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#2170 各論(2):貿易収支赤字転落⇒? Jan. 3, 2013 [91.経済]

 #2169「各論(1):国債暴落の可能性とその影響」では、財政危機にあるスペインのように長期金利が7%になると10年もの長期国債は最大37%の減価を生じ、償還期限が半分経過した国債では23.4%の減価を生じることを簡単な計算例を使って確認した。
 大手都市銀行は国債暴落に備えて長期国債購入をやめて期間の短いものに順次切り換えていく。横並びをするのが通例だから、長期国債の買い手の一角がくずれ、(銀行が)市場から一斉に消える可能性が出てきた。日銀が市場から買い入れる方式では間に合わなくなるから、直接買い入れせざるをえなくなる。しかし、それは禁じ手であり、やってはならぬこと。中央銀行としての日銀の独立性に瑕がつき、国際的な信用が失われ、サヴァリン・リスクの可能性が大きくなる。
 スペインやイタリアのように経済規模が小さくないから、どこも助けてはくれないことを覚悟しておかねばならぬ。日本の財政破綻はEU全部が財政破綻するようなもの。
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  • sovereign risk (英辞郎より)
    カントリー[ソブリン]リスク◆政変や経済危機などによって、政府発行の証券や債権が償還できなくなる信用リスク。
    表現パターンcountry [sovereign] risk
    http://eow.alc.co.jp/search?q=sovereign+risk&ref=sa
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     今回は貿易収支・経常収支・総合収支が現状どういう変化を起こしつつあり、人口減少と高齢化の同時進行がもたらす経済縮小とどのような相互作用を起こすのかを考えてみたい。

     昨年度(2012年)の貿易収支赤字額は7兆円になるようだが、32年ぶりだという。
     32年前の1980年にはオイルショックがあった。1960年代には17ドル/バレルだった原油価格が70年代に50ドルまでハネ上がり、80年には90ドルになった。原油高が石油が使われているあらゆる製品価格を上げ、インフレが昂進した。日銀は2.5%だった公定歩合を順次5%まで引き上げた。しかし、このころは所得が上がったからインフレの痛みは大きくなかった。

     貿易収支は輸出と輸入の差額である。貿易立国、品質の高いものづくりに長けた日本は優良な工業製品を生産して輸出することで外貨を稼ぎ、必要な物資を輸入して豊かな暮らしを築いてきた。その基盤が崩れだした。

    【輸出減少】
     ソニー、パナソニック、シャープ家電三社の年間赤字額が1.6兆円になったことや、電気メーカが軒並み1万人規模のリストラを断行せざるを得ない状況に陥っていることに、日本の物づくりの危機が象徴的に現れている。2008年に「日本経済これからの10年のシナリオ」を書いたときには見えなかったことである。だが、現実に起きてしまっている。日本の家電メーカは急速に国際競争力を失った。なぜだろう?

     貿易収支がこれほどの巨額赤字になったのかについては輸出減少と輸入増大の2面から説明がなされている。
     輸出減少の原因のひとつはEU数カ国の財政危機の影響でEU向け輸出が減ったこと。
     ギリシアもスペインも一向に解決の兆しがないし、経済規模の比較的大きいイタリアも危うい。EUの中で健全なのはドイツくらいなもの。
     もう一つの原因は尖閣列島である。中国はEUへの有力な輸出国だが、日本と同じようにEU向け輸出が減少している。そこへ尖閣問題が持ち上がり、日本製品ボイコットに発展したから、中国向け輸出が減少した。
     尖閣問題では日中両方が経済的ダメージを受けた。日本からの部品供給がなければつくれない製品も少なくない。

    【輸入増大】
     輸出の減少とともに輸入増大がなぜ生じたかについて、大方の説明は原発停止による液化天然ガスの輸入増大が挙げられる。それはそうだろうが、原発の燃料ウランの輸入が激減しているはずだが、そちらの統計数字はどういうわけか報道されない。
     岩石に含まれるオイルやガスを抽出・生産する技術が発展し、採掘可能埋蔵量が飛躍的に増大したから、シェールオイルやシェールガスの生産が軌道に乗って米国が原油輸入国から輸出国になるという。たとえば、日本は天然ガスを16-18$/100万Btuで輸入しているが、米国産のシェールガスは2.7$/100万Btuで1/6の価格である。米国産シェールガス生産が拡張されれば日本が輸入する天然ガス価格は大幅に低下し、ガス火力発電は他の発電方式とは比較にならぬほど低コストになる。原油と天然ガスに関する限り、将来は明るい。心配なのは円安である。

    【国力の衰え】
     現象面ばかりにとらわれていてはいけない、もっと基本的な問題が内在している。人口減少時代に突入した日本のこと考慮に入れる必要がある。技能の伝承が途切れ、経済規模が縮小する。
     自動車産業をみるとエンジンなどの一部の高機能部品のみ輸出されているが、大半は米国やタイやEU各国や中国等に生産拠点を移してしまっているから、自動車産業が輸出増大に寄与するところは30年前に比べると小さくなっている。
     繊維や衣料も似たようなものだ。繊維はある老舗メーカの退職社員の話では日本国内に工場を30年以上も作っていないので、もう国内に工場を作り稼動させるノウハウがないのだそうだ。そういう技能が次の世代に伝授されずに高度な技能を持った者たちが退職し続けた。

     これらのことから言いうるのは、たとえ200円/ドルの円安になっても技能の伝承が途切れたために国内に生産拠点を再建できない分野がひろがってしまったということ。

     どうやら貿易収支の7兆円の赤字はEU各国の財政危機や尖閣列島がらみの中国との一時的な関係悪化によるもののほかに、生産技術や製品開発能力という基礎的部分が劣化してきていること、これらふたつの相乗作用であるようだ。

    【人口減少と経済縮小】
     一人当たり所得は非正規労働者の増加で逓減を続けているが、非正規労働の割合がどこで下げ止まるかという問題を脇においても、今後50年間は人口減少で国内消費は逓減せざるを得ない。
     労働人口の減少に伴い個人所得が逓減するのは当然のことだ。日本経済はGDP500兆円の規模から50年後300兆円へ向かって縮小を始めたのである。
     500*x^50=300兆円、 x=0.6^(1/50),  x=0.99 *注(1)
    年間1%ずつ経済規模が縮小すると50年後は現在の60%の経済規模になる。
     そうした文脈の中で、個人所得の総和や国内消費の縮小に目途をつけて考えておくべきだ。

    【総合収支が赤字になれば何が起きるのか?】
     製造業の分野が国際競争力を失いつつあるが、5年もしたら貿易収支赤字は年間20兆円以上に膨らむのではないか?経常収支の主な項目は貿易収支と旅行や物流などのサービス収支であるが、サービス収支はもともと赤字である。昨年の1-9月期のサービス収支は1.6兆円の赤字だから、経常収支も赤字となる。
     資本収支が1-6月期で7.1兆円の黒字だから、総合収支は年間ベースで見ても2012年は黒字の見込み。
     
     大事なことは貿易収支の赤字額が15兆円を超えたら、総合収支が赤字になるということ。総合収支が赤字になったら、国際通貨としての円の信任が揺らぎ、円売り圧力が増大する。国内で買い手を失った長期国債を世界市場で売りたくても、円安がどんどん進むような状況ではよほど金利を高くしないと為替差損分をカバーできないから、長期金利が暴騰するだろう。
     円は150円/$に向かって走り出す。金融緩和によるインフレターゲットなんて無理をしなくても、ほうっておいても生活物資インフレになる。
     不動産インフレは人口縮小で恒常的な供給過剰状態が現出するからたいした値上がりはないだろう、長期的には下落する。
     株価がどうなるかはなんともいえぬ。輸出企業でも国際競争力のある企業は株価が上がるだろうが、ない企業はつぶれるところがでてくる。とくに大手家電メーカは他社に吸収されるか経営破綻するところが複数出るだろう。株価は個別の企業によって事情がまったく違っくるからよくよく注意しないと元も子もなくさないように気をつけよう。
     ガソリン、冬の燃料の灯油、飼料穀物、肉など輸入原料を使用している生活物資がすべて値上がりする給与は上がらず物価が2倍になれば実質所得が半分になる。ダメージの大きいのは不安定な雇用条件と低賃金という悪条件で働く非正規労働者である。もちろん、正規雇用も生活物資高騰というダメージは避けられない。
     もうそういうところへ向かって走り出している。

    【誰が損をして、誰が得をする?】
     年率2%のインフレ・ターゲットは最近5年間の米国がモデルであるが、庶民にとってはメリットのない、それどころかデメリットだらけの政策にみえる。自公政権から民主党政権に変わり、そしてまた自公政権に変わったが、変わらないのは政権という座にはお受験頭の小利口な連中がたくさん集まってなぜか思考停止し、ひたすら米国をモデルにする。グローバルスタンダードの正体は米国スタンダードで、ほとんど「(米国)信仰」に近い。なぜ自分の頭で考えぬ。

     よく見たらいい、デフレスパイラルで困っているのは放漫財政で1000兆円の借金の山を抱えた財務省と生産拠点を海外に移しそこなった一部の輸出産業だけ。そのツケを国民に転嫁する仕掛けが、無制限の金融緩和と200兆円の公共事業の正体。なめられたものである。
     自分の頭で考え、自分の頭でしっかり判断しないととんでもない結果を呼び寄せることがある。二院制は議会の内部牽制制度とみるとけっして無駄ではない、参議院選挙では選択を間違えないようにしたい。どの政党にも一人勝ちさせてはいけない。

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    *注(1)【HP-67とHP-97、そしてHP-35sのこと】
     科学技術用プログラマブル・キャリュキュレータHP-35sを使って計算した。関数電卓でないと指数部が分数になる計算はできない。米国では大学入試試験にこの計算機の使用が認められている。米国の高校数学教科書はこの手のプログラマブル・キャリュキュレータを使って計算するようにデザインされている。だから特殊角の三角関数の公式など覚える必要がない。計算機の使い方を知ればそれで終わりだ。これで原理が分かるのだろうか他所ごとながら心配になる。米国の高校生は計算力が劣るからこうしたツールを使わないと授業が成り立たないのだろう。
     日本では逆に高学力層の生徒たちにこういう科学技術用計算機を使わせるべきだ。プログラミングをマスターできるし、数学や物理の勉強にじつに便利がいい。

     わたしは34年前の1979年にHP67とプリンタ付のHP97を使い始めてからこのシリーズをずっと使い続けている。理系でもないわたしがなぜこんなプログラミングのできる関数電卓を使うようになったのかについてはそれなりの理由がある。

     セキテクノトロンという店頭公開会社があるが、ここに1979年に中途入社してすぐに、役員と部長がメンバーの●財務委員会の下に6つの委員会(●長期経営計画委員会、利益重点営業委員会、収益見通し分析委員会、●為替対策委員会、電算化推進委員会、●資金投資委員会、)が設置され、利益重点営業委員会を除く5つの委員会の専任要員をやらせてくれた。あれは何だったのだろう、前から計画素案はあったのだろうが、9月に入社して社長がすぐに立ち上げた5つの委員会は実質私一人で仕事をすることになっていた。各委員会は委員長が社長(●印の委員会)か役員、メンバーは役員と部長、課長が2名だった。入社したばかりのわたしを専任要員として、仕事のほとんどを任せたのはずいぶんな冒険だったと思う。会社の30周年の年であり、外為法が変わって固定相場制から変動相場制に移行し、会社は対応しきれていなかったから、転機だった。自己資本比率が低く円安になると損失が膨らみ、円高になると途端に業績がよくなった。これをフラットなものにして、財務体質と利益構造を変えるという狙いをもった委員会設置であった。自己資本比率が小さく、経理課長と部長は資金繰りに苦労していた。社内には為替変動に危機意識があった。1年くらい経理部所属で取締役経理部長のNさんの下で働いた。そのあと管理部で経営管理と問題のあった売上債権管理とシステム管理、それと委員会の仕事を任された。管理部長は子飼いのMさんだった。経理部長も管理部長もいい人だった。文書に番号をつけて発信するのはこの人たちの仕事を見て身につけた。
     利益重点委員会は営業課長Eさんに実務が任されていたから、わたしは彼のサポート役に回った。会社の利益を為替変動から切り離すためには、営業実務を変える必要があった。センスのよい彼は「円定価制度」を提案した。営業マンが受注ごとに計算していた製品価格をコンピュータ出力にしたのである。取扱製品が千以上あったが、定価表は為替変動が一定の幅を超えると3ヶ月ごとに改訂した。定価表で使う為替レートと仕入れレートは納期考慮して計算して為替予約をすることで発注時、仕入れ時、決済時の為替変動リスクを消すことができた。お客様も発注時の為替レートで計算された定価で購入することができるようになった。これで手間のかかる「実費精算」方式の取引が数分の一になった。そして仕組みの副産物として、日米金利差分の為替差益が恒常的にでるようになった。売上高のおおよそ1.5%だったと記憶する。この仕組みは日米金利差が3%くらいあった3年前まで有効だった。
     営業とのコラボレーションなしに会社の売上高経常利益率を8%も上げることはできない。経営改善をして高収益で財務安定生の高い会社に作り変えて、自社ビルをもとうと考えていた。それが実現できれば会社上場はオーナー社長の意思しだいだった。性格から考えて反対するはずがないと思っていた。
     いくつか転職したが営業ではあいつ、利益重点営業委員会の実務を一人で背負ったEさんが最高だった。ある電気メーカから5年で50億円の受注をしたことがあった。営業の腕がいいだけでなく会社の将来を考えて営業事務の改善をしようとしていた。向いている方向が同じで気が合ったので、一緒によく一緒に飲んだ。あいつに誘われると断れなかった、7時ころになると「30分だけ」と言って東京営業所のメンバー数名とともによく誘われた。彼の部下と一緒に飲ませることで、コミュニケーションを仲立ちしてくれていた。数軒回ってよくて終電、電車がなくなることもしばしば、最後は二人で飲んでいた。彼を通じて営業に人脈ができた。大阪営業所長のSさんが彼と同期で張り合っていた。Sさんは最後は監査役をやっていたようだ。
     技術部門のほうはマルチチャンネルアナライザーを開発して独立したN中さんとN臣さんをが技術的質問に答えてくれた。
     経営管理や経営改革は営業部門や技術部門に志を同じくする仲間がいた方がずっとスムーズに仕事を進められるものだ。
     銀行の担当者と話しをするときにも、管理部門の人間が有力商品情報に関して技術的内容まで熟知して、来年・再来年業績がどうなるかをきちんと説明できてそれ以上の業績があげられたら、信用はずっと大きくなる。大手臨床検査会社のSRLへ転職したあとも同じ仕事の仕方をした。

     セキテクノトロンに入社してすぐに5年間の決算データや人員データ、月別受注データ、月別売上データ、為替変動データなどを利用して自社経営分析をし、経営改善案をつくるためにデータ解析に没頭していたら、入社1ヶ月目くらいに社長が米国出張してHP67を買って来てくれた。2冊の英文マニュアルで合計800ページ、それに統計パックが一冊あったが、一週間で読みきって使いこなした。30本近くのゲージを決めるために標準偏差を計算しながら、試行錯誤をするのは電卓ではひどく効率が悪い。一日中電卓を叩かねばならない日もあった。出来上がった経営分析資料は片っ端から社長に回覧されていた。毎日終電近くまで残業が続いていたので電卓ではこれ以上レベルを上げるのは無理だと判断したのだろう。いい道具を与えればさらにいい仕事をするはずと社長は読んでいた。
     HP67(価格は1979年に11万円、追加の統計パックと数学パックが各々2万円くらい)をいただいた一月後、朝わたしの机の上にプリンタ付のHP97がおかれてあった。社長秘書に「???」、「社長がebisuさんにっておっしゃってました」と笑っていた。
     当時22万円の計算機である。特別待遇を感じた。この計算機で入力データをプリントアウトしてチェックできるようになった。線形回帰分析もカーブフィッティングも入力データのチェックが簡単になった。

     社長はやっている仕事をわかっていたから仕事を含めて必要なものを次々与えてくれた。
     当時は企業の事務にコンピュータの導入が始まったばかり。興味があって自社導入されていた三菱電機製のオフコン専用の"COOL”というダイレクトアドレッシングのプログラミング言語を習得して、売上データや決算データから必要な管理表を自分でプログラミングして出力したら、オフィス・コンピュータのメンテナンスとシステム開発を任された。技術部門にはアッセンブラが扱える技術者がいたが、管理部門にコンピュータを扱える人間がいなかった。いくつか経営改善のための仕組みをシステム化するために、社長はオフコンをコンパイラー言語(プログレスⅡ)の走る上位機種に買い換えてくれた。バラバラに開発した為替管理システム、受注残・納期管理システム、在庫管理システム、会計システムなどをオンラインで連動させる統合システムを作ることになり、NEC製の汎用小型機導入を決定した。1983年だった。
     いろんなタイプのコンピュータを使わせてもらったので、それらの経験が全部スキルアップに役に立った。システム開発関係の専門書は日本語のもの、英語のもの、5年間の間に30冊以上読んだ。先端のシステム開発知識を得るには国内で出版されている本だけでは間に合わなかった。幸い、日本橋丸善まで歩いて15分くらいの距離だったので、暇を見つけては通って仕事で使えそうな専門書をあさっていた。「本屋に行って来るから、2時間ぐらいもどらないよ」と言って会社を抜け出した。コンピュータシステム関係の本だけではなく、外国為替や輸入業務に関する本も読んだのはあたりまえだ。
     社内でそうした実務を担当している人に話しを聞くには、その人の業務に関する専門書を読み、一通りの専門知識を得てからが礼儀だ。何にも知らずに「教えてくれ」なんてのが通用するのは学生時代だけ。自ら勉強しないものにはだれも教えてくれない。一人だけフランスの原子力機関に留学した経験のある人(N田さん)がいた。医療機器や質量分析機器や半導体製造装置を担当していて、この人にものを訊くのはたいへんだった。何度か教えてもらった。(笑) 

     この会社で学んだ技術的なことはすべて次の転職先の大手臨床検査センターSRLで役に立った。臨床検査機器もナカミの構成は同じなのである。ディテクターとデータ処理部と出力部で成り立っている。違いは周波数と前処理、臨床検査機器はだいぶ遅れていた。セキでは世界最先端メーカ50社の製品を扱っていたので、トップレベルの製品を5年間見ていたし、それらにかかわる製品説明会を毎月2件くらい聞くことができた。海外メーカからエンジニアが来て営業マン向けの新製品説明会を開いていた。50社もあれば、毎月ひっきりなしにメーカからエンジニアが送られてくる。説明会の後は営業や技術の連中と飲み会ということが多かった。たった5年間だったが、楽しかった。
     1984年2月に国内最大手の臨床検査センターSRL社へ転職して、2ヶ月目に東証Ⅱ部上場のための統合システム開発を担当した。会計及び支払管理システムを担当したが、各サブシステム間のインターフェイスを定義するのに2週間、自分の担当するシステム仕様書を書くのに1ヶ月、本稼動まで8ヶ月でトラブルなしにやりきったのは、一緒に仕事をしたNCD社の三人のSEが業界トップレベルの凄腕だったことと、わたしがセキテクノトロンで三つのサブシステムと統合システム開発に携わった経験が物をいったからだ。わたしにとって統合システム開発は2度目だったのである。一番遅かったのが売上債権管理システムである。3年かかった。原価計算システムは2年、購買在庫管理システムの外部設計は半分くらいわたしがやってあげた。開発をやりながら、固定資産管理システムを作り直して、上場要件に合うようにした。実務設計が伴うのでこういう仕事は経験が物をいう。アプリケーションにかかわる専門知識とシステム開発にかかわる専門知識の両方が揃わないとできないのである。

     1979年に2社に応募書類を送って、アパレル関係の森英恵の会社で試験を受けて六本木の本社ビルで社長面接し内定をもらって、セキテクノトロンへは、応募は取り消しに行ったのだ。電話では失礼だと思い、直接会ってきちんと話しをして断るつもりだった。経理担当取締役のNさんが、わかったから、とにかく社長に会って話しをしていけというので、お会いした。
     技術部門には機器制御用のコンピュータが何台か無造作に置いてあった。小学生の時には大工さんになりたかったから、機械いじりも興味があった。これからはエレクトロニクスの時代だなとふと思って、入社を決めた。縁とは不思議なものだ。社長室で話しを聞いたときに、社長は慶応大学大学院経済学研究科で経済史を学んだと言ったような気がする。専攻分野については記憶違いがあるかもしれない。わたしの専攻は理論経済学だから分野は違うが、どの程度の勉強をしたかくらいはすぐに検討がついただろう。理論経済学を専攻して簿記や原価計算知識のある人材はほとんどいない。使えると思ってくれた、そして存分に使ってくれた。出遭いの不思議を感じる。

     いまあるのはセキテクノトロンの5年間のお陰である。入社した当時は社員数200人、2代目社長だった。継ぐべき会社がなければまったく違った人生だっただろう。友人を大事にするやさしいいい人だった。ついでに書くと、先代はスタンフォード大学でヒューレットとパッカードと同期で友人だったと聞いている。だから、YHPができる前はこの会社がHP社の日本総代理店をやっていた。
      営業マンのほとんどが理系の大卒。たしか、国立高専卒が二人いた。特定営業部と技術部門に一人ずつ。理系でなければ扱えない産業用エレクトロニクスと軍事用エレクトロニクスが取り扱い製品。
     中小企業でなければこれほど広い分野の仕事は任せてもらえないから、一度は中小企業で複数の分野の仕事の経験を積んでスキルアップすべきだ。プロとしてどこでも通用するスキルを磨いたら、大企業に転職できるし、転職した後カバーできる仕事の範囲は広くて専門的に深い。重要な仕事はいくつもの専門分野のプロフェッショナルなスキルを要求するから、複数の分野をクロスオーバできる能力が必要になる
     売上だけ経常利益率で8%以上の経営改善をしたと書いたが、人件費を削って利益を増やすようなゲスなことはしたことがない。予算をクリアすれば、利益の三分の一は社員へ、三分の一は配当、残り三分の一は内部留保ということにした。社長は提案をそのまま実行してくれた。ボーナスが為替変動の影響を受けなくなったし、コンピュータシステムをいくつか作ることで仕組みを変えたので仕事の効率が倍にはなっただろう。それ以降転職してなんどか経営を任されたときも、やはり人件費を削って経営改革をやったことはない。非正規労働を増やして利益を確保しようなんて、下作である。
     どこでも上司や一緒に仕事をする人に恵まれたから、運が良かったこともたしかだろう。経営改善に必要な人も物もすべて揃えられた。不足があったことはないし、仕事を一人でやったこともない。つねに何人か全面協力してくれる仲間がいた。損得抜きで。
     1980年代にクロスオーバな仕事をするために便利なツールの一つがこれだった。現在はこのシリーズのHP-41c(1984年購入)とHP-35s(2008年購入、価格は約1万円だったかな?)を使っている。ヒューレットパッカードの計算機は、計測器制御と科学技術計算に特化したコンピュータがベースになっているからとっても使いやすくてパワフルである。使いはじめてから11年後の1990年に沖縄米軍向け出生前診断システム開発にかかわった。学術営業のS君がニューヨークから資料を取り寄せたが、システム部へ相談して断られ、暗礁に乗り上げていた。資料には散布図が載っており、二次関数で近似したグラフが描かれていた。HP-41cのカーブフィッティング機能を使って算式を計算し、仕様書を書いて、システム部からC言語のプログラミングができるU君を2週間ばかり貸してもらって、パソコン上で後処理できるようにした。基幹システムには載らないデータ(妊娠週齢、体重など)を別謬力して、3項目の検査結果データを結合処理して、検査結果を出力できるようにした。一月ぐらいで完成し、学術担当取締役のIさん、学術営業のS君、システムのU君と4人で沖縄米軍へ言って説明した。すぐにOKがでた。米軍はたいそう喜んでいた。この取引のお陰で国内のある米軍基地の仕事をもらった。HP-41cがなければカーブフィッティングに手こずっただろう。そのあと、某大学産婦人科医数名と出生前診断検査(MoM値)の国内標準を作る仕事をした。米軍よりもそちらから先に要請のあった仕事だった。わたしは学術開発本部のスタッフとしてラボ側でこのプロジェクトをサポートした。製薬メーカ2社と交渉してデータ利用を条件に検査試薬をただにしてもらった。妊婦3000人のデータの集積ができた。多変量統計解析は研究部の統計解析の専門家であるF君に担当してもらった。結果は白人よりもオリエントが30%高いことが判明した。いい学術研究に参加できたのはHP-41cのお陰である。

     HP-67シリーズは、長くて複雑な計算式をプログラミングできて実に便利のよい科学技術用計算専用機である。パッケージソフトも揃っていてマニュアルが分かりやすくて使い勝手がよかった。当時はほかにはテキサスインスツルメント社しか生産していなかった。統計や数学や物理の計算にとっても便利がいいのである。 もう身体の一部のようなものだ。
     20年ほど前からEXCELの関数機能が使いやすくなったので、仕事ではEXCELを使っている。

     大事なことを思い出した、200人いたが全員社員である。非正規雇用はゼロ、全員が正規雇用社員、いい時代だった。いまだって、やればできるのであるが、経営層にその覚悟と能力がない。ないにも関わらず、大企業の役員報酬が小泉改革の5年5ヶ月間で2倍になった。80年代に比べると、日本人の意識や価値観のどこかが狂い始めたことが明瞭にわかる。日本企業の経営層は立場を利用して恣意的に振る舞うようになり、強欲になったのである。世のため他人のため、お客様のため・社員のため・取引先のため、そういう心が薄まってしまった。
     「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」、日本企業の経営者たち、少し強欲を離れよう。

    *HP97写真
    http://www.google.co.jp/search?q=HP97&hl=ja&tbo=u&rls=com.microsoft:ja:IE-SearchBox&rlz=1I7SUNA_jaJP310&tbm=isch&source=univ&sa=X&ei=hD_mUIGgFcnFkQWexICIAQ&ved=0CDQQsAQ&biw=1280&bih=601
    *programable calculator HP97
    http://www.rskey.org/CMS/index.php/7?manufacturer=Hewlett-Packard&model=HP-97
    *HP-35s
    http://www.amazon.co.jp/hp-35s-%E9%96%A2%E6%95%B0%E9%9B%BB%E5%8D%93-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%E4%BB%98%E5%B1%9E-HP35S-J/dp/B000TDRHG8
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    【】1月7日追記
     驚いた、セキテクノトロンが昨年3月で上場廃止になっていた。2009年は売上が42億円、従業員77人、株価が約50円で時価評価額が3億円を切り、上場廃止猶予期間になっていた。ずいぶんなリストラをやったようだ。初代は三井合同で財閥解体をやり、たくさんの人の首を切ったから、三井合同を辞して独立した人だった。潔い人だと聞かされていた。スタンフォード大学時代の友人であるヒューレットとパッカードのHP社の総代理店を戦後まもなくはじめた。当時の名前は関商事(株)英語名はSEKI&CO.である。
     わたしが辞めたのは1984年1月末日で社員数が150人くらいで売上規模が40億円だった。三代目は当時東大生出だったが、結果から見ると経営の才能はなかったようだ。
     二代目が同じ年のころ(40代後半)わたしはあの会社に入社して社長の片腕として経営改善をした。40代後半は新しい文化を受容できなくなる生物的な限界があるというが、二代目にそういう限界を当時感じていた。
     コーンズテクノロジーという会社に買収(救済?)されたようだ。企業は人材しだいだ。きびしいな、そしてなぜかさみしい。
     株価は紙切れ同然、当時20代だった社員は定年までまだ年数を残している。虎の子の自社株がこれでは気の毒だ。


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    <参考資料>
    *図説 経常収支の推移(時事ドットコムより)
    http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_eco_bop-balance

    *オイルショック(ウィキペディアより)
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF

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    *#2170 各論(2):貿易収支赤字転落⇒? Jan. 3, 2013 
     
    http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04

      #2169 各論(1):国債暴落の可能性とその影響 Jan.2, 2012 
     
    http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-02

     2168 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割(2):蔵相高橋是清暗殺 Dec. 31, 2012 
     
    http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-31-1

    #2164 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割は何? 
     
    http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-28

     #2158 自民党圧勝294されど第2の危機:民主党惨敗  Dec.17, 2012 
     
    http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-18

     #2144 成長路線と金融緩和の罠 : 衆院選挙でナイトメアがはじまる 
     
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     #1828 ゼロ金利の罠: Fed targets and transparency Feb. 3, 2012
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     #829 国家財政破綻の瀬戸際  Dec.12, 2009
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    コメント 3

    もやしさんま

    世界は日本の財政破綻近しと見ているようですね。
    この記事、最後は希望でしめています。
    http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MGL71J6JTSEE01.html
    by もやしさんま (2013-01-18 18:14) 

    もやしさんま

    失礼、世界も
    by もやしさんま (2013-01-18 18:16) 

    ebisu

    ははは、ebisuが4年半前に書いたシナリオ通りの様相を呈してきましたね。
    ebisuだけではなくて、世界「も」ですね。(笑)

    もやしさんまさん、好奇心が強いほうですね。あちこち情報を検索して先のことを考えているようですね。
    面白い情報ありがとうございます。
    by ebisu (2013-01-18 22:13) 

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