国民の95%が幸せ…屈託のない笑顔 [A4. 経済学ノート]
国民の95%が幸せ...屈託のない笑顔
昨晩のテレビ番組「世界・不思議発見」でブータンを採り上げていた。「秘境ブータンに学ぼう、イケメン王子が実現する理想国家」とテレビ欄に載っている。
爺さん婆さん、父さん母さん、子どもたちと三世代同居家庭に番組レポーターが泊り込んでの取材だった。
野菜は自家栽培で安全で新鮮、教育と医療はただ、三世代皆が屈託のない笑顔をしていたのが印象的だった。いま享受している暮らしを「ありがたい」「幸せです」と心の底から思っている様子だ。「幸せでない者が幸せだと言うことのない社会」であるべきだというのが、ブータンの考え方だ。
チベット仏教を国教と定め、5代目の若い国王が治めている。「支配者のような振る舞いがあってはならない」と自戒している。何かの国家行事を広い競技場のようなところで開催していたが、国王は特別席から出て、国民の間を回って歩き、観客の間に座り込んでついに終わりまで特別席に戻ることがなかった。
3代目の国王は変装して街中を飲んで歩き、国民のナマの声を聞いたという。
チベット仏教と伝統文化を大切にし、ゆるやかな西欧化を推進している。取材した家の固定電話が木箱に入っていたので驚いたが、子どもがいたずらをするから木箱をつくったと答えていた。
携帯電話をほとんどの人がもっている。電気炊飯器もあった。ほどほどのところで満足し、欲望を無制限に拡大することがない「満足を知る」社会を実現しているのは、根っこにチベット仏教があるからだろう。個々人の自由と欲望の極大化を追及する欧米を支えているのはキリスト教である。中国も日本も否応なしに西欧化してしまった。ブータンとは対極にあるように見える。
中国人も、朝鮮人も、日本人もあのような屈託のない笑顔を忘れてしまったのではないだろうか?教育や医療に不安がない、つまり生活に不安がないということは、人びとに屈託のない笑顔をもたらすもののようだ。ブータンは先進国ではない。しかし、満足を知るということも大切だと国民の一人が言っていた。
チベット仏教は無益な殺生を禁じているので、川で釣りをするには許可証が要る。1日8匹まで許される。だから、川から魚が少なくなることもない。餌も疑似餌しか認められていない。自然と共生する精神性豊かな社会がそこにある。もちろんお金のために川魚を獲ることなど考えられもしない。
地球の温暖化を止め、自然破壊を止め、人間と自然が共生可能な生活形態のひとつをブータンが提示しているのではないだろうか。
日本もかつてはブータンのような国だった。縄文の昔はブータンのように自然と共生する生活をしていたはずだ。アイヌは二百年前までそのような生活をおくっていたし、自然と共生し質素に暮らすことをよしとする価値観が日本の伝統文化の基層をなしていることもたしかなことのように思える。失われたバランスが自然に回復するように、近い将来私たちは伝統文化への回帰を果たすのだろうか。
2009年1月11日 ebisu-blog#484
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