なのか、どの程度の誘導なら国際的な承認が得られるのかを探ったという見方も可能でしょう。国際的な反響が大きすぎて、次の手が打てなくなってしまった。中国経済のサイズが大きすぎる。

中国政府が元の基準通貨化を図っても、長期的に中国政府が政治的安定性を確保できなければ、元に対する国際的な信任は無理という見方もできます。
破綻リスクの高い国家の通貨が基準通貨として国際的に信任されることはないでしょう。少数民族とのトラブル、言論弾圧、こういう高圧的な政治運営は国家の破綻リスクを増大させます。

そういう理由で、中国政府の意図とは別に、元の基準通貨化は経済援助や資源外交をの相手国に限定されたものになるのではないでしょうか。
by ebisu (2015-09-01 08:09) 

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