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#1839 中2成績中位層の日本語語彙 Feb. 12, 2012 [62. 授業風景]

 中1成績下位層の日本語語彙力を実例で検証したので、今日は中2の成績中位層の日本語語彙力と比較検討してみたい。数日前の音読トレーニングでデータを採集した。藤原正彦著『国家の品格』p150~157まで、7ページの範囲から句点2つごとの輪読で読めなかった漢字を拾った。

【読めなかった漢字例】
 恵、栄、園、った、制、まれた、いがたく、閉塞感、虚脱感、古今東西、方、醜悪異質

 7ページで13個である。2ページ優しい漢字しか出てこないページがあることは注記しておきたい。
 読めなかった13個のうちこのうち4つは国語の学力テストの点数が30点前後の生徒である。生徒の国語の点数の分布は30点から70点の範囲である。中1も中2も今回の国語のテストは難しかったというのが彼ら・彼女たちの感想である。
 本をよく読んでいる成績中上位の生徒が都合で早く来て音読に参加していないのだが、この生徒に読ませたら、読めない漢字はおそらく一つか二つ(7と8番目だけ)だろう。
 中1の成績下位の生徒が6ページで26個あったのに比べると半分以下である。

【読めた漢字例】
 日常会話に出てこない語彙で読めたものも列挙してみよう。

 偽善のレトリック、傲慢さ、情緒、陥った、卑怯、惻隠の情
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 面白そうだからちょいと脱線するよ。
 中高生の会話には出てこない言葉だから「偽善のレトリック」を一読して意味のわかる中2の生徒はほとんどいないだろう。大辞林でレトリックを引くと、
 rhetoric ①修辞学。美辞学。 ②修辞 「―にすぐれた文章」 ③実質を伴わない表現上だけの言葉。「巧みな―にごまかされる」

 Cambridge Advanced Learner's Dictionaryでは次のように説明されている。
 1 speech or writing which is intended to be effective and influence people
  2 the study of the ways of using language effectively
  3 clever language which sounds good but is not sincere or has no real meaning
 「効果を高めることや人を感化するつもりの言辞」「効果的な言葉の使い方に関する研究(修辞学)」「耳に心地よいが誠実さに欠け実際的な意味をもたぬ、知的雰囲気のある言葉」

 もっと脱線。修辞の「修」の字の原義を確認しておきたい。
 白川静『字統』
 【修】ユウとサンとに従う。ユウは人の後ろから水をかけて洗う形で、沐するの意。いわゆるみそぎをするの意。みそぎして身を清め、その清らかさを示すサンを加える。サンは文彩のあることを示す記号的な文字。修祓して身を清めるの意である。〔説文〕に「飾るなり」とは払飾する意。

 最上のレトリックが内容も素晴らしく形式整い、読んだり聞いたりしたときに耳に心地のよい言辞であるとすれば、「偽善のレトリック」とは「無内容だがいかにももっともらしい言説」といえるのだろう。
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【ものごとには順序がある:その1 「たくさん読む」】
 三番目の情緒と最後の惻隠の情(弱き者に対する哀れみのこころ)はこの本のキーワードとも言うべきものだから、繰り返し出てきているから読めない生徒がいない。「偽善のレトリック」は日常会話語ではないからよく読めたと思う。
 語彙を増やすために第一番目に重要なことは何度も同じ語彙に出くわすということ、つまりいろんなジャンルの本を読み漁り、たくさんの語彙の海を泳ぎ、何度も同じ語彙に出くわすこと。

【ものごとには順序がある:その2 「国語辞書を引く」】
 次に大事なことは国語辞典を引いて意味を調べ、意味のわからない語彙を意味のわかる語彙に変える作業を繰り返すことである。
 生徒全員と言ってもよいくらい、国語辞書を引いてくる者はいない。残念ながら例外的な生徒を除いてほとんどの生徒に辞書を引く習慣はない。

【ものごとには順序がある:その3 「漢和辞典を引く」】 
 漢和辞典を引くようになると語彙は飛躍的に拡張する。基本漢字の意味の広がりを理解できるようになるから、それらが組み合わされてできている漢字熟語に類推が働くようになる。こうなると新出の漢字熟語でも国語辞書を引かずに意味の検討がつくようになっている。だから、
 良質の日本語テクスト音読⇒国語辞書を引く⇒漢和辞典を引く⇒よりレベルの高い日本語テクストを音読する⇒・・・
という一連の流れは、生徒たちの日本語語彙拡張に書くことのできない工程である。 

【なぜ子どもたちは辞書を引く習慣がないのか?】
 そこで問題になることがある。小学校の国語授業で国語辞書を授業に使って引かせる先生はいる。だが、習慣になるほど授業で辞書を引くトレーニングをすることはできないようだ。事実、授業で辞書を引いても、その後家庭学習で辞書を引く生徒はほとんどいない。辞書を引く授業は一過性のもので、習慣化にはいたらない。
 その上、中学校の授業で辞書を使う先生は聞いたことがない。中学校では英語授業でも辞書を使わないから、生徒たちは辞書を引く機会がなくなる。団塊世代は中学校の英語の授業は1年生のときから辞書を使った。この点が大きく変わってしまった。辞書を引く習慣がないことが生徒たちの日本語語彙力を貧弱なものにしていると言っていいだろう。

【ルビを振ったテクストの消失】
 日本語語彙を増やすための理想を言えば、小学校高学年でルビの振ってある良質のテクストで国語辞書を引きなれることが望ましいのだが、団塊世代が小中学生のころと事情が違ってルビを振ってある日本語テクストがほとんどない。出版にコンピュータが使われだした頃は性能が悪くてルビを振ることができなかった。それが性能が上がりルビを振ることが可能になった現在でも、ルビ無しの出版物が多い。ルビをふれば常用漢字にこだわる必要がなくなる。
 作家も遠慮しないで常用外の漢字をどんどん使えばよい。旧仮名の小説を現代作家が書いたっていい。

【簡単な漢字熟語の意味がわからない生徒が増えているのはなぜ?】
 もちろん漢和辞典はなおさら引かないから、漢語の意味を知らないまま読むことに慣れてしまう。だから、小学3年生程度で日本語語彙力の成長が停止してしまった生徒には普通の日本語テクストにでてくる漢字熟語は外国語のように映っているのだろうと思われる。意味不明の外国語が日本語テクストの中に点々と出ていると思えばいい。

【貧弱な語彙力の生徒は授業を理解できない】
 中学1・2年生で学力テスト国語40点以下は概ね小学校4年生程度の語彙力である。だから、数学や理科や社会や英語で日常会話語以外の新しい用語が出てくると音で聞いているかぎり半分くらいは意味の検討がつかないのではないだろうか。黒板に書いても漢和辞典を引かない生徒たちがほとんどだから意味の見当がつけられぬ場合が頻発することになる。
 たとえばだが、中2の英語授業で形容詞の説明に「形容詞は名詞をシュウショクする」と説明すると、生徒から「シュウショクってなんですか?」という質問が出る。黒板に「修飾」と書いても即座に意味のわかる生徒は少ない。
 新出の用語が授業で出ても、家へ帰っても国語辞書は引かないから、その都度新出用語の意味を説明しておかないと意味とセットになって語彙が定着しないことになる。わからないことを自分でなんとかしようという気持ちのうすい生徒が増えている。口をあけて餌を放り込んでくれるのを待っているような構えの生徒が増えていることが気になる。
 それでも学年が上になるほど、主要5教科に出てくる用語はどんどん増えていくから生徒の語彙力はそれなりに強化はされていく。本を読まない生徒が多いから日本語語彙の拡張という点から学校教育の重要性が増している。邪道ではあるが、近年盛んになった漢字検定も寄与するところ大だろう。
 この中2の生徒たちが3年生になってどれくらい語彙力を増強させるか楽しみである。本は読まずとも、漢字検定や学校の授業で使うテクストや授業によって生徒たちの日本語語彙力はそれなりに強化されていく。
 日本語語彙は本を読む中で培うべきものだ。漢字検定で覚えた語彙は短文あるいは漢字のみだから、使い方がわからないことになる。本を読んで覚えた語彙は前後関係がわかるからどういうシーンで使えばいいのかを読みながら習得していくことになる。テレビを見ていても、素人が出演する番組だと、単純な単語を並べるだけで、満足に日本語を使えない大人が増えているように思える。

【見えないものが大事:小学校高学年から語彙力の個人差拡大する時期を迎える】
 注意すべきは、小中高生の時代は国語辞書を引きながら本を読む生徒とそうでない生徒で日本語語彙力に膨大な差がついていく時期でもあることだ。
 問題を解いていくら勉強しても国語の点数が上がらないという経験をしている高校生は少なくない。ベースの読書量を増やすことなく国語の点数を飛躍的に上げることはむずかしい。読む本のレベルの差と読書量の差が国語力に相乗的な効果を及ぼしているのだと仮定すれば当たり前の話である。中学卒業までに少しレベル上げて濫読を経験しておかないと、高校で国語の点数を上げるのはむずかしいということ。

【語彙力と成績のノビシロは相関関係が強い】
 日本語語彙力の貧弱な生徒は5科目全体の点数のノビシロが小さく、語彙力が豊かな生徒はさらに興味のある分野の読書量を増やし、読める本のレベルをさらに上げ成績を大きく伸ばしていくことになる。

【国語力に関する参考データ】
 語彙力に問題を抱える学力テスト国語40点以下はどれくらいをしめているのか参考までに具体的なデータを挙げておく。2月3日のデータはまだないから2年生11月2日の学力テストから拾った。対象はB校とC校。
 B校 31人/72人 43.1% (平均点45.1)
 C校 26人/55人 47.3% (平均点44.8)

 試験問題の難易度にばらつきが大きいので2月の学テのデータとも比較してから結論を出したい。平均点が低いのでちょっと40点以下の層が大い。8月にB校だけ実施した学テでは 14人/72(19.4% 平均点54.1)となっている。平均点が9点高いから、8月の試験問題がやさしかったのだろう。一回の学テのデータで断定的にモノをいうのは危険だ。
 比較するために3年生の学力テストデータ(60点満点を百点に換算)を調べたら、平均点が55点を超える学テでは40点以下の層が20%を切っている。平均点が47点付近だと40点以下は35~40%になっていた。2年生の方がすこし学力が低いのかもしれぬ。この数年間の変化を大まかにみれば、年々中学生の学力が低下している傾向があることは否めない。

【学力向上は読み・書き・ソロバンから】
 学力テストの国語の点数が40点以下の層は日本語語彙力が小学4年生程度であり、30点以下に至っては中学校の授業の内容理解に支障をきたすようなレベルであることは言えるだろう。ここに具体的な手を打てば根室の子どもたちの学力を上げることができる。もちろん、小数や分数の加減乗除算をいう基礎計算トレーニングをしっかりやることも大切なことだ。
 基礎学力は「読み・書き・ソロバン」と昔(江戸時代)から決まっている。この三つはすべて反復トレーニングで飛躍的に能力を高めることができる。それをやるかやらぬか、基礎学力を充実させるためにむずかしいことはひとつもない。

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 #1843 真っ赤な顔で… :先週の中1英語授業から  Feb. 13, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-13

 #1839 中2成績中位層の日本語語彙 Feb. 12, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-12

 #1837 中学1年生 日本語語彙の現実  Feb. 10, 2012 
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*#1829 中1の語彙力の実例 : これでは先生たちの授業も理解できぬ  Feb. 5, 2012 
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