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#1433 震災報道の難しさ:誤報修復機能 Mar.19, 2011 [13. 東日本大震災&福島原発事故]

  震災報道はむずかしい、その実例がコメント欄へ解説付きで寄せられた。それはコンテキスト(事件の起きた脈絡)がつかめないからだ。スポットで知りえた事実のみを記事にしたらとんでもない誤報になることがある。
 たとえば、写真だ。写真に写っているのはどれも現実。だが、特定の部分に焦点を絞ることで、全体を誤解させることがある。
 このケースは、記者に震災報道は細心の注意をしてコンテキストをできるかぎり確認すべきことを警告している。できないときは、その旨留保をつけ、追跡取材をするべきだ。
 このところm3.comの情報をある方が解説してくれているお陰でどういう性質の情報が載っているのかが分かり始めた。この掲示板には、真偽不明、出所不明の情報がふんだんに載るようだ。事件の当事者や内部情報が載っている場合は、新聞やテレビよりもよほど詳しく具体的で真実に近い情報が載るが、憶測記事も多い。
 医者が専門知識を駆使して医療問題を解説したり、本音を語ってくれることもある。

 多くの情報の中に誤報や憶測情報があっても連続して同じ記事を扱うことで、当初の誤報も修正されるし、憶測で外れているものもそれと判明するから、誤報の自動修復機能とでもいうべきものもあるようだ。
 今回はコメントを寄せてくれた人が時系列的に発生した事柄を整理して、どうしてこのような誤報が発生したのかおおまかな解説を試みてくれている。真摯な姿勢でありがたい。
  同じテーマのコメントをふたつ並べるので、通して読んで欲しい。
(Mw.comに比べるとテレビにたくさんの原子力専門家と称する人たちが出演して、素人の私には実に無責任と思われることを語っている。そのことについては近々いくつかの事例を挙げて説明したい。)


「こんなの有り?」(m3.comより)

双葉病院の病院職員がいないことはあり得ないのか
   投稿者:或る医師 

高齢者残し、医師ら避難か=原発圏内の病院-福島
事故が相次ぐ福島第1原発(福島県大熊町)の10キロ圏内にあり、避難指示が出た同町の双葉病院で、患者を避難させるため自衛隊が到着した際、病院内は高齢の入院患者12 8人だけで、医師や病院職員らがいなかったことが17日、分かった。県災害対策本部が明らかにした。同病院の患者のうち14人は、避難途中や避難先の県立いわき光洋高校(いわき市)で死亡した。対策本部によると、官邸危機管理センターは14日未明、原発の10キロ圏内に取り残された住民について「明け方までに避難させること。避難しない場合は責任を取れない」と 県に指示したという。県は自衛隊に救助を要請。隊員が15日、双葉病院に向かったところ、300人を超える患者のうち、寝たきりの高齢者ら128人が病院にいたが、病院関係者はいなかったとい う。
自衛隊は16日までに、バス3台を使って病院から搬出。被ばく状況を調査した上で、避難所に移動させた。県の担当者は「病院職員がいないことはあり得ない。放棄ととられても仕方がない」と批判。同病院を運営する医療法人「博文会」関係者は取材に対し、「理事長と連絡が取れず 、事実関係は分からない」としている。(2011/03/17-19:04)

一見するとミステリーのような話です。この件に関して未だ医師の書き込み数は少数ですが、事実関係が不明な部分が多く、その為か皆さん口が重いようです。
それにしても小生が気に成るのは、以前こちらのブログにも載せたことがある旧県立大野病院(例の産婦人科事件の病院)が厚生連の双葉病院と合併して”ふたば”病院なのか、それとも違う医療法人系の”双葉病院”なのか。何せどちらも同じような場所にありネットで調べてもはっきりしません。しかしどちらだったにせよ、病院の診療科に産婦人科や他の外科系の科がありませんので、いわゆる老人病院に成ったのかも知れません。
しかし先達ての書き込みでは「ふたば」はドイツ語でアウシュビッツ、「にがよもぎ」がロシア語でチェルノブイリと説明いたしました。今般福島の原発騒ぎで被曝の程度が「スリーマイル以上、チェルノブイリ以下と言われています。そこに「双葉」病院が現れました。凄い偶然ですね。
by 医療四方山裏話 (2011-03-18 01:15) 
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「誤報」(関係者のtwitterより)

双葉病院関係者の名誉の為に、ここに正確と思われる時系列dataを載せます。尚この件に関するm3.comの書き込みの多くは、「何時もの医療関係に対する悪辣な意図で、職員が職場放棄したように受け取れるニュースを流した」と言う意見と、「もし記事の通りだったとしてもこのような大災害時には全てを助ける事は出来ない。助ける者に優先順位を付ける事(トリアージ)は当たり前だ。皆平等だと言う考えは平時だけの概念に過ぎない」と言う災害時筋論を述べる者も結構居ます。

双葉病院で起こったことのタイムライン

以上、報道ならびに関係者のツイートに基づくまとめにすぎないことはご了承いただきたい。(@supergirl5jrhさんの追加ツイートに基づき15:50追加・修正あり)

•2011年3月11日14時46分:大地震発生。
•福島県大熊町・双葉町にある福島第一原発が緊急停止。
•福島県大熊町の双葉病院と介護老人保健施設ドーヴィル双葉で患者・職員が孤立。福島第一原発から約3キロ離れている。
•3月12日5時44分:福島第一原発の避難指示の区域を、これまでの半径10キロメートルに拡大。双葉病院・ドーヴィル双葉が避難区域に含まれることとなった。
•午前:大熊町役場まで双葉病院スタッフが患者を搬送したが10分後には双葉病院に戻された(理由は不明)。
•昼休み:外出した双葉病院スタッフが、防護服を着た誘導者に対して「なぜ双葉病院は誘導しないのか」ときいたところ、「いやもう誘導したはずです」と回答。そこで初めて双葉病院の患者が避難していないことが判明した。そこで急遽バスが派遣されることとなった。
•14時すぎ:大熊町役場が福島交通の大型バス5台を派遣したが、患者・搬送者・護送者を乗せることができなかった。また、救援に来たバスは普通の大型バスであったため、車いすや寝たきりの患者は搬送できなかった。
•15時36分:福島第一原発第1号機で水素爆発。残された人たちは被爆した。
•3月14日昼前:自衛隊が同病院への救助に到着。患者・施設入所者130人を救出。その他、自力で脱出した人もいた。患者98人と院長ら職員4名、警察官が残り、自衛隊が再び救援に来るのを待つ。
•二度目に自衛隊が来るという時間になっても来なかった。
•3月15日午前1時ごろ:一緒に残っていた警察官から避難するよう求められ、院長ら職員4人は患者を置いて、警察官とともに隣の川内村に避難した。そこで合流した自衛隊と共に病院に向かおうとしたが、避難指示の対象地域のため、自衛隊だけで向かうことになった。院長は「日付が変わり、警察官から避難を求められた。どうすることもできなかった」と述べている。
•午前7時:中野寛成国家公安委員長は15日の閣議後会見で、午前7時現在「(退避指示が出されている)20キロ圏内では、15日午前7時現在で、病院にいる96人を除いてほとんど完了している」と述べた。 防衛省によると、陸上自衛隊が陸路で96人をいわき市の避難所に移送する予定。(人数が食い違っているが報道ママ)
•午前から午後:自衛隊が残された患者を搬送(第2回・第3回)。この際「病院関係者の付き添いはなかった」と福島県が発表し、「患者を見捨てて置き去りにして逃げた」という趣旨の報道が流れる原因となる(各報道機関横並びで福島県発表のみを報道)。搬送中・搬送後に計21人の患者が亡くなった。
•3月17日:双葉病院主任が父だという@supergirl5jrhさんがツイッターで報道に反論するツイートを開始。夜、福島県が「避難時に院長いた」と訂正発表。
•3月18日:院長への取材内容が報道され始める。
(報道の数字が混乱していて、合計数がなかなか合わないが、これらは追って整理されるものと思う)

以上の流れをもう少し簡単にまとめると、「12日、なぜか双葉病院は避難済みと誤解されていて救援が来ない」→「それが判明して大型バス5台が派遣されるが、寝たきりや車いすの患者が乗れない」→「職員含めかなり残される」→「14日、自衛隊が来るが、全員は搬送できず、一旦戻る」→「2度目の救援が来ない」→「一緒に残っていた警察の指示で職員が川内村に避難」→「自衛隊と一緒に病院に戻ろうとする」→「避難地域なので一緒に行けない」→「自衛隊だけが救援に」→「2・3回目の搬送の際、病院関係者は誰も現場に居なかった」→「職員が患者置き去りで逃げたと報道」という流れになる。

これでは「職員が患者を見捨てて逃げた」とは絶対に言えない(警察の指示でやむなく避難させられたのであって、再び)。こんな報道をされたら、一生懸命がんばっていた職員に対する名誉毀損にしかならないと思う。

このような報道被害が繰り返されないよう強く願う。
by 医療四方山裏話 (2011-03-18 19:22)


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literacy

ブログ、ツイッターと様々な情報が瞬時に世界を駆け巡る時代なので、情報の取捨選択と真贋を見極める目が必要になってきていますね。それがプラスに作用すればいいですが、マイナスに作用したときの名誉回復はなかなか難しい時代です。

一面的な情報に踊らされないようにしたいものです。
by literacy (2011-03-19 13:54) 

ebisu

はい
踊らないように気をつけたいと思います。

literacyさんへ
by ebisu (2011-03-19 15:07) 

つぶやき

最近のここのブログは、医療四方山裏話さんのコメントで埋め尽くされ、もはや読むのがしんどいです。
失礼を承知でコメントします。
by つぶやき (2011-03-19 16:27) 

NO NAME

同感、m3.comの引用ばかりで変ですね。m3.comの内容はm3.comにまかせれば良いのに。
by NO NAME (2011-03-19 22:40) 

ebisu

"つぶやき"さんへ

専門家の解説がついているので、コメントを読んでいて面白く、本欄で紹介したくなり、次々と本欄へアップしてしまいました。

私が書く内容よりも、よほど詳しく具体的だったからです。
でも、頻度が問題ですね。
すこしイージーだったかもしれません。
書くのではなく、読むことを楽しみにしていました。
反省し、改めたいと思います。
by ebisu (2011-03-19 22:56) 

ebisu

ハンドルネームのない方へ

m3.comの情報を本欄へ採り上げる頻度を落とします。
基本的には自分で調べて自分で書くべきだと仰りたいのでしょう。
そうですね。

<いままでコメントしてくれていた方へ>
たくさんの重要な情報をありがとうございます。わたしはあまりあちこち情報を検索しておりませんので助かりました。
m3.comの情報は一般人には閲覧できないようなので、今後も重要と思われるトピックスについてはコメント欄に書き込みをお願いしたい。
by ebisu (2011-03-19 23:08) 

医療四方山裏話

小生がm3.comの色々なスレッドの書き込みから紹介してのには理由が有ります。例えば福島の第一原発傍の双葉病院の非難の件ですが、最初の記事によれば「病院の職員が患者を見捨てて逃げ出した」ように受け取れます。これをご覧に成った皆さんの大半は「患者を守るべき医者が職場放棄した。許せない!」と憤慨されたのでは。しかしこの情報に接した医師の多くはそうは思っていません。この記事が伝えたがっている内容が「医師を攻撃している」と思われるからです。「それは医者の被害妄想だろう」と仰るかも知れませんが、それは明らかに違います。
先ずこのケースについて多少説明致します。結果から先に言えば、ちゃんと(系列病院から派遣された)医師は病院に居たようです。そして折角病院に居たのに無理やり避難先に搬送された患者さんが20数人亡くなった事。(当たり前の話でしょう。設備の整った病院だからこそ何とか頑張っていた患者さんが、医療設備とは全く無縁の避難所でどうやって生きて行くのでしょう)。
病院の医師もお上からの避難命令に従ったようですが、医者だからお上の命令に逆らっても患者の傍に居るべきだったのでしょうか。そして被曝しろと。しかし医者も人間なんですよ。勿論守るべき家族も居ます。それでも犠牲に成って死ねと。何時から日本は戦前に戻ったんですかね。ここで敢えてそのような言い方をするにはそれなりの理由が有ります。最初の記事の数か所を入れ替えれば、「夜中だろうが何処だろうが、お前らは寝ていまいが明日大きな手術が何件あろうが俺たちを診る義務が有るんだ!」と言う例の当直医の問題にも繋がります。
更にこれは医療関係者以外の方は普段あまり考えていらっしゃらないかも知れませんが、今回のような緊急時には、限られた医療資源を有効活用するためには”トリアージ”と言う患者さんのランク付けが必要になります。これは結局は、患者さんをその立場や状態で区分けする”差別化”に他なりません。同じ一人を助けるのであれば、助け甲斐のある一人を選ぶ・・・断腸の決断です。医師がこんな嫌な(辛い)仕事をしなくてはならないと言う事を一般の方があまりお考えに成らないのは、これまで今回の大災害ほどの事が起きなかったからでしょう。勿論被災者全てが助かることが理想ですが、やはり状況によっては全員は助けられないという現実を直視しなければなりません。
ずっと医師と言う職業に携わって来た小生が何時も思うのは、医学は自然科学の一分野とは言っても数学が成り立ちません。結果に100%の期待は持てない不確実性があります。それでもこれまでの先人が積み重ねてきた経験と探究心のお蔭で、かなり良い確率で好結果を期待できる時代に成はりました。しかしそれでもまだまだ不確実性は拭えません。逆説的に言えば、それが(生身の)人間と言う事なのかも知れません。
m3.comの医師の書き込みには、最近の激増している医療訴訟に対する怒りが多く見られます。その中で彼らが一番言いたい事は、「人間は必ず死ぬものだ」と言う簡単な事実です。医師がどんなに頑張っても死亡と言う結果に終わることは日常茶飯事です。最近の日本人は平均寿命が世界一となったからか、あまり死生観が無いのかも知れません。自宅で何もせずに亡くなっても「寿命だった」ですが、病院でケアしながら亡くなると「管理が悪いから死んだ」「病気を見落としたから死んだ」etc。そしてお決まりの賠償金騒ぎへと発展することも結構多いようです。
こんな世の中で医師たちは世間をどう見ているのか、少しでも閉鎖的な医師の世界に吹いている風を一般の方たちの方にも吹かせようと考えてのebisuさんのブログへの書き込みでした。
しかし、これは小生の経験からですが、医師側が本音や実態を曝け出す(説明する)と、返って拒否反応に会うことが有ります。自分たちの持っている先入観を壊されると感じるのでしょうか。そうなると、もうそれ以上のコンタクトは望めません。両者の間の深い溝は埋まりません。
今回の大災害に際して、ebisuさんは「人は大災害に面して自分の生き方を考える」旨の書き込みをされました。それは全くその通りだと思います。特に長い平和ボケの日本人は、今回の様に喉元に刃を突き付けられないと考えない。しかし、福島の原発騒ぎを見るに付け、国民に真実を知らせるべき金太郎飴のマスコミはスクープ狙いの三面記事的報道姿勢に終始(それこそ無駄な電力消費とヘリなどの燃料消費)。そしてそのことに対してあまり文句を言わない(?)日本人の国民性に、墜落寸前の民主党政権は両翼を与えられた如く未だ飛び回っています。これからこの国は何処に向かうのでしょうか。心配です。

どうもお騒がせ致しました。それでは、これにて失礼致します。

by 医療四方山裏話 (2011-03-20 02:43) 

ebisu

いくつかの業界で仕事をしてきたので、それぞれの業界で働く技術屋さんと一緒に仕事をする機会が何度もありました。相手の使う専門用語を理解しないと会話が成り立ちません。システム屋さんとはコンピュータの専門用語、エレクトロニクスの技術屋さんとはハード・ソフトに係わる専門知識。検査は使用する機器や検査の専門知識や使われている統計学など。お医者さんたちとはある程度の医学知識。
 そこさえクリアできれば、技術屋=職人さんたちとはじつによいコミュニケーションができるものなのです。医者と患者のコミュニケーションあるいは医者と一般市民のコミュニケーション、そういったつもりで医療四方山話を本欄に取り上げてきました。
楽しんでいてくれた方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
お二人の方から、頻度が多すぎることについてご指摘を戴きましたが、その点はその通りなので、頻度をおおむね三分の一以下に落とすつもりでおりました。
ゼロにするつもりはございません。

>両者の間の深い溝は埋まりません。

そうなのです。本音をきちんと語ること、語る場が必要なのではないでしょうか。
m3.comはそのための単なる材料と考えています。
両者の溝を埋めたいのです。
地域医療は相互理解がない限り支えきれません。
医療を理解できる市民が増えることが、長い目で見れば地域医療を支えることになるでしょう。
それゆえ、お医者さんからの具体的な解説は必要だとebisuは考えます。
by ebisu (2011-03-20 09:40) 

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