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#2729 年金基金の運用資産が130兆円から210兆円に増える:危うい株式投資 July 9, 2014 [91.経済]

1.<わたしたちの年金資産は大丈夫か?>
 年金基金管理運用独立行政法人(GPIF)は130兆円の年金基金資産を保有している。安倍総理は年金基金の20%を国内株式投資に使おうと目論む。
 株価が高ければアベノミクスが成功しているという幻影を与えることができるからだ。米国は年金基金を株式投資に使うことを禁じている。

2.<基金が来年度80兆円増え、42兆円が市場に投下される>
 7月8日NHKラジオ番組「ビジネス展望」で内橋克人氏が次のように警告している。
 来年10月に公務員の年金基金(30兆円)と百を越える独立行政法人の年金基金(50兆円)が厚生年金に統合され、GPIFの保有資産が210兆円になるから、そのうちの20%となると政府機関保有の上場株式は3倍弱に増えることになる。
 
 GPIF保有資産の内訳は次のようになっている。
 国内債券 60%
 国内株式 12% ⇒ 20%へ
 外国債券 11%
 外国株式 12%
 短期資産  5%

 国内株式への投資額
   130兆円*12%=15.6兆円
 これが年金基金の統合によって保有資産が210兆円になると、運用額は
   210兆円*20%=42兆円

 内橋氏によればすでに3月4月とGPIFは国内株式を買い増している。株価の動きは次のようになっている。
   2月末の日経平均 14,841.07円
   3月末の日経平均 14,827.83円
   4月末の日経平均 14,304.11円
   5月末の日経平均 14,632.38円
   6月末の日経平均 15,162.10円

  BIS規制で大手都市銀行が9兆円の株式を売却処分しているさなかに、GPIFが買い手に回り株価暴落を防いでいた、見事な連係プレーだしかし、預っているだけの厚生年金基金をこんなにあからさまで恣意的な運用をしていいのだろうか?

3.<日銀の国債保有が2倍になった:暴落リスクあり>
  安倍政権になって日銀保有国債残高が110兆円から210兆円へ100兆円増えている内橋氏はこの点に大きなリスクがあるという。物価が2%アップなら、長期金利が3%の上昇するというのが金融専門家の一致した見方だという。長期金利が3%になれば国債は暴落し、日銀は大きな損失を出すことになり、国際通貨としての円への信頼が揺らぐ。

4.<政府機関が大量に上場株式をもったら、それは政府による企業支配>
 そもそも政府機関が上場株を保有してはいけない、共産主義ではあるまいし、政府が上場株を買い占めたら、国有会社になってしまい、株式市場や企業経営の健全性が失われる。
 昨年12月の東証1部上場株の時価総額を調べてみた。4,593,710億円となっている。
*12月26日日経新聞
http://www.nikkei.com/markets/kabu/summary.aspx?g=DGXNASFL260RJ_26122013000000


 このときの日経平均は、16,291.31円だから、6月末の15,162.10円で計算すると
 4,593,710*15,162.10/16,291.31=4,275,303億円

 もしGPIFが42兆円もの東証1部上場企業株式を保有することになれば、そのシェアーは
    42兆円/427兆円=9.8%

 会社によっては三分の一を越すような大株主になりかねない。10%でも上場企業にとっては大株主で、経営に強い影響力をもつ。取締役の選任についても保有株式を盾にいろいろな要求が可能になる。企業の合併などもGPIFにお伺いを立てることになる。自由経済ではなくなるということだ。

5.<買い入れた株はいずれ売却することになる>
 もう一つの懸念は年金受給者が急増するので、GPIFは年金資産を売り払って支払に充当しなければならぬ。一旦保有した42兆円の株を恒常的に売り続けることになるから、長期的に見たら株式市場は暴落必至となる。高値で買った株が暴落すれば年金基金に10兆円を超える巨額損失が発生する。株価が半分の7500円にならない保証はない。

6.<日本経済の基礎構造の変化に対応できないアベノミクス>
 貿易収支は3年連続で赤字で、経常収支は今年度に赤字に転落しかねない様相を呈している。これは一次的なものではなく盛りを過ぎた日本経済が縮小することで起きる現象だ。経常収支が赤字に転ずれば日本からお金が出て行く。
 原油価格は3年半連続して100ドル/バーレルを超えている。イラク情勢の混迷化によって120ドル越えが懸念されている。ガソリン200円/リットルが数年の間に現実になるのだろう。原油価格は10年前までは30ドル/バーレル以下だったが、中国やインドの需要増大でこの十年間で3倍強に値上がりした。燃料用灯油も上がり北海道に住む私たちに深刻な影響が出る。
 人口は2040年には1億727万人(2014年1億2694万人)へ減少し、国民一人当たり所得が同じだとしても経済規模は15.5%小さくなる。社会保障・人口問題研究所の推計によれば、46年後の2060年に日本の総人口は8673万人(68.3%)に縮小している。
 経済の基礎構造が大きく変わりつつあることをわたしたちは自覚しなければならない

7.<浮利を追う安倍政権の危うさ>
 安倍政権は人気取りのためにやっきになって株価を一時的に上げようとしている。消費税増税、ゼロ金利や異次元の量的緩和、法人税減税そして世界最大の年金基金GPIFによる買い出動、これらは住友家の家訓などが禁じている「浮利」を追う行為だお家がつぶれてしまうから禁じている、家訓を忠実に守ってきたから住友家は今でも安泰だ。ところが家訓破りをアベノミクスと称して政府が躍起になってやっているのだから、後がどうなるかは明らかだろう
 長期金利が上昇し、日銀や金融機関が保有している国債が暴落し、国際通貨としての円への信任が失われ、政府財政は破綻、日本経済はクラッシュすることになる。

8.<経済運営のもとをなす価値観の転換が必要>
 東北大震災のコンクリート堤防造りはやめ、宮脇昭翁が提唱する緑の森の堤防造りをすべきだ。東京オリンピックは辞退でよい。
 人口が縮小しつつあるのに大きな施設は要らぬ。26年後1億人の人口を前提にしてインフラのグランド・デザインをしよう。高速道路網、鉄道網、道路網、電気・水道・ガス・公共施設などの配置を見直そう。高速で進む少子高齢化と人口減少時代に成長戦略はいかにもふさわしくない。経済成長はいらない。
 拝金主義から脱皮し、鎖国(強い管理貿易)をして国内に雇用を創りだそう。「小欲知足」、「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」で生きていけばよい
 ほとんどの高性能・高品質の工業製品を自国で生産できる国は日本だけかもしれない。人口を半分にできたら工業製品も農林水産製品も自給自足が可能な唯一の国だとしたら、やってみせたらいい。そしてそのシステムを丸ごと世界中に輸出すればいい
 人口縮小時代にふさわしい価値観の国を創りだすときがきている。労働価値説に基く西欧経済学が行き詰まるべくして終焉を迎えている。それにかわる職人仕事経済学の時代だ。人口が半分になれば、週休3日、趣味で兼業農家をやればいい。人口が半分なら電力需要は激減するから、原子力発電なんて必要なしだ
 どういう経済社会に住みたいかを考え、それを実現するために智慧を絞ろう。日本の時代がやってくる、判断を間違えなければ未来は明るい


9.<余談>
 安倍首相がオーストラリアへ外遊し、かの国の国会で演説をした。英語の原稿棒読みだが、ジェスチャーを交えてなかなかうまい。日本の国会では説明していない集団的自衛権をしっかり宣伝していた。防衛とTPP問題でオーストラリアとの連携が強くなりそうである。仲間内(故ヤシキタカジンの番組や与党内)での説明はストレスがないから得意満面、オーストラリアでも批判が起きる心配がない。そうした場での得意満面(躁状態)の演説をみると、第一次政権末期のあの冴えない顔が二重写しになる。困難な状況に立ち至った(鬱状態の)ときに別の顔が出てきてしまうのがこの人の弱点なのだろう。芯の弱さと裏腹の関係にある得意満面の演説。政権に人気をつなぐために株式相場を維持・上昇させることに躍起になっていること自体が、弱点を隠したくてもがいているように感じる。
 「浮利」を追うがごとき愚かな政策は一切停止、人口縮小時代に最適な経済縮小を前提にした政策論を展開するだけの勇気と腹をもってらいたい。
 かつては「美しい日本」という看板を掲げていたではないか、平常心をとりもどし、日本の伝統的価値観のなかに新しい時代を開く鍵があることに気がついてほしい。

*「豪首相「日本は法の下で行動してきた」 歴史問題で批判を繰り返す中国を強く意識」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140708/plc14070822310026-n1.htm


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*#2715 GPIFの株購入と銀行保有リスク資産に関わるBIS規制変更 June 25, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25

 #2705 武器輸出・原発輸出・カジノ: あきれた成長戦略のナカミ June 18, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-18


 #2702 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"③:公務員は別扱い June 10, 2014   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-10

 #2701 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"② June 9, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-08

 #2699 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"① June 6, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06

 #2669  成長戦略:規制緩和を考える May 7, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05

 #2660 庶民の物価感覚 : 消費は落ち込む Apr. 27, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27

 #2631 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(1) Mar. 31, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-30-1

 #2634 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(2) Apr.7, 2014 
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 #2643 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(3) Apr. 13, 2014 
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 #2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014 
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 #2245  円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013 
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 #2627 消費税引き上げ+物価上昇>所得増加:三番目の矢はない  Mar. 22, 2014 
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 #2565 人口減少社会を問ふ(2) Jan. 17, 2014 
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 #2564 人口減少社会を問ふ(1) Jan. 16, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-16

 #2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-10

 #2554 「日本の経常収支と円を考える」 東洋大教授・中北徹の論 Jan. 3, 2014 
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 #2549 アベノミクス批判 (2):内橋克人 Dec.31, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31

 #2543 インフレと自己責任:リスク増大へ対処の方法はあるか? Dec. 27, 2013 
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 #2540 アベノミクス批判(1):『世界8月号』伊藤光晴論文 Dec. 23, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-23

*#2523 アベノミクスの行く末: 日本総研調査部長の論点 Dec. 9, 2013 
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 #2502 アベノミクスと企業経営 Nov. 18, 2013 
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 #2430 手詰まりの安倍首相 ついに消費税引き上げ決意表明 Oct. 2, 2013 
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  #2401 消費税値上げ延期なら国債価格は下落 Failure to raise sales tax 'could hurt bond prices' Sep. 9, 2013 
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  #2388 アベノミクス:雇用規制改革の正体 Aug. 30, 2013 
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  #2385 TPPは再び植民地化を招く:マハティール元首相 Aug. 28, 2013 
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  #2376 貿易赤字13ヶ月連続 7月最大の1兆240億円 Aug. 20, 2013 
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  #2329 アベノミクス:ナカミがないのに財政健全化を約束 Jun. 12, 2013 
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  #2321 株価暴落はどこまで続くのか?:とりあえずの目安は11,250円 Jun. 4, 2013 
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  #2311 どうにも解せぬこと ミャンマーへ債務免除 : プライマリーバランスの回復はするつもりがない? May 26, 2013 
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  #2309 Nikkei dives 7%, ends below 14,500 : May 25, 2013
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  #2298 アベノミクスの罪:日経平均15,096.03円 May 16, 2013 
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  #2270 人口減少の衝撃: 2040年の日本の人口は1億727万人:"Japan's depopulation time bomb" : Apr. 21, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-22

  #2256 マネタリーベース270兆円へ拡大:亡国の決断 Apr. 6, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-06

  #2245  円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-17

  #2185 各論(3):'Abenomics' Jan. 24, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-24

 #2170 各論(2):貿易収支赤字転落⇒? Jan. 3, 2013 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04

  #2169 各論(1):国債暴落の可能性とその影響 Jan.2, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-02

 2168 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割(2):蔵相高橋是清暗殺 Dec. 31, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-31-1

 #2164 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割は何? 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-28

 #2158 自民党圧勝294されど第2の危機民主党惨敗  Dec.17, 2012 
 
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 #2144 成長路線と金融緩和の罠 : 衆院選挙でナイトメアがはじまる 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-30

 #1828 ゼロ金利の罠: Fed targets and transparency Feb. 3, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-03

 #829 国家財政破綻の瀬戸際  Dec.12, 2009
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-12-12

 #346 これから10年間の日本経済のシナリオ
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10 

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