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#1129 経済学の公理系と情緒について July 24, 2010 [A4. 経済学ノート]

 経済学の公理系と情緒について若干の考察をしてみたい。土曜日だからお休みの人が多いだろうから、暇つぶしにお付き合いいただきたい。たまには経済学の勉強もいいだろう。わたしは午後から授業があるので休みではないのだが、気になっていることを少し整理できればうれしい。

 (今日は高校生の時事英語授業に7/17のジャパンタイムズに載ったハイブリッド自動車プリウスのエンジンとモータシステムについての解説記事を採り上げる。インターネットで検索しても当該記事が出てこないので紹介できないのが残念だ。いままでどうして燃費がよいのかわからなかったが、この記事で理解できた。乾電池を直列に100本並べても電圧はたったの150Vでわずかの時間しか持たないから、燃費がよくなる理由がわからなかった。タイトルは次のようになっている。
"Hybrid cars lead the way in today's automobile market"
イラストが素晴らしい、読みたい高校生は塾生に頼んでみたらいい。塾生経由で写しをあげる。友だちのいない人は直接取りに来ればいい。)

それではここから本論です⇒⇒⇒
 利潤の極大化は公理系の要素だろうか?という唐突な問題提起をし、荒っぽい整理を試みたい。

 マルクスは資本循環で資本の自己増殖を定義した。それはまるで生物のようで、資本が生きるためには循環しながら大きくならねばならない。無限に自己増殖するのが資本である。増殖しない資本は死に絶える。

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 経済学書ではおなじみの資本循環図だ。拡大再生産が資本増殖の過程として描かれる。これが基本的な定義だろう。ここでは利潤の極大化の定義はまだできない。資本の自己増殖が拡大再生産過程として説明されるだけである。

 わたしはかつて『資本論』の構造を抽象的人間労働と具体的有用労働を根本概念とした体系構造として考えていた。そして経済学の端緒は「抽象的人間労働」であると考えていた。公理は抽象的人間労働ひとつだと考えていたが間違いだったようだ。
 資本主義経済を俯瞰すると「利潤の極大化」と云うこと自体が公理系の一つをなしているように思える。公理系を情緒と根本概念の複合物として捉えなおす必要があるようだ。

①経済学の基本概念を洗い出して、何が一番根本概念なのかを比較検討する

②職人主義経済学に固有の情緒を析出する

こういう二つの作業が必要だ。

 

 マルクスは資本循環を展開する中で、拡大再生産を資本循環の自然な姿として描いた。そこでは、利潤は拡大再生産の結果として得られるものであって、利潤の極大化はまだ視野の外である。独占企業の超過利潤を論ずるところで利潤の極大化の概念が出てきたように記憶する。「市場関係」というフィールドで定義されるのが超過利潤や利潤の極大化だ。

 このようにマルクスは経済学の端緒として利潤の極大化を措定してはいないが、『資本論』は情緒として利潤極大化を最初からもっているのではないか。つまり、公理系のひとつとして暗に措定されているのではないだろうか。それが市場関係というフィールドで資本主義経済の基本概念として定義される。学の端緒としての「情緒」の役割の重大性にマルクスは気がついていなかったようだ。イメージはユークリッド『原論』の公理系のようなものが在ったのではないかと推察する。それが抽象的人間労働という基本概念だ。この概念は他の如何なる経済学的概念からも説明されることがなく、公理のごとく扱われている。

 

 職人主義経済学は利潤極大化という情緒をもたない。正直な・誠実な仕事を公理系の一つに措定する。利潤の極大化は「浮利を追う」ことでもあるが、職人主義経済は「浮利」を追わない、信頼に基づく勤勉・正直な職人の世界である。

 職人主義経済の情緒は「職人として働く人々が正直・誠実に仕事をし、一切のゴマカシをしない」こと、「浮利を追わない」こと、商いに当たっては「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」を旨とする、こういうことが職人主義経済学の情緒すなわち、経済学の端緒である。こういう経済学を米欧の資本主義に対置したい。日本人が受け継いできた伝統的価値観に基づく経済学は、国際的な普遍性を有している。

弱肉強食の資本主義経済から、相互信頼に基づく正直・誠実な仕事をベースにした職人主義経済へ移行しようとの試みである。弱肉強食のジャングルの経済から信頼に基づく人間の経済へのレベルアップである。

 

 さて、『資本論』の交換関係=単純流通や資本循環、市場関係での概念定義をしなおさなければならないのだが、それは(奴隷あるいはその延長線上にある工場労働者の)労働価値説に基づく古典派経済学以来の経済学説を否定し、あらたな経済学を創始することと同義である。


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