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事業仕分け:高校2校体制のコスト対効果 #811 Nov.26, 2009 [57. 塾長の教育論]

事業仕分け:高校2校体制のコスト対効果 #811 Nov.26, 2009

 11月25日付、北海道新聞朝刊22面に、高校統廃合に関して、小中高の保護者の50%が反対であるとのアンケート結果が出ていた。
 気持ちはわかる。2校のほうが生徒にとっても、地域にとってもいいに決まっているが、このアンケートには2校体制維持のコストが明記されていなかったようである。2校体制を維持するためにはそのコストがいくらかかっても良いわけではあるまい。

 そこで費用対効果を考えてみたい。極端な例をひとつ挙げて、問題点を鮮明にしておきたい。経済学ではそういう例を挙げて説明をすることがある、問題の本質を明らかにするのに便利な方法だからだ。

 数年前に厚岸の中学校の先生たちが、吹雪の日に側溝に落ちた同僚の車を押しているところにタンクローリーが突っ込み、3人死亡という痛ましい事故があった。その学校は教職員が13名で生徒数が13名という僻地校とテレビニュースや新聞報道があった。生徒と教職員の人数が同じ、おまけに13人だという「不吉な」数字で記憶している人もいるかもしれない。
 この学校の教職員の平均給与を700万円とし、建物の減価償却費や諸経費に3000万円かかったとして、年額1.21億円の維持費となる。生徒数13名で割れば、一人当たり930万円の教育費である。おどろくなかれ、3年間で生徒一人2800万円。
 このように郡部校は生徒一人当たりの教育費が市街化地域の学校に比べると10倍・20倍もかかっている場合がある。基本的な疑問はこうである。道路事情は50年前に比べれば格段によくなったのに、道路事情が悪かった時代にのままに学校を分散配置しておく必要があるのだろうか。
 どこまで許容するのかについては、かかっている費用を明らかにしてきちんと議論すべきである。

 さて、根室の高校2校に話しを戻そう。教職員の平均給与を700万円、建物の減価償却費と諸経費として1億円かかるものと仮定する。根室高校は生徒数600人、根室西高校は300人である。教職員数をそれぞれ30人、20人とすると総費用は根室高校が3.1億円、根室西高校が2.4億円である。生徒一人当たりそれぞれ51万円、80万円かかっていることになる。卒業するまで3年間でそれぞれ153万円と240万円である。

 中学校の数学の学力テスト結果をみると、30点未満が40%を占めており、多い学校では50%いる。この層の生徒は、心を入れ替え労苦を厭わず勉強に励むようになる少数の例外を除き、高校数学の授業についていけないだろう。英語についても同様である。学校側はやる気力のない生徒たちを前にして授業レベルを落とさざるをえない。私は授業レベルを落とす必要はないと思う。必要ならやる気のある生徒は放課後補習をして救ってやればいいと思う。己の学食が低いにも関わらず、差し伸べられて救いの手すら振り切り、補習に参加しないような生徒は容赦なく切って棄てればいい。
 社会人になったら世の中は厳しい。高校中退すれば多くの会社が履歴書すら受け取ってくれないから、そういう現実を中学校や高校で生徒にしっかり説明して、どうするのか、どういう人生を選ぶのか教師は生徒に迫るべきである。
 中学校までは教育は国民の権利であると同時に義務である。論理的には国民としての義務を放棄した者は国民としての権利をも放棄することになる。権利と義務は表裏の関係にある。

 一番古い中学校が一番荒れていて、例外的な年度はあるが概ね他校に比べて平均点が低い。残念ながらわが母校である。毎日のように体育館裏で何人も授業をサボってタバコをすっている。どなって生徒を追い掛け回すごく小数の先生はいるが、多くはあきらめている。生徒に注意しても、親を呼びつけて注意しても、こどもがすでに親の言うことすら聞かないのだから、効果がない。家庭で躾がされていない生徒が増えている。生徒に問題があるというのは、躾のできない親に問題があるということでもある。学力テスト時のアンケート結果から見ても、家庭学習習慣のない子供たちが他地域に比べてびっくりするほど多い。根室は他地域に比べて子供を躾のできない親が多いようにみえる。子供の学力が全道14支庁で一番低いというのは、実は子供を躾けられない親たちの問題でもあるのだ。
 授業をサボる生徒がどの学校も増えている。一番学力テストの点数が低かった中学校ですら、授業中に騒がしくて先生の声が聞こえないという。先生が制止してもおしゃべりをやめない生徒が覆いと言うことだ。市街化地域No.1校ですら荒れ始めている。
 授業を一定期間サボるともう授業内容が理解できなくなり、勉強に興味も失せる。そうした生徒たちの中から授業をサボる者が次々に出てくる。勉強に興味をなくしているから、せっかく高校に進学しても、1学年につき20人も退学していく。もったいない話だ。

 勉強に興味をなくした中学生たちは、まとめて別の教室で個別指導するしかない。授業をサボっていないけど学力の足りない生徒には放課後補習をすべきだ。同じ新聞の全道版には、道教委が学力向上策として放課後の補習をようやく言い出したことが載っている。学校が、先生たちがそこまでは努力すべきだ。そうしなければ、根室の生徒の学力を上げられない。根室の子供たちの学力が全道14支庁管内で最低であるとの汚名は早く返上したい。

 さて、費用対効果からひとつの問題を提起できる。
 一人当たり年額80万円、卒業するまで生徒一人当たり320万円もの税金を、勉強するキモチのない生徒に投入するような財政的な余裕が国にあるのだろうかと言うことである。
 教育はタダではない、膨大な税金が投入されている。その上で、根室に高校が2校必要かどうかを改めて小中高校生をもつ親たちに問うて欲しい。
 学校はもっともっと厳しくていい。やる気のない者はどんどん赤点をつけて落とせばいい。高校教育は義務教育ではないから、税金はやる気のある者たちに使えばいいと言う主張も正当性があるだろう。

 費用対効果からもうひとつの問題が提起されるだろう。郡部校の市街化地域の学校への統廃合である。
 生徒一人当たり年間100万円以上もかかるような学校は廃校にして、市街化地域の学校へマイクロバスで集めるべきだろう。もちろんマイクロバスの運行経費は公費負担とする。バス運転手の退職者を募れば、学校を維持する10分の1以下の経費で済むだろう。小中学校の統廃合は急ぐべきだ。
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