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#2383 次の原発事故のために(7): 漏洩はセシウムとストロンチウム合計で30兆Bq  Aug. 26, 2013 [74.高校・大学生のためのJT記事]

 土曜日の夜に初サンマ、刺身で食べた。魚屋さんで230円。いよいようれしいサンマシーズン到来、サンマは脂の乗った青身魚だからいまのところ放射能も気にしなくていい。放射能が高いのは白身魚、タラは高濃度のものが時々出ている。根室のサンマは美味しい、なにより安心して食べられる。

 さて、本題だが、ジャパンタイムズが3日間続けて今回の漏洩事故を一面トップで報道している。
 今回の新材料は2011年5月から海に漏洩した汚染しか水の放射能が30テラ・ベクレルだという具体的な数値である。気になった段落をピックアップして解説してみたい。

 30兆(=30テラ・)ベクレル、その内訳はストロンチウムが10テラ・ベクレル、セシウムが20テラ・ベクレル、トリチウムの量は公表されていない。東京電力はトリチウムはどれほど環境中に放出しても気にならないようだ。
 この推計は信用ならない東京電力による、(1)に"Electric Power Co. estimates"とあり、8/21水曜日に公表された数値である(2)。

 炉心がメルトダウンした1号機から3号機まで、状態を安定させるために原子炉建屋に注入された冷却水は原子炉から土台部分に流れ、40年経ってクラックの入ってしまっている壁をつき抜けて地下水と混ざっている、そして混ぜ合わされた汚染地下水が毎日300㌧太平洋へ流出し続けている。

 30兆ベクレルは放射能汚染地下水だけではない、ケーブル・トレンチ内の超高濃度放射能汚染水も洩れて地下水と混ざったり直接海へと流れ出ているようだ。問い詰められて窮地に立った東電はさまざまな假定でシミュレーションをした後でそう言っている。
 電気ケーブルや冷却水を通すためのパイプがトレンチを通っている。水を通すためのパイプは海へと続いている。原発は冷却のために海水を引いているから他の原発でも同じようにトレンチが迷路にように張り巡らされ、海とつながっている。ところが、新聞記事に載っているどの図を見ても、トレンチが海へとつながっているものはない。(5)でトレンチ内のパイプが海までつながっていると書いてあるから冷却水用のパイプを格納しているトレンチも海まで続いているのではないか。よく考えてみたら、タービン建屋内で使われる冷却用海水なら海へとつながっているのはあたりまえだ。どれだけ洩れているのだろう、東電はシミュレーションの前提となってんる個別の流出量を公表していない。記者はそれぐらいのことは質問して確認すべきだ。

(6) 30兆ベクレルという数値は2011年3月11日の事故前に東電が決めていた年間排出量の約百倍である。
 3千億ベクレルは毎年海へ放出していたということが今頃分かった、周辺の漁業協同組合は承知していたのだろうか?そんな放射能汚染されている海で獲った魚を家族に食べさせていたと知ったらぞっとするだろう。わたしが漁師なら汚染水が常時垂れ流されている海で獲ってきた魚を子どもや孫には食べさせたくない。

(10) 東電は当初(水曜日)タンクから走っている排水溝から1時間当たり6mSvを検出したと公表している。その後月曜日になって排水溝の付近で空間線量96mSvを検出したと公表した(12)。これではまったく信用できない。最初の数値はあまりに高いので驚き小さくして公表したようにみえる。

(11)で東京電力は22日水曜日に他にも二つのタンクで汚染水漏れが生じていると公表した。
 350もタンクがあれば構造は同じだから、一つや二つではないだろう。きちんと調べたら一桁違うのではないか。
 ところで貯蔵タンクの数は350なのかそれとも1060あるのか、それすら公表数字が違っている。原子力規制委員長は1060と言っている。#2381の次の文章にある。

(8)  NRA chief Shunichi Tanaka voiced deep worry Wednesday about the plant, which now has about 1,060 massive tanks containing highly radioactive water.

 1060基×1000t=1,060,000t
 え、百万トンも汚染水があるの?事故後の888日で割り算したら、一日当たり1193tということになるから、田中委員長なにか記憶違いだ。お粗末だ。書類でだけ見て現場に足を運んでいないからこんなことになる。

 だいたい対策本部を東京本社内に設置する感覚がどうかしている。社長をはじめ担当取締役は福島第一原発に対策本部を置いて常駐し現場指揮すべきだ。それが嫌なら仕事を放棄して辞職したらいい

(14)で東電は参議院選挙が終わった翌日の7月22日から毎日10tずつ30日間で300t洩れたと説明しているが、そんなに都合のいいことはありえない。参院選挙後の経過日数の30日で300tを割り算して日量10tの漏れと計算しただけだろう。ミッタクナシだ。まるでデキの悪い小学生の作文であり、こんなものを信用する大人はいない。

(15)タンクからの汚染水漏洩が判明したのは、8月19日月曜日に作業員がタンクの傍に水溜りを見つけた後のことである。原子力規制超の職員も外部の専門家もそれまでだれも漏洩に気がつかなかったというのである。
 監視役である原子力規制委員会のメンバーがだれも現場に常駐せずに、危険な作業はすべて他人に任せきりにしているからこういうことが起きる。

(16) 原子力規制委員会が水曜日に開かれたが、パネリストから長い間抱いてきた疑念、汚染水がコンクリート基礎に生じている亀裂から地下に浸透しているかもしれないという疑念を指摘している。

  26日の1面の記事の写真には、貯蔵タンク群の基礎に大きなひび割れが写っている。URLをクリックして写真を確認してみたらいい。
"Tepco tank leaks blamed on seals"
http://www.japantimes.co.jp/news/2013/08/25/national/tepco-to-drain-two-suspect-water-tanks-at-fukushima-no-1/
 建設後40年も経っていることと、大地震でもさらにクラックが入っただろうことは、誰でもが考え付く想定である。言い出せなかったのだろう。言ってしまったらすぐにも対策をしなければならない。具体的な対策がなかったのだ、そしていまもお手上げの状態だ。原子炉建屋内はメルトダウンしたから、たまっている汚染水の放射能濃度が高すぎて人も機械も近づけないことをよく知っているから、放置したのだろう。トレンチを経由して高濃度の汚染水が流れ続けているだろうが、こちらのほうは量すら推定できていない。だから、30兆ベクレルもさしたる根拠のない数字だろう。あれば、積み上げ計算となるから、個別の計算値や流出出口ごとの量も公表できるはずだ。それがない。

(17) 超高濃度汚染水が地下へ浸透していることはあたりまえの想定だと国立先端科学研究所ヤスハラマサヤ氏が述べている。東電はコンクリートは防水性だとして、そのようなシナリオを拒否している。

 呆れて物が言えない。40年も経ったコンクリート建造物、そしてM9の大地震で震度6の揺れで原子炉下部にタコの脚のようにたくさんぶら下がっているパイプ類にそれぞれデータ収集やコントロール用の計器が破壊され、メルトダウンを起こした。
 高線量の汚染水で2年半たっても確認すら出来ない状況なのに、コンクリートにクラックがないし防水性なので水を通さないと言い切るこの無責任さにはただ呆れる他はない。
 東電はこの事故を収束できないし、扱う資格もない、したがってこれ以上電力事業をやる資格もない。株は100%減資、銀行からの借入金は貸手責任を明確にするために債権放棄をさせる、社債もデフォルト宣言、役員や部長職は新会社や子会社への雇用を認めない、そういう厳しい破綻処理すべきではないのか?その上で被害補償を国がやるしかないのだろう。


http://www.japantimes.co.jp/news/2013/08/22/national/rate-of-radioactive-flow-to-pacific-alarming/
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Rate of radioactive flow to Pacific alarming

Fukushima No. 1 leaks estimated at 30 trillion becquerels since May 2011

by Kazuaki Nagata

Staff Writer

(1)  Water releasing as much as 10 trillion becquerels of radioactive strontium and 20 trillion becquerels of cesium-137 from the Fukushima No. 1 power plant has flowed into the Pacific Ocean since May 2011, Tokyo Electric Power Co. estimates.

(2)  The combined figure of 30 trillion becquerels, announced late Wednesday, implies that highly radioactive water is entering the trenches under the damaged reactors’ turbine buildings.

(3)  The three reactors that had core meltdowns are being flooded by emergency cooling water needed to keep the leaky units stable, but the water is leaking from the reactors into the basements, where it is mixing with groundwater penetrating the walls of the 40-year-old plant.

(4)  Since the 30 trillion becquerels can’t be accounted for just by groundwater alone, it is likely the toxic water from the trenches is entering the mix as well, the beleaguered utility said after conducting various simulations.

(5)  The Fukushima complex was built on a maze of trenches that guide cables and pipes needed to transport electricity and water. The pipes lead to the sea because the power plant, like all the others in Japan, needs seawater for cooling purposes.

(6)  The 30 trillion figure is about 100 times more than what Tepco had been allowing to enter the sea each year before the crisis.

(7)  Containment fences set up in the plant’s man-made harbor are failing to keep the flow from reaching the greater Pacific.

(8)  Tepco belatedly acknowledged last month that about 300 tons of groundwater from the mountains behind the crippled plant flows daily to the sea after mixing with radioactive water leaking from the reactor buildings’ cracked foundations.

(9)  This week, however, it discovered that about 300 tons of filtered water from one of its hundreds of temporary storage tanks had escaped. The water had been cleansed of most of the cesium but still contains other harmful materials, including tritium. The incident has been rated level 3 on the International Nuclear Event Scale. The meltdowns were rated level 7, a status that remains unchanged.

(10)  Tepco first claimed the tank water had not reached the sea, only to reverse itself Wednesday after detecting a relatively high reading of 6 millisieverts per hour in a drainage channel running from the tanks to the sea. The channel, made to prevent rainwater from flooding the tank premises, is not covered.

(11)  Tepco said Thursday that two more tanks are leaking.

(12)  On Monday, when Tepco announced the first tank leak, it confirmed seeing traces of water running from the tank to the drainage channel, and detected 96 millisieverts per hour of radiation in the air near it.

(13)  Tepco has been unable to locate the leak but said it finished transferring the water to other tanks nearby Wednesday night. It plans to check for more tank leaks.

(14)  While some of the water might have gone into the sea, it is hard to determine where it all went. Tepco projects that it’s been losing about 10 tons a day for the past 30 days from the tank, which is considered a temporary model as it is made of steel sheets bolted together with their seams sealed, instead of the more reliable welded tanks.

(15)  The leak was discovered after workers noticed water puddles near the tank Monday. Nuclear Regulation Authority officials and outside experts said Wednesday that if 10 tons of tainted water flowed out over 30 days, it is hard to imagine no one would notice it before Monday.

(16)  At an NRA meeting Wednesday evening on the tainted water issue, the panelists pointed out a long-held suspicion: that the water may be going into the ground through cracks in the concrete base.

(17)  “It is more natural to think the water went underground,” said Masaya Yasuhara, a researcher at the National Institute of Advanced Industrial Science and Technology. Tepco rejects that scenario because concrete isn’t that permeable.
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*「【東電】の【お仕事】・・・【元・TEPCO下請け会社の平社員】はミタ!!」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2013-08-24

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*#1254 経済成長論の終焉 Oct.24, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24-1

 #1460 「原子炉圧力容器損傷か?:写真で検証
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-03-1

 #1462 「裸の王様:原子炉圧力容器は破損している 論より証拠、よく写真を見てごらん
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-05

 #1463 「福島第1原発3号炉はもう無い:東京電力社員退去要請の意味」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-06

 #1607 児玉龍彦国会で告発(2):(書き起こし) July 31, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-31

 #1611 児玉龍彦教授(3):息子さんからのエール Aug. 3, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02-1

 #1655 あらら、何を隠そうとしているの?:原子炉建屋にコンクリートの覆い Sep.21, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-09-21

 #2237 過剰富裕化論提唱者の福島原発事故処理構想:遺稿 Mar. 4, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-04

 #2323 次の原発事故のために(1):甲状腺癌と情報操作?:U.N. experts see no increase risk of cancer … Jun. 6, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-06

 #2324 次の原発事故のために(2) :福島県で12人が甲状腺癌 Jun. 7, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-07

 #2325 次の原発事故のために(3):Tyroid cancer hits 12 kids in Fukushima: Jun. 8, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-08

 #2377 次の原発事故のために(4):小児甲状腺癌18人に  Aug. 21, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-21

 #2379 次の原発事故のために(5) 8000万ベクレル/ℓ 高濃度汚染水漏洩 Aug.22, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-22

 #2381 次の原発事故のために(6): 超高濃度汚染水と浄化システムALPS  Aug. 25, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-24

【追記】8/27お昼頃
 今朝のラジオによれば、クェートを訪問している安倍首相は原発事故があったら、除染などで日本政府が協力する旨を申し出たという。2年以上も放射能汚染水地下水のダダ洩れが判明したばかりというのに、頭がおかしいのではないか。東電と原子力規制委員会が原発事故対応能力を欠いていることすら認識できていない。自国の原発事故による放射能汚染対策すら満足にできないのに、クェートで原発事故があったら除染などで協力するというのである。小学生でも恥ずかしくてこんなことは言わないだろう。この人の発言はときどきあまりにも幼すぎて心配になる。
 外遊中に消費税値上げについて有識者から意見聴取、当のご本人は不在のまま意見聴取というのだから、これにもあきれる。結論は決めているのだから、意見聴取はただのセレモニーだと言わぬばかりのやりかた。
 戻ってから報告書を読んで済ませるのだろう。現場不在の姿勢は原子力規制委員会の田中俊一委員長とまったく同じである。こんなでたらめな仕事はメッタに見られなかったものだが、最近はそれが普通になったのか?
 消費税値上げに反対しているのは消費者団体の代表一人のみ、あとの有識者は賛成だという。
 財務省は値上げを前提に来年度予算編成の準備作業に入っているという。いまさら、値上げしないというのでは来春8%値上げという法案を通してしまっているので、その修正案を論議するスケジュール的な余裕はないという。
 それは財務省側の言い分で、二本立てで作業を進めておけばいいだけだろう。それぐらいのことができなくてどうする。わたしが総理大臣なら財務大臣へその旨具体的な指示を出している。なんてことはない、誰にでもできるあたりまえの仕事のやり方だ。


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コメント 2

Hirosuke

>コンクリートにクラックがないし
>防水性なので水を通さないと言い切る
   ↓
東電は、そう言うしかないのです。
でないと、明治以来、水力発電所のダムまでもが、国民を騙し続けて来た事になるからです。
   ↓
元【TEPCO下請け会社の平社員】が辞めた理由を告白・懺悔します。 [英文テクニカルライターとして]
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2012-03-19
  ↓
つまりは、東電だけでなく、日本の誰も、
漏水を止める術を持っていないのです。

by Hirosuke (2013-08-27 12:39) 

ebisu

ほんとうはお手上げなんですね。

事態の悪化に世論に押されて痺れを切らして国が出てくるまで時間稼ぎをしている。

いったん苛酷な原発事故が起きてしまったら、汚染拡大はだれにもとめられないというのが真実。

4枚の大陸プレートがせめぎあうところに乗っている日本列島に54基もの原発をつくることは「民族浄化」そのもの。
利権に群がってやめられないのが日本の現実。

労働を疎外し、お金や利潤を追い求める西洋経済学が終焉すべきときが来ています。

仕事は本来八百万の神々に捧げるものを作ったり獲ったりすることだった。そういう仕事観に基く経済学へ切り替わる世紀が21世紀です。
米国も舵を切り始めています。これ以上金融緩和を続けると、ヘッジファンドが米国と世界経済に破滅的な大打撃を与えることに気がついたということでしょう。リーマンショックも1929年の大恐慌も比較にならない大崩壊が待っていることに気がついたようです。オバマは苦しい。

そのあたりの解説を意識しながら、いろいろな話題を取り上げてみます。
by ebisu (2013-08-27 13:04) 

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