SSブログ

#1865 グラフにヒョウスってどういうこと?このままでは高校卒業できないよ  Mar. 4, 2012 [64. 教育問題]

 学年末試験が近くなって1年生が三人4時半から来て、9時まで勉強していた。ニムオロ塾はじまって以来の問題児が多いのクラスの中で一人が様変わりしたら、好い方に雪崩現象を起こしそうである。

【小3?証拠見せて】
 このところ私の物言いは徐々にきつくなっている。いくら言っても家でトレーニング(日本語の音読、漢字書き取り、英語の教科書音読)をしてこないからこのままではいけないと判断。
 小学校3年生程度の読書力しかないから学力テストで国語の点数が20点台、30点台になるんだ、そんな読解力で教科書の内容がわかるはずもないし、学校の先生の授業だって半分以上理解できないはずだよ、そう言ったら一人が不満そうな顔をしている。
「自分ではどう思っているの?」と訊いてみた。
「小学3年生なんて、そんなはずはない、証拠見せてよ」
いっぱしの理屈をこねる、つける薬がないなと思いつつ、控えてある学力テストの国語の点数の推移を三人分確認した。トコトン叩かないとわからないようだから、やることに決めた。
 国語の点数が20点台30点台であることが何を意味するかまだわからない様子で、納得がいかないようだ。なにしろ仲間内で意思の疎通にはことかかぬから日本語の力は一人前と思い込んでいる。本(漫画は除く)は読まない。

【4年も遅れている日本語能力とブカツとどっちが大事?】
 かれらは前日も学校帰りによって3時間ほど勉強していたが、そのときにわたしは夏目漱石『坊ちゃん』をテクストに使って5年生の音読トレーニングをしていた。この生徒は数学は中1の生徒たちと同じところをやっているが、国語の能力があまり高くない。読書量が少ないからで、それを補完したくて音読トレーニングをしている。
「あの五年生の方がずっと上手に読むよ、金曜日においで、一緒に読んでみればすぐにわかるから」

 このテクストにはルビが振ってあるが、先読み技術のない中1の彼らが同じ速度と正確度で読むことはできない。スピードは5年生の半分、正確度は比較にならないだろう。一緒に読めば5年生以下だということが5分でわかるのだが、ブカツを休み毎週金曜日に小学生と音読トレーニングをやるのは嫌だという。音読トレーニング用教材の『読書力』を家で読んで来れば上手になるのだが、やってこないから10ヶ月たってもほとんど進歩がない。仕方ないので塾でやらせようと思うが「ブカツが遅れる」と嫌がる。
「3年、4年、5年、6年、中1と日本語能力が他の人より何年遅れていると思っているんだ?それに比べたらブカツの方は遅れていないぞ、ブカツと勉強とどっちが大事?」
「ブカツを休むの嫌だよ」
「はっきり言うよ、このままなら君らは根室西高校を卒業できないよ、そういうレベルなんだ。入学して卒業できない生徒が毎年何人出ていると思っているの。学年でビリから十数人(成績下位20%)はそういうゾーンに入っているんだよ、そろそろ抜け出そう」
 2ヶ月我慢すればずいぶんよくなるのだが、それすら辛抱できぬ。自分の人生と引き換えにしても惜しくないほどブカツが大事だと言っているに等しいのだが、自分の発言を客観視できないから気がつかぬ。おそらくブカツの練習メニューも客観しできないだろう。つまり、自分の頭で工夫ができないということ。一事が万事だから、勉強をおろそかにするな。

【20年後には大きな社会問題になる】
 中学校の先生たち、学力テストの国語の点数が40点以下で、五科目合計点が200点以下の生徒は西高校へ進学しても中途退学する可能性が高いから、ブカツを禁止してくれ。
 放課後日本語の音読トレーニングをやるのはあなたたちの義務だ。「読み書きソロバン」のせめて読みの部分だけは中学生としての読書力をつけてから卒業させてほしい。
 根室西高校の中途退学者を作り出しているのは小学校と中学校の先生たちと家庭の躾けに問題があるからだ。もちろん、小学校6年間でブカツのみの自堕落な生活習慣に浸り続けた生徒たちにも。
 昔と違って高校を中退した生徒たちが経済的に自立するのはむずかしい。根室は20年くらい後に、人口の40%を超える老人と経済的に自立できない20~40代の挟み撃ちにあうことになるだろう。親が退職したら寄生できなくなるから、根室は生活保護世帯の激増に直面することになる。いま手を打たないと20年後に確実に問題が起きる。

【自己客観視能力の欠如】
 かれらは自分たちの日本語能力の欠落に生じている問題の深刻さがわかっていない。客観的な自己認識ができないのは幼さそのものである。口の利き方はしょっちゅうぞんざいになるが、個別の事例を注意されるまでわかっていない。
 日常繰り返しやっていることだから性格になってしまっている。習慣は無意識になったとたんに出てしまうから、なかなかリセットできない。

【深刻な高校中退者の増加】
 3月1日に高校の卒業式があったが新聞に載った卒業生数をみて驚いた。根室高校は定員200人で卒業生が186人、根室西高校は定員120人(2年前から80人に縮小)で67人。根室西高校はあの年の入学者は100を超えていたのではなかったか。

【日本語の会話ができたって日本語能力は小3並みの現実】
 斉藤孝の『読書力』を読ませても基本漢字の読み間違えや文章語が読めないことが頻繁にある。それどころかひらがなが続くとどこで区切るか先読みできなくてヘンなところで区切る、つまり文章全体の意味がつかまえられていないのは、ebisuのほうから見れば明々白々なのだが、そういう自己認識がない。だから、二人は一度も漢字の書き取りの宿題をやってこない。友達同士で話しが通じれば中1相当の日本語力があると勘違いしている。日常会話力ではなくて文章語の語彙理解に問題があるのだ。もちろん、かれらの日常会話に文章語が自在に使われるということはない。貧困なボキャブラリーで幼稚な会話ができるのみなのだが、それに自ら気づくことはない。
 (英語学習も同じことなのだが、「英会話」偏重の英語教育がおなじ問題を引き起こしていることに気づかぬ。ネイティブの小学生程度の英会話を習得していったいどうしようというのだろう?昔のように文章語偏重、読解偏重の英語教育でいい。)

【実例:基本漢字の読み間違い】
 一番問題行動・発言の多かった生徒が一生懸命に質問するようになった。授業中の目の色がはっきり違うしこの2週間で姿勢もずいぶんよくなった。頻繁に質問が出るので辟易するくらいだが、ここは辛抱である、丁寧に質問に答えてやる。反比例の文章題がわからないと言うので、音読させたら、基本漢字の読み間違いをしている。
「グラフにヒョウス・・・」
「ヒョウスってどういう意味?」
と訊いてみたら、
「そこがわかんないんだ先生」
「あのね、それはヒョウスではなくてアラワスって読むんだ。"反比例のグラフに表す"ってね」
「わかった、そういうことだったの」
「な、だから小学3年生の日本語語彙では、中学校レベルの文章は理解できないことが多い、日本語語彙の重要性がわかっただろう?」
「うん、これじゃわかるわけないよね、わかった先生」
「"うん"じゃないよ、返事は"はい"だろう」
「はい」
「『読書力』の漢字の書き取り宿題やってこいよ」
「やってくる」
「やってきますだ!」

 素直な生徒でしょう?ところがわずか2週間前までは反抗的で勉強やる気ナシ、屁理屈ばかり言っていた生徒である。姿勢は悪い、態度は悪い。だが、子どもたちは時期が来れば変わる。
 小学校6年間で育ててしまった悪い習慣はちょっとやそっとでは治らない。大きな方向転換にはきっかけが必要。しばらく我慢して待ち、チャンスが到来したら一気に悪い習慣、悪癖を洗い流してしまう。こちらの仕事はそのチャンスを見逃さぬこと。

【自分の語彙力が小3程度だということに気がつけ】
 さっき不満顔をした生徒に、こういうことなんだよ、君たちはこういう基本漢字の読み間違いが多いし、文章語の漢字が読めないことが頻繁に起きる、だから数学の文章題も、国語も、社会も、理科も点数が上がらないんだ。問題文の意味がわからないことが多いからだよ。そして読むのに時間がかかりすぎる。文章に書かれた日本語の読解能力に問題があるんだよ、このアラワスって漢字が読めないで小学校4年生の日本語能力があると思う?ないんだよ。だから、塾で音読トレーニングに使っている『読書力』(斉藤孝著 岩波新書)を家で何度も(家に帰ったとき、食事の後、食後)読み、書けない漢字の書き取りをノートに1ページやってこいと宿題に出しているんだ。君は一度でもやってきたか、いつも言い訳しているよ。
 ブカツの練習と同じで、コーチの指示を守ってトレーニングしない者が巧くなるか?なるはずがないだろう。わかったら宿題やって来い。
 宿題もやらぬ、小学生の音読トレーニングにも来るのがいやだというなら、学力の上がる見込みはないから、塾に来なくていいよ。一生懸命にブカツをやってていいよ。これでは自分がダメになると思ったら塾に来なさい、そのときには時間を割いて補習して助けてあげる。授業料が無駄になるからやる気になるまで当分休んでいいよ。

【生徒の段階に応じて先生の指示は自在に変わる】
 よく「全部わからない、全部教えて」という生徒がいる。そういうときはできない問題を探してもらってから、その問題を通して一般的な説明をすることにしている。だが、わからないことを全部先生に聞こうと思う生徒はダメだ。調べられるところは自分で調べ、ここがわからないと具体的にわからないところを質問できるようになれば成績は伸びる。
 だから、最初のうちはなんでも質問に答えるが、次第に指示の仕方が変化していく。いずれは社会人となり、わからない問題を自分で専門書を読み調べて解決しないとならなくなる。そのときに困らないような指導を中学生高校生にしておくことは大事なのである。
 「そこは国語辞典を使って自分で調べること」「この英語辞書を使え」「教科書の後ろの方にある単語表で意味を調べろ」「そこにある高校日本史の教科書の索引を使って調べてみろ」という指示が増えていく。勉強は自らやるもので口をあけて餌を待っているような姿勢ではダメ人間になる。だから途中から「小学生じゃあるまいし、いつまでも甘ったれているんじゃない」と叱責が飛ぶ、そのうちに何をどう調べろとも指示しなくなり、ただ「30分あげるから自分で考えてみたら?」「自分で調べてみなさい、どうなったか次の授業のときに報告すること」「土日に考え抜いてきて結果を報告してご覧」などという指示に変わる。そういう指示をもらえるようになったら、免許皆伝の日が近い。
 ebisuが思い描く私塾とはそういうところだ。中学生には授業を通じて大人への準備段階という意識を養ってもらう。

【小中高の先生たちの意見交換の必要性】 
 目の前にある現実をみつめること。近くの中学校の授業参観で確認したが、基礎学力が著しく劣っている生徒が目の前にいるのに、無視して学習指導要領どおりの授業しかしないのがほとんどの先生たち。放課後補習をして成績下位層の生徒を救え、それが先生たちの仕事だ、プリント配るだけで終わらせるな。
 中学校の数学担当の先生たちは一度集まって協議し、小学校の先生たちの授業にクレームを言え、何がどうダメなのかテストを採点していればわかるだろう、遠慮していたらダメだ。西高校の数学担当の先生は各中学校の数学担当教諭に面と向かってクレームを言うべきだ。そうして一緒に解決の道を探ってほしい。小中高の先生たちがコミュニケートすれば根室の子どもたちの学力は上げられる。学校教育の威力は大きい。
 先生たち、成績下位層の生徒たちから逃げるな、やる気さえあればなんとかなるもんよ。
 
【自分の子供ならほうっておくか?学習習慣はなにがなんでも躾けよう】
 気になる発言があった。
「おれ、家では勉強する気になれないんだ。塾ならやる気が起きる」
 2週間前まで塾でもさっぱり勉強しなかったのだが、本人の心が変わってしまったのだろうから、その点はよしとしよう。
 だが、家庭学習習慣はなんとしてでもつけさせねばならぬ。家で勉強しないと高校時代は乗り切れないからだ。塾長は社会人となった後のことまで考えて日々の授業に臨んでいる。釧路の教育を考える会の三木さんが小中高そして社会人へという連続体で教育を考えることを提唱しているが、その通りだと思う。学校教育は小学校は小学校、中学校は中学校と分断して考え、学習指導要領にしたがって教え、目の前の生徒を直視しないから、次へ送ればそれでよしというような無責任なことに結果としてなってしまうのだろう。
 どんな社会人になるかを想像したら、「読み・書き・ソロバン」のいずれもができない生徒たちをほうっておけるはずがない。あなたたちが教えている生徒たちが友人の子どもだったり自分の子供だったとしたら、放課後補習をしないでほうっておけるか?ほうっておくはずがないではないか。ならば、自分の子どもだと思ってやるべきことをやればいい。

*#1854 あの問題の中1クラスの授業はどうなったか? Feb. 22, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-22-1

 #1843 「真っ赤な顔で… :先週の中1英語授業から」  Feb. 13, 2012
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-13

 #1839 中2成績中位層の日本語語彙 Feb. 12, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-12

 #1837 中学1年生 日本語語彙の現実  Feb. 10, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-09-1

 #1829 中1の語彙力の実例 : これでは先生たちの授業も理解できぬ  Feb. 5, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-05

 #1823 激烈な競争から這い上がれ:団塊世代の友人からの手紙 Jan. 31, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-01-31

 #1810 悩み Jan. 22, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-01-22


にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 根室情報へ
にほんブログ村

 


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0