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#2665-9 根室市長選挙の争点: 地元経済の活性化  June 15, 2014   [25. 根室市長選挙]

 根室には日本合同缶詰という巨大企業があった。1979年12月25日に倒産している。わたしが知っている限りで原因を六つ挙げることができる。

① 従業員(女工さんや男工さん)を粗末に扱った
② 本社部門が機能していなかった
③ ワンマン経営で会社組織の体をなしていなかった
④ 会社組織としての基礎・基本が脆弱なのに事業拡大をした
⑤ 社長の側近にはイエスマンばかり
⑥ ワンマン社長と有能な財務マンの組み合わせが最強だが、そこに人材がいなかった。当時の根室では無理だっただろう。

 ②と③はセットだから一つと見てもいい。いまだにこういう企業が根室には多いのではないか。企業が大きくなるときに、リスクも大きくなる。企業が倒産するのは企業規模が拡張するときに多いことが案外知られていない。儲かって投資資金ができて事業拡張が可能になったときが一番危ない。日本合同缶詰はカニや魚の缶詰で儲けた、そして富良野に果実や野菜の缶詰工場を建てて事業拡張を図った。ところが経営や財務を任せられる人材が育っていなかったし、企業規模が大きくなったのに個人経営から脱皮できなかった。
 やるべきことは簡単だ、会社の規模が小さいうちに基本に則った会社運営に切り換えしっかり基礎固めをして、将来の事業拡大に備えればいい。事業拡大のチャンスが来てからでは手遅れとなることはたくさんの会社の事例が教えてくれている。

 事業規模拡大のときに倒産する企業が多い理由は簡単だ
 規模が10倍になれば、ワンマンでコントロールできる経営者は稀である。そのときまでに会社組織を基本に則ったものに変えておかなければならないのだが、それができないマイ・カンパニー(俺の会社)意識から脱皮できないのである。マイ・カンパニーからアワ・カンパニー(俺と従業員の会社)への切り替えを上手にやった企業は、事業規模が10倍になっても100倍になっても大丈夫だ
 東京証券取引所への株式上場の際はそうした基本がきちんと整備されているか否かが審査される。基本に忠実にやっているかどうかを見るだけで特別なことはないのである。

 根室の中小企業はオープン経営への切り替えをすべきだ。決算は従業員へ公開し、年次予算制度を導入する。中期計画もつくる。経理規程や人事・給与・退職金規程、退職金規程、業務規程等を整備して規程どおりにやる。ようするに、上場できるような基礎基本に忠実な会社経営へ切り替えを行うのである。たくさん本も読まなければならないし、実務ではいろんな事が起きるから考え抜かなければやり通せない。この手の仕事を完遂するためには充実した基礎学力が必要だ。
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 わたしは戦時中の大倉財閥の帳簿を見たことがある。大学院の同期のSが研究メンバーの一人で、たまたま資料を見る機会を得た。経済史の専門家には簿記のエキスパートがいないのである。両方の分野の専門知識がないとアタックできないニッチ分野はいたるところに存在している。
 月次決算資料を見たのだが、支払利息の見越し計算をきちんとしており、一目で月次損益の精度が非常に高いものであることがわかった。あの時代にそこまで徹底して月次決算制度を高めることに、執念ともいえる情熱を燃やして仕事をした経理マンがいたことに驚いた。大倉喜八郎のワンマン経営を非凡な実務能力を有した番頭が支えていたのである。
 大倉財閥は関東軍と一緒に中国へ進出し、一時は三井・三菱をしのぐ規模になったのだが、敗戦と共に大陸に築いた莫大な資産をすべて失った。あれだけ規模拡大をしても有能な番頭がいたから、しっかり経営管理できていたのである。大倉喜八郎を支えた有能な財務マンがいたことは知られていない。世界史的に見ても、当時あれだけの規模の企業であんなに精度の高い月次決算は日本以外にはおそらくない。日本にはソロバンの名人がたくさんいたから計算可能だった、筆算でできる計算量ではない。
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 オーナと率直に話のできる幹部社員がいなくてはならぬ。しかし、往々にして自分と異なる意見をもつ社員を煙たがって追い出すような愚挙を、大局の見えぬ器の小さいオーナはしがちである。それでは会社は大きくならぬ。

 会社の基本規程類について例を挙げて言うと、退職金がいくらになるかもわからないのでは安心して働けないからいい人材がなかなか集まらない。企業主が恣意的なお金の使い方をすれば従業員がみて、好い加減な会社だと思う。退職金規程を整備しよう、経理規定を整備しよう、そしてきちんと運用しよう。基本に忠実にやれば、これらの問題点はなくなり、従業員は安心して働け家族も共に将来に夢を抱ける。

 基本規程類を整備し、決算情報を社員に公開しよう、そこから始めたらいい
 ebisuは3社の会社の上場に立ち会っているのでその方面の専門家でもある。いまのうちなら教えてあげられる。道東には専門家は他にはいないよ、根室には謙虚に学ぶ企業はひとつもないのか?
 本来は金融機関がそういうサポートをするのだが、田舎の信金はそういう仕事をしたことがないだろう。

 簡単な理屈だ、根室市の発展は根室の企業の発展抜きには考えられない。中国人だベトナム人だなんてやっていたら、水産加工場の品質管理技術はだれが受け継ぐんだ?60代のベテランのおばちゃんたちが10年もしたら退職してしまう。そうしたら品質ががたんと落ちることになる。クレームが増えて売れなくなるよ。せっかく優良な水産資源を抱えていても、加工技術が衰えたらその企業は消えていくしかない。
 人が足りないから根室の外から呼べばいいなんてことは55年前に大失敗している話だ。国内では集まらないような労働条件やオーナの意識が時代遅れだから若い人たちが来ない。同じ過ちをまた繰り返すのか?
 全道各地そして青森から女工さんたちが根室に働きに来たが、処遇が悪かった。4工場で千人近くも若い女工さんがいたが、宿舎は土間で2段ベッドに寝せていた。そんなことをいつまでもやっているから、東京と道内の他の地域にいい働き口が増えるにしたがって人が集まらなくなった。昭和30年代半ばには根室の水産加工場はそういう状況になっていた。女工さんが集めづらくなると同時に、本社部門が機能せず将来に見切りをつけて現場の男工さんたちが次々にやめて根室から出て行った。あのときに気がつけば、日本合同缶詰はいまも根室で健全な経営を続けていたかもしれない。地元金融機関は地元企業を育てるために諫言しなければならなかったのに、儲けることばかりを考えて、しなかった。事業拡張に伴い、オーナの個人保証を取り付けて融資拡大に走り、地元金融機関として融資責任を負うことがなかった。実質的にリスクゼロだったのである(いまも似たようなことをしていないか?根室市への貸付は実質的にリスクゼロである。夕張市へ夕張信金が貸し付けたお金は道庁が保証した。いまも苦しい市財政の中から肩代わりした道庁へ返済を継続している。このような道庁の政策は金融機関のモラルハザードを招いた)。

 生産年齢人口が前年比で200万人も減少し、32年ぶりに8000万人を切った。有効求人倍率は1.08倍となり、世の中は若い働き手が不足している。就職氷河期は終わった。地元の人間を大事に使わないと、国内の他の地域から根室に働きに来るわけがない、もうそういう時代だよ。外国人ではスキルが受け継げない。「企業は人」だ、スキルが受け継げないようにしてしまったらアウト。ベトナムとも中国とも手を切り、地元の若い人たちが競って就職したくなるようなすぐれた加工技術をもった夢のある水産加工場をつくってみないか?

 基礎・基本に忠実な企業経営をやること、根室の発展はその上に築かれる。だから、根室市役所は地元企業経営者の耳に痛いことを言わなければならない
 見ないとわからないだろうから、上場企業を1社つくろう、そうすればお手本ができる。市税収入(法人住民税)も大幅に増える。

 政治の役割は、事が起きる10年も20年も30年も前から、それに備えて手を打つことなのだろう。そうした役割は国政も根室市政もかわらない。世の中をいつも大局的に眺めて、着実な手を打たねばならぬ。
(それには広い学識や教養があったほうがいい。ほかのことにかまわず勉強に没頭できるのはわずかの期間しかない。勉強をやるべき時期には旬があるからその時期を逃してはいけない。)

 着眼大局、着手小局


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 ― 余談 ―

【マル海光洋水産の倒産】
 1976年に設立された西浜町の水産会社が2013年に38億円の負債を抱えて倒産した。
 資本金4千万円、従業員数30名、ネットでも販売拡大して順調に経営しているように見えた。ebisuは経営破綻の事情は知らないが想像はつく。2001年から事業拡大が始まり、2002年には韓国へ拠点を設け、国内も札幌のイオンやアークスに出店するなど積極経営を続けていた。
 何を血迷ったのか、そういう大事なときに金融ディリバティブに手を出し、大きな為替差損を被った。会社としての基礎・基本がなっていなかったのか、財務面での人材がいなかったのだろう。財務面で強力な人材を育てておくことは実に大事なことなのだが、そんなことすら理解せずにイエスマンを財務の責任者に据えるのが、物事を知らぬ傲慢なオーナにありがちなパターンである。少し規模が大きくなったら、財務を任せるに足る人材を探さなければならない。自社で育成するにはオーナがよほど大きな器でないとできない。
 会社の規模が小さいうちに、基礎・基本に忠実な会社運営に切り換えないといけないのである。

 「ピークとなった15年3月期には138億8,082万円の売上高を上げていた」

*マル海光洋水産倒産情報
http://www.tsr-net.co.jp/news/flash/1226401_1588.html

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