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プライマリーバランスとマニフェスト [91.経済]

プライマリーバランスとマニフェスト

 今日も根室は雨が降っている。日曜日だというのに一日中雨だ。夜の気温は12度台、日中も16度くらいだろう。

 2011年度にプライマリーバランスを回復するというのは小泉政権のお約束だった。安倍、福田、麻生と受け継がれてきて2009年になって、そのお約束はついに反故になった。自公政権の政権公約=マニフェストの重要項目だったはずだが期限が近づき実行を迫られる段になると、言い訳をしながら引っ込める。誠に見苦しい。
 1977年(福田赳夫首相:当時)以来自民党は天下り禁止を声高に政権公約として掲げ続けてきた。これも一向になくなってはいない。マニフェストとは自民党にとって実現されることのない永遠のテーマなのだろう。

 さて、本題のプライマリーバランスの回復の話しに戻そう。国債残高は850兆円。今年度の予算は90兆円+補正予算14兆円だった。税収は46兆円だから、差し引き56兆円の赤字国債増発になる。地方と併せると国債・地方債の残高は今年度末1100兆円になってしまいそうだ。

 サンデープロジェクトで長妻議員が、民主党政権になったら来年度は今年度よりも赤字国債の発行を減らすと言明した。金額は46兆円以下と言っていた。実際には56兆円だからそれ以下と理解しておこう。

 私にはわからないことがある。経済学は経験科学なので、経験的事実や現象から理論を構築する学問であり、いまだ経験的事実となっていない経済現象については語ることができない。
 1300兆円あるといわれている国民の金融資産は高齢化社会を迎えて取り崩しが始まる。国債と地方債の残高がこの金融資産残高を超えたら何が起きるのだろう?経済学者にも何が起きるかわからない。

 税収が先細りになることは高齢化社会の進行を考えれば当然のことだろう。現役世代が減少していくから所得税が減る。支払われる健康保険料や年金掛け金も逓減していく。子供の数は減り続けている。女子一人当たり1.3人しか子供を産まない傾向は変わりそうにない。その一方で医療費は増える。2045年に老人人口は人口の半分近くを占めることになる。これから10年間で日本経済は長い「冬篭り」の準備が必要だ。

 国民や企業がもっている金融資産を国債と地方債の残高が超えたときに何が起きるのだろう?はっきりしているのは国債発行の受け皿がなくなることだ。お金が余っているから利回りの低い国債へお金が回っている。お金が足りなくなったらどうなるのか?市場から国債の買い手がいなくなり、赤字国債が発行できなくなる。その一方で発行済みの国債の償還期限が次々と訪れる。日銀が買い支えるしかない。すでに昨年から国債の日銀(直接)買い入れがはじまっている。金利をゼロ金利のままにしておくためには、日銀が国債を引き受けざるを得ないのだ。
 つまり国家財政は昨年度に破綻しているのである。日銀が国債を直接買い入れて破綻の表面化を回避した。しかし、いつまでそのような対症療法でやりくりできるのだろう?

 1300兆円の金融資産を国債・地方債の残高が超えたときに国家財政の破綻が表面化するのではないだろうか?民主党になっても40兆円規模の赤字国債発行は続く。5年から8年の間に国債・地方債の残高が1300兆円を超える。

 民主党のマニフェストにもプライマリーバランス回復はどこにも書かれていない。収入の範囲で生活しようという至極当然の庶民感覚に基づく政策だろう。非常時に備えていくばくかの蓄えをもちたい、当たり前の感覚である。年間所得の20倍にもなっている借金を返済するためには、まず収入の範囲で生活することだ。公共事業も減らす、天下りも100%禁止する、無駄なお金は使わない、公務員人件費も借金返しが終わるまではとりあえず30%減額する、年金は一本化しダブル受給をなくすなどなど、情け容赦のない厳しい政策をずらっと並べなければ、次世代に残す謝金の山を崩せない。われわれ世代の責任においてせめて借金の山を半分にしなければならない。
 国家財政の破綻を根本的に回避するためには、徹頭徹尾ごまかしのない厳しい政策を選択するしかない。ばら撒きなんかしている余裕は昨年の金融危機でなくなった。あらゆる歳出を点検・節約して返済資金を捻出するしかない。特権的な制度はすべて廃止されるべきだ。

 各党のマニフェストはばら撒き合戦の様相を呈している。どの党も、どの国会議員も、誰一人日本の将来を考えてはいないように見える。国家財政が破綻すれば日本全国が夕張市のようなことになる。公務員の50%リストラ、給与30%減、学校の統廃合、大量の失業、未曾有の企業倒産・・・

 自民党のマニフェストが出たところで、全政党のマニフェストが出揃ったことになるが、残念ながらプライマリーバランスの回復を声高に宣言したものは一つもなかった。
 日本は財政破綻へ向かってまっしぐらに進んでいる。

*日刊スポーツ紙より
http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp3-20090801-525799.html

麻生首相、自民マニフェストで財源示せず

 麻生太郎首相(68)が7月31日、自民党本部で自民党のマニフェストを発表した。10年で手取り100万円増、1人当たり国民所得を世界トップクラスにする、などの公約を盛り込み、景気対策を最重要点に掲げた。27日に発表された民主党マニフェストについて「財源を示さず無責任」と批判してきた麻生氏だが、この日発表されたマニフェストには具体的な財源の記述はなく、追及する報道陣からの質問にかみつくなど苦しい発表会となった。

 夕方のニュース時間帯に合わせて自民党本部で行われたマニフェスト発表会見。麻生首相は、紺のスーツに紺のネクタイで現れた。27日に発表された民主党のマニフェストに対し、「財源が無責任だ」(麻生氏)と批判してきただけに、会見には立ち見を含めて報道陣約400人が詰めかけた。麻生氏は冒頭、「マイナスをプラス、プラスをもっとプラスへ。改めるべきは改め、伸ばすべきは伸ばす」とし、「他党との違いは『責任力』だ」と訴えた。

 しかし、配られた自民党マニフェスト(要約版18ページ、詳細版34ページ)の中には「10年度後半に年率2%の経済成長」「200万人の雇用を確保」「経済成長戦略の着実な実施により、10年で家庭の手取りを100万円増」などの数字はあっても、その政策に必要な財源の記述は見あたらなかった

 「責任力、財源の責任などかねがねおっしゃっていたが、自民党が財源に触れていない点、どう説明するか。費用がなければ赤字国債を当てるのか」と問われると、「園田(博之)政調会長代理の方からお答えしてあると思うので、あとで園田さんに聞いてください」と、あっさりバトンタッチ。肝心の園田氏も明快な回答はできず、赤字国債についても「景気回復のために重点投資するには歳出予算を組まざるを得ない。相当高くなる可能性がある。その場合、国債発行もやむを得ない」と回答。麻生氏はこの日の会見冒頭にも民主党のマニフェストに触れ「まったくの夢物語だ」と批判していただけに、歯切れの悪い展開となった。

 さらに、報道陣から「『10年で100万円』は実現すれば素晴らしいが、所得が伸び悩む中でどのようにアップするのか」と問われ「増えていないのではない。認識が違います。減ってるんです」と軽くかみついた。さらに「そこが一番気になっているところ」としながら、具体的な方法、財源は示せなかった。30日の選挙まで残り1カ月のタイミングで満を持して発表したマニフェストだったが、質疑応答では終始苦しい表情だった。[2009年8月1日8時50分 紙面から]

*毎日新聞「社説ウォッチング:マニフェスト選挙」
 
http://mainichi.jp/select/opinion/watching/news/20090802ddm004070003000c.html 

*朝日新聞社説「自民マニフェスト発表 「責任力」を前面に」
 
http://www2.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200907310365.html

 2009年8月2日 ebisu-blog#682
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