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#2062 読書力を鍛えよ:高校を卒業した後一番必要な能力 Aug. 22, 2012 [60. 進路(進学・就職)]

  夏休みなので薬学部の学生が顔を出してくれた。
 「先生身体は大丈夫ですか?」
 「3週間ほど続いていた舌炎が治ったし、3日前から楽だよ、スキルス胃癌で全摘手術をしてから先月で6年たったからそっちのほうはとっくに完治だ、心配ない。ところで今年は7月1日から4日ぐらいしか晴れた日がない、根室は涼しくていいだろう?」
 「(東京に比べると)ちょっと寒いけどね」(笑い)
 もう3年目だからあっちの暑さには慣れただろう。こっちの暑さは庭の寒暖計によれば午後2時の気温が25度だった、おそらくこれが今日の最高気温だ。寒暖計は百均のキャンドゥで買ったすぐれもの。(笑い)
 先日、看護学校生と臨床心理士コースの生徒にも同じ質問をしてみたのだが、またやってみた。
 「いま一番必要な能力は何?」
 やはり「本を読む力」だそうだ。専門書を何冊も読むことになるから、読書力が一番大事、「読み・書き・そろばん(計算)」の筆頭に上がっている項目が一番大切。
 看護学校生は3年間で医学関係専門書を20~30冊は読むことになる。見せてもらった教科書3冊はA4版のサイズで400ページ前後あった。漫然と授業に出ていたのではダメ、講義でやるところよりもさらに先まで読んで予習してから授業に臨むのが専門学校生や大学生の授業の基本的な受け方である。

  HIVや体重減少薬、貧困率と肥満率の関係記事など、薬学部の学生の興味を引きそうなジャパンタイムズの記事の写しをいくつかあげた。その内のいくつかはブログに解説があるから参考にして読んでみたらと勧めた。
*#1995 肥満との戦い:フィラデルフィア(ペンシルバニア州の州都) July 2, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-02

 #1996 肥満治療薬を認可:U.S. clears first new weight-loss pill in 13 years July 3, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-03

 2024 高校生のためのホットな性感染症知識:HIV感染の実態と新薬  July 23, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-23

 #2026 高校生のためのホットな性感染症知識(2):国際エイズ会議 July 25, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25


 文科系学生はどの学部も哲学書は何冊か読んだほうがいい。本当は高校の必修科目として学んでおくべきなのだが、日本の高校に「哲学」という科目がない。教えられる先生がいないというのが実情だろう。国語に哲学書がテキストとしてとりあげられていないのは非常にまずい。哲学は諸学の根元をなしている。

 小学校や中学校でかなり本を読み、高校では文庫や新書レベルの読書をある程度こなしていないと、専門学校や大学へ進学してから学力の伸びが止まってしまう。わたしたちは「ノビシロ」と呼んでいる。
 小学校で英語の勉強している暇があったら、お母さんたち、子供にいい本をたくさん読ませたほうがいい。読書力はレベルの高い本をたくさん読まなければ身につかない。できれば、「悪書」もたくさん読んでいたほうがいい、そのほうが「良書」がどういうものかよくわかるようになるから。

 薬学部はけっこうきびしいようだ。大学は薬剤師試験の合格率を見かけ上よくするために、年次ごとに達成学力レベルを決めておいて、その水準に達しなければ個別にカウンセリングをして、退学や他の学部への転部を進める。6年間追われるように勉強することで身につく能力がある。
 年次が上がるにつれて勉強は難しくなりやることは増えていき、とても高校時代のようには行かぬから、高校卒業までにある程度の読書力は身につけておこう。

 高校を卒業して就職する生徒は高校時代に徹底的に読書をすべきだ。社会人となったら仕事でいろんな本を読まなければならなくなる。どんな仕事にも段階に応じた資格試験がつきものだ。独力で読みこなし、問題を解けなければ資格試験に合格できない。資格がなければできない仕事は多い。

 ニムオロ塾では良書を選んで週に一度、三色ボールペンを使った「斉藤孝方式」の音読トレーニングをしている、これは無料だ。生徒の人生にとって本当に大事なことはきちんとやっておくのがebisuの流儀。読書スキルの高い生徒には数学者岡潔の本やデカルト『方法序説』などを薦めている。斉藤孝のルビを振ってある音読破シリーズは生徒への貸し出し用として数十冊常備している。

 中1:『読書力』斉藤孝 岩波新書
 中2:『国家の品格』藤原正彦
 中3:『すらすら読める風姿花伝』世阿弥著・林望訳、
    『日本人の矜持 九人との対話』藤原正彦(新潮文庫)

 『風姿花伝』はもちろん世阿弥(室町時代)の書いた能の奥義書ですぐれた芸術論だが、年齢ごとに人間はどうあるべきか、能の技の練磨との関連についても説いているからすぐれた教育書や哲学書でもある。
 原文と林望の品のよい現代語訳を交互に一斉朗誦あるいは輪読することで、日本の伝統文化の真髄の何かが心身にしみこんでいくという感覚をともに味わう。
 高校「古典」科目へのアレルギー反応を除くための「ワクチン」でもある。文法説明なし、ひたすら原文音読の心地よさを体験しておくということが大事。「リンボウ先生」の品のよい現代語訳も音読テキストとして秀逸である。

 「え、先生、三色ボールペンを使った音読まだやってんの?」
 「もちろんだよ、効果は君が8年前に劇的に証明してくれたからね、トレーニングを始めて半年ぐらいで国語の成績をびっくりするくらい上げただろう。そして大学生のいま中学校で3年間新書版の音読を続けて磨いた読書力が役に立っている、磨いた音読スキルは君の財産だ。先生はこういう(損得を度外視してもやらなければならない)ことには見かけによらずしつこいんだよ、君に続く者が現れることを期待している」(笑い)

 早い時間だったから、高校3年生二人が受験レベルの数学の問題、2年生が判別式の応用問題、小6年生が連立方程式の文章問題(中2)に取り組んでいた。生徒の質問に黒板を使って答えながら、その合間を縫って2時間半、お互いに近況を話した。質問に答えている間はジャパンタイムズの記事を読んでいた。
 一生のうちで勉強に専念できる期間は案外短いものだ。勉強の季節には全力で勉強したらいい。それでしかえられない何かがあったことに30代になったときに了解できるだろう。
 読書力がいかに大切であるか「子弟対話」を聞いてその場にいた生徒には了解できただろう。卒塾生が先生と語るのを聞くのも私塾にしかない大切な「授業」になることがある。だから、彼ら・彼女たちが夏休みや冬休みそして春休みに塾を懐かしんで訪ねてくれるのはありがたい。


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