#1853 日本人の美質と品性:中位数年齢45歳"熟年国家"のまやかし Feb. 22, 2012 [B7. 政治に求めるもの]
朝のテレビで国会中継を15分ほど見たが、元厚生労働大臣の長妻昭議員が質問に立っていた。
"中位数年齢"だと日本は45歳、他の先進国は30代、中国やインドは20代だそうだ。長妻議員は日本を"熟年国家"と名づけた、じつにわかりやすい命名である。
だが熟年国家になることは最近判明したわけではないから、「税と社会保障の一体改革」の理由に突然熟年国家をもちだされても、できの悪い生徒の言い訳にしか映らない。言い訳を額面どおりに受け取るとしたら、2年半前の選挙公約であるマニフェスト作成時に一体どういう前提で仕事をしていたのと問いたくなる。大局観を欠いたじつに幼稚な議論をしていたことになるではないか。
中位数年齢とは国民を年齢の低い順に数えていって真ん中に位置する人の年齢のことらしい。統計学ではmedian(メディアン)という。昔の統計学の本には"メジアン"と書いてあったような気がするが、そんなことはどうでもいい。
1960年には日本の中位数年齢は26歳であったというから、現在の中国やインドは中位数年例で見ると50年前の日本に相当する。中国やインドは高度成長期に突入したと言ってよい、では日本はどうか。
日本経済はピークを過ぎて大きな下り坂を転がり始めたところと表現するとぴったりだろう。縄文時代以来初めて経済縮小の時代に入ったのである。人口もGDPも縮小していくからそうしたことを前提にあらゆる経済・社会政策を見直さなくてはならないのあたりまえである。再度言うが、そんなことは政権奪取の前からわかっていたことではないのか?
江戸期は概ね3000万人で人口が安定していた。鎖国という管理貿易で自給自足していたのである。生産力の上昇を考えれば人口6000万人なら安定的に自給自足が可能だろう。幸いにして日本の人口は無策のままに放置しておけば50年後には当てにならぬ政府機関の推計でも8000万人に(実際にはもっと)落ちるから、わたしはTPPなんぞやる必要はまったくないとブログで何度か公言している。
消費税値上げの口実に"社会保障と税の一体改革"を最近言い出しているが、その理由を中位数年齢が先進国中で最高齢(45歳)になったから、根本から社会保障と年金制度をみなさなくてはならないからだと長妻議員がいまごろ言うのは解せぬ。
中位数年齢が先進国中最高齢になったのは2012年ではないだろうし、人口統計をみればそんなことは一目瞭然で2009年8月の政権逆転選挙前から分かっていたことのはず。分かっていなかったとしたら間抜けな話で、政権担当能力なしだ。
政権を奪取したいがゆえに、小利口な者たちが耳に心地のよいことばかりを並べ、不都合な真実には口を閉ざしたのかもしれぬ。そうだとしたら根性が捻じ曲がっている。
正直な長妻議員だから、前回選挙のときのマニフェストを作成時、消費税や社会保障・年金問題を検討する際に中位数年齢が45歳になることなんか考慮の外だったと口が滑ったように聞こえた。"消えた年金問題"に目を幻惑され、大局が見えていなかったと言わざるをえぬ。
マニフェスト作成には松下政経塾出身者が何人も係わったはずだが、問題を限定して重箱の隅を突くのはうまいが、大局観のないことが共通している。30代で責任のある仕事をしないと人間はこんなにもダメになるのかと唖然としてしまう。現在、若い人たちの半数が非正規労働で責任ある仕事に就けないことを考えると、日本の将来は憂鬱なものにならざるをえないのではないだろうか。
議論を聞いてわかったことはこの三年間はまったく無駄であり、ようやくスタートラインについたということ。それほどでたらめなマニフェストだった。仕事のできない者たち(民主党幹部)がよってたかってつくり上げたマニフェストとはこんな程度の代物で、人も体質もにわかには変えらるわけがないから民主党にも絶望である。
久々の長妻氏("ミスター年金")の国会質問ご登場で論戦を楽しみにしていたが、なんとも幼稚な議論にがっかりした。デタラメなマニフェストを造った一人として、申し訳ありませんでしたと一言反省の弁があってから質問してほしかった。
人間はしばしば行いを誤るものでその点はどうしようもないからこそ、潔い謝罪が日本人の美徳となったのだろう。しかし、政権を奪取した民主党議員にもそれが見られないのは残念である。
日本人としての美質と品性を兼ね備えた政治家が出てきてほしい。
-----------------------------------------------------------------
*#346 これから10年間の日本経済のシナリオ
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10
#484「国民の95%が幸せ…屈託のない笑顔」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-01-11-1
#829「国家財政破綻の瀬戸際」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-12-12
#1148 「馬場宏二 過剰富裕化論」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05-2
#1158 「過剰富裕化論(2):過剰富裕化とは何か」 Aug. 12, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-12
#1162 「過剰富裕化論(3): 経済学部を目指す高校生へ」 Aug. 16, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-16
#1164 「過剰富裕化論(4):人類史上最短労働時間の社会への道」 Aug. 18, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-18
#1165 「過剰富裕化論(5):節度ある明るい未来」 Aug. 19, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-29
#1185 日銀金融緩和策公表も効果なし:資金の過剰富裕化は何をもたらすのか Sep. 1, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-01
#1254 「経済成長論の終焉」 Oct.24, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24-1
#1482 「東北大震災とパラダイムシフト:良寛をめぐって」 Apr. 22, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-21
#1755 "1ドル=200円"の時代は来るのか(1) Nov. 29, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-29
#1852「月間貿易赤字が過去最大(1月度):超長期的視点からの主張」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-21
#1853 「日本人の美質と品性:中位数年齢45歳"熟年国家"のまやかし」 Feb. 22, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-22
#2122 赤字特例公債、ちょっとまってくれ Nov.9, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-09
#2126 "lame duck"の野田政権はどこへ行く? Nov. 12, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-12
#2130 衆院解散と悪あがき 喧嘩の仕方◎ 仕事× Nov. 16, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-15
"中位数年齢"だと日本は45歳、他の先進国は30代、中国やインドは20代だそうだ。長妻議員は日本を"熟年国家"と名づけた、じつにわかりやすい命名である。
だが熟年国家になることは最近判明したわけではないから、「税と社会保障の一体改革」の理由に突然熟年国家をもちだされても、できの悪い生徒の言い訳にしか映らない。言い訳を額面どおりに受け取るとしたら、2年半前の選挙公約であるマニフェスト作成時に一体どういう前提で仕事をしていたのと問いたくなる。大局観を欠いたじつに幼稚な議論をしていたことになるではないか。
中位数年齢とは国民を年齢の低い順に数えていって真ん中に位置する人の年齢のことらしい。統計学ではmedian(メディアン)という。昔の統計学の本には"メジアン"と書いてあったような気がするが、そんなことはどうでもいい。
1960年には日本の中位数年齢は26歳であったというから、現在の中国やインドは中位数年例で見ると50年前の日本に相当する。中国やインドは高度成長期に突入したと言ってよい、では日本はどうか。
日本経済はピークを過ぎて大きな下り坂を転がり始めたところと表現するとぴったりだろう。縄文時代以来初めて経済縮小の時代に入ったのである。人口もGDPも縮小していくからそうしたことを前提にあらゆる経済・社会政策を見直さなくてはならないのあたりまえである。再度言うが、そんなことは政権奪取の前からわかっていたことではないのか?
江戸期は概ね3000万人で人口が安定していた。鎖国という管理貿易で自給自足していたのである。生産力の上昇を考えれば人口6000万人なら安定的に自給自足が可能だろう。幸いにして日本の人口は無策のままに放置しておけば50年後には当てにならぬ政府機関の推計でも8000万人に(実際にはもっと)落ちるから、わたしはTPPなんぞやる必要はまったくないとブログで何度か公言している。
消費税値上げの口実に"社会保障と税の一体改革"を最近言い出しているが、その理由を中位数年齢が先進国中で最高齢(45歳)になったから、根本から社会保障と年金制度をみなさなくてはならないからだと長妻議員がいまごろ言うのは解せぬ。
中位数年齢が先進国中最高齢になったのは2012年ではないだろうし、人口統計をみればそんなことは一目瞭然で2009年8月の政権逆転選挙前から分かっていたことのはず。分かっていなかったとしたら間抜けな話で、政権担当能力なしだ。
政権を奪取したいがゆえに、小利口な者たちが耳に心地のよいことばかりを並べ、不都合な真実には口を閉ざしたのかもしれぬ。そうだとしたら根性が捻じ曲がっている。
正直な長妻議員だから、前回選挙のときのマニフェストを作成時、消費税や社会保障・年金問題を検討する際に中位数年齢が45歳になることなんか考慮の外だったと口が滑ったように聞こえた。"消えた年金問題"に目を幻惑され、大局が見えていなかったと言わざるをえぬ。
マニフェスト作成には松下政経塾出身者が何人も係わったはずだが、問題を限定して重箱の隅を突くのはうまいが、大局観のないことが共通している。30代で責任のある仕事をしないと人間はこんなにもダメになるのかと唖然としてしまう。現在、若い人たちの半数が非正規労働で責任ある仕事に就けないことを考えると、日本の将来は憂鬱なものにならざるをえないのではないだろうか。
議論を聞いてわかったことはこの三年間はまったく無駄であり、ようやくスタートラインについたということ。それほどでたらめなマニフェストだった。仕事のできない者たち(民主党幹部)がよってたかってつくり上げたマニフェストとはこんな程度の代物で、人も体質もにわかには変えらるわけがないから民主党にも絶望である。
久々の長妻氏("ミスター年金")の国会質問ご登場で論戦を楽しみにしていたが、なんとも幼稚な議論にがっかりした。デタラメなマニフェストを造った一人として、申し訳ありませんでしたと一言反省の弁があってから質問してほしかった。
人間はしばしば行いを誤るものでその点はどうしようもないからこそ、潔い謝罪が日本人の美徳となったのだろう。しかし、政権を奪取した民主党議員にもそれが見られないのは残念である。
日本人としての美質と品性を兼ね備えた政治家が出てきてほしい。
-----------------------------------------------------------------
*#346 これから10年間の日本経済のシナリオ
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10
#484「国民の95%が幸せ…屈託のない笑顔」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-01-11-1
#829「国家財政破綻の瀬戸際」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-12-12
#1148 「馬場宏二 過剰富裕化論」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05-2
#1158 「過剰富裕化論(2):過剰富裕化とは何か」 Aug. 12, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-12
#1162 「過剰富裕化論(3): 経済学部を目指す高校生へ」 Aug. 16, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-16
#1164 「過剰富裕化論(4):人類史上最短労働時間の社会への道」 Aug. 18, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-18
#1165 「過剰富裕化論(5):節度ある明るい未来」 Aug. 19, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-29
#1185 日銀金融緩和策公表も効果なし:資金の過剰富裕化は何をもたらすのか Sep. 1, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-01
#1254 「経済成長論の終焉」 Oct.24, 2010
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24-1
#1482 「東北大震災とパラダイムシフト:良寛をめぐって」 Apr. 22, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-21
#1755 "1ドル=200円"の時代は来るのか(1) Nov. 29, 2011
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-29
#1852「月間貿易赤字が過去最大(1月度):超長期的視点からの主張」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-21
#1853 「日本人の美質と品性:中位数年齢45歳"熟年国家"のまやかし」 Feb. 22, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-22
#2122 赤字特例公債、ちょっとまってくれ Nov.9, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-09
#2126 "lame duck"の野田政権はどこへ行く? Nov. 12, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-12
#2130 衆院解散と悪あがき 喧嘩の仕方◎ 仕事× Nov. 16, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-15
2012-02-22 11:31
nice!(2)
コメント(6)
トラックバック(0)
今の年金システムは、少子高齢化時代の現代に既に合わなくなっている。
若い人は年金を払いたくないと思う心が増大中。
前回の総選挙で、国民は民主党の甘い言葉に騙され、政権を付与させたが、政権担っても何も変わらない。
変化があったのは、国民生活が前より悪化しただけ。
中間層という国民が既に瓦解し、国民の半数以上は低所得層に属しています。
現政権は、社会福祉という名目で消費税を増税しようとしているが、まず政治家や公務員の削減の順のはずが、増税あり気となってる。
何時も思いますが、日本以外だったら、デモやクーデターが起きてもおかしくない現状だと思います。
今の政治家で謝罪する人はほぼいませんね。
別に謝罪すれば解決する訳ではないが、現状の過ちは全て他人の責任みたいな政権では情けないと考える。
今、全ての責任を取るみたいな志が高い政治家がいません。今いるのは職業:政治家という人ばかり・・・
by おもし蟹 (2012-02-22 12:52)
もう間に合いませんね。
どうせ一度は修羅場をくぐることになるのですから、いっそじっくり構えた方がいいのかもしれません。
どういう国を造るのか3年ぐらい口から泡を飛ばし具体的なビジョンをいくつか議論したらいい。1万2千年の大転換ですから、急いでもしょうがない。
ここは日本ですから、きっとなるようになります。
by ebisu (2012-02-22 23:58)
【マニフェスト】なんて言葉を持ち出した時点で、
「【公】に対する【約】束」という意味が消えたんですよ。
「消した」と言う方が正しいですね。
「約束」なら、破ったら「絶交される」と思う。
「プロミス」なら、無理なら「逃げちまえ」と思う。
↑
サラ金
で、今度は、
もっともらしい専門用語を持ち出した。
「具体的」な数字も、
「比較」対象も。
こうして複雑怪奇な論戦に持ち込めば、
難しい事を一生懸命やってる印象を与える事ができ、
選挙までの時間も稼げる。
温暖化懐疑派とか原発擁護派の手口です。
不毛です。
ばからしい。
by Hirosuke (2012-02-23 00:34)
【派遣】で数年ほど働いた感想。
使う側が、使い物にならないバカばっか。
「育てない」どころか、育ってない。
自分達が出来ない仕事を丸投げ。
ある世界に名だたる大企業の子会社の話です。
そこで、僕は壊れました。
by Hirosuke (2012-02-23 00:42)
辞書で引いたら次のようになっていました。
manifesto:
a formal statement expressing the aims and plans
ただの声明あるいは宣言なんですね。公の約束なんて意味は元々なかった。それを選挙民に対する政党のお約束だと盛んに説明した御仁がいますね。どこかの知事さんで、そのご大学の教授をおやりになっている。
すっかりだまされていました。
マニフェストで一番有名なのはカール・マルクスの「共産党宣言」ですね。すっかり忘れていました。(笑い)
by ebisu (2012-02-23 00:55)
大会社にはいろんな人材がいる。
廃材のような人材も・・・
正規社員と非正規雇用の社員が混在する職場が普通になっていますが、問題が多い。
なんどか調整したことがあります。
給与は三分の一なのに非正規の方が仕事ができたりする。
社員は横柄、ストレス社会です。
派遣労働法にも会社のマネジメントにも問題がありますね。
格差が大きいほどストレスも大きくなるという学説があるそうですが肯けます。
by ebisu (2012-02-23 01:08)