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#2064 大学教員の地域格差はさらに大きい:遅い夏休み帰省 Aug. 25, 2012 [60. 進路(進学・就職)]

 また元塾生が一人夏休みでもどってきた、5人目だ。
 教室のドアのところに立って車の鍵をもってニコニコしながら「免許をとりました」と報告あり。
 教育大札幌分校へ進学した生徒だが、経済学のゼミをとったという。ネットで調べてみたが、北海道は教員も深刻な人材不足のようだ。
 団塊世代に属するebisuは、学部時代は哲学者の市倉宏祐先生のゼミで3年間議論を戦わし、経済学史の大家内田義彦先生の講義を聴いた。大学院では経済史の大家である増田四郎先生の授業を三人の院生だけで聴講する機会に恵まれたが、東京だからこそ可能だった。いま振り返ってみると、東京へ出てよかったとつくづく思う。北海道にはこういうクラスの先生がいない。
 大数学者の岡潔が北大の教員で来たことがあるが、1年足らずでやめてもどった。気候が合わなかったのも理由のひとつのようだが、よくわからない。東京にすぐれた学者が多いのは大学の半数ほどが東京近郊にあるからあたりまえなのである。もちろん玉石混交。
 大学の授業のレベルは学生と教員が創る。北海道の小学校教員の8割が、中学校の半数が北海道教育大出身者だという。教育大の中では札幌分校が一番レベルが高いはずだが、実態を垣間見て唖然としてしまう。北海道の小中学生の学力が全国最低なのは源流を遡れば北海道教育大の教員の資質に問題があるのではないかと、至極当然の疑問に行き当たる。劣悪とだけ書いておく、これ以上は実に言い辛いことだ。もちろんわたしはホンの一部を垣間見ただけである。
 北海道の高校生たちよ、東京の大学を目指せ、大学教員の資質の地域格差が大きすぎる。

 この生徒は高校入試直前の2月に日本商工会議所簿記検定試験2級を受検したが、それでも高校入試は学年2番の成績だった。そして根室高校始まって以来の記録、商工会議所簿記2級を高校1年生の11月にパスしているのだが、まだ1級にはチャレンジできないようだ。忙しくて勉強時間をとるのが難しいという。来年は教育実習があるからもっと時間がとれなくなるだろう。中学生のときに一度だけ学力テストで数・英2科目満点をとったことがあるくらいだから、優秀な生徒の一人である。
 同じ学年で6科目1級をそろえて事務情報科から北海商科大学へ進学した生徒も税理士志望でありながらまだ商工会議所簿記能力検定1級がとれない。記述式問題が半分出るからそこいらあたりがたいへんなのだろう。本をたくさん読んでいないと記述問題がなかなかクリアできないのが現実。
 ebisuの同期で根室高校商業科で2番目に簿記のできる男がいたが、F短期大学へ進学して、その年に商工会議所簿記1級に合格し、卒業した年に税理士資格を取得し、東京有楽町で税理士事務所を開いている。団塊世代は馬力が大きかったということか、ハングリーさが違う。

 公認会計士へのチャレンジを考えていたはずだが、進路を考え直している。北大大学院経済学研究科へのチャレンジである。若いうちはやりたいことにチャレンジすればいい、そして目標がその都度変わったっていい。ただ、教育実習はきちんとやり、教員試験も受けたほうがいいとはアドバイスした。偏差値42の根室高校普通科で同級生と学年トップ争いをするのとはわけがちがう。

 この生徒と友人だったもう一人には中3のときからデカルト『方法序説』や数学者の岡潔の著作そして世阿弥著林望訳『すらすら読める風姿花伝』を読ませた。何か感じるものがあればと思ったからだが、中高生の時代に良書にめぐり合うことは案外大事である。

 さて、これからの勉強だが、自力でやるしかないから原典を二つくらい研究ノートをとりながら読破することを勧めたい。

 ケインズ『雇用・利子及び貨幣の一般理論』
 マルクス『資本論』『経済学批判要綱』
 リカード『経済学及び課税の原理』
 スミス『諸国民の富』
 ユークリッド『原論』
 デカルト『方法序説』

 マルクス経済学者になる場合でもケインズの著作を読んでおくのは無駄にならない。否、傾向の異なる二つものをしばらく自分の中に共存させることは大事だ。ケインズも読んでいないマルクス経済学者なんてひ弱なものだ。複式簿記も経済学者としての基本的素養に属する。頓珍漢なステレオタイプの議論は厳密に定義されている複式簿記の専門用語を知らないことからも発生する。
 全世界の株式会社は例外なく複式簿記で動いており、それに縛られていない経営者は皆無だから、経営行動の基盤をなす技術が複式簿記にあることは明らかだろう。だから簿記を知らぬ経済学者なんてナンセンスだ。簿記は特殊数学の一分野で、理系の科目であり、体系が実に美しい。そういう意味で経済学体系とも美しさという点で共通するものがある。美的センスは学問、とくに経済学や数学を学ぶのに一番大切なものなのだろうと思う。岡潔が学問には「情緒」が大切だといった意味がよくわかる。いいものは美しい。

 学部時代に翻訳でいいから原典をしっかり読んでおくべきだ。できたらケインズやリカードは英語のテキストにも眼を通しておきたい。その他のゴミ本や解説本は濫読の対象にしておけばいい。高校時代にジャパンタイムズ記事を読ませたのは、こういうことがあるかもしれないからだ。

 原典を読み終わるまでは解説は読まないほうがいい。学者になろうとするものはイージーな道を選んではいけない。原典を読み込むことでオリジナルな問題意識が生まれるから、そういう過程を大事にしてほしい。

 もちろん休みに時間がとれるなら、ニムオロ塾へ来てジャパンタイムズを読むとか経済学の原典(英文テキスト)を一緒に読んでもいい。ローカルな北大でなくてもいいのだよ、もっと上もある。
 「少年よ大志を抱け」、いい言葉だ。
 渾身の力で4年間を駆け抜けよ。


*#2038 看護専門学校生に一番必要な能力とは?:卒塾生に聞く Aug. 3, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-03

 #2062 読書力を鍛えよ:高校を卒業した後一番必要な能力 Aug. 22, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-22

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