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#2144 成長路線と金融緩和の罠 : 衆院選挙でナイトメアがはじまる  Nov. 30, 2012 [91.経済]

 今朝(11/30)の十分ほどのNHKラジオ番組「ビジネス展望」で、あの陽気で無邪気なアナリスト森永卓郎氏が金融緩和功罪というテーマで金融緩和の負の側面について言及していた。以下は森永氏の主張である。
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 経済学の教科書では金融緩和をすれば円安になり輸出が増え、金利が下がることで投資が増えるということになっている。しかし、実需がないから金融緩和をしても投資は増えないと言うのがこの十数年の経験的事実である。銀行はお金があまり、日銀の口座に「ブタ積み」が増え、投資先のない民間銀行の資金は国債購入へと向かい保有国債が増えている。
 期待インフレ率が高まれば、たとえば住宅投資は増える。そして物価が上がれば失業率は減る(フィリップスカーブ)。
 デメリットは、金融機関に起きる。物価が上がると金利が上昇し、保有国債の値下がりが起き、含み損が生ずる。日銀の推計では金利が1%上昇すると大手銀行に3.5兆円の含み損がでる。
 大手銀行の利益は2兆円だから、金利がスペイン並みに上がったら、17兆円もの含み損を抱えて経営破綻する大手銀行がでかねない。中小の金融機関はもっともっと体力がない。

 もう一つは年金である。物価スライドになっているから、物価が上昇すれば制度上自動的に給付金額が上がり、年金基金の枯渇が早まる。
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 能天気な成長路線&金融緩和論者の森永卓郎氏もようやく気がついたようだ。金融緩和の負の側面はよくわかっていないのである。マスコミは取り上げないし、充分な議論もなされていない。アナリストや経済学者はようやく問題の所在に気がついたというのがほんとうのところだ。

 選挙が近くなり、金融緩和や成長路線を叫ぶ政党があるが、危ない。日本はすでに人口減少・経済縮小の時代に入ってしまった。高齢化が急速に進み、経済のさらなる縮小は避けようがない。

 同志社大の浜矩子氏は米国は金融緩和で先延ばししないで、「財政の崖」を飛び降りる覚悟を決めるべきだと主張し始めた。腹を決めるという点では女にかなわぬ。慶応大の金子勝も金融緩和策は問題を先延ばしするだけで意味がないと主張している。世界の主要国が同時に金融緩和策に走れば各国の金利差が消滅するから、自国通貨安を目的とした金融緩和策は意味がなくなる。弊害だけが目に付き始めた。金利はほうっておけばいろんなことを自動調節していたのだが、恣意的に低く抑えたために歪が溜まってしまった。ゼロ金利は日本が一番長いから、歪も世界一となっている。それを象徴的に現しているのがGDP比2倍の国債残高である。金利が上がったとたんに国家財政破綻を招来してしまう。身動きがとれないままずるずると崖っぷちに引きずられていく。問題を先延ばしせずに日本も崖を飛び降りる覚悟を決めなければならない。もう何とかできる時期はすぎてしまった。私たちは問題を解決できるときになにもしなかったのだ。後はツケを支払うのみだ。なすべきときに手を打たず、すでになすすべがない。

 この数字でも手遅れは明らかだ。社会保障給付費が103兆円になったというニュースが昨日流れたが、2008年には94.8兆円だったから、3年間で年額平均で8兆円も増えている。これではいくら消費税を上げても追いつかないのは明らかだ。

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 ウィキペディアから2008年の社会保障給付費の内訳を引用する。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C

2008年度の社会保障給付費は94兆848億円で、一人あたり73万6,800円であった。内訳は、医療29兆6,117億円(31.5%)、年金49兆5,443億円(52.7%)、福祉その他14兆9,289億円(15.9%)となっている。また、高齢者関係給付費は、65兆3,597億円となり、同給付費の69.5%を占めている。毎年約3兆円程度増え続けると予想されており、2025年度の社会保障給付費は141兆円(国民所得比26.1%)に達するとの見通しである(「社会保障の給付と負担の見通し」(2006年5月厚生労働省推計)の「並の経済成長」のケースによる)。」

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 ウィキペディアに掲示してある表では2012年の社会保障給付費は109兆円となっているから、4年間で14兆円も増えることになるらしい。年額3.5兆円のハイペースである。これでは消費税を25%にしても4年もたぬ。

 物価と金利が5%上昇したと仮定してみよう。社会保障給付費は年額5.5兆円アップする。たった3年間で16兆円もアップするのである。現在の税収規模は40兆円、円の国際通貨としての信任は根底から崩壊するだろう。もちろん国家財政も破綻、その影響ははかりしれない。
 だれも具体的な予測などできはしないのだ。何がどう起きるか知れたものではない。起きてから私たちは知るのみ。そしてインフレはコントロールできない。不可逆の反応は行き着くところまで行き、日本経済を破壊し尽くしてとまる。そこから再生作業を始めざるをえない。その過程で日本人がもつ金融資産1300兆円はあらかた消えてしまうのである。
 自分達の都合しか考えない者たちが争い、それが終わる衆議院選挙後にみたくもないナイトメアがはじまる。



 #346 これから10年間の日本経済のシナリオ
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10 

 #829 国家財政破綻の瀬戸際  Dec.12, 2009
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-12-12

 #1828 ゼロ金利の罠: Fed targets and transparency Feb. 3, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-03

 #2144 成長路線と金融緩和の罠 : 衆院選挙でナイトメアがはじまる  Nov. 30, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-30

 #2256 マネタリーベース270兆円へ拡大:亡国の決断 Apr. 6, 2013 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-06


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