#2283 市立根室病院損益推計:7年後は年額22億円に赤字拡大か? May. 4, 2013 [26. 地域医療・経済・財政]
根室市議の中では元病院課長職であった本田市議が病院問題に一番詳しい。他の市議は必要な知識がないから具体的な質問ができない。5月15日午後7時から総合文化会館で説明会を開くようだから、市立病院の今後に関心のある方は押しかけて聞いてみたらいい。
(5月8日付の本田市議ブログによれば、活動報告会は5月14日に変更になった。時間と場所は同じである。たくさんの市民が押しかけて地域医療問題への関心の高さをアッピールしたいものです。そうして他の市議も動いてくれたら最高です。市議を動かすのは市民、そうありたい。)
市立病院が診療所になったら困るでしょ?
市側は市民説明会を開いて状況説明をしようとしないし、赤字の推計データや常勤医師の退職情報などさまざまな情報を隠蔽している。別に不都合は生じないから正直にありのままの現状を説明すればいいだけなのに・・・
5月3日付本田市議のブログにデータが整理されているので、紹介方々、ざっくりと解説してみたい。
*「平成24年度の患者動向について」(本田市議ブログより)
http://nimuoro.typepad.jp/honda/2013/05/24-016f.html
グラフから数字を拾って一日当たり外来患者数の推移を並べてみると、
平成20年 556.2人
平成21年 574.1
平成22年 525.4
平成23年 497.8
497.8人/556.2人=89.5%(10.5%)
3年間で外来患者数は10.5%減少している。では、この3年間に根室の人口はどれだけ減ったのだろう?
29,015人/30,469人=95.2%(4.8%)・・・2008年からの3年間の実績値(2010年)
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このデータは少し問題がある。2010年のデータが国勢調査データであるのに対し、2008年のデータは住民基本台帳のデータであって、国勢調査データではない。都会へ進学したした生徒たちのかなりの部分が住民票を移していないために住民台帳上は根室にいることになっているが、国勢調査の際には根室に住んでいないのでカウントされない。国勢調査データを使って減少率を出すと次のようになる。
29,201/31,202=93.6% (6.4%・・・5年間の減少率)
6.4%/3×5=3.8% ・・・3年間分の減少率
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23,494人/30,469人=77.1%(22.9%)・・・12年後(2025年)
21,571人/30,469人=70.8%(29.2%)・・・17年後(2030年)
根室の人口は4.8%減少したのに、病院の外来患者数は2倍の10.5%落ちている。なぜだろう?
約30%が老人であるのに、医療療養型の病棟がないからその分の患者が市立病院に入院できずに市内外の他の施設へ行っていることも影響があるだろうが、それは外来患者減の理由にはならない。病人の割合が減っているわけではないだろう。
人口に対する病人の割合が一定だと仮定すると、市内の医院や市外の大病院への通院が増えていることが想像できる。そうだとしたら、なぜそういうことが起きているのか適切な分析がなければ対策も打てない。
(コメント欄に指摘があったが、平均通院頻度が下がっても一ヶ月当たり患者数が減少するとはいえる。気をつけないと細かく分析すればするほど迷路にはまり込むことがあるのがデータ分析の落とし穴。ざっくり分析するほうが大きな流れをつかまえることができることもある。)
減少の理由はともかく最近4年間の推移は分かった。ではこれからどうなるのか?
つい最近、地域別人口推計データが公表された、もちろん根室市の人口推計値も出ている。
0-14 総人口 14歳以下比率
2010年 3,565 29,201 12.2%
2015年 3,027 27,203 11.1%
2020年 2,533 25,390 10.0%
2025年 2,185 23,494 9.3%
2030年 1,910 21,571 8.9%
2035年 1,731 19,697 8.8%
2040年 1,580 17,892 8.8%
2020年には人口が25,390人になる。平成23年(2011年)の人口は29,139人だから、
25,390人/29,139人=87.1%
今後7年間で人口は12.9%減少してしまう。老人人口はおおよそ8,540人(33.6%)となる。このデータを元に外来患者数を計算してみたい。
総人口減少率の2倍が外来患者数減少率だから、
497.8人×(1-0.129×2)=369.3人
7年後の2020年には一日当たり外来患者数は2011年度の74.2%である。ラフな見積もりだがりだがおおよそ病院売上は四分の一が失われる計算になる。わずか3年間で一日当たり外来患者数が50人も減ったのだから、どんなによくても400人前後にはなるだろう。370~400人くらいに減少すると見ておくべきだろう。人口が減るのだから外来患者数が減るのはあたりまえ、だからこの数字は遠からず当たっている。
『改革プラン(当初計画)』では2010年以降は売上が29.5億円と見積もられている。これは非現実的な売上見積もりだ。実績値としてもこんなに巨額の売上は例がない。そして人口が加速的に減少すれば病院売上も減少して当然だから、24億円から20億円へ向かって減少していくという前提で作るべき。
根室の人口が減少していることを病院事務局や市の財政課が知らないはずがないから、知っていてこのようなインチキともいえる辻褄合わせの非現実的な『病院改革プラン』を作成したのは、国から補助金をせしめるための詐欺行為ともいえる。こういう恥ずかしいことはしてほしくない。仕事は正直に誠実にやるのがあたりまえだ。
では現在の病院の損益状況がどうなっているかを見てから、7年後におおよそどれくらい病院経営が悪化しているのかを試算してみたい。
本田市議のブログに「患者動向及び月平均診療収入の推移」というグラフがあるので、入院売上と外来売上を合算してみたい。ついでに各年度の経営赤字額を表示する。『広報ねむろ』では病院事業の決算数字は黒字と掲載されているが、これは公的会計基準でまったく実態を表していない。民間の会計基準ではここに表示した数字が損益計算書の純損失として計上される。根室市は病院事業会計を民間会計基準で公表すべきだ。市議会が民間基準での公表を決議すればいい。財政課が1日で組換えをやってくれるだろう。事務作業としては実に簡単なことだが、財政課が勝手にやるわけには行かぬ、手続き上は市議会が決議すればいいだけ。ふるさとの町の市立病院を守るために市議たちにやる意思が在るかないかが問われている。
月平均 年間売上高 年間赤字額(一般会計繰出金)
平成20年 1.93億円 23.2億円 11.5億円
平成21年 2.21億円 26.5億円 11.8億円
平成22年 2.10億円 25.2億円 11.7億円
平成23年 1.95億円 23.4億円 13.0億円
平成24年 1.83億円 22.0億円 17 億円
合計 120.3
平均 24.1
常勤医数が変わらないのになぜか平成24年度は17億円へ赤字が急拡大している。市議会では赤字急拡大の原因の具体的な説明はない。
年間費用は新築と設備の更新で年額2億円くらい増えて約40億円である。2020年(平成32年)に先の推計のように四分の一の売上が失われるとしたら、7年後の2020年の病院経営赤字はおおよそ次のようになる。
23.4億円×0.75-40億円=-22.4億円
藤原元市長時代が年額おおよそ8億円の赤字だったが、その後長谷川市長に変わって毎年のように記録を更新し、平成24年度は17億円の赤字となった。赤字の天井が見えない。
このままでは今後も赤字額が拡大する一方のような気配が漂う。根室市の一般会計から補填しなければならない病院経営赤字額は7年後には22.4億円に拡大するかもしれぬ。天井はこのあたりにある。
こういう試算はざっくりと行うのがコツで、ストライクゾーンを外さなければ十分なのである。
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正反対のことを書いておく。きっちりやるなら、基本的な経営管理の仕組みのあることが前提になる。市立根室病院では診療科別・病棟別の部門別損益計算がなされていないのではないか?経営管理は部門別損益計算書による予算・実績管理が基本である。それがなけれ誰にも確かな分析などできはしない。管理部門にこうしたことをやれる人材がいままで一人もいなかったのではないか。
水産関係部署から異動してきたりたったの一年とか二年でまた異動していくのではそういう仕事ができるようになるはずもない。
こういう経営管理の基本的な仕組みは医事会計システムと会計管理システムを統合することだから、高度な会計の専門知識(公認会計士相当)とコンピュータシステムの専門知識や経験が必要である。いままでそうした人材がいなかったのは無理のないことなのである。そういうことがやりうるのは東京の大きな企業の本社経営管理部門でそういう特殊な仕事の経験を積んできた者だけだろう。
人材面を考えれば、根室は根室の外でしっかり修業して経験を積んだ者たちと協同しないといろんなところが維持できなくなっている。
病院建て替えでも根室市が招聘した病院コンサルタントの意見すら無視して、2倍以上の総事業費をかけてしまった。
町の発展を願うなら狭い了見と私利私欲を棄て、耳に痛い外部の意見を素直に聞くべきだ。
(最近の老健施設への9億円補助金では国の十数倍もの補助金交付を市がやりつつある。人口が減少するのだから、明治公園の拡張や青少年のための建物も不要だろう。一々あげつらうのはやめておくが、ああだこうだと屁理屈をつけてどうしてこんなにハコモノをやりたがるのか不思議だ。唯我独尊がどんどんエスカレート、その一方で市政をチェックすべき市議会は機能不全に陥っている。)
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市税収入を主体とする根室市の自主財源はおおよそ28億円である。人件費総額は30億円を少し越えているだろう。桃太郎が鬼からせしめたような打ち出の小槌はないから、補填できなければ市役所の職員人件費を削るしか手がないのが実情である。そういう事態になったら看護師が不足し、病院機能を縮小せざるを得なくなる。いまのうちに何とかしたいものだ。
さて市財政はいつまでもつのだろう?市議会では市の財政課がこのままでは市財政がもたぬと正直に答弁している。時間はあまり残されていないようだ。
年間18億円の病院経営赤字が続いたら職員給与のカットはいつからなされることになるのか、財政課の試算結果を市議会で質問してみたらいい。仕事だから財政課長はいついつからと正直に答えるだろう。
根室市の財政破綻が迫っているようだが、市といろんなところで取引のある業者が集まる経済諸団体は物言わず、医信伝心ネットワークは市から補助金をもらっているから物言わず、市議もなぜかこの問題に迫れない。そしてほとんどの市民も物言えず。
物言えば唇寒し秋の風と嘯いているうちに町が衰退し続けるという奇妙なことになっている。
病院が診療所へ変わるとか、職員給与が20%カットというような事態になったらどうなる?
働く人にも患者にもこれから病気になる人にも、たいへんな苦労が待ち受けている。市議会でも明らかにならぬ国基準の10倍を超える法外な補助金支出、明治公園の拡張なんてやる場合ではない。
市長や一部の地元経済人が結託して市政を壟断し、恣意的な市政運営を繰り返せば、市財政が破綻することを夕張市の先例が教えてくれている。
市民や大部分の地元経済団体が言うべきときに物を言わない、健全な批判精神が欠如している状態は非常にまずい、根室は夕張の轍を踏んでいないか?
本田市議がデータを整理してブログにアップしてくれるのはありがたい。お陰で財政課へ行ってヒアリングすることも病院へ電話して問い合わせることもなくなった。職責を果たそうと努力する市議がいるのはありがたい。孤立することになるので一人で何もかもやるのは重いだろう、言いたくても言えぬこともあろうから、しがらみのあまりないebisuが言いにくいことは引き受けよう。
現役を10年前に退いた団塊世代のebisuの役割はふるさとのために言いにくいことを言うこと、そしてふるさとの30年後を支えるために数人でいいからしっかりした基礎学力と高い志をもてるように中高生を教育すること。
30年後のふるさとに、どんな状況でも言わねばならぬことは毅然と言える人間を何人か育て残すことができれば充分だ。30年前にそういうことをした根室人がいなかったのでいまのとんでもない事態が引き起こされている。
言うべきことをはっきり言え、「敢為和協」は根室高校の校訓、いい言葉だ。
こうして本田市議がアップした資料を基にブログを書くと、なにか一緒に行動していると思われて迷惑がかかってはいけないから一言申し添えておく。お互いにふるさとのことを考えてそれぞれの立場で信念にもとづき行動しているだけ。ブログを見たって意見が一致しているわけもないことは明らか。かれは市議としての職をまっとうすればいいし、わたしは30年後に向けて基礎学力があり志の高い人間を数人育てようと努力する。立場が違うから、やっていることはまったく別だし意見も異なる。
本田市議とは挨拶程度のおつきあいで、ブログで病院関係資料を拝読させてもらっているだけのこと。つまりは、本田市議ブログのあまたいる読者の一人、そう私のブログを読むあなたのようなものです。(笑)
*#2297 地域医療対話(5): 旧弊の再生産とは?
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
#2296 地域医療対話(4): 経営の問題点がよくわかる一覧表
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-12-3
#2295 地域医療対話(3):非常勤医が増える仕組み
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-12-2
#2291 地域医療対話(2)
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-10-1
#2290 地域医療対話(1)
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-10
#2287 「いまいる常勤医を大切にせよ」:市立根室病院の経営改善
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-07-2
#2286 市立根室病院『改革プラン(改訂版)』と実績対比
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-07-1
#2285 市立根室病院『改革プラン(当初計画)』と実績対比
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-06
#2283 市立根室病院損益推計:7年後は年額22億円に赤字拡大か?
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-04
#2269 衝撃!根室市の人口推計値 :とまらぬ人口減少
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-21
#2272 根室 「57年間の人口推移+27年間の推計一覧表」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-23-1
#2247 根室市予算案をチェックする(6): 補助9億円「高すぎる」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-19
#043初夢でみた医師不足解消
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患者6000人
2週間処方であれば1ヶ月平均外来患者数12,000人
1ヶ月処方であれば1ヶ月平均外来患者数6,000人
2ヶ月処方であれば1ヶ月平均外来患者数3,000人
3ヶ月処方であれば1ヶ月平均外来患者数2,000人
1ヶ月平均外来患者数/1ヶ月の病院外来(営業)日数
=1日平均外来患者数
同じ患者数でも1日平均外来患者数は変化します。
by 開業医 (2013-05-05 05:09)
驚愕の記事だ。
市民の無関心さと市政の横暴さが露呈しているとしか見えない。
by 灰村 切 (2013-05-05 08:31)
開業医さんへ
おはようございます。
なるほど、実患者数が同じでも頻度が違えば一日辺り患者数は大きく動きますね。
つまり、医者の処方次第で一ヶ月平均外来患者数は増やせるという示唆でしょうね。
「経営努力」次第で一ヶ月平均外来患者数はすやせますというのが、開業医の立場からのご意見と受け取りました。
こまめに患者を診療して売上を増やすことも大切なことでしょうね。
あまりがんばりすぎては診る側がたいへんでしょうから、自ずと頻度はバランスがあります。
院長のマネジメントの問題もあるでしょうね。
でも無理はいけません。
医師はそれぞれが専門の「職人」集団ですから、それを統率するには大工の棟梁に求められるような能力が要求されるのでしょう。
患者数(実患者数、1ヵ月平均外来患者数、年間患者来院頻度の分布データなど)が実際どうなのかは、診療科別にそういうデータをとりうる仕組みが必要です。金額データだけではなく外来患者に関するデータを集計するシステムがなければ、数字の推移を眺め、分析することがかないません。
こういう意識をもって経営管理の仕組みを構築してもらいたいものです。
これもあまり凝りすぎるととんでもない役立たずの仕組みになりかねません。実務はあんがいむずかしいものです。
具体的な事例を挙げていただきありがとうございます。
by ebisu (2013-05-05 10:25)
髪フェチのはいむらきりさんへ
コメントありがとうございます。
変わったハンドルネームなので、何か意味があるだろうと検索してみました。
アニメのキャラクターですね。
洒落たハンドルネームです。
キリの長いはさみで根室市政をばっさりやったら、すっきり素敵なショートカットに変身するかもしれません。
ちょっとの間だけその切れそうなハサミ貸していただけませんか?
by ebisu (2013-05-05 10:33)
相も変わらず、他の公立病院が真面目にtimelyにHPを更新している中で、市立根室病院は4月1日付けのHP内容を更新していません。既に去った医師の名前が載っていて(お初さん曰く)新たに大阪のPL病院?から来た小児科の出張医の事は身分や資格などの詳細について一切書かれていません。
こうなると、もはや事務の”怠慢”では済まされませんね。何らかの意図を感じます。
by 拘り紋次郎 (2013-05-05 22:12)
拘り紋次郎さんへ
おはようございます。
市立根室病院が医師退職情報や派遣医情報に関するホームページの内容を更新をしないのは、病院事務局が不正直・不誠実な仕事振りだというしかありません。
患者にとって担当医師の変更情報を知らされないというのは大きなストレスです。
病院に行って診療を受けるまでわからないなんて体制でいいわけがありません。
市議達はこういう意図的なサボタージュに抗議してほしいですね。電話一本ですみます。
それでも言うことを聞かなければ、市議会で問題にすればいい。
市立病院は医師の退職情報や、あらたな派遣医の情報を患者や市民に隠す必要はありません。
業務ですから、すみやかに更新して情報を公開すべきです。
正直で誠実な仕事を期待します。
>こうなると、もはや事務の”怠慢”では済まされませんね。何らかの意図を感じます。
by ebisu (2013-05-06 11:16)
診療報酬
入院の診療報酬は出来高算定とDPC算定で異なります。
出来高算定もDPC算定も基本料に、
A類(処方、注射)
B類(画像診断)
C類(検査)
D類(処置、手術、リハビリ、放射線治療、精神科専門療法)
が追加されます。
簡略して説明します。
出来高算定は医師の基本である診断がなくても、基本料があり、治療、検査、処置、手術をすれば全て診療報酬が追加されていきます。1回の入院で病名はいくらで追加できます。
例えばなんだかわからなくても内科に入院、そして検査をしてなんか感染症があり、抗生剤を使用して治りました。さらに入院中に狭心症が見つかり、循環器内科に転科して狭心症の手術をしました。さらに白内障の手術もついでにしてくれと言われ、眼科に転科して白内障の検査、手術もしました。
病名
感染症?
狭心症
白内障
上記診断に係った検査も手術もすべて診療報酬に追加されます。
DPC算定では診断をして、その病名の定額報酬が決まっており、それにあった治療、検査、処置、手術をしていくものです。1回の入院で1つの病名です。
上記の例で取り上げると
主病名は一番定額報酬が高い狭心症または急性冠動脈症候群
副病名で感染症?、白内障となります。
感染症を診断して肺炎としますが、診断のための検査と治療と、白内障の診断の検査は定額報酬に含まれています。
ただし、白内障の手術診療報酬は追加されます。
出来高算定でもDPC算定でも肺炎で入院をしたら、肺炎治癒したら終了です。
狭心症が緊急を要するものでない場合は内科を退院して、循環器内科外来で検査して予定循環器内科入院となります。入院時の説明では肺炎で入院です、狭心症の疑いもあります、肺炎の治療が終わったら外来で検査して狭心症の治療方針を決めましょう、となります。
緊急の場合で急性冠動脈症候群であれば病名は急性冠動脈症候群で肺炎は追加病名です。入院時の説明では急性冠動脈症候群で循環器内科に入院して治療します、肺炎を併発しています、となります。
白内障の手術は社会的な理由がないかぎり、退院して眼科受診して手術予定をたて、別入院で手術となります。
診療単価
産婦人科60,000円前後、小児科50,000円前後、外科70,000円前後、整形外科45,000円前後、循環器内科50,000円前後、消化器内科50,000円前後、眼科80,000円前後となり、診療単価が高い科です。ただしこれは本当にD類(処置、手術、リハビリ、放射線治療、精神科専門療法)ができる専門医師がいる場合です。
一般内科は32,000円前後です。
透析は入院ではなく外来治療ですから入院診療単価とはなりません。週3回透析すると1年間で150回透析しています。透析自体はほとんどスタッフが行っていますから、医師がでるところはほとんどありません。
疾患の罹患率も違うので売り上げの多い科はまた変わってきます。
循環器内科、消化器内科、外科、産婦人科等が売り上げ上位の診療科になります。最近は整形外科も売り上げ上位になってきています。
昔は医師一人当たり入院診療報酬が1億円と言われていました。循環器内科のみが2億円と言われていました。
なぜ診療単価がこれだけ違うかというと
D類(処置、手術、リハビリ、放射線治療、精神科専門療法)です。
D類(処置、手術、リハビリ、放射線治療、精神科専門療法)が出来なければ一般内科と同じで診療単価も32,000円前後です。ただDPCでは基本料が疾患毎に違いますので専門性の高い疾患は高くなります。
いかにD類を増やすかが診療単価を押し上げます。
入院診療単価がさがるということは専門的な医療が行われなくなっていることを示唆します。
外来診療単価は一般内科が8,500円前後
産婦人科、小児科、外科、消化器内科等が10,000円以上です。
整形外科、眼科は外来診療単価は低く、6,000から7,000円前後です。
>正反対のことを書いておく。きっちりやるなら、基本的な経営管理の仕組みのあることが前提になる。市立根室病院では診療科別・病棟別の部門別損益計算がなされていないのではないか?経営管理は部門別損益計算書による予算・実績管理が基本である。それがなけれ誰にも確かな分析などできはしない。管理部門にこうしたことをやれる人材がいままで一人もいなかったのではないか。
本田俊治Blogをみさせてもらいました。
平成21年から右肩下がりに業績悪化していますね。
こういうグラフをみたら前年と比較するといいのではないでしょうか?
医師引き上げの平成19年と引き上げ後の平成20年、
そして現管理職体制の平成21年以降の違いをみれば答えはでると考えます。
by Premium malts (2013-05-06 15:23)
Premium maltsさん、診療報酬の解説ありがとうございます。
DPC算定対象とは包括請求のことですね。市立根室病院は出来高算定?かな。
だから、診療報酬の請求形態には変化がないと思います。
どなたか知っている方がコメント欄へ書き込んでくれたらありがたい。
>平成21年から右肩下がりに業績悪化していますね。
派遣医にかかわる人件費負担増で採算が悪化したことは派遣にかかわる大学との契約とその運用実態からハッキリしていますが、そういう資料は本田さんもおもちでない。もちろん、病院も公表していません。常勤医が不足する中で、診療科をある程度そろえて維持するためには、採算を度外視した派遣契約を結ばないと診療体制を維持できないのでしょう。
市民へ隠す必要はない。
根室の地域医療を維持するために、どれくらいのお金がかかるのははっきり表に出すべきです。
>こういうグラフをみたら前年と比較するといいのではないでしょうか?
業績の悪化グラフを前にして、前年の実績と比較するとは、どの項目を比較するといいのでしょう?
通常の経営管理方法は部門別予算実績対比損益計算書で管理します。だから、全体が悪化したときは、どの部門の採算が悪化しているのかすぐにブレイクダウンできます。
予算実績差異が大きい項目(売上と費用明細項目)については部門責任者が理由をコメントして、予算管理部門へ上げます。
こういう仕組みが整備されたら、予算管理は何も難しいことはありません。
じつは、人口が減少するのに、病院の売上計画が若干増えるような計画になっています。
しかも、そのベースになっているのは平成14年度の診療科がそろい、常勤医指数が20名体制の頃のデータです。
市立根室病院の経営管理問題は二つに集約できます。
一つは部門別予算管理制度がないこと。
もう一つは、予算作成の前提条件が著しくデタラメなこと。
こんなに無理な『改革プラン』を北海道庁に提出しても、何が何でも2倍もの予算を投じて病院建て替えをやりたかったのでしょう。
辻褄を合わせるために次々と無理なことをしています。
by ebisu (2013-05-06 22:53)