増え続ける国債残高（６） 野口悠紀雄氏の見解 #959, Mar.17, 2010 [95.増え続ける国債残高]
3月17日北海道新聞1面に載ったシリーズ物の論説記事である。今回は早大大学院ファイナンス研究科の野口悠紀雄氏が書いている。
野口氏は増え続ける国債残高が日本経済を崩壊に導く可能性に言及しており、あと10年もたないと国民の危機感のなさを憂慮している。
国債残高の増大を憂慮し、時間がない（おそらく１０年もたない）という点でも私がこの「増え続ける国債残高」シリーズで書いてきたこととおおむね同じだ。いくら国債を発行してもかまわないという無節操な主張が世の中にはある。よく読み比べて考えてみるべきだ。
彼の主張はオーソドックスなもので、何がきっかけでどのようなことが起きるのかについては面白いテーマだが言及を避けている。字数の都合か、経済学は経験科学、経験のない事態がどうなるかについては誰にもわからないから言及を避けたのかは読み手の判断に委ねられている。
鳩山政権6ヶ月 （３）
鳩山政権の経済運営により、日本経済の危機は一段と深刻さを増した。特に２０１０年度予算案は、税収が３７兆円しかないのに、歳出は過去最大の92兆円。こういうものをいったいどう評価しているのか。前代未聞の財政赤字を前にして、なぜ国民もメディアも平然としていられるのか。現在のように国債の大半を国内で消化できる状態がいつまで続くかわからない。10年間もつかどうか。それなのに危機意識が希薄だ。
米国発の金融危機後、世界はもはや米国の過剰消費にたよって輸出を増やすことはできないから、鳩山政権が内需主導型経済を志向するのは理解できる。しかし、予算案に盛り込まれてマニフェスト（政権公約）関連政策にはまるで戦略性がない。子ども手当ては、少子化対策なのか、それとも家計支援策なのか。公共事業費を削減して、メリハリをつけたと言っているが、ほぼ一律にカットしてどこにメリハリがあるのか。日本が遅れている都市基盤整備など必要な部分には金と使ってこそのメリハリだ。
私は大学院で、社会人を対象に金融のプロを育てているが、授業料は2年間で300万円かかる。子ども手当ての満額支給に5兆円も使うなら、その本の一部を回して、専門家の育成を助成できないものか。限られた財源を、細かな配慮で教育・人財育成に割くのが戦略だと思う。
唯一の戦略は自民党政権と同じ選挙対策だ。中身が公共事業から、子ども手当てや個別所得補償に変わっただけなのだ。そして、あんな予算案ができてしまった。総選挙の前に、民主党のマニフェストに対し、その実現可能性や財源に裏付けについて、きちんと検証しなかったわれわれ学者にも責任がある。
結局、政権交代でわかったことは、国民に責任があるという当たり前のことだと思う。国民が税金の無駄遣いを許さず、その使い道を真剣に考えなければ、何も変わらない。納税者意識を高めるように、税制改革をする必要がある。特に、給与所得者は、源泉徴収と年末調整で税額が自動的に決まり、自分で計算して申告しないから、納税の痛みを感じにくい。納税に知恵を絞らないところに、納税者意識は育たない。
金融危機のまっただ中、米議会は金融安定化法案をいったん否決した。あれは「自分たちの税金で、無責任な金融機関を救済するのはいやだ」という米国民の意思の表れなのだ。税制をコントロールするのは国民だ。政権のせいにしてはいけない、「国民よ、目を覚ませ」と言いたい。
*野口悠紀雄 ウィキペディアへ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E5%8F%A3%E6%82%A0%E7%B4%80%E9%9B%84
*#919『増え続ける国債残高：FRB金利上げ』
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c2300335398-1
野口氏は増え続ける国債残高が日本経済を崩壊に導く可能性に言及しており、あと10年もたないと国民の危機感のなさを憂慮している。
国債残高の増大を憂慮し、時間がない（おそらく１０年もたない）という点でも私がこの「増え続ける国債残高」シリーズで書いてきたこととおおむね同じだ。いくら国債を発行してもかまわないという無節操な主張が世の中にはある。よく読み比べて考えてみるべきだ。
彼の主張はオーソドックスなもので、何がきっかけでどのようなことが起きるのかについては面白いテーマだが言及を避けている。字数の都合か、経済学は経験科学、経験のない事態がどうなるかについては誰にもわからないから言及を避けたのかは読み手の判断に委ねられている。
鳩山政権6ヶ月 （３）
鳩山政権の経済運営により、日本経済の危機は一段と深刻さを増した。特に２０１０年度予算案は、税収が３７兆円しかないのに、歳出は過去最大の92兆円。こういうものをいったいどう評価しているのか。前代未聞の財政赤字を前にして、なぜ国民もメディアも平然としていられるのか。現在のように国債の大半を国内で消化できる状態がいつまで続くかわからない。10年間もつかどうか。それなのに危機意識が希薄だ。
米国発の金融危機後、世界はもはや米国の過剰消費にたよって輸出を増やすことはできないから、鳩山政権が内需主導型経済を志向するのは理解できる。しかし、予算案に盛り込まれてマニフェスト（政権公約）関連政策にはまるで戦略性がない。子ども手当ては、少子化対策なのか、それとも家計支援策なのか。公共事業費を削減して、メリハリをつけたと言っているが、ほぼ一律にカットしてどこにメリハリがあるのか。日本が遅れている都市基盤整備など必要な部分には金と使ってこそのメリハリだ。
私は大学院で、社会人を対象に金融のプロを育てているが、授業料は2年間で300万円かかる。子ども手当ての満額支給に5兆円も使うなら、その本の一部を回して、専門家の育成を助成できないものか。限られた財源を、細かな配慮で教育・人財育成に割くのが戦略だと思う。
唯一の戦略は自民党政権と同じ選挙対策だ。中身が公共事業から、子ども手当てや個別所得補償に変わっただけなのだ。そして、あんな予算案ができてしまった。総選挙の前に、民主党のマニフェストに対し、その実現可能性や財源に裏付けについて、きちんと検証しなかったわれわれ学者にも責任がある。
結局、政権交代でわかったことは、国民に責任があるという当たり前のことだと思う。国民が税金の無駄遣いを許さず、その使い道を真剣に考えなければ、何も変わらない。納税者意識を高めるように、税制改革をする必要がある。特に、給与所得者は、源泉徴収と年末調整で税額が自動的に決まり、自分で計算して申告しないから、納税の痛みを感じにくい。納税に知恵を絞らないところに、納税者意識は育たない。
金融危機のまっただ中、米議会は金融安定化法案をいったん否決した。あれは「自分たちの税金で、無責任な金融機関を救済するのはいやだ」という米国民の意思の表れなのだ。税制をコントロールするのは国民だ。政権のせいにしてはいけない、「国民よ、目を覚ませ」と言いたい。
*野口悠紀雄 ウィキペディアへ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E5%8F%A3%E6%82%A0%E7%B4%80%E9%9B%84
*#919『増え続ける国債残高：FRB金利上げ』
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c2300335398-1
2010-03-17 23:12
nice!(0)
コメント(2)
トラックバック(1)
国債増発賛成論のひとつとして「子ども手当て」に関する議論をトラックバックしてくれた人がいる。
なかなかいい材料である。
どなたかわからないが、トラックバックありがとう。
ぜひ、野口氏の論と読み比べて、じっくり考えてみてほしい。
by ebisu (2010-03-18 08:30)
このご意見に対するベストアンサーが載っていました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1335211268
ベストアンサーに選ばれた回答sirokumadayoriさん
私は子ども手当反対派です。
今も反対派ですけど、支給されたらきちんと子供名義の貯金通帳に入れて
貯金しておいてあげます。
この子ども手当の財源で、たぶんこれからいろいろとしわ寄せが来ると思います。
今、赤ちゃんでも600万円超の国の借金を抱えていることを知っていますか。
※日本の借金時計 http://www.geocities.jp/mkqdj167/japan.htm
本当なら、子ども手当のようなバラまきは、してはならないことなんです。
そのお金は、全部自分の子供達が更に借金として背負うことになるかも知れない、お金だと言うことを
心に刻みつけて使われた方がいいと思います。。。
by ebisu (2011-01-20 13:05)