#2728 期待できる小中合同研修(C中):データに基く議論もしてみよう July 8, 2014 [63. チャレンジ(教育)]
C中学校の授業を同じ学区内の小学校の先生たちが参観した。小学校と中学校の先生たちのコミュニケーションをよくし、小中で問題点や方針を共有しようという試みである。・・・すばらしい。
参観メニューにある授業は、
英語、理科、家庭、体育、社会、英語
他に特別支援学級で体育・数学・英語の授業参観が行われた。
分科会が4つもたれて、小中の先生の間で活発な議論がなされている。
① <第1分科会 英語科>
② <第2分科会 体育&家庭>
③ <第3分科会 理科&社会>
④ <第4分科会 特別支援>
①では授業のやり方について具体的な話し合いが行われた。また「学習規律を小中で共通して取り組めたらいい」という意見もあった。ここでいう学習規律とは学校の授業中のことだろう。
②では小中の生活習慣や家庭でのしつけの問題が話し合われた。
③では板書のまとめ方が検討され、生徒に対する言葉づかいについて意見交換があった。
④では自立活動の支援、一日の生活リズムについて小中で連動したあり方について話し合われた。
小中で連携して一貫した取組をして行こうという意識が強くなるのはいいことだ。中学校が設定している「学習の5つの約束」については小学校でも取り組むことで効果が大きくなるのだろう。
これらはC中学校が発行している「小中合同研修だより」に書かれている。
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ebisuの感想と意見も付記するので、もう少しお付き合いいただきたい。私塾教師の意見であるが、経営管理に携わってきた民間企業人の意見だと受け取っていただいていい。
生徒たちをみていて、国語と算数の二科目に問題があるのをずっと感じている。おおよそ25%の生徒が「読み・書き・そろばん(計算)」の基礎技能に大きな問題があり、これを何とかしないと北海道教育委員会が目標に掲げている全国平均以上の得点はむずかしい。具体的な問題点を書くので小中で一貫した取組を切に願う。
(1)語彙力が小4レベルの中1年生が25%ほどいる。中1の入学直後に語彙力テストをやって、その情報を小学校へフィードバックはできないだろうか?
この層の生徒は中学校の授業で先生が話す言葉が理解できない。説明の中に文章語がでてくると適切な漢字に置き換えられないか、間違った漢字に置き換えてしまい、話の脈絡がつかまえられない。基礎的な語彙力に穴がぽっかり開いてしまっているので中学3年間の学習に大きな障害になっているという現実がある。
学力を上げるには、小6程度の「読み書き」がきちんとできるようにするのが近道だ。
『言葉力ドリル 実戦編』という問題集があるので、3回分をやらせて平均点が50点以下なら小4以下の語彙力と判断してよい。この得点層の生徒は中学校のすべての科目で先生たちが授業で話す言葉を正しくとらえられない。
それと大事なのは音読速度である。語彙力の小4レベルの生徒は文章を読む力がない、誇張ではないよ、文意が読み取れない。速く読んで数行の文を同時に頭の中に保持しないと文脈がつかめない。速度が遅いと読んでいる箇所のわずか1行前の文すら記憶から落ちてしまう生徒が少なくない。読んでいる句だけに集中していて、いくつもある句の関連が読めていないのである。
(たとえば、数学の文章題が2行あるだけで理解できない。読むのが遅いと下の段を読んでいるときには上の段の内容が頭の中になくなっているというようなことが起きる。ジョークではない、生徒から質問があると、意味がつかめているかどうか問題文を音読させて確認してみるとそういう事例にぶつかる。学校や年度によってばらつきはあるが数学では成績下位30~50%の生徒はそうだと思ってよい。)
成績上位層と下位層では読む速度に速度の5倍くらいの差がある。下位層の生徒は「てにおは」をよく間違えて読むが、これを間違えると意味が違ってくる。読めない漢字も多いからこれでは文脈をつかめるわけがない。
読む速度のチェックだけなら斉藤孝の音読破シリーズ『ぼっちゃん』『羅生門』『走れメロス』などをつかって測定すればいい。ストップウォッチで計測して3分間で何ページと何行読めたか、「てにおは」をいくつ間違えて読んだか、読めない漢字がいくつあったかをカウントすればいい。もちろん手間がかかる。
書く速度も学習に大きな影響がある。書くのが遅くて板書を書ききれない生徒が成績下位層には多い。そういう生徒は書きながら説明を聴けない者もすくなくない。書くのが遅ければ言葉を文脈の中でとらえられない。英語ならすこし長い単語を覚えられないことになる。
きれいに速く書くトレーニングがないがしろにされているのではないか?
(2)小数位取りや分数計算の苦手な生徒が中1には40%いる。これも中学入学時にチェックテストを課して、小学校へフィードバックしてもらいたい。できれば小学校のときのクラス担任ごとに集計して渡してあげたらいい。教えている先生によってずいぶんばらつきがあるのが現実だ。
こういう資料をたたき台にして議論をすることでクリティカルな問題点も浮かび上がる。
先生たちには痛みを伴う分析になるだろうが、自分の成長と生徒たちの学力向上には欠かせない作業だ。
小学校で大切なのは「読み・書き・そろばん(計算)」の技能をしっかり身につけさせること。
読みも書きも計算も、速度を意識したトレーニングが大切だ。
医療現場では20年ほど前からエビデンスに基く医療が提唱されている。根室管内の小学生の偏差37、中学生の偏差値44という低学力状況を打破するには、学校教育もデータに基く議論があるべきだ。学校の中だけで議論していると、データに基く議論がなかなかなされないのが実情。
記憶に間違いがなければ(この頃怪しい、(笑))、根室で一番古いA中学校が2年ほど前に中1年生に計算テストを課して、同じ学区の小学校へ情報をフィードバックしている。国語はどうだったかな?あれはなかなか意欲的な取組だったが、小学校側はどのように受け止めたのだろう?データに基くコミュニケーションにはいい材料だったはず。宝の持ち腐れになっていないことを祈る。
継続してこのような取組を根室市内の各小中学校でやってもらいたい。歯舞や東和田は小中学校が統合されているから、事は簡単だ。郡部の方がやりやすい。
書き忘れたことがあった。生活習慣や生活時間を問題にしているのに、どの分科会にも生活時間分析がないようだ。北海道教育委員会が生活時間チェックシートを全道の小中学校に配ったはずだが、生徒に記入させて集計したのだろうか?学力テストの結果と突合して分析したら、とっても役に立つ資料になる。成績下位層の生活時間上の問題がはっきり見えてくるから、対策も適確なものになるだろう。
ブカツを6時半までやったら、家庭学習時間がとれないことは生活時間分析をすれば一目瞭然だ。そういうデータに基く分析をしないから、6時半までのブカツや土日連続のブカツが横行している。文武両道を生徒に言うのは正しいが、そこにとどまらずデータに基いた分析と議論がなされたら、小学校と中学校の先生たちの合同研修は生徒の学力を向上させる強い力になるだろう。
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教育問題に関する過去ログ紹介
#1775 根室の町はどっちへ行く?:市議会での学力問題質疑応答 Dec. 18, 2011 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-12-18
#1783 10点でも五段階評価は3 :手抜きはやめよう Dec. 25, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-12-25
#2093 教員の質向上はどうやる?⇒ "Educating educators" Sep. 25, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-25-1
#2118 経営理念をもちそして臨機応変に: クラスに集まる生徒にあわせた授業 Nov. 6, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-05
#2511 ブカツ指導について:何を目標とするのか? Nov. 24, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-24-1
#2514 小学校と中学校はノート指導の徹底を! Nov. 30, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-30
#2515 根室市立柏陵中学校 家庭学習担任制度導入 Nov. 30, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-30-1
#2555 基礎学力問題対話(1) :社会が悪い⇔低学力層は就職が困難 Jan. 4, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-04
#2556 基礎学力問題対話(2) : 労働時間と仕事時間 Jan. 5, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-05
#2557 基礎学力問題対話(3) : 教師の仕事とは? Jan. 5, 2014
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#2558 基礎学力問題対話(4) : 勉強の躾け方 Jan. 5, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-06
#2582-6 am are is さえわからない北海道の中3下位20%:道内の学力格差 Feb. 4, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-03-5
#2582-4 "基礎学力不足は明らか"と道教委学校教育次長武藤久慶 Feb. 3, 2014
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#2606 根室の中学校の過去6年間の学力低下を検証する Feb. 28, 2014
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#1935 フリー授業参観に行こう:啓雲中学校 May 14, 2012
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#1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校 Dec.19, 2010
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#1758 教育再考 根室の未来第 シリーズ4部⑤:新聞活用(北海道新聞) Dec. 1, 2011
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#1757 教育再考 根室の未来第 シリーズ4部④:小中一貫教育(北海道新聞)
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